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エンレン 今日の占い
2017-08-27-Sun
『ごめんなさい。今日の最下位は山羊座のあなた。』


朝、準備をしながら付けていたTVが情報番組の星座占いを伝えていた。

いつもは流すだけで耳に入らない音もこういう時には入ってくるものだ。


「え~、、聞かなきゃ良かった。」


とは言うものの占いなんて普段気にしない。

というより気にしなければ、気にもならないものなのだ。


そう自分に言い聞かせて出勤する準備を進めていく。


食事を終え、

着替えも済ませた。

後はメイクとして、片付けたら家を出る段取りだ。


リップを塗ろうとして少しはみ出してしまう。

でもこれは良くある事。

このくらいで占いの結果に結びつけたりしない。


でも、テーブルの上に残してあったグラスを持とうとしてヒヤリ。


「は!あぁ、、」


危うく落としそうになる。


「危ない。危ない。気をつけなきゃ。」


気にしないつもりの占いも自分の奥底に書き込まれてしまった模様。

ドキドキと落ち着けない心臓に手を当て、鎮まれ鎮まれと深呼吸する。



「行ってきます。」


そう言ってドアを施錠した内側には先ほどまで置いてあった鞄の位置に落ちてあるパスケース。


つくしの一日はこうして始まった。






「あれ、無い。・・・無い。ああーーもう。定期券が無いよぉ、、」


改札手前で焦ってもどうにもならない。

今からアパートに戻る時間など無いとなれば、余計な出費をしなくてはならない訳で、、


「ま、たかだか300円足らず、、って、帰りも合わせたら600円じゃん。スーパーのアイス6本分は大きいよぉ~、、トホホ。」



電車のドア窓におでこをコツンとして小さく呟くと、逆のドアから入ってきた客で頬まで押しつぶされる。


「ぐえっ。」


反対方向の電車に乗ってる男の人と目が合い、恥ずかしいやら情けないやら。



そんなつくしの後ろには体格の良いスーツ姿の男性が4人。

そんな彼らを見上げたつくしはそのひとりと目が合い、目を逸らされた。

彼らに潰された事だと思ったつくしは、彼らの雇い主へ心の中で毒を吐く。



こんな時にいないから、あたしはこんな目に合うのよ。

てかここで手を突っ張ったりしてさ、守ってくれたるのが彼氏って存在じゃないの?

壁ドンってやつ?

そりゃされたいと思わないけど、


ううん、やっぱされたいかな。


あいつが居さえすれば。




電車が動き出し押し付けられた頬が離れまたおでこをコツンと当て、つくしは未だ帰国しない男を想う。






つくしの勤める会社は道明寺ホールディングス東京本社。

言わずもがな彼氏の一族が経営している日本有数の企業である。

大学を卒業したがまだNYから帰れない恋人に出した我儘が普通の会社員の経験だった。

大学時代は勉強に明け暮れた。

あいつが学費を出してくれたから、その分必死に勉強した。

あいつと一緒になるために必要な事。

またいつかは必要になるかもと、取れる分の講義は取って勉強した。


だけど、あいつから求められたのは自分の側にいて帰る場所を作る事。


それは邸の女主人なのかと聞くと、それもあるが単に仕事を終えて邸に帰った時に出迎えて欲しいと言う。


もちろん求められれば応えたい。


だけど、それじゃあ今まであたしがして来た事はなんだったのかと疑問に思った。


あんたの役に立ちたい。

あんたを助けたい。

そう思って頑張った事が否定されたみたいで、あんたの願いを素直に受け入れられなかった。



でも、友人みんなに悩みを聞いてもらい(実際には問い詰められたんだけど)、あいつを待つ事にしたの。


そしてその中で会社勤めを経験してみたらと言われ、待つ間だけ社会に出てみる事にした。

直接助ける事にはならないけど、社会人を経験するかしないかでは相手の苦悩を理解出来ないんじゃないとアドバイスしたのは親友の優紀だった。


あいつのお膝元で働く事になったのはあいつなりの妥協なんだと思う。


その証拠に一介のOLがSPを付けているんだからね。


ま、会社に居れば側から離れるけど。




そう思っているつくしの頭上では防犯?カメラがキュルリと反応していた。






お昼前、つくしは休憩時間を意識しながら業務を進めていく。

資料作成がつくしの主な仕事。

入社して4ヶ月も過ぎれば手際も良くなり新入社員とはいえ充分戦力としてカウントされていた。


お昼は社員食堂で取っていた。

格安で提供される事はもちろん、定食に付いてくるデザートがつくしには楽しみだった。

食堂のおばちゃん達が作る簡単なデザート。

一流のパティシエが作るものじゃないところが、つくしのハートを掴んでいた。


デスクの上の時計をチラリと見る。


お昼まではあと1分。

だけど時間ちょうどに席を立つ事など新人社員がやってはいけない。

だからと言って遅くなるとデザートも無くなってしまう。

おばちゃんのデザートは数量限定なのだ。
(デザートを取るのは女子社員と甘党の男性社員のみ。全員分は作られない。)


