江戸時代を背景にお話を書いてます。
時代的な言葉や名称などは詳しくないので現代風に置き換えてます。
それでも明らかに違うようにはしてません。
細かい矛盾点などあるかと思いますが、目を瞑ってお付き合い下さい。
ダメなら進まないでね。
「そ、、うでやすか。」
目の前の男は少し顔を青ざめている。
口元を手で押さえ動揺を隠すつもりらしいが全く隠せていない。
そんな男を見るこの邸のひとり息子は、元服をしたばかりには思えない佇まいで、月代にした頭はすっかり馴染み、それは男の目つきをも変えてしまった程だった。幼さの残る表情は微塵も見当たらない。
真っ直ぐブレない視線に樹助は、司の感情を読み取る。そこには疚しさなどは見受けられなかった。
「では、坊ちゃんは紫陽を気に入ったという事なんでやんすね。」
「気に入ってねぇよ。俺はやる気はなかった。ただつくしの身請けを認めてもらいたかっただけだ。あいつをずっと世話してきたのは紫陽だからな。」
「それじゃあ、何で、、」
「あの女の方から言ってきたんだ。女も知らないくせに、新造を身請けて女遊びに興じて飽きたと言いかねんとな。誰が捨てるかっつーんだよ。俺はつくし以外とヤるつもりはねぇ!だが、あの女は俺を信用してなかった。まぁ、それだけつくしを可愛がっているんだろーがよ。」
「それで、ですか、、、はっ、紫陽の奴無茶しやがって、、」
「無茶?おめぇ、何か聞いてたのか?」
「あ、、はい。」
そして樹助は紫陽との話を司に語った。
紫陽も司が樹助を見世に連れてくる目的は気付いていた。だが、豪商のひとり息子いつつくしを捨てるかもしれない。それだけ男に翻弄される遊女が多いのだと言う。
大金を積まれ身請けされても妻になれる者など少ない。良くて妾になるだけだ。芸に秀でていても家事をこなせる遊女など、遊女ではない。
おまけに孕まない身体になっている事も多く、後継ぎを作る事も出来ない。その結果身請けされたにも関わらずまた元の鞘に戻る事も、、そうなった時に努めの年齢(28才)を超えていたら夜鷹になるしかない。遊女の地位すら奪われる。
身請けが必ずしも望む結末とは限らない。
かと言って努めを終えて間夫と一緒になる女もいるが、幸せになれるのはほんの一握り。大抵は身体目当ての遊びで済ませれ、中には騙される者もいる。行く宛もなくまた吉原に戻ってくるのだ。見世の裏方の女達は皆そういった者ばかりなのだ。
樹助の話を聞いて、多少なりとも紫陽に腹を立てていた司はその感情を消化した。
紫陽は司の想像以上につくしを思いやっていたのだ。
「それじゃあ、おめぇは紫陽とはどうするつもりだったんだ?身請けする気はあるのか?」
「・・はは。金があれば身請けしたいですけどね。流石にそんな金はねぇです。紫陽が勤めを終えたら一緒になろうと思いやす。紫陽はその時に言えと言われました。自分の気が変わる事も考えているんでしょうね。」
「ふぅん、、向こうの女はそれだけ身持ちが固ぇって事か。」
「身持ち?」
「ここの事よ。」
そう言って司は自分の胸を拳で叩く。
そこは心の臓がある位置だった。
司の言いたい事が分かった樹助は司と紫陽が交わった事は浮気だと思わないように思えた。
だが、そうだとすると司は何故自分にわざわざ言ってきたのだろう。
道明寺家程の財力があれば息子の我儘も苦もなく叶えられそうなのだが、、
「それだけですか、坊ちゃん。自分にその事だけを言いにきたんでやんすか?」
「ああ、いや、おめぇに聞きたい事があるんだ。」
***
その日の夜の伊吹屋。
見世の表や二階では客が遊女達と賑わいを見せている。
そんな中一階の奥、女将の部屋には風呂敷の包みを女将の目の前に置く司の姿があった。
ガシャン
その包みは大きくはないがかなりの重さがありそうだった。
そしてその置いた音からも中身が何かが想像出来た。
「これは何ですか?道明寺の坊ちゃん。」
伊吹屋の女将が訝しく司を見上げる。
