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花街に護られてー恋仲試練13ー
2018-06-07-Thu
江戸時代を背景にお話を書いてます。時代的な言葉や名称などは詳しくないので現代風に置き換えてます。それでも明らかに違うようにはしてません。細かい矛盾点などあるかと思いますが、目を瞑ってお付き合い下さい。 ダメなら進まないでね。







今日も吉原には多くの人が訪れていた。



だが大門の内側には多くの役人の姿があり、客らは顔を見合せひそひそと通り過ぎ様子を伺っては、役人からじろじろ見るなと怒鳴られる者もいて、大門付近はいつもと違った空気が流れていた。



そんな中屈強な男達一行が吉原に到着する。


男達の面構えに役人達の目が厳しくなるが、その男達がある金持ちの用心棒と知る役人によって一言交わされるとその緊張は無かったかのように消えていった。




その用心棒の中心にいる男はその物々しさが足抜けのためと理解しつつも、何かいつもと違う様子を感じ、伊吹屋へと向かう足を早めた。






昼見世は終わりかけていた。



伊吹屋の前にはまだちらほら人の姿があり、冷やかし客らが格子の前でたむろしていた。

※吉原は観光地なところもあり、遊女を買えない者は格子前で遊女を値踏みし冷やかしていた。



そこに司が現れ、格子の中を見て顔色を一気に変える。



「なんでお前がそこにいるんだ!」


「「「えっ?!」」」



司の怒号に格子の中の遊女は一斉に顔を向け、冷やかし客は司一行の存在に怯え、そそくさと伊吹屋から離れて行く。



「つか…」

「こおらっ! 道明寺の糞餓鬼っ! あんたやっと来たね!」

「今まで何してたのよ! 遊び回ってたんなら承知しないわよ!」



わっと姐さん達が格子前に集まり司に負けじと怒声を浴びせる。


そんな様子を見ていたつくしはほっとしたのか、ぽろぽろと泣き出してしまった。




「あーうるせえ。っておい、何泣いてんだよ!」

「「えっ?」」

「まさかお前、こいつらに無理強いさせられてんのか? だからそんな格好もしているんだな?!」

「「はあっ??」」



つくしの姿を見て司が放った言葉は、姐さん達をさらに怒らせた。


だがそれはつくしの姿のせいだった。つくしは格子の中でいつもの下女の姿ではなく頭に何本もの簪を差し着飾っていたのだ。


それこそ遊女だった頃のように。



だがそうしたのにはちゃんと理由がある。



それこそ日暮の足抜けで吉原が緊迫しているのと関係するのだが、つくしを他の男の目に晒したくない司には到底考えが及ばない。




「無理強いじゃ…」

「ああっ? あたしらがつくしを虐めてるとでも言いたいのかい、虐めてんのはあんたの方だろーがよ!」

「そうだよ。いっつもつくしを泣かせるのはあんたの方だ。自分が泣かせた癖によくもまああたしらのせいにするねぇ。」

「ふざけんな! 俺がいつつくしを泣かせたっていうんだよ!!!」

「今だよ! いまあんたが来たから泣いたんじゃないか! そんな事も分からないのかい? 馬鹿だねぇ~」

「んな訳あるか!!!」



ガンッ



つくしを泣かせたと言われ腹立たしさから格子を蹴りあげる司。


その大きな揺れに姐さん達は驚くものの、この時ばかりは姐さん達も引っ込みはしなかった。



「馬鹿なのは頭だけにしときな! 壊れたらどうするんだよ!」

「修理する間ここに座れないじゃないか! 営業妨害してんじゃないよ!」

「けっ。俺が壊そうがおめーらに客は来ねえよ。」

「なんですってえ!」


つくしは言い争いを止めようと、立ち上がろうとした。


が、



「いい加減におし!」




司と姐さん達の言い争いを止めたのは、つくしの後ろからの声だった。



「紺野さん。」


「見世の前でみっともないよ。どっちも話したい事があるなら、中で話せば良い。どうせ昼見世はもう終いだ。」

「………」

「つくし、中に戻りな。」



伊吹屋の太夫紺野はそう言って皆に目配せをした。


つくしが中に入れば司も入るだろうという意図はすぐに伝わった。



「はい。」



そう言ってつくしが紺野の横を通り過ぎた時、紺野は「これもう良いだろ。」とつくしの髪から簪を一つ抜き取った。


するとつくしの髪型が大きく崩れ、他の簪もぶら下がった状態になる。


それを見た友人がつくしに駆け寄り、残りの簪を抜いては、持ち主の姐さん達に返していった。













「随分下手くそな髪結いだな。どこのどいつだ? 俺が出した金、取り返してやる。」



二階に上がった司は遊女達皆の前だろうが構わず、つくしの髪を櫛でといていった。


そんなつくしは恥ずかしさもあったが、抵抗せずにじっとしていた。



「髪結いじゃないよ。」

「あ? じゃ誰がやったんだよ。」


「あたしさ。腕が悪くて悪かったね。」



答えたのは紫陽だった。



「お前が? なぜ?」

「髪結いが難癖付けてきたせいさ。あんたは遊女じゃないんだろって。」

「…その通りだ。こいつは遊女じゃねえ。」



紫陽を睨む司。


だがその睨みは形だけだった。それだけ司は紫陽を信用していた。



「そうね、つくしは遊女じゃない。だけどここに暮らしている。そしてここで暮らすつくしと同じ年の女はほとんどが遊女。…普段吉原にいない役人達にはつくしが遊女だとは分からない。」

