甘さとスッぱさと ... 一歩進んで立ち止まる23
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一歩進んで立ち止まる23
2016-12-07-Wed
10畳ほどのそう広くない部屋にはテーブルを挟んで対面式にソファが置かれ、そこに50代の男が座っていた。

アポイントの15分前に大河原興産の1階総合受け継ぎに来たということは、きっかり時間通りにここへ着き、少しでも時間を無駄にしないという事なのだろうか?

日本人ならもう少し早めに来ても良さそうだが、直前までNYにいたことを考えると欧米式な勤務姿勢に慣れているだけなのかもしれない。

滋は前もって読んでいた調査書の内容を踏まえ、この男のことを読み解こうとしていた。

「もう直ぐ大河原も見えますので、もう少々お待ち下さい。」

ニコッと笑い滋はその男に対応する。

滋が言った大河原とは大河原滋のことで、もう直ぐ自分が来ると言っているのだ。

その男は滋のかおを見て少し目だけ動かした後、頬を緩ませ相槌を打つ。

「分かりました。ご丁寧にありがとうございます。」

「お飲物をお持ちしましょうか?」

普通は、先に案内しているので出すならばこのタイミングで出さなければならない。

「お茶を頂けますか?」

「はい。好みはありますか?日本茶に、中国茶などがあります。」

「日本茶が良いですね。NYが長かったものですから。」

「へぇ!あ、、失礼しました。てっきり道明寺でも日本の本社の方かと。」

聞きたい話題に流れを乗せたことに滋は気を良くした。

「いいえ、分かりますよ。普通のおじさんにしか見えませんよね。それにビジネスのキャリアは普通以下です。」

「え?でも道明寺のNY本社にいるんですよね?」

首をかしげる滋。少しわざとらしいことに気付いてはいなかった。

「まぁ、そうですが、、僕は雑務担当みたいなものですから。」

「それだと現地の人を採用していそうなんですけど、、意外ですね。」

「そうですね。それで、今日は何の用でしょうか?、、大河原滋さん。」

その言葉に滋は目を大きくする。



が、それも想定内だ。

自分も父と共に経済紙に載ったこともある。顔を知っていてもおかしくはない。

「気付いてましたか。気を悪くさせましたら失礼いたしました。」

「いえ、はじめは気付きませんでしたよ。」

「え?顔を知っていたんじゃ、、」

「大河原様の書類は拝見したことがありますが随分印象が違いますので、気付きませんでした。チラチラ様子を伺っているようなので変だなと思いまして。失礼ですがあまりお得意ではないようですね。」

これには滋は苦笑いするしかない。

「演技が下手でしたか。実は初めてです。こういう事をするの。」

「理由を教えて頂けますか?その理由によってはお教えしますよ。」


滋はその男の顔をじっと見た。駆け引きが自分には経験不足なのは分かっている。この男のキャリアも調査書で目を通した。ならば隠したところで踏み込んだ話は出来ないだろう。


ふうと息を吐いた。

「私、今は日本武道館の理事をやっています。利用の問い合わせをしてきたと聞きました。その用途を教えて頂けますか?もしかしたら私が口利きを出来るかもしれません。」

その男は驚いたようだった。滋が理事を務めていることは把握してなかったのだろう。

滋はニコッと笑った。

「とりあえずお茶を飲みましょう。」

そう言って部屋から離れ、お茶を手に戻ってきた滋。

少し間を開けたことで、男の顔つきが変わったように見えた。

「どうぞ。 」

「ありがとうございます。」

腰を落ち着けしばらくお茶を飲む2人。


そしてその男、岩元は確信をついてきた。

「用途は結婚披露宴になります。」

***


滋は岩元の話を聞く間、口を押さえていた拳を離すことが出来なかった。

そしてソファの下の方ではハイヒールが何度も床から離れてはつま先を合わせ、降ろしとを繰り返してしまった。ソファの前にはローテーブル。その足の動きは岩元にも見られているだろう。

「ご協力頂けますでしょうか?」

その言葉に滋はようやく口元から拳を離した。

ー落ち着け、落ち着け、落ち着け、、

滋の心臓はバクバクとうるさく鳴り響いていた。興奮は最高潮だ。しかし、ここでそのテンションのまま立ち上がる訳にはいかない。

それでは目の前の男の信頼を得られないだろう。

もしかしたら今の協力という言葉も撤回するかもしれない。

滋は右手を心臓の位置に当てて、大きく深呼吸をした。

「ぜひ協力させて下さい。」

その後言葉を続けようとも思ったが、上手く言葉が出てこなかった。

それだけ興奮すべき内容なのだ。

ーこんな事考えるの?本当に本当になんて奴なの?!やっぱり、やっぱり、、

「それで時期は6月で良いでしょうか?やはり週末が希望ですか?週末でしたら丁度第ニ週が空いていました、、」

「あっ、いえ、、まだ決められません。」

「は?」

興奮さながら日時を聞こうとする滋だが、その勢いを止める発言をする岩元。滋は訳が分からない。

「まだお二人は再会してないんです。」

「へ?」

そこで滋は岩元の口から2人が再会してないことを告げられる。

つまりまだヨリが戻ってないのだ。

「じゃあ、フライングなんですか?」

「当人は絶対にやると言ってます。振られる心配は皆無ですね。あの自信はどこから来るのか理解出来ませんが、このためにこの10年耐えて来たので、やると言ったらやるのでしょうね。」


ー10年耐えて来たー


滋はこの言葉が聞きたかった。

目に涙が滲むのを感じる。

それだけ長かった。

あの幸せな日々。

本当に打ち解けられる仲間との時間がようやく戻って来る。


滋の様子に岩元も気付く。

「牧野様はどんな方ですか?」

「え、、あ、つくしですか?」

「はい。僕はまだ本人にお会いしてません。司様に隠されてましたから。」

「岩元さんは芸能事務所にいたんですよね。」

「知ってましたか。」

「はい。いいえ、調べさせてもらいました。」

「それだけ皆さんの関心が強いということですね。お二人の事を皆さん待ってらっしゃる。」

滋は頷いた。

「そうです。僕は芸能事務所にいたキャリアを買われて道明寺入りしました。そして、司様が力を付けるための助言をしてきたのです。僕は特に学業として学んだ訳ではないですが、人を読むことに長けてまして、司様はそのことを利用していました。」

司の考えが垣間見えた滋。しかしもうそれはどうでも良かった。求めていた結果がすぐそこまで来ていたからだ。

「つくしは、優しい子です。」

ポツリと話し始めた滋。

それからはザーっと蛇口から水が出るように口から出て来るのはつくしのつくしたるエピソード。

滋の話し方は勢いがある訳ではないものの、途切れることはなく、そのテンポもまた心地よいリズムで、良い朗読を聞いているかのようだった。

それを聞いた岩元はつくしにますます会いたくなった。ここまで人を魅了する女性は、煌びやかな世界を知っている岩元でもなかなかいない。

その後、滋と岩元はがっちり手を握った。

2人が再会する3週間前の出来事だった。



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子どもを寝かしつけてからの投稿。
誤字脱字は後から直します。
投稿時間変えようかな?

次はラストだ!
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Re:

とりあえず今日は仕事に余裕がありそうなので、
いつもの時間に投稿できるようにします。

でも、投稿時間を変えるならば先にお知らせしないとね。

朝読む方が多いのかな?

投稿してすぐ確認したいから、起きる少し前がいいのかしら?
それとも職場に着いてすぐの時間?

迷います〜
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