甘さとスッぱさと ... 一歩進んで立ち止まる17
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一歩進んで立ち止まる17
2016-11-29-Tue
母と会話した2週間後の週末、とあるパーティ会場に滋は来ていた。

この日が来るまで、滋はビジネスマナーのレッスンを受けていた。

これまでこの様なパーティには参加するものの、仕事の意味合いの無い滋は相手の顔をろくに見ず、食べて飲んで適当に帰るという態度を取って来た。

しかし自分の居場所を見つけに来た今回は、その縁を引き寄せるためにも基本となる挨拶や、間の取り方などのレッスンを受けたのである。

幼い時にもこの様なレッスンは受けていたが、何せ気合いの入れようが違う。

レッスン講師は滋の受講態度を見て、かなり踏み込んだレッスンを行っていた。



そしてパーティ会場に足を踏み入れる滋。

ドレス姿の着飾った女性達が多い中、滋の装いは皆と違っていた。

胸元の宝石に肩を出した華やかな印象だが、胸のすぐ下というハイウエストのパンツスタイルを取り入れ、真っ赤なルージュが芯の強さを印象づけていた。

その強さに軽々しく声をかける男性はおらず、前に進む滋のハイヒールの音は音を吸収する絨毯の上でも鳴り響くようであった。

パーティの主催者に挨拶をし父の名代として参加した旨を伝え、大河原滋という存在を前面に出した。

それからも参加者の数人と挨拶を交わしていった。

これまではどちらかというと軟派な挨拶が多かったが、今日は立場を尊重した礼儀の強いものであった。


とある挨拶を終え飲み物を口にしようとした滋は、自分に向けられる視線を感じる。

それは羨望や嫉妬、蔑まされるようなものではなく、滋自身を見て驚く目だった。

シャンパンを一口飲んだ滋はその女性の元に歩み寄る。

「こんにちわ。」

「こんにちわ。」

「何かご用ですか?」

「・・・・・」

その女性は滋が来たことよりも滋の態度に驚いているようだ。

しばらく様子を伺う滋に女性が声をかける。

「大河原滋さんよね。貴女半年前と全然違うわ。何かあったの?」

自分を知っている様子の態度に滋は、自分の記憶に働きかける。

ー誰だろう。

歳格好からして同年代ね。

そういえば見たことある顔だわ。

学園の同級生?


「もしかして永林学園で一緒だったかしら?名前を教えて下さる?」

「伊集院春香よ。高校2年と3年の時同じクラスだったわ。」

名前を覚えてないことにムッとしたような表情をしたが、

「ああ、思い出した。伊集院さん久しぶりね。名前を覚えてなくてごめんなさい。あの頃は私の家目当てで近づくような友人しかいなかったものだから。」

その嫌味とも取れる滋の言い訳に伊集院春香は逆にすっと納得する。

「そう、、ね。あの頃は確かにそうだったわね。」

大学は学部の違う2人だった。しかし大学を卒業してから10年近くが経っていることで伊集院春香自体も変化があった。

「あの頃は自分の家柄よりも高い貴女におべんちゃらなんかして、馬鹿な私だったわ。あまりに幼く恥ずかしい。」

“恥ずかしい”そう言った彼女こそこの10年で変化があったのだろう。滋はそれが知りたくなった。

「そう思えるエピソードを聞かせて。」

ニコっと滋は笑うが、伊集院春香は顔をひくつかせる。

「そのくらいの意地悪は良いでしょ。当時私は人間不信に陥ったのだから。」

間違いではない。ただしその後つくしに出会い、人の本質を見れる様になった。

「そう、、ね。それもそうだわ。」

ふーっと息を吐いて伊集院春香は自分の経験したことを話し始めた。

社会に出ればいくらおべっかしようが、目上の者に通用する訳もなく、逆に不信感を抱かせるだけで、自分の存在を無視されたこと。

そのことで一緒におべっかしたはずの人間にもいつしか不信感を持つようになり、悪しきサイクルを自覚する。

自覚からただそれを辞めただけなのに、気づけば自分の近くに人が集まってきていて、涙したこと。

親身になる人間に身分など関係ないことを知り、それからは良好な人間関係を築く努力をしていることを話した。

「本当に井の中の蛙ってことよね。狭い視野に気付けて私はラッキーだったわ。」

「ラッキー?それは気付けない人もいるってこと?」

「残念ながらいるわね。ラッキーと言うように、気付けるタイミングとまた年齢とがあってね。ある年齢を過ぎたら気付く可能性はぐんと低くなる。頭が固くなるっていうのかな?年齢で積み上げられた認識を変えられないみたい。そう教えられた時は良く分からなかったけどね。」

