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birthday song sideつくし part6
2018-02-17-Sat
valentine前、司の誕生日にもなってない時に戻ります。








チューリップを弾き遂げたつつじは次の曲にチャレンジした。

(つつじにとってピアノ演奏は上手く弾ける事ではなく、一曲通して弾けるかになっていた)


次の曲に選んだのはきらきら星。

チューリップに比べると曲は少し長くなるが、1小節ずつ覚えトチらずに弾けるまでトライし続けた。


すると1週間待たずしてつつじは弾けるようになり、早く次の曲に移りたいと動画撮影を早めて撮る事になる。

(例のつくしの声が入り込んだ動画とは別にちゃんと撮り直したが、入ってる方をタマは選び司に送信していた)



SkypeにてLAの椿とテレビ電話をし、次の曲を頼んでいた。



『その曲も良いけど、どうせなら別の曲にしてみない? 今の時期だからこそやってみて欲しい曲があるのよ。』

「やってみてほしいきょく?」

『ええ。実はねつつじちゃん、もうすぐあなたのパパのお誕生日なの。』

「え? つばきおばちゃんほんとう?」

『ええ、本当よ。』



つくしは忘れていた訳じゃないけどと、つつじに言い寄られた訳でもないのにひとり謝ってしまった。



「ねぇママ、パパたんじょうびだって。」

「うん。そうね。」

「おいわいしなくちゃ。」

「じゃ、次はハッピーバースデーの曲ね。」

「うん。はっぴ、ばーすでー、ぱぁぱ~、はっぴ、ばーすでー、とぅ~ゆ~」

「ぷ。…つつじ歌詞反対よ?」

「はにゃ?」



そしてまたつつじは練習に励み、ほんの数日でハッピーバースデーを弾き遂げてしまう。(きらきら星より短いからだろう)


動画も撮り終え、つつじは次の曲に向いている。早く次も攻略しようと、手の動きを覚えるのに必死だ。



つくしはその撮った動画を見て、違和感に気づく。そしてこれじゃあ司を祝ってあげられないとも。



「ね、つつじ。」

「なーに、ママ?」


顔も上げずに答えるつつじに、つくしはこれじゃあいけないと語気を強める。


「つつじ、今ママが話してるから手を止めなさい。」

「…はい。ごめんなさい。」


しゅんとするつつじ。つくしは怒りすぎたかと後悔もあったが、ぶれちゃ駄目だと続けた。


「ふー。つつじ、つつじはピアノとても上手になっているわ。」

(こくんと頷く)


「でもママは楽しいなって思えないの。」

「なんで?」

「なんでって、それはね。楽しく聞こえるピアノは歌いたくなるピアノだと思うの。」

(また頷く)


「でもつつじのピアノは歌いたいなって思えない。それは何でだと思う?」

「…わかんない。」


泣きそうになるつつじ。つくしはその涙をきちんと変えなければと思った。


「それは聞いてる人の顔を見てないからよ。人の顔を見てないから、そうなっちゃうの。もし見ていたら、つつじはどう思うかな?」

「…うたってほしいなっておもう。」

「そうだね。弾いてるんだもん。歌って欲しいよね。じゃさ、昨日撮したハッピーバースデーはパパ聞いててどう思うかな?」

「う…うっ、うっ、うヴーーー」

「つつじ、泣かせちゃってごめんね。でも大事な事よ。パパのお誕生日をお祝いするなら、もっと気持ちを込めてやらなきゃ。それって歌ってって気持ちだよね?」


泣き出すつつじを抱きしめ、背中をさすりながらつくしは優しく問いかけた。

つつじは優しい子だから、絶対に分かってくれるはず。そう信じて。


だが幼い娘は中々嗚咽を治められず、背中を震わせていた。


そんなところをタマに見られ、つくしと二人で慰められたつつじは、甘い誘惑へと持って行かれた。


「おいちぃ~」


アイスクリームを頬張ってやっと涙が止まる娘につくしは呆れるも、タマにジト目で見られて分かってますとばかりに口には出さなかった。(母子の行動は一緒)






ピアノを通して、つくしはつつじの教育について考えていた。


椿からピアノ天才少女に仕立てる計画を実行しつつじもそれを楽しんでいたけれど、道徳や倫理を教えるためにはちゃんとした指導が必要だと思えたのである。


そしてそれはつつじの進路についてもだった。


つつじは幼稚園や保育園に通っていない。

どちらも義務教育ではないけれど、就学前に通わせないのはつつじから環境を奪うだけの自分のエゴではないかと思い始めたのだった。もちろんそう思うのは司が記憶を取り戻したからという事が大きいのだが…




「ママ、うたって。」


つつじの声にはっとなり、葛藤を隠すようにつくしは大きな声で歌い、手拍子を打った。


歌う事でつくしは自分の不安をつつじに見せないように努力した。


だから、また頭から抜けてしまったのだった。


その日が近づいている事を…







コツコツとタマが来た事に顔を上げる。


だがふと視線に引き寄せられた。


そこを向こうとして向いた訳じゃない。




語らぬ瞳が司の感情を語っていた。


重なった視線が司の感情を自分へと流し込む。


思った事を口にしてしまう口はこの時何も発してくれなかった。



タマさんが司に文句を言う。それに言い返す司はあたしの知る司だった。


だけどそんな司とタマさんにもあたしは黙ったままで、つつじはそんなあたしをちゃんと見ていた。



「パパ、つつじのピアノみて! じょうずにひけるようになったんだよ。」



司の空気が変化する。

戸惑い、喜び、つつじからパパと呼ばれた事を噛み締めているのがあたしにも分かった。



つつじはハッピーバースデーを弾き始める。


それは前のただ手を動かした弾き方じゃなくて、おめでとうという気持ちを歌いたくなるような弾き方だ。全然上手じゃないけど技術じゃない。つつじはやっぱり分かってくれてたとつくしは感無量だった。


