ハピバ司!
と言う事で司の誕生日までスッピンをお休みして花街行きまーす。
江戸時代を背景にお話を書いてます。
時代的な言葉や名称などは詳しくないので現代風に置き換えてます。
それでも明らかに違うようにはしてません。
細かい矛盾点などあるかと思いますが、目を瞑ってお付き合い下さい。
ダメなら進まないでね。
江戸時代幕府が認めた唯一の遊郭は吉原だけだが、吉原以外にも春を売る場所はあって、定期的に幕府はそれらを取り締まっていた。
*
所変わってつくしのいる伊吹屋、昼見世が終わり遊女達はそれぞれ過ごしていた。
「あれ?もしかして女衒(ぜげん)かな?」
「どれ?」
「ほら、あれ。」
「本当だ。うちに来るみたい。どこから来たのかな?うちらと変わりない年だよね。」
伊吹屋の二階から下を覗くと女衒と呼ばれる女を売りに来た男がやって来た。普通は幼い童女を連れているのだが、この女衒は新造くらいの女を連れている。
ふとその売られる女が上を見て、伊吹屋の遊女達と目が合ったのだが、、
スッと目を細め顔を背けた。
その態度に腹を立てる遊女達。
「何あれ?お高くとまりすぎ。」
「別の遊郭から来たんじゃない?あの性格だから摘み出されたのね。きっと。」
「まだ新造なのに?」
「いや、ああ見えて意外と歳いってるかもよ。だってつくしだってあの顔だよ?」
「つくしとは違うような、、」
そんな話をしていると、女衒がひとりで出ていった。
「買ったみたい。」
「見に行こう。」
ぞろぞろと部屋を出て一階が見える階段に来た新造三人組。
下を覗くとさきほどの女が見世の女将と話していた。
「それじゃあ、すぐに働けるね。名前はなんて言うんだい?」
「桜子です。」
「粋な名前だね。でもそれじゃあ煙たがられそうだ。心機一転名前を変えるかい?」
「嫌です。」
断られた事に驚く女将。
「良いのかい?女郎は気が強い。ひとりだと無勢だよ。」
「ひとりで結構よ。群れるつもりはないから。」
凛として女将にもたじろがない。
女将はそれが気に入ったのだが、、
ちらっと横目に見ると新造が三人こっちを覗いている。その顔はあまり良い顔ではない。
「そうかい。まぁ好きにしな。取り敢えずお前さんは張見世からだよ。今夜は準備する時間も無いだろうし、ゆっくりしな。休めるのは今日くらいだと思っておくれ。・・・つくし!」
「はーーーい。」
パタパタと一階奥からつくしがやって来た。この時間、つくしは夜見世の裏方の仕事をしていた。
「はい、女将さん。何ですか?」
「つくしこの子の世話をやってくれ。明日から見世に出るから。」
「分かりました。」
そう言ってその場を後にする女将、つくしは桜子を一階奥へと連れて行った。
こうして伊吹屋の遊女となった桜子だったが、次の日張見世で格子の前に座る事はなかった。
桜子は伊吹屋に入った初日の夜に下腹部に激しい痛みに襲われた。
痛みのため眠れぬ夜を過ごし翌朝そこを見ると赤くなっていた。
“かさ(梅毒)”になってしまったのである。
*この時代の遊女は不特定の相手と性交渉するため梅毒にかかる事が多かった。それで命を落とす者も居たのだが、それは発症から10年経って症状が重くなってからのようだ。28歳で年季明けた後の発症なので、梅毒で命を落とす者は多くてもそれは遊郭を出た後の事だったらしい。
かさになった桜子は離れ部屋で闘病生活に入る。
痛みに苦しみここで命尽きるのかと桜子が弱気になっていると、つくしが部屋にやって来た。
「ハアハア、、何の用よ。」
「ん?ご飯を持って来た。食べなきゃ治らないでしょ。」
「痛くて食べられる訳ないでしょ。」
「死にたいの?」
真顔で聞くつくし。桜子は怒りを露わにした。
「死にたい訳ないでしょ。誰が死にたいもんですか!」
脂汗をかきながら声を張ってつくしを睨む桜子。
そんな桜子を見てつくしはくすくす笑いだす。
「何よ。」
「くくく、、元気あるじゃん。それだけ元気ありゃあ食べられるでしょ。はい。少しずつでも食べな。あんたは気高いんでしょ。かさになんか負けるんじゃないわよ。」