12:07


席を立とうとしたつくしの耳にエラー音が聞こえる。

その音の方を向けば正体は複合機のエラーだと分かった。



「げっ。」


そしてその複合機の前に立つ人物を見て顔を歪める。



その人物は何を隠そう因縁の浅井百合子。


高校時代F4と近いつくしに何かとやっかみを入れた浅井は何故かこの道明寺に入社していた。

とはいえもちろんコネ入社だ。


道明寺には浅井の他にも英徳や永林に通うような子女が多く入社していた。

男子は大体が稼業の修行、そして女子はそんな御曹司と優秀な社員を捕まえるための花婿(金ヅル)探しだ。


そんなお嬢様はもちろん仕事が出来ない。

そして幼い頃からの習性か他人を使う事に何の躊躇も無かったのだ。


当然つくしも浅井百合子の入社を知っていたが、別フロアの部署に配属されていたため存在を気にもしなかった。

いや厳密に言えば気にしてはいた。

とにかく浅井も人使いが荒い事。社会人として非常識な事はつくしの耳にも入って来ていた。


浅井がこのフロアにつくしがいると知っていたかは分からない。

だが不運にも今同じフロア、それも距離にして十数メートル範囲に入ってしまい、、


最悪にも声を聞かれてしまった。



「あら~牧野さん~、あなたここのフロアだったのねぇ。」


浅井の顔も笑ってはいない。

だが次の瞬間口角を上げニヤリとした。


嫌な予感バリバリ。


どうにか退散したいつくしだったが、浅井を知る先輩に目で合図され相手をする事に。

そのため複合機のエラー解除から、何故か浅井の仕事までやる羽目になったのだ。


浅井が居なくなった事など気付いていたが居ても邪魔なだけ。早く終わらせようと必死に複合機と格闘して戦い終えると時間はすでに14:20


おばちゃんのデザートは残っているはずが無かった。




コントの様に肩を落とし、フラフラとフロアを後にするつくし。


エレベーターに乗り食堂の階を押そうとしたところで止め、代わりに❶のボタンを押した。


とにかく糖分が欲しかったつくし。

なにはともあれ糖分だとコンビニを目指す。


おにぎりかパン、それとデザート。

コンビニのマンゴーなめらかぷりんを食せればきっと回復すると信じて、会社近くのコンビニに立ち寄る。



だが、



「売り切れ。マジでぇ~(泣)」


スィーツコーナーの前で座り込むつくし。

ジロジロ見られても気にする余裕すら無かった。



「牧野様、こちらをどうぞ召し上がり下さい。」


そこで背後からつくしら声をかけられる。


「へ?」


つくしが顔を上げると息を弾ませたSPがコンビニ袋を差し出していた。


「なん、で、、」

「司様にそうするよう命じられました。」

「道明寺に?」

「はい。これを食べて元気になられて下さい。」


つくしはキュンとした。

もちろんこのSPにではない。

だが周囲の人間はこの二人の雰囲気にキュンキュンさせられていた。


そのため、


「お姉さん、恋が始まりますね。」


と、通りすがりの女子高生に声をかけられる。

違う!とつくしが振り向くも周りにいる数人はにやにやとつくし達を見ていて、つくしがSPを見ると彼は青ざめていた。



「あの、あたしちゃんとあいつには言いますから。心配しないで下さい。」

「は、ありがとうございます。」



ゴメンよゴメンよと呟きつくしはコンビニを後にする。


もうここまで来れば今日の占いの順位は疑う余地もない事で。

つくしの頭にはラッキーアイテムはなんだったのかとそればかり考えていた。




それでも悪い事はそう続かないのだった。



部署に戻って来たつくしはデスクの上に置いてあるものに停止させられる。


「これは、、」

「あ、帰って来た。それ、あなたの楽しみよね。中岡君食べないから取って来てくれたのよ。」

「なのに居ないからさ。どーしようかと思ったよ。」

「良いんですか?」

「ん、大変だったね。モンスターお嬢様の相手さ。あのお嬢様向こうでもかなり酷くて向こうは放り投げたつもりだったんだろうけど、ここに被害が出てるんじゃ本末転倒よね。ちゃんと抗議しといたわ。」

「そう、なんですか。」

「ま、今度はうちかもしれないけどね。」

「へ?何がですか?」

「ん?モンスターの子守よ。持ち回りなの。」



しょうがないけどねぇと諦めの先輩方を尻目につくしは手に持っているコンビニ袋に気付く。

一瞬悩んだけどこれがきっと彼を助ける事になるだろうそう思って。


「あの先輩、これ食べて下さい。」





その様子も頭上のカメラはしっかりと捉えていた。






一方NYの道明寺邸。


東京から遅れる事13時間。

こちらも一日を始めようとしている司の姿があった。


いつものようにベッドから全裸で起きてくる司。

ガウンを羽織りながら寝室を出て、リビングを通り過ぎると向かった先はバスルームではなく書斎だった。


慣れた手つきでPCを起動していく。


そしてハートマークのアイコンをクリックするとビデオのソフトウェアが立ち上がり、今日の日付のデータがNEWと表示されていた。

それをクリックしてしばし待つ。


画面を見る司はホクホク顔だった。


なぜなら愛しい女が画面の中で表情豊かに動いているからだった。


だが彼女が席を立ち場面が変わる。

そして複合機の前で誰かと対峙し、それからひとり必死に複合機と格闘していた。

彼女と対峙していた女の態度に司は眉根を寄せる。

そしてビデオを進めると出て来たのは愛しい彼女の上目遣いのアップだった。


思わずボウっとなる司だったが、ハタと気付く。


彼女が見ているのは自身が彼女に付けたSPなのだと。
(SPは尾行警備する際に微小カメラを眼鏡に仕込んで彼女を追っていたのだった。)