「…そういう理由か。」

「つくし以外にも(遊女じゃない娘は)いはするんだけどね。足抜けがあると疑われるのよ。役人も血相変えてさ、まるで無粋者よ。」



紫陽の理由を聞いた司は髪結いの続けた言葉も想像出来た。


おそらく髪結いは見世の中で大人しくしれいれば問題ないと言ったに違いないと。


それはつまり、つくしは見世で大人しくしなかったという事になる。




「まだその女は見つかってないのか。」

「見つかってない。」



それに答えたのは他の姐さんだった。



司が姐さん達を見ると何か聞きたい様子だった。





「…良いぜ。教えてやる。俺が分かっている事をな。」

「!!!!!」



「だが、その偽物って奴を見てからだ。俺はつくしが文を送った事も知らなければ、俺もつくしに文を送っちゃあいねえ!」














司からだと飛脚の道吉が持ってきた文は、姐さんのひとり桔梗が持っていた。


それを読み進める司の表情は、阿修羅が生ぬるく感じる浮世絵に描かれる地獄の門番の様だった。


整った顔をここまで歪ませる事ができるのかと、姐さん達は恐れさえ感じながらも、驚き内心呆気にとられていた。




「ふん、なるほどな。中々の手際じゃねーか。だが、胸糞の悪さはこの上ねぇ。こいつただじゃおかねえ!」

「司、どういう事?」

「おそらくこいつを書いたのは茶屋のあの糞野郎って事だ。」

「えっ? これ、若旦那が書いたの?」

「ああ。」

「なんで分かるんだよ?」

「あ! ひょっとして、あんた若旦那の字を知ってるのかい?」

「いや、知らねえ。」

「「「知らねえのかい!!!」」」



突っ込むあまり司の口調になる姐さん達。

だがその事には誰も気づいてなかった。




「そいつの字なんざ知らなくても、この一連の手際で分かる。あの糞野郎は利用されただけだ。」

「若旦那が?」

「ちょ、ちょっともっと詳しく話しなさいよ。それだけだと何が何だかわかりゃしないよ!」



姐さん達は司に詰め寄ろうとした。


だがつくし以外に触られることを極端に嫌う司に睨まれ、立ち止まろうと止まれず将棋倒しになってしまう。



ドタタタタッ



「ね、姐さん達大丈夫ですか?」

「あいたたた…」

「ちょっと、野菊重いからどいとくれ!」



つくしが姐さん達を起こそうと手を貸そうにも、司は我関せず何やら思案顔でその続きを話そうとはしなかった。





「つくし。」

「えっ?」

「お前、俺になんて書いてよこしたんだ?」

「え? なんてって、えっと… 今度いつ見世に来れるのってだけど。」

「いつ来る? それだけか?」

「んー、本題はそれだから、あとは… 世間話だったはず、だよ?」



つくしは司がいつ見世に来るか知る事で、着飾って司を喜ばそうとした事を思い出した。

(実際にはそれで良い雰囲気になろうとしたんだが、記憶は刷り変わってしまっていた)

それで驚かすためにも、曖昧に答えたのだが…




「何言ってんだい。ちゃんと直させたじゃないか。営業文句になるようにさ。」

「へっ?」

「ちょっと野菊、なんでそれを言うのよ。黙っとく事だろ!」

「え? えっ? ……あ。」



姐さんのひとりがうっかり口を滑らせてしまった。


慌てて叱っても後の祭りで…




「営業文句だあ?」



閻魔司再び降臨で、姐さん達はあたふたとする。


営業文句とは遊女が嘘ついて客をたぶらかす文句で、書いてある内容はまったくその気がないものばかりだった。



それを知らない司ではないので、司はつくしに嘘を書かせたと姐さん達に怒号を浴びせた。




「あー もう、うるさい! そんなに怒る事じゃないだろ。大体あたしらが客に出すのは嘘っぱちでも、つくしがあんたに出すのは嘘じゃないんだから。」



紫陽の言葉に司の動きがぴたりと止まる。



「それもそうだな。」

「そうさ。だから直しってのも、本心を書かないつくしにちゃんと書けと言ったまでだよ。」

「そ、そう。その通りさ。紫陽の言う通り。」



口を滑らせた姐さんは必死に紫陽の言葉を肯定した。


それによって胡散臭くなるのだが、司は逆にニヤリと口元を歪めて笑った。




とたんにつくしは嫌な予感に見舞われる。




「へっ、へ?」

「つくし、それをもう一度書いてみろ。」

「は? もう一度?」

「おう。俺への溢れる想いを綴ったんだろ? 前のは俺の手に渡らなかったから、もう一度書いて見せてくれ。」

「はあっ?」



冗談でしょ?と目を丸くするつくし。


営業文句と言われた時点で、かなり、かなーり恥ずかしい文句を書いた事を思い出していた。




一方の司はというと、歪んだ笑みからかなり気持ち悪い(つくしにはそう見えた)ニヤケ顔に変えていた。



なんとかこの場から逃げようと画策するつくし。


だが口を滑らせ必死になった姐さんに捕まり、あたしも思い出すからと筆を握らされる。



その間に司は部屋の出口へと移動し、つくしの退路を塞いでしまっていた。




前には司、後ろには姐さん。




つくしは前門の虎、後門の狼が如く諦めざるを得なかった。







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姐さん達の名前も読み返して出してみました。
いや、ざっくり「姐さん」でもいいんですけどね。


あ、生きてますよー
元気にしてます。
ただ、めちゃくちゃ忙しかったので更新できませんでした。
次もがんばるよー
♪(´ε`*)
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花街に護られてー恋仲試練12ー
2018-05-23-Wed
江戸時代を背景にお話を書いてます。時代的な言葉や名称などは詳しくないので現代風に置き換えてます。それでも明らかに違うようにはしてません。細かい矛盾点などあるかと思いますが、目を瞑ってお付き合い下さい。 ダメなら進まないでね。