ハアハアと肩で息をする桜子。
つくしの言い分が分かり、起こしていた身体を横に戻した。
「ちょっと、横になったら食べられないでしょうが。」
「そんな事ないわよ。」
そう言って桜子は身体を捻り、お椀を受け取ろうたするも手に力が入らない。
つくしはお椀を桜子の口元に運び、少しずつ食べられるように介助した。
食べられないと思った桜子だったが、もともとそう多くない量だったため全て完食した。
「ねぇ被れたとこ洗おうか?」
「は?」
「洗った方が早く治るわよ。それにかさって言うくらいだからかさぶたにするために風通しを良くすると良いの。前にかさになった姐さんもそうして治してたから。」
「前も?、、、もしかして前もあんた看病してたの?」
「まぁね。あたしはこんな事くらいしか出来ないから。」
つくしの事情を知らない桜子。
だがつくしの優しさには気付いていた。
「洗うって、、どこでよ。布団を濡らす訳?」
「そりゃあ、洗い場だよ。」
*遊女達は性行為の後避妊のためとにかく洗ったらしい。なのでどの見世にも洗い場はあったと思われる。
「行ける訳ないでしょ。」
「手を貸すよ。」
「あんたひとりでは無理よ、、途中で倒れるなんて、そんな見苦しい事出来ないわ。」
これにはつくしも分かっていたらしく、スッと立ち上がるとどこかへ行ってしまった。
つくしに去られ、桜子は下唇を噛む。
しかし、少ししてつくしが戻って来た。
タンッ
「何人か連れて来たよ。」
その連れて来た面々を見て驚く桜子。
つくしは友人の新造達を連れて来たのだ。
「何、、で?」
「何でって、そりゃつくしに頼まれたんじゃしょうがないじゃない。」
「あと、忙しいの。うちって結構客多いのよ。遊女は何人いたって足りないの。」
「こないだ客が回ってこないってボヤいてなかったか?」
「うっ、うるさいなー」
病人の前なのに騒ぐ新造三人組。
桜子は泣いてしまった。
「ほら、早く治そう。男にうつられてそのまんまじゃ女が廃るわよ。」
「弱っている時はさ、強がるモンじゃないよ。まぁ、男にはしない方がいいけど。」
桜子は泣いて話そうとしない。
でも頑張って立ち上がり洗い場へと向かった。
そんな桜子達を姐さん達も上から見守っていた。
**
それから二週間ほど闘病した桜子だったが、若い事もあり“かさ”はすっかり良くなっていた。
*完治した訳ではないが、この時代は完治したと思われていた。
“かさ”を経験した遊女は、遊女として一人前と見なされていた時代。
“かさ”になる事で色白く痩せ細り、その姿は天女のようだと客は褒めたたえた。おまけに妊娠しずらくなった身体は遊女としても魅力的だった。
当然桜子に対する目も変わってくる。
**
「え、太夫付きに?」
実は伊吹屋では太夫付きの新造が水揚げで妊娠してしまい、その客にそのまま身請けされてしまったのだ。
そのため今の紺野太夫の後を担う遊女がいない。
「どうだい?桜子あんたは湯女だったが短歌も和歌も、それに三味線だって出来るそうじゃないか。それなりの理由があっての事だろうけど、どうだいやってみないか?」
「私がやったら反発するんじゃないんですか?」
「それは大丈夫よ。つくしが太鼓判押してるからね。あの娘はここでは特別なの。分かるでしょう。」
ここ伊吹屋でのつくしの存在。ここに来てまだひと月にも満たないがそれは桜子にも感じていた。
一匹狼でやっていくつもりだった桜子。
しかしつくしの存在で、いつしか伊吹屋の遊女達とも上手く付き合える様になっていた。
「やるわ。」
何が桜子を動かしたのかは誰もが知っていた。
それは伊吹屋にいるものならば誰でも触れるモノだからだ。
桜子が太夫になる事で伊吹屋にはまた新たな風が吹く事になる。
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性病を畏れながらも身体を張って生きてきた遊女達。強く生きていく姿を書けてるかな?まぁ、大分丸い内容だけれど。
それから4人組を期待していたみなさん、すみませんでした。
明日、明日は、、、登場するかな?
