甘さとスッぱさと ... 一歩進んで立ち止まる18
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一歩進んで立ち止まる18
2016-12-01-Thu
7月上旬、とあるビルの一室。

「じゃあこれが内容ね。この位の作法は小さい頃からやっているから簡単だと思うけれど、この教室に通う生徒さんは一般の人達だから本物のセレブの所作を見たことがないのよ。だから実践お願いね。」

「分かりました。」

やる気のない態度。

祖父に言われて嫌々参加した事が顔に出てしまっている。

―まぁ、この年でそれを上手く隠せてもね。それって手遅れってことだから。

滋は20歳になるこの子を見て思った。この子の名前は斎藤貴和子、永林学園大学3回生で祖父は衆議院議員を経験している有力者だ。つまりこの子は生まれつきのお嬢様で、学生時代滋をおべっかしていたような子だ。

「そうそう、実践している様子をビデオに録るわ。後で反省材料に使うの。それ以外では使わないし、そのことはあなたのおじい様にも許可は取っているわ。」

彼女はビデオという言葉にムッとした様子だったが、祖父の許可という言葉に反論はしなかった。

それから教室に入り、20人足らずの生徒の前に立つ。

生徒は全て女性。20代から30代の彼女より少し年上の人ばかりだった。

その面子に少し気後れした様であったが、滋は構いもせず講義を進めた。

講義の時間は45分。決して長くはないはずだが、彼女には長く感じただろう。

生徒から彼女への視線は穏やかなものではなかった。

***

バンッ

講義が終わり控室に戻ってきた滋とお嬢様。

お嬢様の機嫌はそりゃあ悪そうだ。

「なにあれ?あれが講義を受ける態度なの?一般の人って言っているけど、要は庶民でしょ。品がないったらありゃしないわ。もう帰っていいわよね。」

「そういう訳にはいかないわ。講義はここからが本番なの。」

「何言っているの?」

カチャ

控え室に数人の女性が入ってきた。その中には先ほど生徒で参加した人もいた。

「な、何よ。何なの?」

「あなたのおじい様に頼まれてね。現実を見せて欲しいと言われたの。」

「現実?どういうことなの?私を騙したのね!」

お嬢様は怒りのあまりパニックになっているようだ。

「そうよ。」

ケロッと滋は認める。

「ホントの事を言ってもあなたには通じないでしょうから、荒療治をするの。」

「はぁ?何言ってるの、、私はどこもおかしくないわ。」

「そう思っているのはあなただけよ。」

滋の声は低く抑えて冷たく言い放った。

「あなたのおじい様はとても名声をお持ちなの。影響力もとてもお持ちよ。分かる?」

「そんなの知っているわ!私を馬鹿にしないで!あなた誰よ。あなたこそ祖父のこと知らないんじゃないの?」

「私は大河原滋。大河原興産の一人娘であなたの先輩。」

滋の正体を知り怒るお嬢様こと斎藤貴和子は口をつぐんだ。

それをチラッと見て滋は本題に進む。世間知らずのお嬢様の言い分など聞いている暇はない。

「とりあえず、私たちの話を聞いてね。それからあなたの反論を聞くわ。」

そう言って滋たち一行は話を進める。

内容はこうだ。

学生の身分を離れたら社会人として見なされる。

しかしお嬢様として育った者はその線引きが出来ない。

出来ないが故に大なり小なりのトラブルを起こす。

小の方は、反感や不信感といった負のイメージを持たれ、無視されたり、最悪利用されたりする。

大の方は、、

「おじい様の社会的地位を無くすことかしら?」

「な、、どうしてよ?そりゃあの態度が庶民の反感を持つのは分かるとしても、それがどうしておじい様に向く訳?」

滋達の目は冷たい。しかし楽しんでやっているところもあった。
それは相手は違えど、昔の憂さ晴らしをしている様なものだった。

「反感を持たれることが分かってないわね。ま、世間知らずだからしょうがないか、、」

「何よ世間知らずって!いい加減にしてよ。」

「いい加減にする訳ないでしょ。さっきも言ったけど私達はあなたのおじい様に頼まれたの。だから徹底的にやるわ。」

女4人に睨まれお嬢様は分が悪い。しかし泣かないだけマシか?