日暮の足抜けの騒ぎは翌日には噂となって江戸の町に広まるが、誰が足抜けしたかなど細かい事情まで流れなかったため町人達は好き放題言っては大して気にも止めてなかった。



しかし遊女を買うほどの者達となれば話は別だ。自分の気に入っている遊女なのか、もしくは通っている見世の遊女であれば自分が贔屓している女への影響もある。


足抜けした遊女がどこの見世なのか知るまでは、実情を知ろうと躍起になっていた。



それは当然、司の耳にも入る。



「足抜けがあった?」

「へい。魚屋が船頭から聞いたと言ってました。どの見世の女かまでは知らなかったようですが、昨日吉原の近くで亡八達が探し回っているのを見たそうなんで間違いないでしょう。」

「………」




司の目の前にはつくしの姐さんと恋仲になっている樹助がいた。


その樹助は普段と変わる様子もなく司の用心棒として働いていた。





※※※


つくしんとこの見世で間夫がいるのはつくしの姉貴くれーなもんだ。あいつら(他の姐さん達)俺がいようが構わず愚痴ってたからな。つー事は足抜けした女はつくしんとこの女じゃねーはず。


逃げ切れる訳ねぇのに足抜けを試みる奴はいつだっている。だからこの騒ぎもそう変わった事じゃねぇ。



だが気になる。


…あの男、


茶屋の若旦那って奴が関わっている気がする。



根拠はねぇ。

言ってみれば俺の勘でしかない。




…確かめてみっか。




「おい、吉原に行くぞ。手の空いている奴は俺と一緒に来い!」





※※※


司が吉原の近くまで差し掛かると、足抜けした女を探している亡八達と遭遇した。


その亡八達の面の中には司の知った顔もいた。そのため司はそいつに声をかけようと足を止める。


すると、




「あっ!」

「どうした? 末綱梅之助を見つけたのか?」

「見つけたって? 取り押さえろ! 早く!!」



司を見た男が驚いた声を出すと、側にいた亡八達が反応し司を探し者と誤解し取り押さえようとする。


だが側にいた用心棒達に間に入られ亡八達は返り討ちに合ってしまう。



「て、てめぇら! 邪魔するなら容赦しねぇぞ!!」


腰を引けながらも手に持った棒で威嚇する亡八達。そんな亡八達を用心棒らは余裕綽々で眺めていた。



「ま、待って下さい。その人達はうちの見世のお客様です。道明寺の坊っちゃんと用心棒達なので末綱梅之助じゃありません!」

「は? 末綱梅之助じゃない?」

「な、なんだ。そうか… すまね、いや、すみません旦那。人違いでした。」

「てゆうか四平お前、紛らわしい声出してんじゃねーよ!」

「す、すみません。本当にすみません。」



誤解を与えてしまったためへこへこ頭を下げるこの男は伊吹屋の下男四平だった。


亡八達は用心棒達に腰が引けながらも捜索を続けようと先を急ぐが、司が眼光鋭く低い声で「待て。」と四平を呼び止めたため、亡八達は四平を置き去りにして捜索へと行ってしまった。