「これを撮影したのは誰だ?何であいつが俺以外の男にあんな顔をしたんだ。」



ギリギリと歯ぎしりしてマウスを握り潰そうと力を入れた直後、愛しい彼女の表情が曇る。


そして申し訳なさそうな情けない顔で、振り返っては手で謝るのだ。


「何だ?音声が無いと何が何だか分からねぇな。ま、レポートもあるけどよ。」


ビデオを通して見てから警護レポートを読むのが司の習慣だった。


そして部署に着き彼女は同僚の女にビニール袋を渡した。



そこで今日のビデオは終了であり、司はレポートを読んで納得する。



「くく、なるほどな。笹倉は命乞いしたって事か。」


笹倉とはあのコンビニでスィーツをつくしに渡したSPで、周囲に勘違いされ青ざめた人物だ。

しかしつくしがそのスィーツを同僚に渡した事で司も一応の納得を見せる。



だが、


「その甘ぇのも他の男からなんじゃねぇか?全くあいつはきょときょとしてばかりで信用ならねぇ。帰ったら覚えとけよ。」








***


「・・・はくしゅん。」


こちらは東京。つくしはアパートに帰宅してゆったりまったり過ごしていた。

そしてつくしもノートPCを起動させ検索画面を開いて行く。



“今日の占いかうんとだうん” 検索

カチッ



「あー、ラッキーカラーは緑だったんだ。
朝緑にするか青にするかで迷ったんだよね。緑だったかー、、」


カチッ、カチカチッ。


「“甘える事も大切。恋人に甘えてやる気を取り戻そう”、、か。」


つくしは崩して座っていた膝を抱えて背中を丸くする。


「電話してみよーかなぁ、、」


ボソッと呟く。


「今なら向こうは朝だよね。起きてるよね、多分。」


膝に耳を付けて視線を泳がしてみる。


「でも声を聞いたら会いたくなるよなぁ、、、」


つくしは目を閉じた。

しばらく物思いにふける。


そして目を開き、決意した。


「占いだけじゃないよ。あたしにはあいつが足りないからこんな風になるんだ。遠距離恋愛なんだから電話する時にはしなきゃ。うん、そうだ。」


そして手を伸ばし鞄をまさぐる。

ぎこちなく鞄の中を探るのはらしくなく緊張してるからだ。

そう緊張、、、


してるから、、、



「あれ?」


ガサガサ、、


「あれれ?」


鞄をひっくり返してみる。

ラグの上に鞄の中身をぶちまけ、目的の道具を探す。


が、無い。



「ああっ!デスクの中だあーーーー」


ガッデムと頭を抱えたつくし。


珍しく乙女になろうとした結果がコレである。



ラグに倒れこみ情けない涙を浮かべる。


「ううううう~~」



明日のつくしに幸運を。



皆さま祈ってやって下さい(笑)



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気がつけば1周年
2017-08-27-Sun
皆さまお久しぶりです。
気がつけばブログの更新をひと月もしていないlemmmonです。

ようやく夏休みも終わると思う方も多いでしょう。皆さまはこの夏如何お過ごしでしたか?

私は更新をお休みして献上するお話を書いていたのですが、ちょうどその時期に多くの妄想お仲間さんと交流するお誘いを受け、人見知りしながらも毎日たくさんの刺激をもらってました。あ、今は人見知りは無くなりむしろハッチャケてます。

さて、この度私のブログ『甘さとスッぱさと』は今日で1年を迎えました。
退屈しのぎに始めたブログ、よく続けられたと思います。

思いつき勢いで始めた事なので、批判なんかもあるんだろうな~と思ってましたが、幸いな事に私はそういうコメントで凹まされる事はありませんでした。だから続けられたのかもしれませんね。

さてこの先ですが、相変わらず更新は止まると思います。
ですがずっとではありません。
必ず更新は再開します。
「イベリス」も終えてませんものね。
それに二次熱も冷めた訳ではないです。
なにせハッチャケてますからね。
( ̄+ー ̄)

そんなんで久々の更新となったのですが、近況だけなのも皆さまをガッカリさせるので、お話用意してますよ。
つうてもご希望のお話ではないですが。
皆さま花街が好きなんですよね~ でも花街じゃありません。
しかも1周年とも関係ない。
花男二次の基本って感じです。

それでも楽しんでもらえたら嬉しいです。


それじゃどーうーぞー






lemmmon
レッッモンの小話 cm(9) tb(0)
イベリス 26.5
2017-07-24-Mon
花沢物産の社員だったあたしは使われる側の人間だった。


器用貧乏だと言われてた。

それなりに収入を得ているのにまた貧乏呼ばわりされるなんてと変えられない境遇を嘆いていた。


蛙の子はやっぱり蛙。


どうがんばってもあたしはやっぱり貧乏で茶色やグレーに落ち着き、赤や黄色といった色鮮やかになる事なんて無理なんだって思ってた。


そんなあたしに司は白い服を着せた。

毎日。

いつしか制服の様な気持ちだけだったけど、色を意識してからは違った。


白はどちらにも捉えられると。


貧乏でも豊かでもどちらの色にもなる。

初期色だから?