司は腰を落とす事なく仁王立ちのまま女将を睨んでいた。
「こいつでつくしを身請けする。」
司がつくしの身請けを望んでいることは紫陽から聞いていた。その事にさほど驚きはないのだが、、
包みを開けた女将は驚いた。
「坊ちゃん、身請けの勘定は知ってないでしょう、、こちらから、」
「多すぎるのは承知だ。親父には太夫を身請けすると言って金を出してもらった。」
「な、、太夫って。」
「そんくれー俺には価値がある。それに多すぎるのはにはまだ他に理由がある。」
「理由?何ですか、そりゃあ。」
「つくしを身請けするが、このままこの見世につくしを置いていて欲しい。」
「は?ここに?置くってどういう事ですか?」
驚く女将。それも当然だ。身請けしたのなら吉原を出るのが常識。自分の手元に置きたいから大金をはたいてまでしているのに、連れ帰らないとはどういう事かと。
「ここで裏方の仕事をして使ってくれ。ずっとじゃねぇ。俺が道明寺を親父から継ぐまでだ。」
その言葉で女将は司の意図を理解した。
「あいつが勤めが終わる年まではいかねぇつもりだが、それでも何年かはかかる。客を取らないとただ飯食いだと言うのが口癖だからな。多い分はあいつの飯代だ。」
「なるほどそういった理由ですか。」
「足りねぇなら、もっと持ってくる。この位の金俺んとこにはあぶく銭だからよ。」
その言葉にピクリと反応する女将。
「へぇ、、随分大きな口を叩きますね。相当商いの事を分かってらっしゃる様だ。」
女将の言い様に司は子供扱いされた事に気付いた。そして怒らせた事も。
しかし司とて何も分からず大口を叩いた訳ではない。幼いうちから父親の商いを見せられてきた。知りたくなくても父親の力を知らされた状況だ。それを承知の上で父親から稼業を継ぐと決めたのだ。
子供扱いは理解出来る。だが何に対して怒っているのかが分からない司は黙ったまま女将を睨んでいた。
「あぶく銭なら、他にも買うつもりなんですかねぇ。」
「・・つくし以外に興味はねぇ。てめぇを買うとでも思ったのか?てぇした自信だな。婆あでも女ってか。」
「はぁ?何言ってやがるこの糞餓鬼が?!あたしゃあね、稼げる娘を易々と売らないだけさ。」
「だろうな。」
ハッとする女将。
「気付いてたのかい?」
「紫陽も同じ事を考えてたからな。」
「そうか、、紫陽もつくしをそりゃあ可愛がってる。つくしは愛嬌があるんだよ。稽古も真面目にやって、踊りも三味線だってそつなくこなす。
あの娘が客を取るようになれば太夫程じゃなくても稼げるだろう。水揚げを早くと望む客だっているんだ。」
「あ?水揚げだぁ?あいつは俺の女だ!他の男にヤらせてたまるか!!」
額に青筋を立て怒声を浴びせる司。
女将は子供だと思っていたその器を改めさせられた。
「・・随分と惚れさせられたね。こりゃ身請けを許さなければ、つくしの命が危ないかもねぇ、、」
「あ?命だぁ?俺があいつを殺すとでも言うのかよ。」
「他の客に取られたくないんだろ。」
「だからと言って殺めるかよ。どうしても格子前に座らせるならば、客の方を脅すまでだ。つくしを買いでもしたらどうなるか痛い目に遭わせてやるよ。」
「は、、全く。勘弁しておくれよ。」
そんな事されたら商売上がったりだ。女将は司の駆け引きに子供じみてると思いながらも、引かない態度に商売の才能がありそうだと認めはじめた。
ふぅとため息をつき女将は司と向き合う。
女将の表情が変わった事に司の態度も軟化した。
「まぁ、良いでしょう。身請けするには充分な金だし、、坊ちゃんの事情も分かった。つくしは裏方の仕事をさせて置いといてやるよ。」
「おう。はじめからそう言えや。」
「(イラっ)ただし、こき使うよ。」
「はぁ?何でだよ。金は払ったじゃねぇか。足りねぇって言うのかよ!」
