甘さとスッぱさと ... 花街に護られてー桜・恋・歌 完ー
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花街に護られてー桜・恋・歌 完ー
2017-04-03-Mon
江戸時代を背景にお話を書いてます。
時代的な言葉や名称などは詳しくないので現代風に置き換えてます。
それでも明らかに違うようにはしてません。
細かい矛盾点などあるかと思いますが、目を瞑ってお付き合い下さい。
ダメなら進まないでね。










伊吹屋の裏庭に吉野桜(ソメイヨシノと呼ばれるのはまだ先)が植えられてから数日後、

花が散り始め、庭には白い花びらが落ちていた。

仕事中それを見かけたつくしは、手を止めその花びらを拾い始める。

手ぬぐいに花びらを包んでは仕事に戻り、また時間を置いては拾いに行く。

枝から花が無くなっていく様子を見て、花の無い桜はなんて寂しいんだろうと思うようになった。




そんな中、見世の表て掃いていたつくし。


目の前の通りを歩く男を見てあっと叫ぶ。

その男もつくしの声を聞き振り向くが、何も思いつかない様子。そしてつくしも違うとばかりに頭を振り否定した。


「はぁ、思わず声を出しちゃった。駄目だなぁあたし。すぐに思った事が出ちゃうなんて、、」


こんなんで遊女になっていたら、ちゃんと上位に上がれただろうかと憂いてしまう。

が、それもひと時で思いは別の方へ。

先程の男と見間違えた男を思い出したのだ。

その男は一年前、崇徳院の句を口にして上野での人探しを話してくれた人だった。

その後会う事もなく、その人探しがどうなったかは分からない。

だが、つくしはその話を聞いてそんな恋愛を羨ましく思った事を思い出した。


身体の関係が強い自分達。

だが、桜に気を取られるも思い返してみれば身体の関係は遊女と客のモノとは随分違う。

遊女は客を翻弄するが、基本的には客をもてなさなくてはならない。

客がこうしろと言えば、そうせざるを得ないのだ。


しかし司はどうだろう。

自分がそうしたいと言えば聞いてくれるし、自分を喜ばそうと欲しいと口にした物を持って来てくれる。

これを恋愛感情と言わなければ何と言えば良いのだろう。


つくしは一年前の自分を顧みた。

なぜあんなにも司との関係を不満に思ったのかと。

そして一つの結論に至る。

それは水揚げ前に紫陽が危惧した事のひとつ。女を知った司がどう変わるかと言うものだった。

紫陽はあの時、女を知れば司は他の女も欲しがると思っていた様だが、実際には相いも変わらず他の女には全く目もくれずに自分ばかりを欲する司。

だが、女を知った若い欲求は歯止めを知らず桔梗や桃駒が危惧した様にそれらを全て自分で受け止めなければならなかった。

それは思った以上の苦行であった事。だから不満はそこから来たのだとつくしは結論付けた。


「今はそう何度もしないもんね。ただ身体をくっ付けたり話しをするだけって時間も多いし。」


それに崇徳院の歌の様に分かれてもまた会えると言うのは、会えたならばそれは運命だけれど、会えなければその淋しさは計り知れない。

司と恋仲になり、将来本当に夫婦になれるかという不安は拭えないでいる。

だが、司は夫婦になれる事を疑っていない。だからそんな司の前でその不安を敢えて口にはしないし、口にする事でそんな時の流れになってしまったのでは悔いても悔いきれない。


「だいたい短歌って悲恋のものが多すぎるのよ。もっと幸せに満ちたものってないのかしら?」


つくしのぼやく声も大きくなる。少し前に何でも口に出る事を憂いたが、これは主張して良いほどだと口に出ても踏ん反り返りたくなるほどだ。


「遊郭にいる女は何かしら陰を背負っているのよ。・・って、無いなら自分で作れば良いのか。」


とたんに明るくなるつくし。短歌もいっぱい勉強してきた。そして恋もしている。絶対に出来るはずと自信満々だ。


「やっぱ桜は欠かせないわよね~、、じゃあ季語は桜だ。って季語を入れるのは俳句じゃない。短歌は入れなくて良いんだった。あはは、、」





***


またあくる日、伊吹屋の二階には兵庫髷を結ったつくしの姿があった。

髪を整え、これから白粉を塗る段階。

それなのにつくしはザルを手になにやら梳いているようだ。



「何やってんだい?」

「あ、姐さん。ちょっと砂を退けたくて。」

「砂?」


そう言う紫陽につくしはザルの中を見せる。


「これは落ちたものを拾ったのかい?でもあんまり砂は付いてないようだけどねぇ。」

「そうなんですけど、司はけっこう綺麗好きでちょっとした汚れもうるさいんですよ。砂埃とかかぶるとすぐに払おうとするし、、」

「ふう、、ん。あんたも惚気るようになって来たねぇ。」


その言葉にはたと固まるつくし。

真っ赤な顔で口をぱくぱくさせ、言い訳しようとしている。


「おんもしろい顔するねぇ。くくく、、良いじゃないか。惚気のひとつやふたつ。あんたは言わなすぎなんだよ。だから皆んな聞き出そうとからかうのにさ。・・まぁ、言い過ぎたら今度は知らんぷりに転じるだろうけどね。」