司も喜びつつじを抱きしめる。


そんな司の顔を見て、つくしはようやく頬を緩ませる事ができた。





それから部屋に戻り、つかの間の一時。


気づけば笑っていて、お腹も膨れていた…だけどつくしの気分は上がらなかった。




そして司はリムジンに乗って行ってしまった。



噛んだ歯を向け、つくしはつつじに怒られる。


つつじをなだめながら、いじっぱりな自分をひとり胸の奥で責めた。



「つつじ、ママおトイレに行ってくるね。」

「うん。あママ、さっきのけーきあといっこ食べていい?」

「…いいよ。」



やったーと走り出すつつじを見送り、近くのレストルームに入って行った。


タマさんとは視線を合わせないようにした。



便座に座り鼻歌を歌う。


ハッピーバースデートゥユー

ハッピーバースデーディア司

ハッピーバースデートゥユー



来年の誕生日はちゃんと祝おう。

つつじと一緒に、タマさんやみんな(F3やT3)も一緒になって。


まだ一緒になれなくても誕生日くらいはいいでしょと笑ってねだった。




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birthday songはここで終わりですが、つくしをこんな気持ちのまま終わらせたくないのでもう少し(どれくらいかは未定)続きます。

また、お友だちのkomaさんにブログ2周年のお祝いギフトを贈りました。(たぶん同じ時間にアップです)こちらも宜しければ読んでみてください。これからもkomaさんがブログを続けるように"呪い"をかけておきました。効果あると良いな🎵
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birthday song sideつくし Valentine Day
2018-02-14-Wed
本編から少し未来に飛びますが、Valentine Dayなので予告的に書きました。F3もT3も出て来てませんからね。って、私のお話には彼らあんまり出てこないんだけど…

あっ、最近坊っちゃんも出て来なかったから。てへ。








久々に歩く人混みの中、あたしの左手はつつじの右手と繋がっていた。


ここは某私鉄の駅。


あたしとつつじは道明寺邸をタクシーで出て、バスに乗り待ち合わせの駅までやって来た。



「あっ、来た。優紀こっち!」

「つくし!」



あたしに気づいた親友が笑顔を返す。

優紀と会うのは2年ぶりだ。


そんな親友をつつじはじっと見上げる。



「はじめまして、つつじちゃん。私は松岡優紀、ゆうきお姉ちゃんと呼んでね。」

「はじめまして牧野つつじです。ゆうきお姉ちゃんよろしくおねがいします。」



右手はあたしの手を繋いだまま、左手にはを後ろにしてつつじはぺこりと頭を下げた。


つつじと優紀の対面は今日がはじめてだった。



妊娠前からあたしが道明寺邸に匿われていた事は優紀をはじめ桜子にも滋さんにも、もちろんF3にも伝えてなかった。


彼らには住み込みで働けるところを見つけ、忙しくする事で気持ちを落ち着かせていると伝えると、そっとしてくれて連絡もあまりしてこなくなった。


だけど、あたしは妊娠の不安から優紀とは話がしたくなって、タマさんに黙って優紀とだけ連絡を取り合っていた。


妊娠の事は流石に言えなかった。でも数ヶ月かけて優紀は気づいてくれた。その時あたしのお腹は臨月で、気づいたすぐ後の電話ではつつじの泣く声が聞こえたものだから流石に驚いていたけれど、「がんばったんだね」の一言があたしの涙腺を動かしてくれた。