そして色と言えばこのネームプレート。

婚約者という凄い役職もそうだけど、ネームプレートって普通白地よね。

道明寺では他もそうなのかと思ったけど、他は違う。他の社員は普通に白地のネームプレートをしてる。

そりゃ、司みたいにネームプレートを付けない人もいるけれど、、
(最上階フロアの重役の何人かはネームプレートを付けていなかった。)


司があたしに用意したネームプレートは黒地にゴールドの文字。

だから白い服には余計目立つ。


なぜ黒なの?

その答えは司の態度で確信される。


司はあたしをとても大切に扱うの。

過保護と束縛という言葉が当てはまるくらい。

だけどその目はとても甘くて、

熱くて、

僅かに残っていた警戒の塊を溶かしていった。


執務室でのキスも麻痺していく。


一心同体だと言われて魂が揺さぶられた。


司の唇には引力があるのかもしれない。

自然に瞼が閉じるのも、

身を委ねてしまうのも、

もうあたしの身体はそういうものだと刷り込まれてしまった。


司に跳ね飛ばされないように必死にしがみ付く。

だってそうしなきゃ、後退りするか床に押し倒されるもの。

そのくらい激しく司はあたしを求める。

それが堪らない。


司の背中に回した手を大きくて広げる。

広げた指に力を入れて掴まろうとする。

だけどそれじゃあ滑り落ちてしまう。

だからギュッと握ってしまった。

司のために作られたスーツを。

幾らするのかなんて分からない。

でもきっと高いに決まっている。

そんなスーツに皺を作る事に躊躇していたあたし。

だけど、離れたくなかった。

このキスをもっともっと感じたかった。


頭が痺れる。

あたしはこの男が好きだ。

もうこの男無しでは生きていけない危険水域に来てしまっている。


簡単に点かなかったあたしの炎を灯す芯は今完全に燃えている。

消えないで。

消さないで。

ううん。消させやしない。

誰にも、、、




つくしは握っていた手を緩めた。


「どうした?やっと握ったのによ。離すなんて寂しいじゃねーか。」


甘く甘く誘う司。


でもね、それじゃあ消えてしまうんだよ?



「議事録作らなきゃ。」

「もうかよ。凄えやる気だな。」


つくしは司の頬を指でなぞった。

触れるか触れないかの小さな力で。

司が目を細め、瞼が振動している。


つくしは司の唇に触れた。

そして唇をなぞって、軽く押し潰す。



「議事録作り終えたら、またしても良い?」

「作り終えたら?褒美みてーに言うんだな。」

「そう考えちゃ駄目?」

「いや、、むしろ歓迎だ。」



熱い熱い司の視線。

あたしの視線もそれにちゃんと絡まってる?

こんなあたし知らなかった。

司が変えたあたし。

白をまとい輝いている。




司の横のデスクに腰掛けつくしは、司を見上げてにっと笑ってPCを叩き始めた。

キーボードに吸い付くその動きはまるで鍵盤楽器を奏でているよう。

手先だけが滑らかに動き腕や肩に力がこもらない。

そしてつくしの目線はPCの画面の前で焦点を合わせたり、揺らしたりしていた。

記憶のみで議事録を作成しているのであろう。

つくしもまた司同様会議の前には配布資料に目を通していた。

しかし司との違いはそれを作成した側の目線を知っていると言う事。

そのためスライドを用いた発表の満足度を図る事が出来た。

つくしが受け取った内容を記して行く。

それを司に見てもらい、司の受け取りと照らし合わせて行く。

つくしがだけ受け取って、司が受け取らなかったものは排除するつもりだったつくし。

だが司はつくしから受け取ったものは自分も受け取れたものと捉えることにした。

自分達は一心同体だからと。





こうして会議の数時間後には最初の副社長議事録が完成し、その日のうちに各部署へと通達されて行った。







一方で会議での失態をなんとかしなくてはと考えた某部署のエース社員。

会議の後素早く部屋を後にし、恋人の元へと急いだ。

会議にはひとりで参加していたため部署の方はどうとでもなると考えていた。

だが恋人は別だ。

出世するために選んだ重役の娘。時間をかけて口説きようやく結婚出来そうだと思った矢先だった。

というのも彼女の父親は自分との付き合いに難色を示していた。もっと出世してからだなが口癖でヨイショしても中々クビを縦に振らない。同類だと気付くのにそう時間はかからなく、気付いてからはさらに踏み台にしてやると一層意識した。