「ぼ、坊っちゃん本当にすみませんでした。」

「足抜けしたのは誰だ?」

「へっ? あ、はい。足抜けしたのは日暮って遊女です。」

「伊吹屋の女か?」

「いいえ、違います。」



伊吹屋の遊女でなかった事に安堵する司。


だがまだ引っ掛かるものがあった。



「末綱梅之助っていう奴がその日暮って遊女の間夫なのか?」

「ええ、そうだと思います。」

「はっきりしねぇのか?」

「はい。なんせ日暮に間夫がいた事すらみな知らなかったですから。」

「へぇ、隠しきれてたのか…」



用意周到な足抜けかと司は思った。



「で? じゃ何でその末綱梅之助がその女の間夫だって事になっているんだ?」

「それは、日暮らしき女が手形を使って大門を通ったからなんです。ちゃんとした手形だったため門番の役人も通してしまったみたいで…」

「手形? それが末綱って野郎に繋がるのか?」

「はい。その手形は茶屋の紋が入ってましたから。中々その茶屋の紋を見る事はないから門番も覚えていたみたいなんです。」

「茶屋? おい、茶屋ってどういう事か?末綱って茶屋の奴なのか?」

「え、ええ。え…末綱梅之助、坊っちゃんも知ってますでしょ?」

「知らねーよ、そんな名前! 誰だそいつ?!」



驚きながらも、ああそうかと納得する四平。


そんなひとり納得する四平に司は苛つき極悪顔で睨み付けた。



「すっ、すみません、坊っちゃんには若旦那としか知らなかったんですよね。でも若旦那はどこの邸にもっ…」

「若旦那?! 若旦那って、あのつくしを泣かせたあの若旦那かっ?!!」



司は四平の肩を掴み脅すかのように畳み掛けた。


四平は掴まれた肩のあまりの痛さに悲鳴を上げる。



「いぃーーーっ!!」

「どうなんだ? てめえ、答えろ!」

「そうです!そうです!! その若旦那です。つくしに偽物の文を持ってきて泣かせた張本人ですう!」

「偽物の文? なんだそりゃ。」

「なんだって、坊っちゃんからの文ですよ。でも品川で浮気したとか書いてあってうちの見世の人間なら誰だってすぐに分かる嘘が書いてあったんです。」

「なんだとう!!!」

「いっでええええええええーーーー」



阿修羅になった司と、泣いたつくしのように目から大粒の涙を溢す四平。


四平のほうが年上なのだが、身体の大きさは司の方が大きいため客という立場でなくても四平には司に掴まれた手をどうする事もできない。



見かねた用心棒が「坊っちゃん、手を離さねぇとそいつ答えられませんよ?」と司を宥めて、ようやく四平は叫び声を止められた。




その後なんとか四平を落ち着かせ、偽物の文の事、それを運んできた飛脚の道吉、若旦那こと末で梅之助が伊吹屋の様子を覗きに来ていた事などを司は知った。




「おい、その飛脚の奴はどこにいる?」

「いてて… 坊っちゃん力強すぎますよ。なんで金持ちの坊っちゃんなのにこんな馬鹿力なんすか?」

「てめえ俺の話を無視するんじゃねぇ!」

「へっ? いや、すみません! なんでしたっけ?」

「飛脚の道吉とやらはどこにいる?」



間に入ったのは司とつくしの縁を繋いだ樹助だった。



「へっ? 飛脚? さぁ…でも飛脚はいっつも吉原内にいる訳ではないから、文を運んでいるんじゃないですか?」

「…だそうです。坊っちゃん、そいつ探しますか?」

「おう。つくしの文を取り返せ。」

「とりあえず連れてきます。」



最初につくしが書いた文がもう無くなっている事は予想できたため、樹助はあえて文ではなく道吉を連れてくると口にした。



司の前に道吉が連れてこられたらどうなるのかも分かっていながら。







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やっと司登場。
つくし達の引手茶屋の主人は末綱吉右衛門っていうんだよ。司の誕生日前に付けたから私も忘れてた☆
(≡・x・≡)
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花街に護られてー恋仲試練11ー
2018-05-23-Wed
江戸時代を背景にお話を書いてます。時代的な言葉や名称などは詳しくないので現代風に置き換えてます。それでも明らかに違うようにはしてません。細かい矛盾点などあるかと思いますが、目を瞑ってお付き合い下さい。 ダメなら進まないでね。

今回は忙しくて間があいてしまいました。とにかく早く続けたくてアップします。おかしな文章はみなさまの脳内変換で対処お願いします。






「んんー… んーー」



ズッ… ズズッ…




伊吹屋の離れの奥のまた奥の部屋



月のものになった遊女達が過ごす部屋の奥にはお仕置き部屋が作られ、普段は女将の怒りをかった者がそこに放り込まれるのだが、この日そこに放り込まれていたのはつくしだった。



そして普段その部屋に放り込まれた者はそこでお仕置きという折檻を受け、ひとりになるとぐったりと静かになるのだが、つくしの場合は折檻される事はなく、その代わり手拭いで口を塞がれ、布団と紐でぐるぐる巻きにされていた。


つまりつくしは軟禁させられていた。



それはつくしが女将の言い付けを守らないと見なされての事。


だが客を取る遊女でもないつくし。


司によって身請けされ見世への借金もないため、金を滞納している訳でもない。


ここに置かせてもらうための裏方の仕事を与えられているが、その手を抜いた訳でもない。


だから女将も折檻を与えるのではなく、縛りつけて勝手な事をしでかさないようにと閉じ込めたのだった。




そんなつくしがお仕置き部屋に軟禁させられ、月のもので部屋にいた遊女達はその抵抗の音に顔を曇らせていた。




「まだ暴れる元気があるのか… つくしも必死だね。」

「そりゃあね。つくしだって坊っちゃん相当(惚れてる)だから、坊っちゃんに何かあったらと心配なんだろ。」

「けど今回は女将の言い分だって最もだよ。ひとりで坊っちゃんの邸に行くなんて無茶だ!」



つくしは七歳で吉原に売られて来た。それからは吉原の中しか知らない。大門を出て司のいる邸までの道のりももちろん知りようがなければ、そこまで向かう体力もない。

(遊女達は吉原という限られた敷地内の移動しかない上、畑仕事などしないから、同じ時代の女性達の中でも体力は低かった)



三人の姐さん達はつくしの気持ちを理解しながらも、つくしの無鉄砲さを無謀だと口を揃えた。




そんな中、



「んーーー!」


バタッ


バンバンバンバン…





「「えっ?!」」



奥から大きな音が聞こえ、姐さん達が様子を見に行くと、つくしの体から布団がめくれ、つくしは思いっきり足をバタバタとさせていた。



「ちょっ、つくし! こら、そんなに暴れるんじゃないよ。怪我しちまうじゃないか。」

「んーーー! んーーー!!」

「ああ、もう血が出ちまってる。女将呼んで来よう。女将ーーー」



つくしの暴れっぷりに姐さん達も慌てふためき、月のものになっているというのに着物の裾を持って走り出してしまった。







「…はぁ。」


姐さん達に呼び出された女将はつくしの暴れっぷりに呆れ、さらには膝に怪我までしている事で司がどんな反応を仕出かすかと頭を痛ませた。



女将の許しを得てつくしは口を塞いでた手拭いを外される。



「ぷはっ。お、女将さん!お願いです、行かせて下さい。早く、早く司に知らせなきゃ!」

「はぁ…」

「女将さんっ!」



泣き顔で必死に訴えるつくしに、女将は呆れ顔から一転真面目な顔つきで向き合ったら。



「つくし、何度も言うが、坊っちゃんが来るのを待つんだ。お前が行ったから早く伝わるとは限らない。むしろ坊っちゃんがこちらに出向いて、お前が出て行ったら行き違いになる事だってあるんだ。だから待つのが一番だ。


先日からの騒動でお前達は坊っちゃんが中々来ないと思っているようだが、いつもこの間隔くらいはあるだろ。冷静におなりよ!」

「うっ… うう… うーーー」



女将に厳しく諌められ、つくしは顔をぐしゃぐしゃにして泣き崩れた。




そんな時、



「おっ、女将さん大変です。里美屋の遊女がいなくなったみたいです。足抜けかって男衆の召集がかかってます!」

「なんだって?」



牛太郎が息を切らせながら大事を伝えにやって来た。


足抜けとは遊女が吉原を逃げ出す事。


それは見世への借金を踏み倒して行く行為。許してしまえば我をもと足抜け者が続いてしまう。


だから遊郭ではそんな足抜け者を逃すまいと見世の垣根を越えて足自慢の男衆が集められ、大捕物になるのだ。

(遊郭内は幕府の中でも特殊な治安体制で遊郭内だけの部署の役人が治安を守っていた。が、足抜けの際はとにかく素早く探し出すためと人手をかき集めた。)