それから結局、タマさんに連絡を取り合っている事を黙っていられず白状するんだけど、タマさんは許してくれた。


でも優紀を邸に招く事は許してくれなかった。


だから前回優紀と会ったのは、つつじをタマさん達に預けてひとりだった時で、それまで優紀はつつじの声と写メで見るだけだった。




つつじはあたしと優紀と手を繋ぎ、目的地に向かった。


向かった先は某室内型遊園地。猫のキャラクターが出迎えてくれた。



「ママ、○ティちゃん。マイ○ロディもいる~」

「可愛いね。つつじはマイ○ロディ好きだもんね。」

「うん。」

「じゃ、とりあえず何かに並ぼう。つつじちゃんはどこに行きたい?」

「えっと、えっと… あ!あれがいい。」

「よし、じゃ行こう。」



3人で手を繋ぎながら駆け出した。




アトラクションを幾つか回り、休憩がてら軽食を取る事にした。つつじは普段食べないジャンクフードに夢中だ。



優紀とは久々に会うのに、優紀との会話は少ない。周りの目もあるけれど、まだつつじに聞かれたくない話も多いからだ。



今回、つつじは優紀とはじめて会うだけじゃなく、道明寺邸からもはじめての外出だった。邸で生まれてから5年半経ちようやく外に出られたのである。


それまでタマはつつじの外出を許さなかった。それはつつじが道明寺家の私生児であったからだろう。でも今回外出を許された。


それはきっと、



「今度はさ、いつ帰ってくるの?」

「さー? いつだろ。こないだ勝手に帰って来たから、今度はそう簡単には帰れないんじゃないかな?」

「そっか。ようやく会えたのに寂しいね。」

「んー…」



この日は司の誕生日の1週間後だった。

司の記憶が戻った事も、誕生日に帰国した事も優紀は知っていた。


優紀曰く、だからつつじも一緒に外で会おうと提案したらしい。







「ゆうきお姉ちゃん、きょうとっても楽しかったよー」

「本当? じゃ、また遊びに行こうね。つつじちゃん。」

「うん!」



駅のホームで優紀と別れ、優紀を乗せた電車を見送る。


行きはバスで、帰りは電車。はじめて乗る乗り物にもつつじは大興奮だった。


改札を出ると、迎えのタクシーが待っていた。(SPが某タクシー会社所有の車を用意していた)


それに向かおうとしてコンビニが目に入る。


つつじはコンビニもはじめてだ。


コンビニを指差し待ってもらうように目配せし、あたしはつつじを連れて中に入った。



もうすぐバレンタインデーだから店内入ってすぐにチョコのコーナーが目に入る。


あたしはそこを通りすぎて、お菓子コーナーの方に向かった。


100円以下の駄菓子で好きだったチョコを選び、つつじの分も手に取る。そして今日ばかりはとジュースもかごに入れた。



レジに向かうとつつじが、あたしの袖を引く。



「何? まだ欲しいのがある?」

「あれ。」


そういってつつじが指差すのはバレンタインチョコレート。


「あれ、欲しいの?」

「ううん。」

「? 欲しくはないの?」

「うん。でもママは買わなきゃダメだって。」

「え? どういう事?」

「ゆうきお姉ちゃんが、ママは買わなきゃいけないから教えてあげてって言ってた。」

「優紀が…」

「ママはいじっぱりだからって。ゆうきお姉ちゃんに、いじっぱりってなーにってきいたら、ママの事だよって。ママ、いじっぱりってなーに?」

「いじっぱりって言うのは…」



つつじといる間司の事を何も言わなかった優紀。でも優紀にはバレバレだったんだ。


お土産のとこでもチョコを気にしてたしね…



邸でも堂々と作ればきっとみんな手伝ってくれるって分かってる。タマさんなんてにやにやしすぎてさらに妖怪っぽくなっちゃうとか…


ああ、だからタマさんはあたし達の外出を認めたんだ。



「いじっぱりって言うのは、良くない事よ。だから止める事にしたわ。」

「?」


つつじは首を傾げ、あたしはくすっと笑った。



「つつじ、帰ったらママとチョコレートを作ろうね。」

「チョコレート?」

「うん。もうすぐバレンタインだから。バレンタインは女の子が好きな男の子にチョコをあげる日なの。だからパパにチョコをあげましょ。きっとパパは喜ぶわよ。」

「うん!」









_2月14日



「ねぇママ、チョコ届いたかなぁ?」

「ん? 大丈夫よ。きっと届いているわよ。」

「もう食べたかな?」

「あっちはまだ昨日よ。食べてないんじゃない?」

「えーー」





その頃、NYの道明寺邸。


時刻はまだ13日夜9時だが、司はすでに帰宅していた。


デスクの上にはラッピングされたチョコレートが置いてある。



司はタブレットを手に持ち、動く二人を見ていた。



この日は火曜日。ピアノの動画が届く日でもあった。


だが届いたのは愛しい二人がチョコを作っている様子。


二人は撮られている事に気づいてないようだった。



ラッピングの包装を破り中を開ける。


中には不揃いのチョコレートが入っていた。



「これだな。くくく普通は失敗したの使わないだろーよ。」



司が手にしたチョコは小さく欠けていた。


動画にはつくしが「ちょっとくらい欠けても食べれるから入れちゃおう」とつつじに話していた。


「見た目よりも作った事が大事なの」とどや顔のつくしに司の頬も緩みっぱなしだ。




「確かに作ってくれた事が大事だ。店で買ったのなんざくそくらえだぜ。」




実は優紀との外出でコンビニに寄った事も司には報告されていた。司からすれば工場で作られた大量生産のチョコレートをもらっても複雑なだけだった。


自分のためだけに作って欲しい。


一緒にいられないから、せめてもの願いだった。




「甘っめ。甘すぎるぜ。…疲れもぶっ飛ぶくらいにな。」







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サンリオピューロランドは行った事ありません。場所は今回知りました。娘はフィーバーするだろーなぁ… 連れて行けたら。そんな妄想こめて。


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birthday song sideつくし part5
2018-02-10-Sat
小ネタ続きます。




(チューリップの音階)

ドー、レー、ミー、ドー、レー、ミー



ぎこちないながらもちゃんとメロディになっている音が響く大広間。



椿達が帰国し年が明けても、つつじは真面目にレッスンを続けていた。


この場面だけを見ればファーストタッチの破天荒ぶりが嘘のような光景である。


血は水より濃いという事なのか、ピアノを弾くつつじはお嬢様のように見えた。



姿勢を正し、前と鍵盤を交互に見ながら指を動かすつつじ。


本来楽譜を立てている場所にはタブレットが立てられてあった。


そのタブレットには鍵盤を動かす手の映像だけが流れている。


そしてつつじの側にはつくしが座っていて、講師の姿はなかった。



帰国する際、椿はつつじにピアノ講師をあてがわなかった。椿が手配したのは週に一度の調律のみ。あとは動画でのレッスンを残していったのだった。



『音符の意味から教えて楽譜を読めるようになって弾いたんじゃ、やる気なくなるでしょ? ちゃんとしたやり方が何でも良い訳ではないわ。子どものやる気を増やす方法が私は最良だと思うの。』