「そうじゃあない。坊ちゃん考えてもみなさんな。あんたが連れて帰らないのは邸でつくしが居づらくなるからじゃないのかい?贔屓にしちまったらここでも同じ事だ。いや、それ以上かもしれない。身請けってのはそれだけ魅力のある事なんだ。」
女将の言い分に口を閉ざす司。
への字に曲がった口元は細かく震え自分への怒りを隠そうともしなかった。
「つくしだってそれに気付かないような馬鹿じゃない。こき使われてホッとするかもしれないね。」
「チッ。」
「まぁ、それでもつくしへの目は変わっちまうね。そこはしょうがない。でも坊ちゃんが連れて帰るよりかは良いんだろう。」
「あぁ。門の中が安心っちゃあ、安心だからな。」
司はいつも用心棒を連れてここに来る。
その用心棒は単なるお飾りではない事も女将は知っていた。
「そう言えば坊ちゃんの用心棒、かなりの人気なんだよ。知ってたかい?」
「あ?何だよいきなり、、」
「ふん。あんたの用心棒はあんたが金を出すから行儀が良いんで、遊女達は奪い合ってるのさ。馴染みになれた遊女は安定して稼げるとほくそ笑んでたよ。しかし、つくしを身請けしたならば、用心棒は用無しか。困ったねぇ、、」
「くそっ。連れてこりゃあ良いんだろーが。全員に当たる人数揃えてやるよ。」
「あーそれも困るわ。中にはそれで手を抜く馬鹿も居るんだ。今連れて来てるのは5人だったね。あと3人くらいで構わないよ。増やして欲しけりゃまた言うからさ。」
「くそっ、餓鬼扱いされるはずだぜ。唯の糞婆あじゃねーっつー事か。」
「糞婆あ、糞婆あ、うるさいねぇ、、それじゃあ教えてやらないよ。」
「何をだよ!」
「つくしの事さ。」
その言葉にハッとなる司。つくしの身に何かあったのかと身構える。
「あの娘、月の物が来たよ。まぁ、水揚げは無しになっちまったけどね。間に合って良かったじゃないか。一週間後だったら済ませていたよ。」
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このー恋人になるまでーのプロットを書いたのですが、2、3話では終わらなさそうなので書き上げ次第投稿します。
6時と18時のどちらかになります。
時代的な言葉や名称などは詳しくないので現代風に置き換えてます。
それでも明らかに違うようにはしてません。
細かい矛盾点などあるかと思いますが、目を瞑ってお付き合い下さい。
ダメなら進まないでね。
「そ、、うでやすか。」
目の前の男は少し顔を青ざめている。
口元を手で押さえ動揺を隠すつもりらしいが全く隠せていない。
そんな男を見るこの邸のひとり息子は、元服をしたばかりには思えない佇まいで、月代にした頭はすっかり馴染み、それは男の目つきをも変えてしまった程だった。幼さの残る表情は微塵も見当たらない。
真っ直ぐブレない視線に樹助は、司の感情を読み取る。そこには疚しさなどは見受けられなかった。
「では、坊ちゃんは紫陽を気に入ったという事なんでやんすね。」
「気に入ってねぇよ。俺はやる気はなかった。ただつくしの身請けを認めてもらいたかっただけだ。あいつをずっと世話してきたのは紫陽だからな。」
「それじゃあ、何で、、」
「あの女の方から言ってきたんだ。女も知らないくせに、新造を身請けて女遊びに興じて飽きたと言いかねんとな。誰が捨てるかっつーんだよ。俺はつくし以外とヤるつもりはねぇ!だが、あの女は俺を信用してなかった。まぁ、それだけつくしを可愛がっているんだろーがよ。」
「それで、ですか、、、はっ、紫陽の奴無茶しやがって、、」
「無茶?おめぇ、何か聞いてたのか?」
「あ、、はい。」
そして樹助は紫陽との話を司に語った。
紫陽も司が樹助を見世に連れてくる目的は気付いていた。だが、豪商のひとり息子いつつくしを捨てるかもしれない。それだけ男に翻弄される遊女が多いのだと言う。
大金を積まれ身請けされても妻になれる者など少ない。良くて妾になるだけだ。芸に秀でていても家事をこなせる遊女など、遊女ではない。