いや、泣かないということは反論を考えていることだろう。もしかしたら反撃かもしれない。

「ナッツリターンって知ってる?ニュースは見てるわよね。」

「知らないわ。」

「マジ?」

滋は同僚と目を合わす。どうやらこのお嬢様テレビや新聞などは見てないようだ。
思い返せば、自分の学生時代も周りは宝石やドレスにしか興味は持ってないようだった。
ああ、後は男のこともだった。

「かいつまんで話すとね、、」

ナッツリターンのことを滋の側にいた女が説明する。
彼女は伊集院春香。先日のパーティで滋に再会しこのスクールに滋を誘った人物だ。

ナッツリターンのことを聞いても自分はそんなことしないと身に置き換えないお嬢様。
なかなか手強い。

「あなたがそんな態度のままなら、いつか必ず不用意な発言を取るわ。取ってしまってからでは遅いのよ。
一度失った信頼を取り戻すのがどんなに困難か、、取り戻せない方が多いのだから。」

「そんなことはしない。あなた達みたいに馬鹿じゃないわ。」

これにはカチンときた滋の同僚達。
しかし滋は怒りよりも憐れんでいた。

「ビデオ見てみようか。」

「何よ。」

「さっきの講義のビデオよ。反省用に録画していると言ったでしょ。」

「見たくないわ。」

お嬢様は拒否の反応を示すが、滋達は構わず再生のしていく。

大きなモニターに先ほどの講義の様子が写し出されていく。

「見なさい。見てから文句を言うことね。」

お嬢様はしぶしぶモニターに目をやる。

そこには、高飛車な態度の女がいた。
ここはマナー教室なのに、挨拶もろくに出来ていない。
講義をする立場にはとても思えなかった。
生徒の態度は当たり前のように思える。
あんな態度の講師の授業など誰が聞く耳持つだろう。
そのうちその女は居心地が悪くなったのだろう更に態度を悪化させた。

お嬢様の顔はみるみる真っ赤になっていった。
ぶるぶると唇が震え、あれは自分ではないと思っているに違いない。

再生を止めた。

「客観視って難しいわよね。でもこういう方法だと良く分かる。」

お嬢様はうつむいたまま顔を上げようとしない。
ポツリと頬を伝うものが見えた。

「何不自由なく育つと、周りは全て自分の為に動くと思ってしまうわ。
永林に入って上がいることは知ってもそれでも自分達は特別だと思う。
自分達は金持ちで、その他は庶民。
金持ちが雇う使用人と同じ扱いをするわね。でも皆が使用人じゃないわ。
そしてそう扱われたら反感を買う。
ひとりだけなら問題にはならないでしょう。
でもね、最近はスマホですぐに動画を撮れるのよ。
そしてインターネットに出ればもう回収するのは不可能よ。
誰かが保存してしまうから。
そしてその誰かは分からない。
そんな図式であなただけじゃなくあなたの家族まで影響は出るの。
そんな風に破滅していった金持ちは少なくないわ。
あなたのおじい様が今あなたを恐れていることが分かったかしら?」

お嬢様はコクっと頷いた。

***

「はぁ~なんとか上手くいったかしら?」

数時間後、場所を高級ホテルのバーの個室に変え今日の反省会を行う滋達。

「初めての試みだからね。あの子が改心しなければ斎藤様に申し訳ないわ。」

あのパーティで滋は伊集院春香から春香が世話になったマナー教室へと依頼があったお嬢様改心プログラムのことを聞く。

魑魅魍魎の蔓延る上流階級でも、時代の流れか愚息と化した子息令嬢の存在は問題視され、足手まといならぬ地獄に道ずれにされる一族を幾度となく見てきた。

そんな愚令嬢を持つ元政界の大物はこの娘をなんとかしてほしいと依頼してきたのだ。

春香の世話になったマナー教室は一般の生徒も多いがその身分は裕福な者たちで、講師を務める者もその世界を良く知る人材ばかりであった。

お嬢様改心プログラムは自身の経験から春香が考えたものだ。
しかし、春香は裕福とは言え家柄的にはお嬢様から見たら庶民に近いかもしれない。

お嬢様にパンチを与えられるような超セレブな助っ人を必要としていた。

そこに現れたのが滋だ。
大河原興産、石油事業では国内シェアトップで各企業への影響力も強い。
勿論政界にも。

そんな滋の登場に改心させたいお嬢様はおべっかするか如くへつらった。

見え見えな態度は気づいていないのだろう。
まだ永林という狭い井戸の中にいるのだから。

「改心するといいなぁ。あの子がああなったのはあの子だけのせいじゃないわよね。」

「そうだね。お金持ちの家に生まれた負の遺産だよね。」

「本人は気付いてないけど。」

「ラッキーな子でありますように!」

そう言ってグラスを上げる滋。
ほかのみんなもそれに合わせ乾杯する。

チンッ

今宵のシャンパンはすっきりした味わいだった。

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大分遅れました。
大岡越前的な感じにしてみました。
あんまりかな?
滋さんも令嬢皆が最初から嫌な子と思ってないと思ったんですよね。
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