目から鱗とその理論につい感心してしまったつくしだったが、椿の企みを思い出し落ちかけた鱗も引っ込んでしまった。





それは誕生日の翌朝だった。



つくしは泣き腫らした顔を見られまいとケアして寝たが、やはりまだ少し腫れていたらしく泣いた事を椿やタマに知られてしまった。



「あー、へへなんか泣いちゃいました。なんでですかね。泣くつもりなんてないのに勝手に涙が出ちゃいまして…」

「つくしちゃん…」

「でも! あたし大丈夫です。なんか泣いてスッキリしましたし、そのお姉さんが心配…」

「スッキリなんて嘘つかなくて良いのよ。」

「お姉さん…」

「あの馬鹿のせいでつくしちゃんがどんな想いをしているかなんて、私達は分かろうとしているつもり。だから私達の前では素直な気持ちであって欲しいの。私は未熟だから… 強引に引っ張るしかやり方は知らないけど、ずっとあなたの味方だわ。つくしちゃんがあの馬鹿を許せないのは当然よ。でも許せないままでいたくはないでしょう?」



_許せないままでいたくはない



「あ、いえ、許せないままって言うのは許すでしょって訳じゃなくて、えっと…」

「………」

「つくしちゃん、あの…」

「そうですね。許すと思います。」

「えっ…」



ふぅとつくしは息を吐いた。



「お姉さんの言う通りです。あたしはあいつを許すと思います。そりゃ腹も立ってますけど… こうなったのはあいつのせいじゃないし。…許しちゃ駄目って気持ちがあって、もやもやしていたけど… このまま許さないままではいられないと思う。許さないままでいたら、きっと後悔すると思います。…また傷つけちゃったなって。」

「つくしちゃん…」



それでもまだ椿は心配顔だったが、つくしは本当に気持ちの整理をつけられていたため何度も椿に良いのと聞かれ、そのうちつくしは笑ってしまっていた。


そんなつくしの笑顔に椿もようやくほっと胸を撫で下ろし、今の司の状況を語りだした。



そしてつくしは司が楓から難題を課せられた事を知る。


まだ待つ事になるのが確実になり、つくしは肩を落とす。


でもここは我慢して応援すべきなのだろう。自分達がまだ会えない状況に椿も心を痛めているだろうとつくしが顔を上げてみると、


椿の顔は予想外に笑っていた。



「え?」

「ねぇ、つくしちゃん。やっぱり少しはやり返さない?」

「やり返す? な、何をですか?」



椿はつつじの天才ピアノ少女計画を語りだした。


つくしはそれがどうやり返す事になるのか理解できなかった。



「尻を叩くやり方ってとこよ。ほら、レースで騎手が鞭を振るうじゃない?」

「はぁ…」

「それに手綱を引かれてるっていうでしょ。妻の方が立場が上な時。」

「…言いますね。」

「だから、つくしちゃんが司の手綱を引くのよ。」

「あいつは馬ですか?」

「馬力は人並みじゃないわ。」



ぷっ。


椿の例えにはまり、つくしは下ネタを頭に浮かべてしまった。


_そういえばあっちも大きくて痛かったなぁ。陣痛より痛かったかも?




