甘さとスッぱさと ... 花街に護られてー指先が繋いだつてー
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花街に護られてー指先が繋いだつてー
2016-12-31-Sat
江戸時代を背景にお話を書いてます。
時代的な言葉や名称などは詳しくないので現代風に置き換えてます。
それでも明らかに違うようにはしてません。
細かい矛盾点などあるかと思いますが、目を瞑ってお付き合い下さい。
ダメなら進まないでね。









遅い朝の伊吹屋。

遊女達はまだ二度寝の夢の中だった。

司が来なかった朝、つくしは台所仕事をしていた。

「松里さん、耳どうかしたんですか?」

「んーなんか痒いんだよねぇ、、我慢出来なくはないけど気になっちゃって、、イライラしちまってるのさ。」

この松里は40後半の番頭新造で伊吹屋の元遊女だった。年季が開けたが残った借金を返すため裏方の仕事をしている。

とはいえ借金はもう完済したのだが、行く宛もなく遊郭に残りここの住民となっている。

だから普段は穏やかな性格の人なのだけど、、

「それでさっき珠緒さんに怒鳴ってたんですか?」

珠緒とは同じ番頭新造なのだが、彼女は年季が開けたばかりでまだ借金があった。

そして少し鈍臭く気が弱いところがあった。

「ああ、見られちまったかい。あの子が鈍間なのは今に始まったことじゃないのにね。それに、あれくらいで怒るなんてもあたしらしくもない。・・・分かっちゃいるんだけどね。ふぅ。」