「里美屋の誰だい?」

「日暮(ひぐらし)って奴です。」

「「日暮が?!」」


日暮を知ってる姐さん達は驚きのあまり口を出してしまった。


同じ茶屋を使い、里美屋の女将とも通じてる伊吹屋の女将ももちろん日暮の事は知っていた。



「日暮に間夫がいたとは初耳だ。とにかく足抜けがわかってからには早く探し出さないと。佐吉と四平を行かせな。あたしも里美屋の女将に会ってくるよ。」

「分かりやした。」



牛太郎がバタバタと出ていくと、女将はお仕置き部屋の鍵を開けた。



「お前達、向こうの部屋でつくしを見ていておくれ。ああ、それも解いてやっとくれ。」

「え? いいんですか?」

「縛ったら暴れて怪我するんだから、縛ってておけないよ。勝手な事しないようにお前達が見張っててやっとくれ。」



そういって姐さん達の返事も聞かずに女将も出ていってしまった。



開けられた扉から姐さん達はお仕置き部屋へと入り、つくしの縛りをほどいた。

そしてつくしの頭を優しく撫で、さあ行こうと姐さん達の部屋へと戻って行ったのだった。








それから更に時間が経ち日も暮れかけた頃、夕食らしきお盆を手に座敷に上がる姐さんと新造達が離れの部屋へとやって来た。



「なんだい。禿(かむろ)達はどうした?」

「禿だと話が出きないからさ。配膳を代わってやったんだよ。」

「話が出きない?」

「日暮の足抜け、(どうなったか)知りたいだろ?」


部屋にいた姐さん達もつくしも顔を見合わせる。


「「どうなったんだい?」」




足抜けした日暮の捜索は遊郭内の男衆が集められ、かなりの遠方まで追ったが見つかってなかった。


それと同時に日暮の間夫を探したが、里美屋の誰もが日暮の間夫を知らず、八方塞がりとなっていた。



「それじゃあ、逃げ切ったって事になるね。」



足抜けは吉原では御法度な行為。


そのため連れ戻されると見せしめの罰が与えられる。


その見せしめで死んでしまう者もいるくらいだから、足抜けを無謀だと思う反面、逃げ切れた事に胸を撫で下ろす気持ちもあるのだ。




「まだそれは決まってないよ。捜索は明日も行うみたいだし、それに…」

「それに?」


引っかかる物言いで話を止め、一旦口をつぐんだ。


「何だい?」

「この騒ぎでいなくなった奴がいるんだ。」

「え、それって…」

「日暮の間夫って事だよね。」

「多分そうだと思う。」

「誰だい?」




話を持ってきた姐さんは神妙な面持ちでつくし達を見つめた。



「若旦那さ。うちの引手茶屋の若旦那の姿が昼過ぎから見えなくなった。」





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逃げ出した遊女を探すのは亡八(仁義八つを亡くした者、遊郭で働く者とあります)とあって、各見世から出したというのは私の想像です。あながち間違ってないと思うんだけど確認は取れなませんでした。
つーか、まだ司が出てこないー 早く出さねば。
花街に護られて cm(2) tb(0)
花街に護られてー恋仲試練10ー
2018-05-11-Fri
江戸時代を背景にお話を書いてます。時代的な言葉や名称などは詳しくないので現代風に置き換えてます。それでも明らかに違うようにはしてません。細かい矛盾点などあるかと思いますが、目を瞑ってお付き合い下さい。 ダメなら進まないでね。