今から考えます。
と言う事で司の誕生日までスッピンをお休みして花街行きまーす。
江戸時代を背景にお話を書いてます。
時代的な言葉や名称などは詳しくないので現代風に置き換えてます。
それでも明らかに違うようにはしてません。
細かい矛盾点などあるかと思いますが、目を瞑ってお付き合い下さい。
ダメなら進まないでね。
江戸時代幕府が認めた唯一の遊郭は吉原だけだが、吉原以外にも春を売る場所はあって、定期的に幕府はそれらを取り締まっていた。
*
所変わってつくしのいる伊吹屋、昼見世が終わり遊女達はそれぞれ過ごしていた。
「あれ?もしかして女衒(ぜげん)かな?」
「どれ?」
「ほら、あれ。」
「本当だ。うちに来るみたい。どこから来たのかな?うちらと変わりない年だよね。」
伊吹屋の二階から下を覗くと女衒と呼ばれる女を売りに来た男がやって来た。普通は幼い童女を連れているのだが、この女衒は新造くらいの女を連れている。
ふとその売られる女が上を見て、伊吹屋の遊女達と目が合ったのだが、、
スッと目を細め顔を背けた。
その態度に腹を立てる遊女達。
「何あれ?お高くとまりすぎ。」
「別の遊郭から来たんじゃない?あの性格だから摘み出されたのね。きっと。」
「まだ新造なのに?」
「いや、ああ見えて意外と歳いってるかもよ。だってつくしだってあの顔だよ?」
「つくしとは違うような、、」
そんな話をしていると、女衒がひとりで出ていった。
「買ったみたい。」
「見に行こう。」
ぞろぞろと部屋を出て一階が見える階段に来た新造三人組。
下を覗くとさきほどの女が見世の女将と話していた。
「それじゃあ、すぐに働けるね。名前はなんて言うんだい?」
「桜子です。」
「粋な名前だね。でもそれじゃあ煙たがられそうだ。心機一転名前を変えるかい?」
「嫌です。」
断られた事に驚く女将。
「良いのかい?女郎は気が強い。ひとりだと無勢だよ。」
「ひとりで結構よ。群れるつもりはないから。」
凛として女将にもたじろがない。
女将はそれが気に入ったのだが、、
ちらっと横目に見ると新造が三人こっちを覗いている。その顔はあまり良い顔ではない。
「そうかい。まぁ好きにしな。取り敢えずお前さんは張見世からだよ。今夜は準備する時間も無いだろうし、ゆっくりしな。休めるのは今日くらいだと思っておくれ。・・・つくし!」
「はーーーい。」
パタパタと一階奥からつくしがやって来た。この時間、つくしは夜見世の裏方の仕事をしていた。
「はい、女将さん。何ですか?」
「つくしこの子の世話をやってくれ。明日から見世に出るから。」
「分かりました。」
そう言ってその場を後にする女将、つくしは桜子を一階奥へと連れて行った。
こうして伊吹屋の遊女となった桜子だったが、次の日張見世で格子の前に座る事はなかった。
桜子は伊吹屋に入った初日の夜に下腹部に激しい痛みに襲われた。
痛みのため眠れぬ夜を過ごし翌朝そこを見ると赤くなっていた。
“かさ(梅毒)”になってしまったのである。
*この時代の遊女は不特定の相手と性交渉するため梅毒にかかる事が多かった。それで命を落とす者も居たのだが、それは発症から10年経って症状が重くなってからのようだ。28歳で年季明けた後の発症なので、梅毒で命を落とす者は多くてもそれは遊郭を出た後の事だったらしい。
かさになった桜子は離れ部屋で闘病生活に入る。
痛みに苦しみここで命尽きるのかと桜子が弱気になっていると、つくしが部屋にやって来た。
「ハアハア、、何の用よ。」
「ん?ご飯を持って来た。食べなきゃ治らないでしょ。」
「痛くて食べられる訳ないでしょ。」
「死にたいの?」
真顔で聞くつくし。桜子は怒りを露わにした。
「死にたい訳ないでしょ。誰が死にたいもんですか!」
脂汗をかきながら声を張ってつくしを睨む桜子。
そんな桜子を見てつくしはくすくす笑いだす。
「何よ。」
「くくく、、元気あるじゃん。それだけ元気ありゃあ食べられるでしょ。はい。少しずつでも食べな。あんたは気高いんでしょ。かさになんか負けるんじゃないわよ。」
ハアハアと肩で息をする桜子。
つくしの言い分が分かり、起こしていた身体を横に戻した。
