甘さとスッぱさと ... 花街に護られてー桜・恋・歌 1ー
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花街に護られてー桜・恋・歌 1ー
2017-03-28-Tue
お久しぶりです。
また宜しければお付き合い下さい。


江戸時代を背景にお話を書いてます。
時代的な言葉や名称などは詳しくないので現代風に置き換えてます。
それでも明らかに違うようにはしてません。
細かい矛盾点などあるかと思いますが、目を瞑ってお付き合い下さい。
ダメなら進まないでね。

今回は色々チャレンジしました。








「背をはやみ 岩にせかるる 滝川の」



湯屋からの帰り道、これから湯屋へと向かう男が呟いた句につくしが振り返る。


それに男も気付き、つくしに知ってるのかと言う表情を返す。


「われても末に あはむとぞ思ふ」

「知ってるのか、お前?」

「う、うん。だってそれ(百人一首)崇徳院の歌よね。素敵な歌だから女子に人気よ。」

「素敵な歌、、どういう内容なんだ?」


それでつくしは歌の内容を言って聞かせた。

それは傾斜のために速くなり、岩に当たって二手に分かれている川の流れが、やがてひとつに合流するように、今別れ別れになっているあなたとも、またいつか逢いたいと思っていますという恋歌だった。



その男もつくしと一緒にいた友人の新造もへぇ~と感心する。


「なんだ、お前達は知らなかったのか?」

「うっさいわね~ 百人一首はいっぱいあるの。それに他にも憶えるのは多いの。」

「その歌がどうかしたの?」

「ああ、、」


そう言うと男は上野の方に行った際にその句を大声で言って知ってるかと聞く男に会ったという。知らない男は何だそれはと聞き返すが知らないならば用はないとばかりにいなくなったという。


「ふぅ~ん、でもそれって上の句だけ言って回るって事は下の句を渡された人がいてその人を探しているって事かな?」

「そっか、また会えますよって残したんだものね。でも言って回るって事は本人じゃないのかな?本人はどうした?」

「探せないって事?」

「だろうな。探している男は必死だったぞ。多分報酬とかあるんだろう。てぇ事は探している本人はそれなりの金持ちだな。」



ありがとよと納得できた男は機嫌良く湯屋へと姿を消し、つくし達も見世へと帰って行った。





そんな事があった数日後、


見世の前を掃いていたつくしはその手を止め、近くで行われている作業に見入ってしまう。



「つくし!」

「あ、司。」

「何きょときょとしてんだよお前。俺がいながら他の男を値踏みか?」

「・・は? あたしは桜の植え木を見てたんだけど。」

「よくやるよな。・・この時期にわざわざ桜を運びやがってよ。植木屋を儲けさせて何が楽しいんだか。」

「だって桜が無きゃ花見になんないでしょ。」



娯楽の少ない江戸時代、花見は一大行事だった。ここ吉原でも季節の行事である花見を持ち上げ、集客をしていたのである。

しかもこの時期とあるのは、桜が散ればこれらは撤去されるからである。花の無い樹木は夢を売る吉原にはそぐわないからだ。
そのため吉原で植えられる桜は鉢木だったと言われている。



「ねぇ、司は上野や隅田川の桜は見た事ある?」

「ん、あるぞ。だが隅田川は煩くてしゃあねぇ。宴会でどんちゃん騒ぎで酔っ払いだらけだしよ。花を見るなら上野だな。」

「評判通りなんだね~」

「見てみたいのか?」

「うん。だってそっちの桜は撤去したりしてないんでしょ。だったらもっと大きな木で立派なんだろうなぁと思って、、」

「・・確かに豪勢ではあるな。」


普段から我儘を言わないつくし。そんなつくしの願いならば直ぐにでも叶えてやりたい司だったが、つくしをここ吉原に置いているのはつくしの身を案じてが故。大門を出れば何が起こるか分からない。



「珍しいな。おめぇがこんなに執着するってよ。そんなに桜が好きだったか?」

「んーそうでもなかったよ。・・ただ歌を聞いたからそんな気持ちになったのかもしれないけどね。」

「歌?」

「うん。司は知ってる?