「耳が痒いということは、耳垢が溜まってるんじゃないですか?」

「そんなことはないよ。風呂上がりに耳は掻いてる。だから綺麗なはずだよ。」

「そうですかぁ、、」

「でも、なんかそう言われると本当にそうか自信が無くなってきたね。
つくし悪いけどちょっとあたしの耳の中見てくれないかい?」

「良いですよ。明るい上の部屋に行きましょう。」

そうして松里の耳そうじをすることになったつくし。

それが始まりだった。




***


大晦日の伊吹屋。

伊吹屋は遊郭の中では大きい方の見世だが、大見世ではなかった。

大見世は海老妻楼や、玉羽那楼などがあり規模が違っていた。

そんな伊吹屋に茶屋から客の知らせが入る。豪商の客が三人宴会を開きたいと言うのだ。

普段大見世を使うような豪商だという。

理由を聞けば大見世ばかりでは飽きると言うのだが、その豪商は大見世海老妻楼の太夫の客だった。

つまり海老妻楼の太夫も付いてくるのだ。

伊吹屋の女将もそこに何やらきな臭さを感じたが、海老妻楼の主人とは知らぬ仲でも無かったので首を縦に振った。

おかげで伊吹屋は回し部屋すら開け放つことで大きな宴会場を設け、その豪商をもてなすことになる。

海老妻楼から太夫やその新造達が付いてきているものの、豪商の連れの客もなかなかいて接待する遊女の数が足りない。

そこでこの日は伊吹屋の遊女が総出で宴会を盛り上げていた。


「ふふ伊吹屋の遊女もなかなか芸達者だな。海老妻も負けてられんぞ。ここは大見世になるやもしれん。」

「まぁそんな花沢様意地悪ですねぇ。それが言いたくてこちらに参ったのですか?」

豪商の客花沢屋の主人は海老妻楼の高木太夫にけしかけるもあっさり受け流される。

「はは高木には勝てんな。確かにその通りだ。だが一つ言わせてくれ。ここに来たのは俺の我が儘じゃあない。」

そう言って顎をしゃくる花沢屋主人。

そこには元服を迎えたばかりの若い男が座っていた。

身体は大きい方だがまだ幼さの残る顔つき。

だがその顔はかなりの美形で、陰間(遊女の男番)に見られても仕方なかった。

「花沢様の息子さんですね。類さんでしたっけ?私じゃなければ妬まれてるお顔ね。」

「・・・私じゃなければ?凄い自信だね。口に出さないと保てないとか?」

その息子の返しに高木は眉根を寄せる。だが太夫まで登りつめた自尊心が若造の粋がりを相手しなかった。

「そうよ。良くご存知なのね。類お坊ちゃんは。」

そしてさらりと自分へと返される。そのことに気付いてはいたが類も乗ったりはしなかった。

「別に。確かに俺がここに来たいと言ったけど、それはある女の顔が見たかっただけなんだ。それはあんたは知らないだろ?この見世じゃないんだから。」

類のその言葉に伊吹屋の紺野太夫や上の遊女達は反応する。

一瞬目を合わせすぐに逸らした。

それは類も高木太夫も気付いていた。

「司の女がここにいるよね。誰なのさ。」

「司さんとは?」

紺野太夫が穏やかに聞き返す。

「道明寺司さ。こっちの新造を見受けして連れ帰らずに置いてるって聞いたんだ。」

「道明寺さんは知ってます。でも道明寺さんからそのことに答えろとは聞いてません。」

紺野はにっこりと笑って答えた。

「へぇ、、ここそんなに司の息が強いんだ。用心棒を遊ばせてるって聞いてもいたけど、親父が海老妻に落とす金以上に使ってそうだね。」

すると類の父も目つきを変える。

「口を慎め。連れて来られた身で出しゃばるな。」

類は父に反抗するつもりは無かった。いや気持ちはあっても気力が無かった。

この父に刃向かう労力を無駄と考えていたのだ。

「・・すいませんでした。」



そのやり取りで白けた雰囲気は伊吹屋の遊女や太鼓持ちの男衆が気を張り、しばらくすると宴会はまた賑やかさを取り戻した。


そして、丑の刻になり花沢屋と高木太夫だけでなく、花沢の連れも遊女と同衾していく。

類も伊吹屋の遊女の一人を選んだ。

その遊女の名前はなずな。遊女になったばかりの若い娘でつくしの友人だった。




はっ、はっ、はっ、は、、

先ほどまで宴会場だった部屋は屏風で仕切られいつもより広めの回し部屋へと変わっていた。

なずなを揺さぶる類。

その喘ぎ声からなずながイキそうなのを知る。

腰の動きを止め、振り向くなずなに微笑みかける。

「司の女を教えてよ。知ってるでしょあんたなら。」

「・・・・」

眉尻の下がったなずなの顔つきが変わる。

真顔になりしらっと言い放った。

「早くイカせてくれない?遊郭の礼儀も知らない坊ちゃん。抱いてる最中に他の女のこと聞くなんて見世の外に放り出されたいとしか思わないわ。」

この反応には類も驚く。

年端からまだ遊女としては浅いはずだ。なのにこの冷静さ。さっきの声は演技だったのか?