「そうなの?」


がばっと椿を見た。


椿はにこっと笑い、つくしは背中に汗をかいてしまった。



「とにかく、やってみましょ。」

「…はい。」






それで今つくしはつつじの天才ピアノ少女を演出すべく、使用人の仕事を外され一日中つつじと大広間でピアノに向き合っていた。


とはいえつつじは大人の事情を知らない。

だからつつじにしてみれば、大好きなママがピアノに付き合ってくれるのもあって、めきめきと上達していったのである。



「うん。一曲通して弾けるようになったね。明日は動画を送る日だから、撮ってみようか。」

「うん!」



つくしは三脚にセットされたホームビデオの録画ボタンを押そうと、つつじに声をかけようとし、気づいた。



「あ、つつじそれ見ながらやるよね。どうしよう、それってまずいなぁ。」



この角度からはつつじが弾くところはもちろん、タブレットまでも丸見えだった。


困ったつくしはビデオを回しながら、タブレットが隠れる位置を探し、ピアノの周りを回り始めた。



だが、探していてタブレットを隠すという事は鍵盤をも隠すという事に気づく。



「鍵盤隠してたらつつじが本当に弾いているのか疑われないかな? あたしだったら疑うわ。あの破天荒の後だもの。」



よもやマイナスのスタートは予想以上のマイナスだった。



「どーしよう、どーしよう… ええいっ。いっその事ばらしちゃうか?」



しかしばれるのも怖い。


よもや椿がチクるとは思えないが、あの独り言を他人に知られれば、パニックを起こすのは確実だ。



タブレットを見ながら弾く事が、下ネタを口にした事に早々繋がるはずもないのだが、すでにテンパってるつくしにはイコールとなってしまっていた。



「うう… タブレットが隠れるアングルがない。ね、ねぇつつじ。」

「なーに?」

「これ、見ないで弾いてみない?」

「見ないでやるの?」

「そう。手の動かし方を覚えて、弾くの。その方がもっと上手に弾けるはずよ。こんな風に…」



つつじを見守ってすっかり覚えてしまった手順をつくしは再現していく。


つつじには高度な技でも、23歳のつくしにはチューリップの演奏くらい容易い。鍵盤ハーモニカを奏でるように演奏して見せた。



「ママすごい!」



目をキラキラさせ興奮するつつじ。


つくしは罪悪感に苛まれたものの、やってみようと促した。



俄然やる気になった我が子を見て、つくしはひとり頭を抱える。


だが、1小節を一気に弾けたつつじが「ママここまでできた。」と弾ける笑顔で振り返った事に、こんなんでも結果オーライだからいいのかもと思えるようになってきた。




ドー、レー、ミー、ドー、レー、ミー、

ソー、ミー、レー、ドー、レー、ミー、レー、


ドー、レー、レー、ミー、

ドー、レー、レー、ミー、

ソー、ミー、レー、ドー、レー、ミー、レー、



くす。


2小節目の最後のトチりに気づかず出来たと興奮するつつじに、つくしは笑いを笑顔に誤魔化し、良くできたねとばかりに褒めた。



そして3小節目を何度か繰り返して覚え(ソソミソに苦戦)、一曲通して弾けるようになったので、動画を撮影した。



映した動画をつくしとつつじ二人頬を寄せ合い確認する。



「すっごい上手に映ってる。つつじ天才ピアニストみたい!」

「ほんとう? やったー」



そう仕向けた事も忘れ親ばか全開になるつくし。


あまりの嬉しさに、先ほどまでの罪悪感も、


天才ピアノ少女に仕向ける事がなぜ司にやり返す事になるのかも、頭からすっかり抜け落ち、


楽譜が置かれてない状況になってる事にも気づかなかった。(丸暗記で弾いたと勘ぐれる)



そして『強引に引っ張るしかやり方は知らない』という椿の言葉を逆の評価に捉え始めた。




「やっぱりお姉さんはすごい。うん、なんかうだうだ悩むのはもう止めよう。お姉さんの言うまま楽しんだほうが全然良いわ。」

「いいわ~」

「あは。つつじ真似っこしたな~」

「えへへへへぇ~」






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タブレットの動画は椿が弾いたチューリップです。つつじが真似できるようにゆっくり弾いてます。

そしてつくしの下ネタ想像ですが、思い出す事くらいあるよね。つくしなら早々しないだろうけど、その数少ないのが口から出ちゃったとこはらしいと思います。


小ネタで先に進まないなぁ…
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birthday song sideつくし part4
2018-02-08-Thu
クリスマスにあたしの誕生日。



…お姉さんの独壇場だった。



欧米ではクリスマスは家族で過ごすものですよねと聞けば、なんと旦那さんを日本に呼び寄せた。(豪君パパが来て嬉しそうだったなー 旦那さんも苦手な付き合いから逃げられて良かったなんて言ってたけど、本当に良いんだろうか?)



それからただでさえ大きい邸のクリスマスツリーはさらに飾り付けがバージョンアップしたらしく、しかも大きくなってないかと目の錯覚を疑ったら、本当に大きくなっていた。(つつじのレッスンの合間に変えたらしい)


ツリーの下にあるプレゼントは庶民の常識ではありえない数で、(全部飾りで中は空っぽであって欲しかったけどちゃんと中身が入っていた)その全部をプレゼントするのかと思えば、そこから好きなだけ選ぶらしい。(そこはほっとするところだったけど、意外だったからつい驚いてしまった)


で、余ったやつはどうなるの?ってぽかーんとしてたら、児童養護施設に寄付するらしい。(毎年しているだって。流石金持ち)



そしてパーティーが始まったんだけど、なんとマジシャンが邸に来た!(マジシャンって個人で呼ぶか普通?!)


大人の女性なんだろうけど、可愛いらしい人で最初はマジシャンだとは思わなかった。お姉さんの友達かなと… アイドルみたいな友達もいるなんてお姉さんも交遊関係広いなーなんて、凄い勘違い。ひとりだけ恥ずかしさで悶えてたわ…



まぁマジックが始まって、マジシャンだったのかと気づくあたしをよそに、つつじも豪君も子どもらしい反応で、わーきゃーと大騒ぎだったから気づいてはないだろうけど… (この際子ども達に気づかなければヨシとしよう)




そしてあたしの誕生日はというと、当然の如くプレゼント攻撃アーンドファッションショー。(心構えはしてたつもりだったけど出来てなかった)


しかもつつじの手前、喜ばざるを得なかった。




そりゃあね、そりゃあ本音を言えば嬉しいわよ。


うん。娘とお揃いコーデなんて、娘親になった楽しみの一つじゃない?


でもさ、それが何でメイド服なの???