背をはやみ 岩にせかるる 滝川の、、」

「われても先に あはむとぞ思ふ。」

「知ってるの?」

「おめぇ俺を馬鹿にしてんのか?和歌くれぇ嗜みで知ってらぁ。こんくれー余裕よ。」

「へぇ、、流石道明寺屋の若旦那だね。」

「おい、若旦那って、、」

「あれ、違う?」


若旦那って言うのは所帯を持った者に言う呼び名だ。つくしとて知ってるはずだが、桜の魔力に魅せられたつくしはぼうっとして良く考えず呟いてしまった。


「ま、ち、違わねぇけどよ、、どーせそうなるしな。」

「ふーん、、」



司の照れた呟きも聞いていないつくし。

また桜を見て想いにふけるつくしを司は訝しく思った。


「その歌がどうかしたのか?」

「何かね使いの人みたいなんだけど、その上の句を渡して立ち去った人を探してたんだって。」

「上の句?」

「うん。つまり下の句になる様に望んでいたって事でしょ。多分時間がないからとかで上の句だけを渡したんじゃないと思うんだよね。」

「時間じゃねぇなら何なんだよ。」

「何って、分からない?その人は運命的なものを感じたって事でしょ。だから敢えて別れたんじゃないのかな。また会えるって信じてさ。・・それで探しているんだよ。良いよねぇ、、そういうの。」


見知らぬ他人の恋愛に浸るつくしを見て司は面白くなかった。


「それってよ、渡した奴が探してるって事はねぇか?使いの奴なんだろ?貰った奴とは限らねぇぜ。」

「う、、確かに。」

「そんで、おめぇはいつまでその箒と遊んでんだ?このまま俺に帰れって言わねぇよな?」



そう言われてつくしは司の近くで佇む割腹の良い男達の存在に気付いた。恐らく主人の司に遠慮して見世の暖簾をくぐれないのであろう。まぁ遊びの支払いは司がするのだから仕方ないって言えば仕方がないのだが。

つくしは司の言い方にムッとするものの、このまま司を帰してしまえばこの男達も帰る事になる。それはつまり見世の売り上げが減ると言う事だ。



「むうー、、すぐに終わらせるわよ。」



そう言ってさささっと履き出して終わろうとするつくし。頬を膨らませて不満そうな顔だ。


「ふっ、お前は変わらねぇな。そんなんじゃいつまで経っても桜になんかなれっこねーぞ。」

「はぁ?何言ってんのよ。」

「何って、ここでの花見は桜じゃねーだろ。」


そう吉原における花見とは桜を愛でる事だけではない。綺麗に着飾った女達の桜にも負けぬ美の競演を愉しむ事なのだ。



「まぁ、身請けされたおめぇは遊女じゃねぇから桜にならなくったって構わねーけどよ。」


それは遊女らしくしなくて良いと言う司の本音。だがここで育ったつくしにはつくしなりの意地があるのだ。



「何言ってんのよ。この見世で一番花が咲いているのはあたしなのよ。誰かさんが散らないうちからどんどん咲かせちゃうもんだから、あたしはいつも揶揄われているのよ。」


つくしの返事に目を丸くする司。だが、すぐにニヤケ顔になり、


「へぇ、、それなら気を抜いてらんねぇな。花見の時期だからってよ、俺らに対抗心持ってる奴らだっていねーとは限らねーだろ?」

「いるか、そんなの!つーか、そんなの付けさせる遊女なんていないわ。客はひとりじゃないのよ。付けられたら商売上がったりだ!」

「そーか、そーか、じゃおめぇの独壇場な訳なんだな。よし、今日もめいいっぱい咲かせてやるからよ。」

「話聞いてるかー あたしは揶揄われてんのよ。これ以上付けるなって事だってば!」


ごちゃごちゃ煩いつくしをニヤニヤしながら抱き寄せ、見世の暖簾をくぐる司。

騒がしい二人に見世の衆たちも、またかと口出しをしようとしない。

司に引きずられながら二階へと上がって行くつくしを仲が良いなと呟き見守る有様だった。





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*落語の崇徳院を拝借しました。
上野の花見で出会った男女。どちらも恋煩いになってしまい床に伏せてしまいます。使いの者が上の句を手掛かりに相手を探し出すと言う話。そして運命的な相手ならば必ず巡り会う。それを紹介する文に現代ならば「君の名は」、「冬のソナタ」そして「花より男子」でしょうかとあって。採用した訳です。単純でしょ。



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