甘さとスッぱさと ... 臭いモノに蓋を取り22
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臭いモノに蓋を取り22
2016-11-08-Tue
日本におけるバレンタインデーのチョコレート事情は某お菓子メーカーの戦略と誰しもが知っている。

しかし、バレンタインデーソングのヒットなどもあり今やそれを受け入れている日本人は多い。

最近では友チョコと女性同士の贈り合いもあるようだが、やはりバレンタインデーにはチョコレートを持って好きな人に告白というのが日本人の定番になっているだろう。

昨年ここアメリカで3大ネットワークのひとつのTV局が日本のバレンタインデー事情についてニュースで取り扱った。

他国の事を紹介するときに、興味を引くように極端なモノを取り上げるのはどの国でもあるだろう。

しかし余りに極端すぎていても、それがその国のモノと受け入れられてしまう現実も少なくない。

バレンタインチョコの甘酸っぱい思い出は、日本人女性には誰しも持っている。

そんな思いを持っている道明寺ホールディングスNY本社の女性社員は、去年のそのニュースに憤りを覚えた。

メープルは高級ホテルであると同時に、ウェディング事業も行なっている。日系企業の高級ホテルウェディング担当者としても、日本のバレンタイン事業が面白おかしく認知されることは許し難いことであった。

そんな女性社員達は1年間ずっとバレンタインイベントの企画を練っていた。

そして去年の司の離婚。

独身に戻った司を女性社員は歓迎した。

そして、司に日本のバレンタインチョコの甘酸っぱさを伝えてもらおうと意気込んだのだ。

しかし、司をよく知る秘書はただでさえ甘いモノ嫌いな司がこの企画を受けるはずはないと思っていた。

しかも夏を過ぎた辺りからの司の機嫌事情。

下手をすれば何人の女性社員の首が切られるのかと戦々恐々としていた。


だが岩元はまた別の考えを持っていた。

確かに司は甘いモノが嫌いだし、バレンタイン事情などどうでも良いだろう。

だが自分の恋愛事情に関してはほぼそれが100%といってもいいくらいに占めている。

おまけにクリスマスでの自らの話題提供。

それらを一気に解決出来ると岩元は踏んだのだ。

***


「気持ち悪い。・・なんだこのかったるい臭いは(怒)」

「・・そんなに臭いますか?」

確かにメープルの敷地内はバレンタインのためチョコレートの匂いがするが、イライラした様子の司を見て、岩元は臭いではないことに気づく。

ーああ、確か去年はネクタイを贈られていたな。チョコとかけていたのだろうこげ茶色のネクタイで司には全然似合ってなかった。

今日のイベントに合わせて司には服装を指定している。あのネクタイを締められないのもこのイライラの原因かと岩元は思った。

「そのシャツは牧野様のモノですよね。変わった襟元で、それだとノーネクタイじゃないですか。今日はビジネスと言うよりもカジュアルを意識した方が良いんです。・・・それに、、来年はチョコ貰えますよ。」

きっとと心の中で呟く岩元。

その慰め?に少しだけイライラを鎮める司。

その様子が分かりやすくて岩元は口元の緩みが抑えられない。

「あ?てめぇ何笑ってんだよ。」

「笑ってません。副社長の気のせいです。・・ぷぷっ。」

やっぱ笑ってんじゃねーかと息巻く司。だがイライラはだいぶ収まったようだ。

「もうすぐトークショーですよ。打ち合わせ通りにお願いします。」

「おめぇその格好似合わねぇな。」

「まぁ日本人ですからね。ですが、ここはNYですしバレンタインイベントで和服もおかしいでしょう。」

岩元は神父の格好をしていた。純日本人の中年のおじさんの神父姿。確かに全然インパクトも無い。

「似合う奴にさせたらどうだ?」

「トークショーでイメージコントロールをするんですよ。副社長の事情を知らなければ出来ません。それでも良いんですか?」

「んな訳ねーだろ。」

それに司に対して臆せずトークを進行出来る者もそういない。何せ司にはそれなりに不機嫌でなければならないのだ。

それならばイライラを収めてどうするとも思ったが、トークショーの会場は予想通りに若い女性ばかり。あと数秒でこれを見た司の機嫌が急降下するのは間違いないから良いだろうと岩元は算段する。

「それでは行きましょう。」

「おお。」




キャーーーーーーーーーーーー



ビキッ(怒怒怒怒怒)


幕を開け司が姿を見せた途端に上がる悲鳴のような歓声に、これまた音になるはずがない効果音が聞こえた気がして岩元は笑いを堪えるのに必死だった。

***


トークショーはまず苦言から始まった。

クリスマス以降の司に対する追っかけの存在。会社にまで付いてきて社員の士気を下げる行為に司は苦言を呈した。

自分は有名人との認識は持っているが、タレントのようにその人気でビジネスをしている訳ではない。道明寺ホールディングスという大企業を率いる企業人なのだと。

そのため今日以降追っかけのような行為は辞めて欲しい。それを続けるのならば法的な手続きも検討すると言ったのだ。

そしてそれを煽るようなインターネットサイトも今日以降更新を止めるように進言した。

自分の行動を把握されることは、ビジネスにおいて時に数億規模の損失に繋がりかねない。それを知らずにいた者がやっている可能性もあって今までは静観していたのだが、今日このことを伝えたからにはこれに関しても目に余るようになれば法的な手続きも検討するとも続けた。