幼いが故に分からないこと、それが良くも悪くも作用する。それが良い風に働けばラッキーという事なのね。

秦野から指摘された幼き自分の思い込みを思い出し滋も眉を寄せる。

「貴女にも身に覚えがあるのね。」

苦笑いする滋。伊集院春香もそれで理解したようだ。

幼いが故のわだかまりを認識した今なお持ち続けるのも無意味だ。

そんな時ひとりのご老体が近づいてきた。

「大河原さんのとこの娘さんじゃな。随分久しぶりじゃないか。元気にしとったか?」

声をかけてきたのは経済界の重鎮だった。

普通ならばいくら大河原の令嬢といえども声をかけることはないだろう。しかし今日の滋の変化に興味を持ち近づいてきた。

「お久しぶりです。和田会長。」

伊集院は思わぬ大物の登場に怯んでしまった。

「学生時代の友人である伊集院さんとお話しをしていたところです。」

そう言って滋は伊集院をその重鎮に紹介する。和田は小娘になど興味がなかったが、滋に紹介させられ話に加わることにした。

「ほう。学生時代の。それじゃあ随分と長い付き合いなんじゃな。」

和田に言われて2人は顔を見合わす。

ぷっと笑い伊集院春香が答えた。

「いえ学生時代は仲が良くありませんでした。というよりも彼女には上部だけの友人しかおらず、私もそんな上部だけの付き合いが大人だと信じて疑わなかったんです。」

「ほぉ。」

この言い方で2人の関係が良く分かったのだろう。一皮剥けた付き合いなのだと和田は伊集院春香に興味を示した。

「伊集院ということはどちらの方かな?」

「主人は保険会社を経営してます。」

「なるほどそちらの方じゃったか。」

「伊集院さん結婚していたの?」

「ええ、3年前にね。まだ子どもはいないんだけど。」

「お婿さんなの?」

「いいえ、嫁いだわ。」

「じゃ、学生時代は伊集院じゃなかったってこと?」

「ええ旧姓は宇田川だったわ。」

「宇田川、、あー思い出した。」

ハッと声を上げたことに気づき口に手を当てる滋。

「失礼しました。」

肩を落とし無礼を誤る滋。

「まだ皮は剥け切ったらんかったようじゃな。」

和田はハッハッハと笑っている。

滋はジロっと伊集院春香を睨んだ。

「ごめんなさい。旧姓で答えるべきなのは分かってたけど、覚えてないっていうのにムッとしちゃって。」

「そりゃあしょうがないのう。」

伊集院春香の言い訳に和田も同調するものだから、滋はぶうたれるしかない。

だけど、嫌な感じはなかった。

「確かにそうね。覚えてなくてごめんなさい。」

「いいえ、私こそ。さっきは意地悪な事を言ったし。」

ふふふと笑い合う2人の雰囲気を見て、和田も嬉しくなったようで、

「ふむ。今が皮が剥けた瞬間じゃったか。それに立ち会えたのも何かの縁じゃな。また機会があれば話そう。いや、楽しかった。」

そう言って和田は離れて行った。

そんな和田を見守り、少し距離が離れたところで伊集院春香が口を開く。

「はぁ、あんな大物とお話しちゃうなんて大河原さんがいたおかげね。」

「そうかな?普段はパーティでお会いしても父がいなければ声をかけられないけど。今日は機嫌が良かったのかな?」

「それはあるかもしれないけど、それだけじゃない気がするわ。貴女の変化に目を引かれたんじゃないかしら?」

「そう?」

「ええ。はじめにも言ったけど本当に貴女半年前と全然印象が違うのよ。」

そう言われ、これも何かの縁かもと滋は伊集院春香にこれまでの葛藤を話した。



「そうだったの。そうよね。貴女の立場だからそんな苦しみを経験することになったのね。でも、貴女はラッキーだったってことでしょ。」

「ええ。持っていて良かったわ。でも、まだ自分を生かせてないの。その縁を探しに今日は来たんだけれど、、」

その言葉に伊集院春香は少し考える。

「大河原さん、紹介したい人がいるの。」




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自分の体験を脚色してみました。中学の時悪ガキだった子が20年後マトモになって挨拶してきた時の衝撃!あまりの驚きに大きな声を出してしまいました。(本人は苦笑いしてた。)
みなさんも経験ありませんか?
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Re:

お二人コメントありがとうございます。

私の場合は同窓会やクラス会ではなく、職場でばったり会ったんですよ。
中学の時のあだ名で呼ばれ、誰だろーと思ってたら向こうも当時のあだ名で返したんです。
超びっくりした。
ちなみにあだ名は知ってても本名は知らないってね。それから付き合いが始まった訳ではありませんでした。

そして逆パターンですか、それもまた人生ですね。
思い出が崩れた瞬間ってヤツかな?
F4でそれをやったら炎上しそうですね。
悪戯心をくすぐられますが、、
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