「詫びるのにも金はかかるのよ。聞かなかったことにしとくわ。・・・とはいえ、屏風で隔てただけだから皆聞いてるかもしれないけど。」

とたんに類は自分の失態に気付く。父親との先ほどの事もあり、やりすぎると後が面倒だ。

「冗談さ。あんたはなかなかの床上手みたいだね。・・・太夫候補かい?」

「・・・そうよ。気付いちゃった?ふふふ。」

そうしてまたなずなを揺らす類。

類は面白くなかった。

たかが一人の新造上がりをたぶらかせない自分に。

というのも最後、なずなは鼻で笑ったのだ。

それは小さな笑いだった。

深夜の同衾。

灯りは小さく顔色まで伺えないが、確かに笑われた。



そして気になる女の正体。

道明寺司は幼馴染だった。

自分と同様な環境で育った司。

自分同様他人への興味など無かった。

そんな司が遊郭の新造を見受けしたと聞いた。

そしてその見世に足繁く通っているという。

どんな女か興味が湧いた。

見てみたいとも。

司には聞いていない。

だが司のことだ。きっと会わせてはくれないだろう。

あいつは自分の大事なものを見せびらかす奴じゃない。

それは自分もそうだから。



「手強いからって諦めないよ。」

ボソッと呟いた類の言葉。

先ほどの失態からこの言葉はなずなには届かなかった。




***



「つくしいるかい?」

後日、いつもの伊吹屋。

昼見世の準備でてんてこ舞いの遊女の世話をするつくしの元へ女将が訪ねて来た。

「はい。何ですか女将さん。」

「おつなが来てるんだよ。あんたに頼みたいって。」

そう言って耳に指を指す女将。

つくしは笑って答えた。

「は~い。もう少しで笹山の準備が終わるから行きますね~」


笹山とは水揚げ(遊女になるため処女を無くしたばかり)の新造で、まだ客の付いてない娘だった。早く客が付くようにと遊女仲間と一緒につくしも世話に加わっていた。

伊吹屋は遊女や新造の仲が特に良かった。

もちろん遊女の階級はちゃんとあって、最高位の太夫から最下位の遊女まで階級に会った付き合いはあったが、お互いを思いやり客の奪い合いなどは見られなかった。



トントントントン

階段を降りてつくしが女将の部屋へとやって来た。

部屋ではおつなこと海老妻楼の女将がつくしを待っていた。

「来たね。早くやっとおくれ。」

「へいっ。任せてくんなせぇ。」

袖を捲り肩を突き出す。

そんなつくしに女将2人の表情も柔らかい。


つくしはおつなの耳かきを始めた。

つくしの耳かきは評判だったのだ。

ちなみに一部の人間にだけだ。

それはその評判を知られたくなかったから。

始まりは松里に行った耳かきだった。

松里の耳は耳垢で塞がっていた。

風呂の後こよりで耳を掻いていたのだが知らず知らずのうちに奥へ押し込んでいたらしい。

人の世話が好きなつくし。

塞がった耳垢に驚いたが、松里を助けるんだと一念発起した。

耳かきをするのが苦手なつくし。

なるべく痛みやくすぐりのないようにと慎重に垢を取っていく。

だが固まった垢はなかなか取れない。

風呂の後ならふやけるかもと風呂の後に掻いたりと、または直接水を垂らし浸したりと試行錯誤を繰り返した。

垢が取れた時は、松里だけでなく見世のみんなと喜び合った。

そして松里は垢が取れたことで耳の聞こえも良くなり、そんなつくしの偉業を讃えそれからつくしの耳かきが始まった。

そして、その評判はひとの縁を繋いで行く。

伊吹屋の女将と顔見知りだった海老妻の女将。

つくしは知らず知らずのうちにつてを広げて行く。



先日の大見世の客が中見世で宴会をしたのも大したわだかまりすら無かったのはこんな理由があったからだった。



「おつなさん耳の中綺麗ですよ。」

「本当かい?何だか痒い感じがするんだけどねぇ。」

「本当ですって。それにこないだ掃除したばっかりじゃないですか。」

「そっだったかねぇ。」

「そうだよ。おつな早くもボケたかい?」

「何だって?」

「あ、あった。垢ありますよ。・・おつなさん動かないで下さいね。」

ピタリと動きを止めるおつな。

つくしの指先が細やかな動きで垢を掻き出して行く。

「取れました。ほらコレ。」

「小ちゃいねぇ、、」

「コレが悪さをしてたのかい。」

「きっとそうですよ。」

ニコニコと笑うつくし。

その顔は少し引きつっていた。

老婆とはいえ2人とも遊郭の女将、ケンカに巻き込まれたくないのが心情だ。






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年内の投稿間に合いました。
来年もよろしくお願いします。
これからも独自路線で頑張ります。
ていうかこの路線しか出来ません。
心の広い皆様に支えられブログを続けたいと思います。
(*´ω`*)
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