そんな父親は先日副社長の連れてきた女に難癖をつけただけでなく、会議でイビキをかくという失態まで犯していた。

こんなチャンスは二度とない。

父親に取り込むなら今だ。
イビキくらいでポジションを落とす事はないだろうし、弱っているこの機会を逃す事はないと思っていた。

そんな中での災難。

まさかその副社長が自分にも牙を向けてくるとは思わなかった。

だがここまで地面を固めてきた努力を無駄にする事は出来る訳がない。

今までも乗り切ってきたからこの事だってかわせるはずと自称エース社員はタカをくくっていた。



しかし、


「私、好きな人が出来たの。だからあなたとこれ以上付き合えないわ。別れましょ。」

「はっ、何言って、、」

「じゃあね。」


彼女を部署から連れ出そうと手を引いたところで一方的に告げられ、彼女はUターンして戻って行った。

戻られたのは部署のデスク。

見える位置だが、入れない。

しばらく呆然とした自称エースだったが、入口に突っ立っているのを指摘されスゴスゴと退散して行った。


そんな彼をチラリと見た元彼女、野村沙知はデスクの下でスマホを操作し友人にLINEを送信した。

というのも野村沙知は父である野村常務に呆れ返っていて、重役の側近である社員には常に頭を下げていたのだ。
そのため彼女の協力者もそこそこいて、自称エースの正体はとっくに知っていたし、さっきの会議での事もほぼリアルタイムで報告を受けていた。


ブーブー


LINEの通知を手元で確認してニッコリ笑う。


「まったく、、結婚してから暴露されればクソ親父も一緒に葬れると思ったのに、、ま、バツが付かなくて良かったと捉えようかしら。」


カタカタとキーボードを鳴らしながら小さく呟く。


野村沙知は超現実思考で動く女であった。


「やっぱり結婚は恋愛でしちゃ駄目ね。結婚は友人関係でしなくちゃ。」


カタカタカタ、、


「恋愛は擬似的なものが一番。その方が楽しくいられるしー、よっと。」


カタカタカタ、、ポン。


「うん。邪魔が入ったけど、いっちょ上がり。」


沙知はデスク上のカレンダーを手に持ってニッコリと微笑んだ。


「うふふ。ドームまであと2週間ね。はぁ、そう考えたら(別れたの)良いタイミングだわ。クソ親父のミスにつけ込んで早く式上げようとか。で、挙句にこの日に式場に見学に行こうとかばっかじゃない。行く訳ねーっつーの。チケット争奪戦どんなに大変だったと思ってんのよ。」


沙知がぶちぶち文句を呟いていると、


「野村さーん。コレあなたが出したのー?」


「あ、はーい。そうです。今取りに行きまーす。」



声をかけられパタパタパタと複合機に書類を取りに行く沙知。



「すいません。」

「良いのよ。それより、、」


書類を口に当て先輩社員がヒソヒソモードを作る。


「あの人切っちゃって良いの?他の子も狙ってたのよ。」

「ああ、、良いんです。それにもう少ししたらその訳も分かりますよ。」

「その訳?」


沙知は肩をすぼめておどけてみせた。


「あいつ全然有望株じゃないんです。私の父目当てだし。どうせ切るつもりだったから、それが早まっただけ。」

「あらま。常務の娘も大変ね。」

「代わってもらえます?」

「よしとくわ。」


苦笑いしヒラヒラと手を振って先輩に追い払われた沙知。



その様子を周りの女子社員達も伺っていてヒソヒソと情報交換が始まる。
ここ道明寺ホールディングスにお馬鹿な女子などいない。
他人を利用して成り上がろうとする輩など居られなくなるのだ。
あの自称エースはそれでもそれなりに上手くやって来た。が、それもこれまで。
どんな成敗が待っているのかとほくそ笑む者達も中にはいた。

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リクエストに答えて書きました。
色々と突っ込んで下さい。名前とか誰のチケットとかね。

さて、しばらくイベリスをお休みします。
もう一つのお話を終わらせなければ。
m(__)m
イベリス cm(8) tb(0)
イベリス 26
2017-07-22-Sat
つくしが道明寺ホールディングスの社員になって2週間が過ぎた。


道明寺につくしのいる日常は日に日に浸透していく。


当初つくしの登場にさまざまだった反応も現在は落ち着いていた。


2人の公開ラブシーンに悲鳴を上げた女子はつくしにデレる司に賛否に唱えたが、そこは日本経済のトップに君臨する企業に採用された乙女達現実を受け入れた。

というのもつくしを受け入れられない者達が徒党を組んで追い出し作戦を企ててみるも、どこにでも一緒にいる司にそんな企てが実行される事はなく、

そのうち自分は絶対に嫌だと表立って非難する事すら出来ない雰囲気で、少しでもそう話すといつまでも夢見ている痛い女だと見られるようになっていったからだった。

その一方であの司を変えたつくしを賞賛する者も大勢いて、ハイクラスな男の攻略法をつくしから学ぼうとつくしの話題は毎日道明寺ホールディングス内の至るところで上がっていく。