正午前の中通り、ここを通る人は吉原で暮らす人々がほとんどで客の姿はほとんどなかった。



二度寝から目覚めた遊女達も、普段着姿で通りを歩く。


散歩をする者、湯屋へと向かう者様々だが、伊吹屋の遊女数人は同じ茶屋を利用する大見世海老妻楼へと向かっていた。


すると海老妻楼の遊女達が湯屋に向かうところに遭遇し、通りの真ん中で立ち話が始まる。



「昨夜かい? そりゃあ茶屋には行ったけど、特に変わった事は無かったよ。」

「若旦那はずっといたのかい?」

「若旦那? いたはずだけど、どうしてだい?」

「昨夜うちの見世に若旦那らしき男が現れてね。ま、見世の格子近くにいたんだけど。」

「いつ頃だい?」

「戌くらい(20時)さ。」

「うちの宴会はもう始まっているね。お座敷にいたと思うけど…」

「少し離れたとかは無かったかい?」

「まぁ廁とかで離れる事はあるだろうからね。それに昨夜はこっちも気を使う客だったから、若旦那どころじゃなかったんだよね。」

「ああ、面倒な方かい?」

「そう。ひねくれられると後が面倒な客さ。」

「まぁ痛い事はないし、腰を合わす事もほとんどないから床では楽なんだけどね。」

「羨ましい…」



つまり海老妻楼の昨夜の客はとある屋敷のご老公。商いは引退していても吉原通いに引退はないらしい。着物の下は使い物にならなくても若い娘の肌と戯れていたいそうだ。



そんな海老妻を羨んでいたら、なぜ若旦那が来ていたくらいで探りを入れるのか逆に聞いてきた。



そこは大きな声で話す訳にもいかず、顔を近づけてはヒソヒソと答えていく。

他の通りを歩く人達に遊女達の声は届かなかった。 




その後遊女達は別れ、それぞれ湯屋、見世へと戻って行った。



湯屋へと到着した海老妻楼の遊女、それまで目配せで無言だったが口を開いた。




「本音を言っちゃ浮気だった方があたしはスッとするわ。」

「ふふ。ま、分からなくもない。」

「でも漣(さざなみ)さん、変わらないわよね。その叔父貴様が来なくなったら不機嫌になりそうだけど。」

「そうね、(漣さん)入れ込んでいるもの。って事はそれは偽物なんでしょうね。」

「飛脚の手下がいるなんて恐れ入ったわ。」

「案外切れ者なのかも… 面と向かって悪態つくのは止めた方が良いかもしれないわね。」

「「ええ。」」



海老妻廊の遊女達が着物を脱いで脱衣場を後にした後、脱ごうと着崩した着物のまま何もない籠の中を探っていた女が着物を直し湯屋の暖簾をくぐって出ていった。







※※※




「こっち!」




男がくたびれた屋敷の門をくぐると、湯に入る事なく湯屋から出ていった女が手招きで男を呼んだ。


手ぬぐいで頭を隠したその姿と、短く発した言葉から二人が遊女とその間夫だと分かる。




「遅くなってすまねぇ。日暮(ヒグラシ)どうかしたのか?」

「どうもこうもないよ道吉さん。道明寺の小僧からの文、偽物だって見抜かれているわよ!」

「なんだって?!」



女は伊吹屋の遊女達と海老妻楼の遊女達が立ち話をしていた事、湯屋でそれを盗み聞きした事を男に話した。



「なんてこった… くそっ。あの男そこまで馬鹿だったとはな。」

「どうしよう道吉さん。きっと伊吹屋の女達小僧に使いをやっているはずよ。小僧が伊吹屋に来たら、道吉さんただでは済まないわ。」



女に心配され、男は自分の身に起こる事を想像し顔を歪めた。


その小僧は餓鬼とはいえ流石は豪商の御曹司。ここに来る時は腕っぷしのありそうな男数人を連れてやってくる。自分たちがやった事が知られたら、おそらく報復されるであろう。


男は恐怖感に襲われたが、なんとか冷静になろうと取り繕った。



「いや、使いになんか出しはしないはずだ。偽物だって見抜いたなら俺ら飛脚にはもう頼まねぇだろうし、かといって見世の男衆がただでそんな事しやしねぇだろ。」

「ひねりを渡すかもしれないよ?」

「…それでも男衆が減れば、見世は荒らされるかもしれねぇ。伊吹屋は正月に無粋者に荒らされたばっかりだからな。」

「それはそうだけど…」



女は不安を打ち消せないでいた。

男は女を安心させたいが、ともかく時間がない事だけは変わらなかった。



「だが急ぐに越した事はねぇのは確かだ。あれは俺がなんとかするから、日暮明日昼前に例の場所で落ち合おう。」

「なんとかするって、道吉さん、どうするの?」

「あの男がそこまで馬鹿だと分かったなら、それを利用するまでさ。」








※※※



「ふう。…わっ、だ、誰だ?!」



亥の刻(22時)になろうとする頃、薄暗い廊下で後ろからの視線に気づいた若旦那は驚いて声を上げた。



だが、「どうしましたか?」と茶屋を出ようとしていた芸者のひとりに声をかけられた時、廊下の奥にいるのが飛脚屋の道吉だと気づくと、「なんでもないよ。勘違いだった。」と取り繕った。