「ちょっと、横になったら食べられないでしょうが。」
「そんな事ないわよ。」
そう言って桜子は身体を捻り、お椀を受け取ろうたするも手に力が入らない。
つくしはお椀を桜子の口元に運び、少しずつ食べられるように介助した。
食べられないと思った桜子だったが、もともとそう多くない量だったため全て完食した。
「ねぇ被れたとこ洗おうか?」
「は?」
「洗った方が早く治るわよ。それにかさって言うくらいだからかさぶたにするために風通しを良くすると良いの。前にかさになった姐さんもそうして治してたから。」
「前も?、、、もしかして前もあんた看病してたの?」
「まぁね。あたしはこんな事くらいしか出来ないから。」
つくしの事情を知らない桜子。
だがつくしの優しさには気付いていた。
「洗うって、、どこでよ。布団を濡らす訳?」
「そりゃあ、洗い場だよ。」
*遊女達は性行為の後避妊のためとにかく洗ったらしい。なのでどの見世にも洗い場はあったと思われる。
「行ける訳ないでしょ。」
「手を貸すよ。」
「あんたひとりでは無理よ、、途中で倒れるなんて、そんな見苦しい事出来ないわ。」
これにはつくしも分かっていたらしく、スッと立ち上がるとどこかへ行ってしまった。
つくしに去られ、桜子は下唇を噛む。
しかし、少ししてつくしが戻って来た。
タンッ
「何人か連れて来たよ。」
その連れて来た面々を見て驚く桜子。
つくしは友人の新造達を連れて来たのだ。
「何、、で?」
「何でって、そりゃつくしに頼まれたんじゃしょうがないじゃない。」
「あと、忙しいの。うちって結構客多いのよ。遊女は何人いたって足りないの。」
「こないだ客が回ってこないってボヤいてなかったか?」
「うっ、うるさいなー」
病人の前なのに騒ぐ新造三人組。
桜子は泣いてしまった。
「ほら、早く治そう。男にうつられてそのまんまじゃ女が廃るわよ。」
「弱っている時はさ、強がるモンじゃないよ。まぁ、男にはしない方がいいけど。」
桜子は泣いて話そうとしない。
でも頑張って立ち上がり洗い場へと向かった。
そんな桜子達を姐さん達も上から見守っていた。
**
それから二週間ほど闘病した桜子だったが、若い事もあり“かさ”はすっかり良くなっていた。
*完治した訳ではないが、この時代は完治したと思われていた。
“かさ”を経験した遊女は、遊女として一人前と見なされていた時代。
“かさ”になる事で色白く痩せ細り、その姿は天女のようだと客は褒めたたえた。おまけに妊娠しずらくなった身体は遊女としても魅力的だった。
当然桜子に対する目も変わってくる。
**
「え、太夫付きに?」
実は伊吹屋では太夫付きの新造が水揚げで妊娠してしまい、その客にそのまま身請けされてしまったのだ。
そのため今の紺野太夫の後を担う遊女がいない。
「どうだい?桜子あんたは湯女だったが短歌も和歌も、それに三味線だって出来るそうじゃないか。それなりの理由があっての事だろうけど、どうだいやってみないか?」
「私がやったら反発するんじゃないんですか?」
「それは大丈夫よ。つくしが太鼓判押してるからね。あの娘はここでは特別なの。分かるでしょう。」
ここ伊吹屋でのつくしの存在。ここに来てまだひと月にも満たないがそれは桜子にも感じていた。
一匹狼でやっていくつもりだった桜子。
しかしつくしの存在で、いつしか伊吹屋の遊女達とも上手く付き合える様になっていた。
「やるわ。」
何が桜子を動かしたのかは誰もが知っていた。
それは伊吹屋にいるものならば誰でも触れるモノだからだ。
桜子が太夫になる事で伊吹屋にはまた新たな風が吹く事になる。
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性病を畏れながらも身体を張って生きてきた遊女達。強く生きていく姿を書けてるかな?まぁ、大分丸い内容だけれど。
それから4人組を期待していたみなさん、すみませんでした。
明日、明日は、、、登場するかな?
今から考えます。
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