甘さとスッぱさと ... 一歩進んで立ち止まる14
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一歩進んで立ち止まる14
2016-11-26-Sat
早朝6時すぎ

滋は都内で運転をしていた。

助手席にはイケメン、、ではなく大河原家の運転手が座っている。この道30年、大河原家に雇われてからも20年は経っているベテランドライバーだ。

東京に戻って以来、滋はこの運転手と早朝に運転練習をしていた。

免許は取得したものの、教習所のある田舎と都内では道路事情は随分と違う。

そのことを踏まえ車の少ない時間帯に運転し、都内の道路に慣れようとしているのだ。

まだ早い時間とあって車だけではなく、人もまばらだった。

都内の道路は毎日使っていたのに、運転席から見る風景は滋には初めてのモノだった。

5車線の道路、有料道路でもないのにある誘導車線、(かと思えばいきなり有料道路になっていたりする)そして指示器の多い信号機。

免許を取得した田舎とは大違いだった。

はじめはその風景に物珍しさを感じた滋だったが、次第にあることに気付く。

看板だ。

幹線道路沿いのビルには車中からでも見つけられるよう大きな看板が立てかけられている。

その多くがCMに起用されているタレントのパネルで、お菓子にビール、調味料といった食料品から、家電に車、はたまた生命保険など一般の生活に必要不可欠な物ばかりであった。

「松田さん、うちの看板って見かけないわね。」

「そうですね。最近は少なくなりましたね。」

『まもなく右へ曲がります』

「お嬢様、次は、、、恐れ入ります。」

カーナビの音声案内を聞き運転手の松田が言うと同時に滋はウインカーを付け、右へ曲がるべく車線変更していた。まだ車もほとんどいない時間帯、車線変更も難なくできる。

「いいのよ。昔から私を知っているんですもの仕方ないわよね。」

右折しながら滋も答えた。

早朝の時間とはいえ、こうやって空いている時間はそう長くない。あと30分も経てば車が目立ち渋滞が起きて来るだろう。それに巻き込まれないためにも、あらかじめカーナビにルートを登録しておき、練習のための時間を有効に使っていた。

「それより最近はってことは以前はあったってこと?」

「ええございました。OGHEのCMも数多く流されていたんですよ。」
*OGHE:大河原興産のガソリンスタンド

「へーでも、じゃなんで少なくなったの?」

「時代とでも言うんでしょうかね。湾岸戦争などの影響で原油価格が高騰、ガソリン価格も上がりました。それで給油する足も遠のきスタンド側としては人権費などを抑えていたようです。そんな中で広告にかける出費も自然と抑えていったと認識しております。」

「ガソリンの値段ってそんなに上がったの?」

「一時はリッター180円というのも見ました。それまでは150円台だったので、かなりの上げ幅でしたよ。私は仕事で使うので経費という目で見ていましたが、自家用車となると家計にかかる割合は馬鹿にならないと思います。最近はまた下がってきてますね。経済情勢が背景にあるんでしょうが、、」

「なるほどね。」

そう言いはしたが良く分からない滋だった。一般家庭の家計事情を知らないのだから仕方ない。

「それで人件費でって、つまりガソリンスタンドには配置が減らされたってこと?」

「詳しくは存じませんが、セルフ式のスタンドが増えたのがそれになると思います。」

「セルフ式?」

「給油を客自ら行うんですよ。」

「へ?い、いいの?」

「お嬢様、先日アルバイトをやったのでは?給油難しかったですか?」

「あ、そっか。」

アルバイトの経験からこのことはすんなり納得いった滋。給油する際にはいろんな安全装置などあってルールさえ守れば確かに一般客でも出来そうだ。

とはいえ、大河原の看板が少なくなった理由は分かった。時代は変化しているならば、大河原の影響力も変わっているのだろうか?