男性社員の方もつくしが来てからデレる司に呆れていたがここがチャンスと誰かがいち早く気付いてからは、司の機嫌が良い内に企画をとにわかに活気付く。


また重役の方はというと司の機嫌には歓迎的だが、会議にまでつくしを連れてくる司には難色を示していた。

しかし会議で居眠りするのではとチクリを入れた野村常務が事もあろうにいびきをかく失態を犯したのだ。
それは初日の出来事からつくしを見る度にイライラした野村常務のここ数日の酒の量が増えた結果だった。そのため初日のゴタゴタも噂になってしまい、益々肩身の狭くなる野村常務。

当然司の口も辛辣になる。

それを見た他の重役も口を閉ざさざる状態だ。



日々、司の機嫌は良くなっていった。

西田を除く秘書課の面々は徐々にそれを実感していく。

司の機嫌が良いという事は職務が進むという事、それは周囲の環境も良いという事に他ならなかった。

そこにつくしの存在がある事は認めざるを得なくなっていた。




そんなある日、とある会議でつくしは司に耳打ちをする。

スライド資料に着目してと。

つくしの声には特に敏感な司。

つくしはそれ以上詳細は語らなかったが、会議終了にはつくしの言いたい事を理解した。


会議終了間際にある社員を問い詰める司。

その社員はある部署のエースだった。
野心があり人を惹きつけ幾つもの企画を通す社内での評価も抜群だった。

しかし司はつくしの指摘からこの男の評価が誰かから奪った物だと見抜いた。


それは配布資料とスライド資料との違い。

配布資料は手元に残る物で詳細に作られている。

一方、スライド資料は時間内で発表するために要点をまとめた物。

この男はスライドに表記されていた重要ポイントを飛ばしたのだった。

偶然かもしれない。

緊張から抜けたのかもしれない。

だがこの男の堂々とした態度。

自分の中のシナリオにそぐわなかったからと思わせる物だった。

おそらく事前に見た配布資料から要点をまとめてスピーチを考えていたのだろう。

自分を良く見せるスピーチパフォーマンスを。

指摘された男は答えられなかった。

だか司は尋問の手を緩めなかった。

それはその男によって泣いた者の存在ではなく、成されなかった道明寺の利益があるという事だからだ。




「よく分かったな。やるじゃん。」

「だってああいう男にイラついてたんだもん。」

「それは花沢での事ですか?」


普段2人の会話に割り込まない西田さえつくしの指摘には感心して口を挟んでしまう。


「はい。あたしはその資料を作る側だったんですけど、チームが苦労して纏めたものを自分本意だけで駄目にする奴が花沢にもいて、、でもそんな奴に限ってヨイショが上手くてムカつくんです。」


他人の文句を言わないつくしにここまで言われるとは相当な奴だと西田も理解する。


「資料か、、事前に読んでスライドを中々見ない俺もしてヤラレタって事か。
西田。」

「はい。」

「お前ならこれをどう対処する?」

「そうですね。処分するだけでしたら同じ輩がまた出ないとも限らない。」

「だよな。それにどのくれえの損益になったかも把握しねぇと。おそらく本人は大した事ねぇって思ってるだろうぜ。」

「こっちも議事録を作ってみたら?」

「議事録?どう言う事だ?」

「司が把握した会議の内容を議事録化するの。それを部署に戻せば、曖昧になってた物がならなくなる。」

「へぇ、、そりゃ愉快な事になりそうだな。」

「ではその議事録は誰に作成させましょう?」

「くっ、決まってるだろ。」



そのまま会話が終了したように納得する司と西田。


しばらくしてつくしは気付いた。



「誰にやらせるの?」

「言い出しっぺに決まってるだろ。」

「あたし?」

「お前しかいねーよ。」

「へ、何で?」

「議事録は迅速が第一です。そうでなければ積み上がっていつまでも結果が反映されない。」

「迅速にするためには俺がやるか、俺を動かせる人間でなければ出来ねぇな。」

「牧野様しかいらっしゃりません。適任者は。」

「適任者、、」

「くくく、、良い傾向じゃねぇか。」

「何が?」

「お前がここで評価されているって事よ。俺の議事録を作るのなんざお前には朝飯前だろ。」

「まぁ、そうだけど、、」

「俺はお前を利用しねぇ。するつもりもねぇ。」

「え、、」

「俺とお前は一心同体だ。」

「一心、、」

「夫婦になるんだからな。そうだろ?」


ぐっと息を飲むつくし。

つくしの司を見る目も熱くなる。


西田はスッとその場を後にした。


ドアを閉めて左手首を内側に捻る。


5分。

いや10分か。


飴の時間、愉しみ下さいませと西田は眼鏡を人差し指で軽く押し上げた。





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前話のコメント返信をしてから書いたのですぐに出てきた雑魚キャラにおんや~と思った方もいたのでは?
便利だったんでつい。
みなさんもつくし同様ぐっと来ましたか?
イベリス cm(2) tb(0)
イベリス 25
2017-07-20-Thu
つくしの腰はいまだ司にガッチリロックされ、2人は密着したまま最上階を進んでいた。