「お前か… 驚かすんじゃねーよ。何の用だ?」

「何の用って、状況を教えに来たんだよ。親切で来てやってるのに、随分な態度だな。」

「状況? 何のだよ。」

「(小さく鼻息をならす)夕べ伊吹屋を見に行ったそうじゃねーか?」

「ああ、まぁな。」

「だが、気づかれて騒がれちまったって? 自分で荒らしておきながら、なんでって思ったけど… やるじゃねーか。」

「あ? どういうこった。」



道吉の意図が読めず睨む若旦那に、道吉は耳元に顔を近づけ囁いた。



「あんたが立ち去った後、女達は険悪になっていざこざを始めたそうだ。見世の男衆が止めようとしたんだが、後手後手になり終いには客にまで八つ当たりし出したそうだぜ。」

「本当かよ。」



俄には信じられない状況に驚く若旦那だったが、その様子がざまあねぇと気分良くなり、口元を気持ち悪く下げてニヤついてきた。



「そいつは愉快だぜ。それじゃあその女達は揃いも揃って閉じ込められてるって訳だ。」

「だろうな。」

「くっくっくっく…」

※遊女達はお仕置きされる時、見世の奥の部屋に閉じ込められて折檻されていた。




若旦那は満足とばかりに肩を震わせ笑っていた。


すぐ側で道吉が笑ってない事にも気づかずに。




「それで、また文は無いのかと思って来たんだよ。」

「あ? …くっ、この状況で文を届けようって言うのか? くくく、お前伊吹屋には何の恨みも無いって言ってたけど、なんでそんな嘘つくんだよ?」

「嘘じゃねーさ。」

「くっ。…まぁ、そう言いてぇって事か。そんじゃ、ちょっくら書いて来っから待ってな。」



道吉はそう言って奥へと消えていった若旦那の入っていった部屋の明かりをじっと睨んでいた。



しばらくしてその部屋の明かりが消されると、男が部屋から出てきた。


その男は若旦那以外誰でもないのだが、道吉は疑っていた。




「じゃあ、これ持って行ってくれ。」



若旦那が手渡した文を道吉は何も言わずに受け取ると、もう片一方の手を出してきた。



「何だよ。」

「例のものをくれ。」

「あ? ああ、あれか。そうだったな。お前賭博の借金があったんだっけな。」



若旦那は懐に手を入れると、手のひらに収まるある物を取り出した。


それを奥に取りに行くと思っていた道吉は興奮したがなんとか鎮め、辺りの暗さもあってその動揺は若旦那には気づかれなかった。



「ほらよ。」と文を渡すようにそれを道吉に手渡す若旦那。


道吉は強ばった顔つきのままそれを受け取り足早に立ち去って行った。






「ふん。よっぽどせっつかれていたんだな。ま、仏心を出すのもこの一回だけだ。次来たらちらつかせるだけで、良いように使ってやる。」






つくしのいる伊吹屋、

大見世の海老妻楼の遊女達、


飛脚屋の道吉に謎の遊女、


そして引出茶屋の若旦那。



この日は様々な思惑が蠢いた。




そして一夜明け、



昼見世の時間が差し迫った頃、吉原に衝撃が走る。





「足抜けだ! 里美屋の日暮が足抜けしやがった!!!」
※足抜け…遊女が遊郭から逃げる事






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今回つくしも司も出てこなくてスミマセン。
そしてこの後の展開の希望があればコメントに宜。
どこまで司を悪どくさせるのか迷い中のため。
待ってまーす(*´∀`)ノ
花街に護られて cm(1) tb(0)
花街に護られてー恋仲試練9ー
2018-05-04-Fri
江戸時代を背景にお話を書いてます。時代的な言葉や名称などは詳しくないので現代風に置き換えてます。それでも明らかに違うようにはしてません。細かい矛盾点などあるかと思いますが、目を瞑ってお付き合い下さい。 ダメなら進まないでね。








「あの姐さん?」



飛脚の道吉が持ってきた文を遊女達に配り終えた後、つくしは司と過ごす部屋でひとり文を開こうと腰を正すと、みんながぞろぞろと部屋に雪崩れ込んで来てつくしを取り囲んだ。



「読まないのかい?」

「え、よ、読みますけど…」

「じゃあ早く読みなよ。なんて書いてあるんだい?」

「なんてって、あの、これあたし宛ての文なんですけど…」

「知っているよ。道明寺の坊っちゃんからだろ? 返事に四日もかかりやがって、どんな言い訳してるのかあたし達にも知らせな!」

「そうそう、ちゃんとした理由じゃなきゃあたし達だって黙ってられないからね。あんたがないがしろにされたって事は伊吹屋の女がないがしろにされたって事だよ!」

「な、ないがしろって、司はそんな事しませんよ。」

「じゃあ、書いてある事をあたし達が知っても良いじゃないか。早くおし!」

「は、はいっ。」



姐さんの迫力に負けたつくしはみんなの真ん中で文を広げ、読み始めようとする。


だがつくしが読む前に隣から姐さんが顔を付きだし、声に出してしまった。



「なになに… 返事が遅くなって悪かった。ちょっと外せない野暮用があって、品川まで行ってたんだ。品川? なに、坊っちゃんやっぱりあの叔父貴様を送りに行ってたのかねぇ。」

「そんな事はいいよ。続きを読みなって。」

「えっと、品川の女も中々良い女ばかりだった。だがやっぱりお前の壺が一番しっくり…」



先を促されたつくしはつい読み進めてしまい、読んだ内容に固まってしまった。


姐さん達の顔つきも般若の如く険しくなる。


すると紫陽がつくしから文をぶん取りざっと目を通した。




「紫陽、何て書いてあるんだい? 道明寺の坊っちゃん、本当に品川で浮気していたのかい?」

「…そう書いてあるよ。」

「なっ、なんだってー!」

「ふざけんな!」

「で、今夜ここに来るらしい。品川では後味が悪かったから、口直しにつくしを抱きに来るんだと。だから目一杯めかしこんで楽しませてくれってさ。」

「…どの面下げてここに来るつもりなんだ!」

「文で堂々と浮気宣言するなんざ、あたしらを舐めきってる!」

「新造! 塩用意しな! 道明寺の糞餓鬼が来たら塩ぶっかけて追い返してやる。」

「は、はいっ。」



つくしの友人達が慌てて、襖から手を離し廊下を駆け出そうとすると、



「待ちな!」


「「「「「「えっ?」」」」」



紫陽が声を張り、新造達の足を止めた。



「紫陽? あんた何で止めるんだい?」

「そうだよ。あんたつくしが可愛くないのかい?」



紫陽はギロッと噛みついた遊女を睨み、ゆっくり話始めた。



「つくしが可愛くないかだって? 可愛いに決まってるだろ。」

「じゃあ何で!」

「これが本当に坊っちゃんが書いた物なら、あたしだって怒り狂うさ。」

「本当に? どうゆう事だい?」

「あんた達、坊っちゃんがつくし以外になびかなかったの覚えてないのかい?」


!!!!!!


「あの糞餓鬼、つくしを身請けするために嫌々あたしを抱きやがった。おまけにイッたと見せかけて、油断させてさ。あの時はあんた達、あたしを随分馬鹿にしてくれたよねぇ~」

「紫陽…」

「それじゃあ、紫陽あんたはこの文坊っちゃんからのじゃないと?」

「違うね。あの糞餓鬼はつくしじゃないと立たないほど、つくしに惚れ込んでもいるが、潔癖でもある。そんな奴が品川に行ったからって簡単に女を抱くかい。そんな事してたら、それこそあたしへの冒涜だよ!」