ビジネスの事は良く知らない滋だからか、看板の数で大河原の影響力の減少を考える滋だった。

「もうそろそろマンションでございますね。明日はそのセルフ式スタンドに行ってみますか?」

「そうね。一度は経験したいわ。」

***


マンションに戻り滋は少し遅めの朝食を取った。

そして身体を休めながら朝の情報番組を見ていた。

秘書課に勤務していた時、朝はキッチンに立っていたからテレビに向くことはなかった。

早朝運転の後、朝食を取ろうと何気に付けたテレビに関心をもった。

8時までの情報番組は同じことを繰り返しているし、8時からの番組はその日注目のニュースを時間をかけて伝えている。

ワイドショーに、事件事故のニュース、そして政治のことなど、新聞を読む習慣のなかった滋にはその日の時事が分かるだけでなく、そのニュースについて述べるアナウンサーやコメンテーターの意見が一般のモノと思えて、聞き入ってしまった。

そのうち滋の目の前にはノートパソコンが置かれ、テレビを見ていて気になることについて検索していた。

今滋が検索かけたのはあるコンビニとOGHEだ。

コンビニのCMでちらっとOGHEカードが出て来たのだ。

検索すると提携しているらしい。

しかし滋の周りにOGHEカードを持つ者は少なかった。秘書課にマイカーを持つ人物がいなかったからだ。

秘書課でもこのコンビニを良く利用しているのは知っていたが、他のコンビニだって使っていた。

うちと提携していることは知り得なかったのである。

「看板が少ないからって影響力が落ちたと考えるのは浅はかという事ね。」

大河原興産の繁栄に陰りがあればと馬鹿な考えを持った時もあった。

流石に口に出すほど愚かではないが、自分の前に立ちはだかる大きな壁と認識している滋にとっては少し肩を落とすものだった。

そして免許を取得した今滋は目的が無かった。

早朝運転もすでに慣れてきており、混雑時の運転も計画している。

このペースだと、都内での運転に慣れるのも時間の問題だろう。

目的の一つを失うことに、冒険のつまづきを感じてしまった。

挫折ではない立ち止まるだけなのだが滋は立ち止まりたくなかった。

「そもそも私に何が出来るんだろう。」

免許を取ったことで知らなかった世界が見えたけれど、自分の居場所はまだ見つかっていない。

滋は焦っていた。

司が離婚した今、つくしとヨリを戻すのはもうすぐに違いない。いや、明日にでも再会してそのまま結婚だってありうる。

だがその時に自分は何をしている?

フリーター?

いやそんな言葉では騙すのは嫌だ。

つまり無職なのだから。

自分の存在価値を見出せない滋は、焦りばかりで前に進めないでいた。


閉じかけていたパソコンを開いて、キーを叩く。

“壁に当たったらどうする?”

何気に検索をかけた。

すると、質問の回答なのかページがヒットした。

その回答はシンプルだった。

“押してダメなら引いてみな”

つまり逆転の発想をしろという事だった。

「引く、、つまり逆ことか、、私の場合だとお嬢様で居たくないの逆だから、、、」

滋はゆっくり顔を上げる。

「お嬢様を受け入れろという事?」

それではここ最近の自分は何だったのか。令嬢ということで葛藤し、何とか脱却しようとアレコレ考えてきた。

「また戻れと言う事?戻れる訳ないし。」

そもそも現実を知ってしまったのだ。戻れる訳は無い。

数ヶ月前の自分ではないのだから。


仮に戻るならどうなる?と考えてみた。

秘書課でまた雑務をこなす?

最近はお見合いという会食もない。

そういえば立石さんとデートしたな。

大河原を継げそうなエリートと結婚するために。

今はそんな気にさえならない。

何故そんな気になってしまったのか、、

何故・・・


令嬢だからだ。

他の企業の令嬢はそうやって政略結婚をして、幸せになっている。

いや、幸せかどうかは分からない。

自分の両親のように仲が良いこともあるだろう。

しかし司のところはどうだ?

司の母親は会社の拡大と共に経営に身を投じ、子どもに背を向けた。

司の妻、別れた妻は今事業をやるらしく準備をしている。

会見をビデオで見たが何故あんなに晴れ晴れとした顔だったのか、、

だが、司達には子どもはいなかった。

司が作ろうとしなかったとおもうのだけど、、

目的があれば令嬢でも地に足が付ける?

子どもは、、

欲しくない訳ではないけれど、欲しいと思える相手がいない。


ならば!

悲しませる子どもを作るよりも、自分を輝かせることが良いのではないだろうか?

司の母親も、もし司達姉弟が居なければ鉄の女になってなかった?


滋は令嬢として出来ることの模索を始めた。


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我が道を行く、です。
滋さん輝かせまっせー
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