バリトンの低く良く通る声での苦言の内容もそうだが、何より司の不機嫌MAXの表情に会社の雰囲気は静かになる。

司はトークショーが始まってまだ一度たりとも笑ってなかった。

ミスをした社員を威嚇するか如く、会場全体を恐怖に陥れていた。

そんな空気の中司会を務める神父コスプレの岩元は、話題をバレンタインイベントにシフトする。

「バレンタインデーに日本だと、チョコレートを贈って告白したり、また恋人の場合は贈り贈られることで互いの愛情を確認しますね。シャイな日本人にはそうやってバレンタインデーが広まった様な気がします。副社長はバレンタインにチョコレート貰いましたか?」

「ああ。」

「副社長は沢山貰えそうですね。ですが副社長は甘いモノは苦手だったように記憶しています。貰ったチョコレートは食べましたか?」

「ああ食べた。」

そこでフッと和らいだ表情を見せる。

「食べたんですか?」

「そりゃあな。・・・受け取ったのは食うさ。」

甘い、でも少し苦い。

司の表情からはそんな気持ちが伺えた。

会場の女性達は司の表情に釘付けだった。


その後はメープルのバレンタインデーイベントの一つ、NY在住の日本人のバレンタインデーのエピソードを紹介して行く。

コスプレ神父岩元が幾つかエピソードを紹介する中、司はどこか上の空だった。

そんな司の様子に、会場からは誰の事を想っているのだろうという空気が漂う。


そしてもうひとつのイベント匿名カードでの告白のコーナーへと移っていく。

「この匿名カードでの告白は、イギリスの学校内でのイベントとしてあるようです。ここアメリカでは好きなら好きと告白します。イギリスでは誰からなのか探す楽しみもあるようですが、シャイな日本人には中々そうは行きません。さて、匿名ですが当人には分かるようにメッセージを書いてあるはずです。このメッセージを副社長に読んで貰います。この場で応えても良し、後で応えても良しとします。イベント終了後、ここメープルでカップルが誕生することを願って行って行きます。」

そして司がメッセージを読む。

司の低く穏やかな声に会場はウットリとしていた。

「時間が迫ってますね。次をラストとします。」

そして司がカードを開く。

「大きな眼で、自分を指差し宣戦布告をしたお前がずっと好きだった。

まだガキだった自分を早く変えたくて背中を向けた。

あれから何年が経っただろう、、

風化しない気持ちこそが今の自分を支えている。

だから早く俺の元へ来い。

愛している。」

フッと空を見上げる司。

会場の何人かは司自身の事かと思ったに違いない。

「男性からの告白ですね。会場にお相手の方はいらっしゃるでしょうか?」

そう言って会場を見回すコスプレ神父岩元と、司。

当然手を挙げる人はいない、、と思ったら。

「私だわ。」

と、キャーと声を上げる黒人女性。

岩元が司を見ると、おめぇじゃねーよとばかりに苦虫を噛んだような顔だ。

「おめでとうございます。どうぞお幸せに!!」

コスプレ神父岩元は笑いを抑えながらも声を上げてイベントを締めくくった。



イベント終了後、司はまだ不満気だ。

宣戦布告する女なんかそうそういるかとブツブツ言っている。

岩元は神父のコスプレを脱ぎ、Tシャツ姿にスラックスだ。50代の中年のおじさんは中肉中背だがやはり少し腹は出ている。

「副社長お疲れ様でした。」

「おう。お前、ちっと鍛えたらどうだ?」

「ご心配なく。妻はこの僕で満足してます。」

そうかよと司は不機嫌だ。岩元には妻がいることへの妬みだと思えた。

「上手く行ったと思います。苦言の方も様子を見ながら実行して行きますし、これで副社長に想い人がいると印象付けられたでしょう。」

「反感買わねえか?」

「大丈夫です。片思いするイケメンは女性の好物ですから。牧野様のお披露目もそれに合わせ、、」

「俺は片思いじゃねぇ!」

「・・・すいません間違えました。」

「そこんとこ重要だぜ。間違えてんじゃねーぞ。」

「・・はい。」

片思いという設定が必要なのだが、この様子では例え設定でも受け入れないなと岩元は思った。

仕方ない黙っておくか。上手く行けば結果オーライだろうしな。

神父の衣装を小脇に抱え、Tシャツスラックスのおじさんのシュールな姿は、しばらくしてメープルから見えなくなった。



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なかなか再会しない。
つい話を盛ってしまった。
いや、繋がるんだけどね。
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