「わぁ♡ ママと同じスカートだ~」

「うふふ。つつじちゃん良く似合ってるわ。ママと一緒にお仕事頑張っているって聞いてたから、お洋服も同じにしたいと思っているだろうってね。」

「つばきおばちゃますごーい!」



_確かに凄い。



基本はあたしも来ているメイド服なのに、子どもに合わせてアレンジされててぱっと見ただけではメイド服には思えない。


しかも、



「ピアノの動画を撮る時は、この服を着るといいわ。コサージュを付ければ発表会用に早変わりよ。」



これには何も言えなくなってしまった。


つつじの服を質素にしている訳じゃない。


邸にはどんな客が来ても対応できる物品が揃っているため、新たに購入しなくてもそれらから使わせてもらっていた。


けれど幼稚園や保育園に行ってないつつじは、服装への興味は薄く、毎朝つくしが用意する服を素直に着ていた。


もちろん3才ごろからつくしも聞いてはみたものの、つつじの反応は鈍く、可愛い格好をしてみたいという要求すらなかった。



_要求はしなくても、そう思っていたのかもしれない。



娘の願いに気づく事ができず、つくしは駄目な母親だと自分を責めた。




「つくしちゃん、どうかしたの?」

「…つつじ、あんな格好したかったんですね。あたし気づいてやれませんでした。」

「そうね。じゃ、つくしちゃんも着替えましょうか?」

「へっ?」



重い口で話すあたしをよそに、お姉さんの暴走は続き、気づけばあたし達親子のファッションショーが始まっていた。


だーっと衣装を吊るした衣類掛けが入って来たと思えば、ショップの人が控えてて、お姉さんはどんどんとあたしやつつじに服を合わせていく。


もう何着着たんだって分からないくらい服を着て、つつじも疲れきって、お姉さんひとりが満足していた。(お姉さんの旦那さんは呆れていた)



「ん~、まぁこれくらいにしときましょう。もうちょっとあってもいいけど、司が選ぶ分を残しとかなきゃひねくれるだろうしね。」

「はぁ、そうですね。」



気のない返事をしたあたしを、お姉さんはじっと見た。



「えっと、あ、うん。記憶が戻ればあいつもあれこれ選ぶでしょうね。」

「……」

「気長に待ってます。あたし。」



本当は待っている訳じゃない。どっちなのか分からないが正直なところ。


でもそんなあたしの答えにお姉さんは安心したかのようでにっこりと微笑み、あたしも安心した。






「司、思い出したそうよ。」



「えっ?」




言葉の意味を理解するのに時間がかかった気がする。


それくらい一瞬思考が停止した。




「そうよね、タマ。」

「ええ。奥様からも、坊っちゃんからも連絡がありました。おととい、動画を見て記憶が戻ったそうです。」

「お母様からも連絡があったの? お母様は何て?」



お姉さんとタマさんの声が遠くに感じる。



道明寺が記憶を取り戻した。



それってあたしを思い出したって事だよね?





「ママ。」


つつじがあたしの服をひっばり声をかけ、はっとする。



「な、何?」

「おばちゃまとタマさんが言ってるきおくって、パパのこと? パパ、頭いたいのなおったの?」



じっとあたしを見上げて答えを待つつつじ。


その真っ直ぐな瞳に、あたしは嘘をつけなかった。



「…うん。そうみたい。つつじのパパ、頭が痛くなくなったんだって。」

「ほんとう?」



嬉しそうに聞き返すつつじ。あたしは大きく頷いて肯定した。


_ちゃんと笑えていたかが心配だった。






そして部屋に戻ろうとするあたしにタマさんが声をかけた。



「つくし。」

「はい。」

「誕生日おめでとう。」

「…ありがとうございます。きょ…」



タマさんはあたしの言葉を続かせずに立ち去っていった。


不思議に思ったけど、つつじが眠そうにしていたからあたしは部屋へと急いだ。




添い寝をしながらくーくーと眠るつつじを見て、あたしは道明寺が思い出した事を考えていた。


つつじが娘だって気づいたのだろうか?


…気づくよね。あたしに似ているし。


で、あたしの事はどう思っているんだろうか?


悪いなとは思ってるかな?

それで、許してもらえるとか考えてるかな?

いや、俺様なあいつの事だからいつまでも怒ってんじゃねーよと言いそう。

それだったらすっごく腹立つ。

って、そういやタコ殴りして許してやろうとか思ってたんだった。利子が膨らんだ分タコ殴りでは全然足りないけど!



仰向きで空中に拳を突きだしたら、ベッドが揺れてしまった。


それでここじゃ駄目だとベッドを抜け出した。


隣のリビングを通り抜け、洗面所へと向かう。



大きな鏡の前でシャドーボクシングをした。


が、もどきだった。


随分へなちょこになっているなとガッカリ。猫パンチにしか見えなかった。



「6年経つんだもんね。6年も経てば角も丸くなるって事かな?」



シャドーボクシングをしてみても、気合いが乗らないのはそういう事なんだろう。


あたしは怒らなきゃならないと思っている。


でも、



怒りはない。




なのに、なぜこんな気持ちになるんだろう?



喜びではないのは分かる。どうすればいいのか分からないから。


なら悲しみ? いやいやそれも違う。だってその証拠に涙出てないし。人前ならともかく部屋でひとりなのに泣かないのはおかしいっしょ?



「はぁ… 誕生日なのにな。」


そこで気づいた。


「あいつ、あたしの誕生日は思い出して、ないとか?」



_いやいや、そんな訳はないだろう。



「じゃあ、何で…」



何で来ないの?


何も渡さないの?