「ほぇ?惚気、、て良いんですか?いや、やっぱ駄目ですよ。体を張って勤めてる皆んなの前で惚気ちゃ、それは悪意ってモンです。」


ピシャっと自分の頬を叩くつくし。

そんなつくしの真面目さに紫陽も笑ってしまう。


「んで、その花びらどうするのさ?」




***



「よっ。」


小さく掛け声をしてその桜の花びらを宙に撒くつくし。

ひらひらと布団の上、花びらが舞う様子につくしは破顔になる。


一方司は花びらを目で追いながらも、つくしの機嫌の良さに口元が綻ぶ。



「ゴホッ。」

花びらのひとつが鼻を塞ぎ、咳き込んでそれを払う司。


「あ、大丈夫?ちゃんと埃は払ったつもりだったけどな。まだ残ってたのかな。」

「埃?この花びらって落ちたヤツなのか?」

「うん。でも何回もザルで梳いたんだよ。だから見た感じ埃は無いと思ったんだけどな~」

「まぁ、煙たくねぇし、、無いと思うぜ。それに今のは鼻に入ったんだよ。」

「ありゃ。そうなんだ。」


そう言ってくすくす笑うつくし。今日のつくしはとても楽しそうだ。

そのため司の機嫌も良くなる。


つくしが手を伸ばし肩や腕に付いた花びらを摘んで取る。そして掌に花びらを集めてはまたふうーっと一息で花びらを吹雪かせ、けらけらと笑っている。


「くく。随分と気に入ったみたいだな。そんなに気に入るなら、俺も集めてりゃ良かったぜ。」

「本当?じゃ来年は一緒に集めようよ。吉野桜だけじゃなく、通りの山桜の花びらも欲しいんだ。」

「吉野桜?ありゃ染井村の桜だろ?大体、吉野に咲いてる桜もここと同じ山桜って聞くぜ。」

「えー、そうなんだーー」

「おう。俺んとこの店に出入りした奴がよ。吉野に行った事があるらしく言ってたわ。

それにそれで広まってよ、吉野から運んだと本当勘違いした奴が出たらどうするんだよ。ま、あのオヤジから言ったんだから、何があってもオヤジが片付けると思うがな。」

「うーん、それは嫌だなぁ。じゃあ染井桜って呼んどこうかな。」

「くく、他の奴らはすでにそう呼んでるけどな。耳に入ってなかったか?おめぇらしいぜ。」


そんな風に笑う司にムッとしたつくしだったが、あるところにも花びらが付いているのを見つけくすっと笑ってしまった。


「何だよ。」

「ふふふ、髷にも花びらがあるよ。頭を下げたから見えた。」

「髷に?」


そう言って頭を下げ花びらを取ろうとする司。


「あ、取ったげるよ。」


そう言い手を伸ばすが、何かを思いついたように手を止め、ふうーっとまた息をかけるつくし。


「おわっ、、てめぇっ、、くすぐったいじゃねーか。」

「えへへ~、月代だもんねー 司、びくつく事なんて中々無いでしょ~」

「このやろっ。良い気になんなよ。」


手を伸ばしつくしを捕まえようとする司。つくしも逃げるものの本気な訳はないのですぐに捕まってしまう。

そして、戯れの取っ組み合いから布団の上へと組み敷く形になり、自然と唇が重ねられる。


「はぁ、、まだ提灯は消える気配もねぇのに、あんまり煽るなよ、、」

「くすくす、、煽ってるつもりはないもん。司が勝手に煽られてるんでしょ。」

「言ったなてめぇ、、襲うぞこら。」

「襲ったらあ?構わないもーん。」

「チッ、余裕こきやがって、、」


そう言うも悔しがる気配のない司。そしてすぐさまつくしから漏れる潤う声。


部屋の外から賑やかな声の聞こえる中、ろうそくの火も消さずに二人は絡み合った。


そして、灯が消えてからが本番と魂の抜ける快楽までは行かずに楽しむ二人。


一回交終えた後、笑って部屋を後にするつくしを司もまた笑って見送った。

そして布団に散らばる花びらを一摘みし、ふっと飛ばしてみる。そしてひらひら舞う花びらにつくしへの愛おしさの余韻に浸るのであった。




***

そして翌朝、大門で司を見送ったつくしは急いで部屋へと戻る。

水揚げからしばらくは司との夜は客を取らない姐さんから部屋を借りていた。

が、司が定期的に見世を訪れる事。そして用心棒を連れて来る事から、その間に年季を開けた姐さんの部屋をつくしの部屋へと充てがわれるようになっていた。
(司が来ない日は部屋持ちでない遊女が上玉の客を取った時に使っていた。極力汚さないようにしたのである。)

姐さんに返す部屋でもないから誰もまだ部屋に入らないだろうけれど、そこを触られたくなかったつくし。

部屋に入り、司を見送る前と変わりない事に胸を撫で下ろした。


そして布団の周りに散らばる花びらをひとつ残らず集めては、小さな巾着に入れていった。

その巾着を懐に入れ、正座する。



「散る花に にほひを付けて 刀とし 弱き心を 出すことなかれ」



せっかくあなたがくれた桜だから、散った花びらも大事にしたい。そしてその花びらにあなたの匂いを付けたらそれはきっと懐刀に負けぬほどの武器になるでしょう。挫けそうな私の弱い心もこれがあればきっと乗り越えられる。


そんな想いを込めて歌にしたつくし。

負けん気でいつも前を向いていた自分。

悲恋歌など似合わない。

闘う歌こそ、自分の恋歌だと思うのだった。




【完】



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高校時代国語古文は2でした。やる気のなさからでしたが、もっとちゃんと勉強しとけばと悔いた執筆でしたよ。難しい事にチャレンジしたなぁ、、文法とかの間違いもあるでしょうがそこは流して流して下さい。

そして、この後【With a Happy Ending】にて『Sakura』が始まります。
この話を読んだhappyendingさんがインスピレーションして作って下さった話。
派生するには難しくしてしまってごめんなさい。
でも、素敵な話を作って下さいました。
私が宣伝する前に皆さん行く気満々でしょうが、是非是非読みに行って下さいね。
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