今日初めて道明寺ホールディングス社屋に足を踏み入れたつくしはただでさえ周囲の視線が気になる。


だか見ている事は見られている事でもあり、つくしはこちらを見ている人の位置や仕草で大体の力関係を見て取った。



「社員が多いね。このフロアにいるって事は重役と秘書なんだよね。」

「ああ、あとはSPだな。だが他の社員が全く来ないという訳じゃねーぞ。」

「あ、そうだね。」


密着している2人は大きな声を発する事なく耳元で会話している。

つくしにとってそれは業務を行っている社員達への配慮なのだが、司にとってはそうではない。愛しい女との密着に酔いしれ愉しんでいた。





「副社長。」


そんな2人に後ろから声がかかり、2人は振り向いた。


「野村常務。」


声をかけたのは齢60ほどの初老の男性。だが、ここにいるだけあって齢の割に若々しく見えた。


「珍しいですね。副社長が女性とご一緒とは。どなたなのですか?」

「あ、私は、、」

「俺の恋人だ。」


とたんにザワッとどよめきが走る。

先ほどまでちらっと見てはいたが手を止めなかった社員まで、手を止めてしまった。


野村常務も口を閉じられずに驚いている。が、我に返り口を開いた。


「こ、恋人ですか。では今日は社内の見学という事でしょうか、、」


しかし野村常務は何かに気付き目線を細め語気を強めた。


「お嬢様、副社長とご一緒に居たいのは分かりますが感心しませんね。お忙しい方ですよ。」


キラリと睨まれつくしはハッとするが、間髪置かずに司が口を挟む。


「感心しないのはお前の方だ。勝手に解釈するな。」

「は?」

「こいつは俺がここに連れて来た。ここにこいつが来たのはこいつの提案じゃねぇ。」

「そ、そうでしたか。しかし副社長、社に恋人を連れてくるのはどうかと、、」

「やむ負えんから仕方ない。」

「し、仕方ないとは、、」

「俺が忙しいと言ったのはお前じゃねぇのか?毎日毎日殺す気があるとしか思えねーほど仕事を詰めやがってよ。俺は恋人に会う時間すらままならねーんだよ。だったらこいつを側に置いて癒してもらうほかねーだろ。」

「つ、つかさ、あのね、、」

「何だ?」

「あたしここで働くんじゃないの?」

「そうだぜ。お前は今日から道明寺ホールディングスの社員になる。」

「癒しって、何の仕事なの?あたし秘書とか事務だとか思ってたよ。」

「秘書は足りてる。それに秘書なんかやったらお前他の奴と絡む事になるじゃねーか。俺以外の奴とは話すのも見るのも禁止だ。」

「はい?」


司のトンデモ要求につくしだけじゃなく野村常務も目を丸くする。


「じゃ、あたしは何をやるの?癒しってまさか、、」


つくしの物言いに司もニヤリと返す。


「それはお前次第だ。お前からの癒しなら俺が拒む事はねーよ。」

「な、な、なっ、、」

「副社長!他の社員の前でなんて事を。副社長自ら風紀を乱す事はお辞めになって下さい。」

「風紀?くっくっ、、野村、お前俺らが何をやると思ってんだよ。」

「な、何とって、、」


言葉に詰まる野村常務に司は顎をしゃくって視線を誘導する。

そこには司の第一秘書西田が立っていた。


「あいつが俺を殺そうと仕事をどんどん持ってくるんだよ。恋人を連れ込んでナニが出来ると思うのか?」

「では、彼女は、、」

「くっ、単純に俺の部屋で雑用をさせるだけだ。デートの時間も取れねぇからな。側に置くだけととりあえず交渉したんだよ。」

「し、しかしそれでも社内の風紀が乱れますぞ。」

「じゃあ、俺の仕事お前がやれよ。」


野村常務が息を飲んだ。


「そこまで言うなら俺の仕事をお前が引き受けろ。言っとくが失敗を俺のせいにするなよ。」


司はつくしをまた強く引き寄せた。

つくしと顔を見合わせて柔らかく笑う。


「西田とは業務の向上を見越して話をしている。こいつと付き合って俺はこいつの事が気になって仕方ねーんだよ。それ自体が業務にとっては邪魔だ。だが、こいつと出会ってしまった以上元には戻れねぇ。ならば俺とこいつが一心同体になるしかねーだろ。違うか?」