じわっと目頭が熱くなった。


そこであたしは悲しいんだと理解した。



「思い出したのなら、会いにくるんじゃないのお?」



ボロボロと涙が溢れてくる。



「なんで会いに来ないのよ、あのばかあ…」



なんで、なんで、なんでと呟いていると、


ふと先程のタマの行動が頭に浮かんだ。




『誕生日おめでとう。』



あのタイミングで言われた事。


それだけ言って背を向けた事。




_タマの言葉じゃない?



つくしはそう思った。


そして理解した。


会いに来れないんじゃない。


会いに行けないんだと。



「まだ待てって言うの? 何よそれ…」



袖で涙をぬぐい、への字口になってしまう。


だがつくしは悲しみが少し軽くなった気がした。





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坊っちゃん編を越える事は確実です。
つくしの揺れる気持ち書くの難しい。
なのでなんとなーくで読んで下さい。
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birthday song sideつくし part3
2018-02-05-Mon
エントランスに数人の使用人が集まり、その中につくしとつつじの姿もあった。


クリスマスも近いため、エントランスには大きなツリーが飾られてあり、つつじはツリーを見上げながら、サンタさんちゃんと来てくれるかなぁ?と話していた。



『ご到着されました。』

とアナウンスの声が響き、使用人と共につくしはつつじの手を引いてエントランスの外に出た。



横一列に並んでいると、タマもやってきて、リムジンが横付けされる。



ガチャッ


「つくしちゃん! つつじちゃん! お久しぶりね。」


長身の美女がリムジンを降り、にこやかに笑って二人に声をかけた。

つくしはあれっと肩透かしを感じたが、美女が抱いている幼子を見て納得する。



「椿様、豪(ごう)様、お帰りなさいませ。豪様、大きくなられましたね。」

「ええ。でもまだまだ赤ちゃんなのよ。歩けるくせに抱っこばかり言ってくるの。」

「今だけですよ。ねだられるのは。」

「それもそうね。」



椿に抱かれている男の子は母親を見ていたが、そのうち大人の中にいる子どもを見つけ、つつじをじっと見ると、つつじの方も手を降り笑顔で応えた。



「気になる? いとこのつつじお姉ちゃんよ。」


いとこと言われても2才児には分からないし、5才になったつつじもいとこという言葉を理解していなかった。


ただ、小さい者同士お互い様気になるようで、どちらともなくにこにこと笑っていた。



「で、椿様わざわざ帰国したのはどういったご用件なんですか?」

「あら。勿論それはつつじちゃんのピアノレッスンの事でよ。」

「…どなたか良い講師を知りませんかと聞きましたが、ひょっとして…」



嫌な予感とばかりにタマが言葉を濁すと、椿はに~っこりと微笑み返した。



「ええ、私が教えようと思って。つつじちゃん、ビシバシ鍛えるわよ~」




口をあんぐりとするつくしを他所に、椿はつつじの手を取り、早速はじめましょうと邸の中に進んで行く。


なぜこうなったとタマを向けば、タマはつくしがピアノ講師は一流ではなく幼児に辛抱強く向き合ってくれる人が良いと希望した事から、そんな人物を探すも以前椿や司に付けられた講師はその道のプロであったため、他を当たらねばならない。だが調べる時間がないため椿なら知っているのではないかと聞いてみたそうだ。



「調べる時間がない?」

「あー まぁ、なくもないんだけどねぇ…」

「タマさん、何か隠してません?」

「あんたも鋭くなったね。母親になったからかい?」

「タマさんっ!!」

「はぁ… なんて事はないよ。坊っちゃんがレッスンの成果を見たいというから、ビデオに送ると約束したんだ。」

「成果って、いつです? まさか… 来週とか言いませんよね?」


タマが渋い顔をし、つくしは図星だと判断する。


「はぁ? 1週間で上手くなるはずないじゃないですか? 何考えてんのあいつ!」

「つくし、いくらなんでも1週間で上達する訳ないじゃないか。」

「じゃあ、なんで1週間なんですか? あいつ嫌がらせのつもりなんじゃ!」

「……」

「…すいません。言い過ぎました。」



タマが黙って苦い顔をした事でつくしが謝り、タマはほっと胸を撫で下ろした。


当初司がNYに弾きに連れてこいと言った時、電話口で司の真意が読めなかったタマも同じように思ったからだった。



「つつじちゃん、パパにピアノを弾いているところをビデオに撮って送るらしいわよ。たくさん練習しなきゃいけないわね。」

「ビデオって?」

「動く映像よ。テレビなんかで流れているでしょ。」

「どーがの事?」

「あら、動画なら分かるのね。」



くすくす笑う椿につられてつつじも笑っていた。


が、その側でキョトンとする豪を見てつくしははっとする。



「おっ、お姉さん! つつじのレッスン中豪君はどうするんですか?」

「ん? 豪? もちろん一緒にいるわよ。私が側にいなきゃ、この子すごく泣き喚くから。」

「え… 豪君がいてレッスンできます、か?」

「そりゃ私ひとりでは無理よ。だからつくしちゃんも手伝うの。」

「へっ?」




楽しそうな椿を眺めながらタマは主導権を取られた事に、不安を隠せなかった。







「うん。ここでレッスンした方がいいわね。練習の成果を動画に撮るなら、向こうの部屋より表情も明るく映せるはずよ。」



はじめは椿もレッスンした部屋に通されたのだが、部屋の暗さに気づき試しにスマホで撮ってみると、カーテンを閉じても開けても上手く表情を映す事はできないし、またピアノの位置と部屋の大きさから、全体像を映す事も難しかった。