おまけに孕まない身体になっている事も多く、後継ぎを作る事も出来ない。その結果身請けされたにも関わらずまた元の鞘に戻る事も、、そうなった時に努めの年齢(28才)を超えていたら夜鷹になるしかない。遊女の地位すら奪われる。
身請けが必ずしも望む結末とは限らない。
かと言って努めを終えて間夫と一緒になる女もいるが、幸せになれるのはほんの一握り。大抵は身体目当ての遊びで済ませれ、中には騙される者もいる。行く宛もなくまた吉原に戻ってくるのだ。見世の裏方の女達は皆そういった者ばかりなのだ。
樹助の話を聞いて、多少なりとも紫陽に腹を立てていた司はその感情を消化した。
紫陽は司の想像以上につくしを思いやっていたのだ。
「それじゃあ、おめぇは紫陽とはどうするつもりだったんだ?身請けする気はあるのか?」
「・・はは。金があれば身請けしたいですけどね。流石にそんな金はねぇです。紫陽が勤めを終えたら一緒になろうと思いやす。紫陽はその時に言えと言われました。自分の気が変わる事も考えているんでしょうね。」
「ふぅん、、向こうの女はそれだけ身持ちが固ぇって事か。」
「身持ち?」
「ここの事よ。」
そう言って司は自分の胸を拳で叩く。
そこは心の臓がある位置だった。
司の言いたい事が分かった樹助は司と紫陽が交わった事は浮気だと思わないように思えた。
だが、そうだとすると司は何故自分にわざわざ言ってきたのだろう。
道明寺家程の財力があれば息子の我儘も苦もなく叶えられそうなのだが、、
「それだけですか、坊ちゃん。自分にその事だけを言いにきたんでやんすか?」
「ああ、いや、おめぇに聞きたい事があるんだ。」
***
その日の夜の伊吹屋。
見世の表や二階では客が遊女達と賑わいを見せている。
そんな中一階の奥、女将の部屋には風呂敷の包みを女将の目の前に置く司の姿があった。
ガシャン
その包みは大きくはないがかなりの重さがありそうだった。
そしてその置いた音からも中身が何かが想像出来た。
「これは何ですか?道明寺の坊ちゃん。」
伊吹屋の女将が訝しく司を見上げる。
司は腰を落とす事なく仁王立ちのまま女将を睨んでいた。
「こいつでつくしを身請けする。」
司がつくしの身請けを望んでいることは紫陽から聞いていた。その事にさほど驚きはないのだが、、
包みを開けた女将は驚いた。
「坊ちゃん、身請けの勘定は知ってないでしょう、、こちらから、」
「多すぎるのは承知だ。親父には太夫を身請けすると言って金を出してもらった。」
「な、、太夫って。」
「そんくれー俺には価値がある。それに多すぎるのはにはまだ他に理由がある。」
「理由?何ですか、そりゃあ。」
「つくしを身請けするが、このままこの見世につくしを置いていて欲しい。」
「は?ここに?置くってどういう事ですか?」
驚く女将。それも当然だ。身請けしたのなら吉原を出るのが常識。自分の手元に置きたいから大金をはたいてまでしているのに、連れ帰らないとはどういう事かと。
「ここで裏方の仕事をして使ってくれ。ずっとじゃねぇ。俺が道明寺を親父から継ぐまでだ。」
その言葉で女将は司の意図を理解した。
「あいつが勤めが終わる年まではいかねぇつもりだが、それでも何年かはかかる。客を取らないとただ飯食いだと言うのが口癖だからな。多い分はあいつの飯代だ。」
「なるほどそういった理由ですか。」
「足りねぇなら、もっと持ってくる。この位の金俺んとこにはあぶく銭だからよ。」
その言葉にピクリと反応する女将。
「へぇ、、随分大きな口を叩きますね。相当商いの事を分かってらっしゃる様だ。」
女将の言い様に司は子供扱いされた事に気付いた。そして怒らせた事も。
しかし司とて何も分からず大口を叩いた訳ではない。幼いうちから父親の商いを見せられてきた。知りたくなくても父親の力を知らされた状況だ。それを承知の上で父親から稼業を継ぐと決めたのだ。
子供扱いは理解出来る。だが何に対して怒っているのかが分からない司は黙ったまま女将を睨んでいた。