「しかし、それは他の社員にも言える事でございます。皆大切な存在を残して働いております。」

「俺の重責は社員と変わらねぇってか。」

「そ、それは、、」


再び野村常務が声をかけ詰まらせると今度は西田が声をかけて来た。


「違う尺度のものを同じ物差しで測る事は良い事とは思えません。」

「西田室長。」

「副社長の業務はプライベートをかなり侵食して行われます。ならばその配慮があってもよろしいのでは?」

「しかし、」

「野村。」



司の低い声に野村常務はハッとなる。


「風紀、風紀って言うけどよ。お前別の事心配してねぇか?」


野村常務の顔が一瞬青ざめた。


「俺が誰と付き合うかは俺が決める。他の奴の指図は受けねぇ。」

「腹黒い娘かもしれませんよ?」

「俺はそこまで見る目がねぇと言いてぇのか?」

「いえ、では失礼します。」



野村常務は振り返り立ち去って行った。

振り返る時歯を噛み締めていたのはつくしにも見えていた。


眉を下げるつくしの上で司と西田が合図を交わす。



「常務であってもな、まだ物足りねぇらしい。」

「物足りない?」

「ああ、その上の地位って事だ。あいつはおそらく常務止まりだ。もうすぐ定年だしな。だから引き継ぐつもりだったんだろう。」

「引き継ぐ?」

「自分の娘にな。」



つくしはハッとした。

それであんなにムキになって自分を煙たがっていたのかと。

この事で初日から敵が多い事を知り、つくしのモチベーションが下がっていた。




司に抱えられながら引きずられるように執務室へと入って行くつくし。


そんなつくしを見ていた方も執務室のドアが閉まったと同時に評価の声を出していく。

はたしてそれが良いものか悪いものかは、この時点では性別により大きく分かれていた。





「どちらが宜しいですか?」


西田が差し出した物につくしは目が点になる。


「どちらがって、、これは何かのジョークですか?」

「あ、ジョークな訳ないだろ。俺は大真面目だ。」

「大真面目でコレなの?」


つくしが驚くのも無理はない。

西田が提示してきたのはIDを兼ねたネームプレートだ。

そのネームプレートには片方を副社長執務室助手と書かれてあり、もう片方には副社長婚約者と書かれていた。


「てゆーか婚約してないし。」

「今すれば良い。」

「出来るか!」

「出来る。俺が宣言すれば良いだけの問題だ。」

「宣言って、あんたの両親の了解が必要でしょ。」

「報告すりゃ良い。つうか、報告しなくても知ってると思うけどな。」

「は!知って、、る?」

「だろ?」


西田を向く司。

つくしも驚愕の目で西田を見た。


「牧野様をお邸に連れてきた段階で報告は行ってるかと。そして今のところ何も言ってきておりません。まぁ司様が女性を連れて来たという事実だけで、身元がしっかりしてれば反対はしないでしょう。」

「身元って、、」

「ん?そりゃ、お前花沢社長のお墨付きって事よ。」

「な、社長のお墨付き?な、なんで?」

「あの命令のまま出したくないからだろ。命令を打ち消すには逆に褒めるって事だ。」

「そ、それってあたしが正しく評価されてないって事にならない?」

「ふん。それは花沢の事情だ。巻き込まれたお前が花沢に対してそこまでこだわる事かよ。それよりお前はもうこちらの人間だ。評価が欲しけりゃここで残せば良い。」

「評価って、あたし助手でしょ。」

「婚約者だ。」

「婚約者って仕事の役職があるか!」

「おう、あるぜ。俺が作ったからあるんだよ。」

「副社長。」

「あ?」



ドサッ


司のデスクに置かれたのは夥しく積まれた書類。

まるでコントの様な量だとつくしは思った。



「てめぇ、、」

「これからやれば19時には上がるかと。牧野様の初日ですし、お2人でお食事などなさってこれたらどうでしょうか?」

「あ、いえ、あたしは別に、、」


そう言ったつくしを西田が睨んだ。


「いっ!」


目をパチクリすると西田の顔は無表情だ。
さっき睨まれたよねと自問するつくし。



「くそっ、やってやろうじゃねーか。おいつくしお前も手伝え。」

「て、手伝う?な、何をするのよ。」

「とりあえず給水係だ。俺が喉が渇いたらドリンクを口元に持ってこい。」

「・・ボクサーみたいなイメージで良いのかな?じゃ、ストローを用意すれば良いの?」

「いや、口移しだ。」


至極真面目に答えた司につくしは口をあんぐり開ける。

そんなつくしに司は自分の唇を指でトントンと叩き要求する。


ピキッ



ダンッ



つくしは右腕をデスクに打ち付け、垂直から角度30度で睨みつけた。


「早くやれ。」

「おう。そんなに見つめられたらやるしかねーな。」

「は・や・く・や・れ!」

「飯何食いに行くか決めとけよ。好きなの食わせてやるからな。」

「19時に終わらなかったら先に帰るからね。」

「ああ、分かってる。つくし。」

「何よ。」

「ネームを付けろ。婚約者の方だ。」


ぐぬぬぬぬとつくしは反応するが、

西田は他に人はいないのだから付けようがいまいが何ら変わらない事を、


あえて教えなかった。



「早くやれ!」

「やってるだろ。だからお前も早く付けろ。」



それは司の機嫌がこれまでにないくらい最高に良かったからだ。

ぷりぷり怒るつくしの横で、司の視線はきちんと書類に向かっていた。

書類をめくり時折西田を見る司。

早く出て行けとばかりに顎を上げ、敏腕秘書を追い出した。


2人きりになるために。





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つくしちゃん秘書じゃなかった。
さて、どうしよう。

ポチはやっぱり嬉しいな。
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