というのもつくしのスマホは後に3つほど新しい型が出ているもので、カメラ機能が良くなかったのだ。(送信用のビデオは別にあるのだが、つくしも録画するだろうと椿が提案し、つくしもそれを頼んだため)


スマホを新しくすれば解決できる事だったが、椿はそれを薦める事はしなかった。



そこで大広間に来たのだ。



ゆっくり入ってくる椿やつくしを置いて、つつじはピアノの方へ駆け出して行く。



「わっ、つつじ待って。勝手に開けたら危ないわよ!」


鍵盤を開こうとするつつじを見て、鍵盤蓋が閉じて手を挟まないかと心配するつくし。だが鍵盤は鍵が掛かっていて開かなかった。



「つつじちゃん、これは重いから手を挟んでしまったら大変よ。覚えておいてね。」

「うんっ。」


優しく話しかける椿に、つくしも安心して見守る事にすると、



「じゃつくしちゃんは、側に座って。」

「え? あ、あたしですか?」

「ええそう。ほら早く。」



なぜかつくしもレッスンする事になる。


いや、レッスンというよりお手本というようなものだろう。ピアノを弾くのも初めてなつつじには、いきなり上達するやり方ではなく、ピアノを楽しんでもらおうと椿は考えたのだ。


そのためつくしに鍵盤を叩いてもらったのだ。大好きな母親が音を出す事でつつじは自分も早く叩きたい。やりたくて仕方ないとうずうずすると椿は思った。



だが、



ダーン!



「つ、つつじ。もっと、優しく叩こう?」



ダーン、ダーン!



つくしは普通に叩いたはずの鍵盤を、つつじは思いっきり叩いて音を響かせた。


予想外の展開に椿は唖然とする。


そして見守っていたタマも目を丸くしていたのだが、意外な事に豪もだーん、だーんと腕を回して楽しみ出した。



そして椿はピンときた。


側に控えていた使用人を目配せで呼び、手でビデオを回すため持ってこいと指示を出す。


タマも何をするつもりなのかと分からないでいた。



「ねぇ、つつじちゃん。つつじちゃんは何の歌を知ってるかしら?」

「つつじが知ってるお歌?」

「ええ。」

「んー あっ!じんぐるべる歌えるよ。」

「そうね。クリスマスが近いものね。お母様と一緒に歌っているのね。」

「うん。ママといっぱい歌ってるよ。」

「それじゃあ、歌ってみましょう。みんなで手拍子するから、ね。」

「うん。ママも一緒に!」

「えっ、ああ、良いわよ。」



そして手拍子に合わせてジングルベルを歌う。が、幼児の歌う歌は元気いっぱいで少々音程は外れていく。



「すっごく上手ね。それじゃあ、今度は手拍子の代わりにつつじちゃんがピアノを弾いてジングルベルを歌いましょう。」

「つつじが弾くの?」

「そう。歌に合わせて弾いてみて。上手に弾けなくても楽しくやってみましょう。」

「うん!」



せーので弾きだすつつじ。それに合わせて皆も歌うのだが、相変わらずつつじの鍵盤裁きは豪快で、全く歌に合っていなかった。



そんな中ビデオを取りに行った使用人が戻ってくる。



「うーん、中々上手よー 本当に初めてだとは思えないわ。」

「ほんとう?!」

「ええ、本当よ。」

「えへへへへ~」

「それじゃあ、今度は歌なしで弾いてみて。」

「お歌歌わないの?」

「つつじちゃんは歌っていいわよ。小さく歌いながら弾いてみましょう。うんと楽しく弾くのが上手に弾けるコツよ。」

「うん、やってみる。」



そうして演奏したつつじのジングルベルは、当然ながらジングルベルに聞こえなかった。


だがつつじはとても真剣に鍵盤に向き合っていた。


つくしは例え上手くできなくても、こんなにやる気を見せた娘に感無量で涙を堪えるのに必死だった。


とはいえ、隠し通せるはずもなくつつじにまたママ泣いてる~と慰められるのだった。






そして椿はタマにビデオを渡すのだった。



「この動画を最初に送ってね。」

「しかし、送るのは次の火曜日です。毎週火曜日に送信すると約束しましたから。」

「じゃ来週の火曜日にそれを送って。」

「まだ数日ありますよ。もっと練習してからでも…」

「ふふ、何もスタートを上げる必要はないんじゃない?」

「スタートを上げる?」

「マイナスからのスタートの方が、きっと上達ぶりに驚くと思うの。司がどう思ってつつじちゃんの援助を言い出したのかは分からない。でも、つつじちゃんのがんばりは司の刺激になると思うの。」

「それで記憶を?」

「それは分からないわ。それで記憶を取り戻すかもしれないし取り戻せないかもしれない。でもね、つつじちゃんのがんばりを見てつくしちゃんは感動していた。親なら当然よね。だから司も動かされると思ったの。NYでひとり戦ってる司をね。動かされて欲しいのが、願いでもあるのだけど。」



タマはビデオを握りしめ頷いた。


この動画が光を失った司の一筋の光になってくれる事を願って。





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なんだかsideタマっぽくなってきた。方向修正せねばならないなぁ。
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