「あぶく銭なら、他にも買うつもりなんですかねぇ。」
「・・つくし以外に興味はねぇ。てめぇを買うとでも思ったのか?てぇした自信だな。婆あでも女ってか。」
「はぁ?何言ってやがるこの糞餓鬼が?!あたしゃあね、稼げる娘を易々と売らないだけさ。」
「だろうな。」
ハッとする女将。
「気付いてたのかい?」
「紫陽も同じ事を考えてたからな。」
「そうか、、紫陽もつくしをそりゃあ可愛がってる。つくしは愛嬌があるんだよ。稽古も真面目にやって、踊りも三味線だってそつなくこなす。
あの娘が客を取るようになれば太夫程じゃなくても稼げるだろう。水揚げを早くと望む客だっているんだ。」
「あ?水揚げだぁ?あいつは俺の女だ!他の男にヤらせてたまるか!!」
額に青筋を立て怒声を浴びせる司。
女将は子供だと思っていたその器を改めさせられた。
「・・随分と惚れさせられたね。こりゃ身請けを許さなければ、つくしの命が危ないかもねぇ、、」
「あ?命だぁ?俺があいつを殺すとでも言うのかよ。」
「他の客に取られたくないんだろ。」
「だからと言って殺めるかよ。どうしても格子前に座らせるならば、客の方を脅すまでだ。つくしを買いでもしたらどうなるか痛い目に遭わせてやるよ。」
「は、、全く。勘弁しておくれよ。」
そんな事されたら商売上がったりだ。女将は司の駆け引きに子供じみてると思いながらも、引かない態度に商売の才能がありそうだと認めはじめた。
ふぅとため息をつき女将は司と向き合う。
女将の表情が変わった事に司の態度も軟化した。
「まぁ、良いでしょう。身請けするには充分な金だし、、坊ちゃんの事情も分かった。つくしは裏方の仕事をさせて置いといてやるよ。」
「おう。はじめからそう言えや。」
「(イラっ)ただし、こき使うよ。」
「はぁ?何でだよ。金は払ったじゃねぇか。足りねぇって言うのかよ!」
「そうじゃあない。坊ちゃん考えてもみなさんな。あんたが連れて帰らないのは邸でつくしが居づらくなるからじゃないのかい?贔屓にしちまったらここでも同じ事だ。いや、それ以上かもしれない。身請けってのはそれだけ魅力のある事なんだ。」
女将の言い分に口を閉ざす司。
への字に曲がった口元は細かく震え自分への怒りを隠そうともしなかった。
「つくしだってそれに気付かないような馬鹿じゃない。こき使われてホッとするかもしれないね。」
「チッ。」
「まぁ、それでもつくしへの目は変わっちまうね。そこはしょうがない。でも坊ちゃんが連れて帰るよりかは良いんだろう。」
「あぁ。門の中が安心っちゃあ、安心だからな。」
司はいつも用心棒を連れてここに来る。
その用心棒は単なるお飾りではない事も女将は知っていた。
「そう言えば坊ちゃんの用心棒、かなりの人気なんだよ。知ってたかい?」
「あ?何だよいきなり、、」
「ふん。あんたの用心棒はあんたが金を出すから行儀が良いんで、遊女達は奪い合ってるのさ。馴染みになれた遊女は安定して稼げるとほくそ笑んでたよ。しかし、つくしを身請けしたならば、用心棒は用無しか。困ったねぇ、、」
「くそっ。連れてこりゃあ良いんだろーが。全員に当たる人数揃えてやるよ。」
「あーそれも困るわ。中にはそれで手を抜く馬鹿も居るんだ。今連れて来てるのは5人だったね。あと3人くらいで構わないよ。増やして欲しけりゃまた言うからさ。」
「くそっ、餓鬼扱いされるはずだぜ。唯の糞婆あじゃねーっつー事か。」
「糞婆あ、糞婆あ、うるさいねぇ、、それじゃあ教えてやらないよ。」
「何をだよ!」
「つくしの事さ。」
その言葉にハッとなる司。つくしの身に何かあったのかと身構える。
「あの娘、月の物が来たよ。まぁ、水揚げは無しになっちまったけどね。間に合って良かったじゃないか。一週間後だったら済ませていたよ。」
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