紫陽の怒りに姐さん達は黙ってしまった。


確かに司が来た当初、姐さん達も半分本気で司を誘惑していた。それを見向きもしなかった男が簡単に浮気するなど、考えてみればおかしすぎる。



「そういや水揚げの手立てを習いにも行ったね。それを考えたら、確かに変だ。」

「ついこないだまで、つくしを嵌めた若旦那の事で怒り狂ってたもんね…」

「じゃあこの文は道明寺の坊っちゃんが書いてないって事?」

「でも飛脚屋の道吉が持ってきたんだよ?」

「そうだよ。それならあの道吉が仕組んだって事になる。」

「なんで道吉が仕組むのさ?」



ざわざわと姐さん達は疑問を口にしていった。


つくしの心を置き去りにして。



だが、



「…理由があるからだろ。」



紫陽が怒りあらわに断言する。


つくしの心を乱した怒りをむき出しにして。



「姐さん。」



涙目で紫陽を見上げるつくしの頭を紫陽は優しく撫でた。


安心しなさいと言うように。



「つくし、あんたは坊っちゃんに何て言われた? ほら、こないだ自分も見世に出ると言い出しただろ?」

「…見世には出るなって言われました。お前は遊女じゃないんだし、俺はお前を身請けするために親から大金を借りたからって。あ、あたしが他の男に抱かれたら、それは司のお金で抱かれる事になるからって…」



ぐずぐず泣きながらも、司の言い分を必死に伝えようとするつくし。



「つ、づがさはその、そのお金のために、い、いっしょう、けんめーには、働いて、うぅーーー」



つくしは紫陽に抱きつき、わんわん声を出して泣いてしまった。


紫陽はそんなつくしの背中をよしよしとさすっていた。





そんな様子を見ていた姐さん達が、階下の足音にはっとし紫陽に声をかける。



「それじゃあ紫陽、どうするんだい? 」

「道明寺の坊っちゃんが来るのを見世先で待ってろって言うのかい?」


鼻息荒くまたも噛みつく勢いの姐さん達。

刀を持って玄関先で待ち伏せそうな勢いだ。(ここにはそんな物騒な物など置いてないけれど。)



「それじゃあ、すぐに道吉にばれちまうじゃないか。まずは道吉が偽物を持ってきた理由を探らないと。でないと反撃も出来ないまま、またうやむやだ。」

「それじゃあ、どうするんだよ?」



紫陽は投げ捨てられた偽物の文を一瞥した。



「乗ってやろうじゃないか。その偽物通りにさ。」

「乗る?」

「文には今夜糞餓鬼が来てつくしを抱くんだろ? だからつくしにめかしこめって書いてある。」

「つくしを着飾らせるって事かい?」

「ああ。そして格子前に座らせよう。」

「格子前に? なんでだよ?」

「なんでって文を書いた奴は着飾ってつくしが糞餓鬼を待ってると思って書いたんだろ? 見世の中で待ってても糞餓鬼でないと見世には入れないんだから、分からないじゃないか。」

「はぁ?」



話の流れでどこか喧嘩腰になってしまったせいで、姐さん達には紫陽の意図が読めなかった。



「つまりそんなつくしを飛脚野郎は見に来るって紫陽姐さんは言いたいんですね。」



怒りからか歯向かうように投げつけたのはつくしの友人のせりだった。


せりの一声で姐さん達も一斉に理解し始める。



「なるほどね。」

「それで道吉を取っ捕まえてシメるって訳ね。」

「それはあたし達がする事じゃないわよ。」

「あ、そっか。」



そう道吉をシメるのは濡れ衣を着せられた者がする事だ。だが、それ以前に飛脚屋で走り回っている道吉を遊女達が捕まえられるはずもない。



「そうと決まったら時間がないよ。誰か髪結いを呼んでおくれ!」

「化粧もしてやらないと。って、つくし顔酷過ぎる。紫陽、分かってたんならもうちょっと早めに泣き止ませなよ。」

「あ? そんなの今さら。早く作っちまうよ。」





バタバタと二階が騒がしくなり、それを待ってたかのよう陽も傾いて来た。





そしてとっぷりと暮れかけた頃、見世の提灯が灯され、客を呼ぶ三味線や太鼓の音が鳴らされた。




伊吹屋の格子にも遊女達が並び、外から覗きこむ男達にくすくすと笑いかける。



そんな遊女の中にひとり隠れるように座らせられたつくし。



泣き顔は化粧で隠せたけれど、司が来るかもしれない不安までは隠す事ができず、来ないで欲しいとその姿を探しては、弱々しい表情を格子の外へと向けてしまう。



それが意図せず男達の視線を集めてしまう事に気づかぬまま。




このままだとつくしへと指名も入りそうな気配だが、客達の中に見つけた顔に

つくしは声を上げてしまう。




「!!! 若旦那っ!」




その瞬間遊女達が立ち上がり、客の視線もつくしの向いた方向に集まった。



だが、若旦那らしき男は伊吹屋に背を向けそそくさと立ち去ろうとする。



格子の中の遊女達のただならぬ雰囲気に客達もざわざわし始め、ひとりの客があの男を取っ捕まえたら安くしてくれねぇか?と言い出すと、他の客が待ちやがれとその男を追いかけ、男も走り出した。



その隙につくしは姐さんに腕を引っ張られ、奥に引っ込んでなと目配せさせられる。



つくしは二階からなら逃げた男の姿が見えるかもと、慌てて二階へと駆け出した。



だが、男は見つからなかった。




それでも逃げた男が茶屋の若旦那だった事には間違いない。




つくしは飛脚屋の道吉が若旦那と何かを企んでいるのだと思った。



司の知らないところで企らまれている事に、つくしは司の身を案じてままならない。



どうにかして司に知らせねば!


でも飛脚屋には頼めない。


無力な自分に、つくしはへたりこみながら、また泣き崩れてしまった。






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つくしを泣かせたままのぶった切り、申し訳ありません。この花街のつくしは恋を知って怖いもの知りまくりなんですよね。だから泣くしかなかったのー
(*ノ´□`)ノ
花街に護られて cm(4) tb(0)
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