甘さとスッぱさと ... イベリス 2
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イベリス 2
2017-06-17-Sat
翌朝、目が覚めたつくしは真っ先に喉を潤おそうとした。

ワンルームマンションの一室。

ベッド横のテーブルにはドリンクホルダーの水と、7錠ずつ矢印繋ぎで包装された錠剤が置いてあった。

3段目の2錠目を口に運ぶ。

空になった錠剤の穴の数はつくしがこの任務に就いた日数を表していた。



東証一部上場企業に入社して8年。

つくしは総合職だったが30歳という節目に今後の身のあり方を考えていた。


高校から玉の輿を狙って英徳高校への進学を熱望した母を説得し、都立高校に入学した。

大学は都内の私立大学だった。理由は国立大でもそれなりのお金がかかるから。徒歩圏内の私立大に特待生で入学した。

メジャーな大学ではなくても、特待生としての主席卒業はそれなりの評価対象と見なされ大企業の総合職に新卒で採用された。

大学ではサークル活動などに一切目もくれず、取れるだけの講義を取っては空いた時間も図書館に入り浸っていた。

そのため資格持ちになってしまい、幸先良く就職は出来たものの、器用貧乏となり先輩後輩問わず使われてしまった。

合コンで直帰する先輩を見ては溜息もついたけれど、大学で経験してこなかった合コンを社会人になったからと言って参加しても上手くいくはずもなく、逆に他の参加メンバーが狙っている人に好意を持たれて妬まれるのも嫌気がさした。

残業の方が給料にも反映されるとあって、使われていると分かっていてもそれを選んでいた。

つくしの働きぶりは真面目だが偏った体制を産むとして、つくしは2年程で部署変えを命じられた。

行く先々で重宝され、爪痕を残していくつくし。

20代にして4回目の移動は流石に異彩を放っていた。

総合職といえど寿退社で辞めていく女子は多い。

様々な部署での経験は上を目指す上での武器になりそうだが、使われている事が案外性に合っていると感じていたつくしには逆に荷物に感じていた。

自分は上に立つ器ではない。

自分が上に立てばおそらく周りを動かすどころか、周りに動かされるだろう。

全員が優秀な人材で、居るだけでいい役職などこんな会社には存在するはずがない。

いや、うちどころか他所にだってあるわけがない。



次の移動がどこになるのか、また昇進を含めた進路などそう遠くないうちに声がかかるだろうと漠然と考えていた。



そんなある日、社内試験を受けてみないかと声がかかった。

適切試験だというそのテスト。

自分の性格を知り、業務に活かすという所につくしは惹かれた。

会議室が並ぶフロアから離れた普段人の出入りが少ない部屋でつくしは8人の社員とともに試験を受けた。


適切試験とあって質問は正解を求めるものではなかった。

むしろ質問に答える事で自己評価が出来、自分を相対的に知る事が出来た。

行動力をみている質問では特に問題はなさそうだった。

問題は性格を表す質問だ。

あたしは争いを好まない。

野心といった向上心に欠けていた。

仕事の上でその性格は好ましいものとは言えない。

やはりあたしは上に立つべき人間ではないんだと理解した。


それじゃあ、この先どうする?

淡々と仕事をこなすのは簡単だ。上に立つ人間ではないが、補助要員、スーパーサブにはなれる。それこそ得意中の得意分野だ。


けれど、女で30になった。

ひとりで居続けるのか、それとも誰かパートナーを見つけるのか、、

だが、どうやってパートナーを見つける?

職場で?

それとも結婚相談所?

どちらにしても躊躇してしまう自分がいた。


高校までは友人とも男女問わずワイワイやっていた。

だが大学に入って未来投資で自分を追い込むあまり、人との付き合いを疎かにしてしまっていた。


いつからこんな風になっていたんだろう。

嘆いたところでどうにもならないのだけれど、ぼやきたくもなる。

自分がこんなに臆病になるなんて思いもしなかった。




そんな適正試験を受けた数日後、私は声をかけられた。

そこであたしの人生は大きな転換を迎え、



今に至る。





コトン


空になったドリンクホルダーをテーブルに置いた。

ふうっと息をついて、顔を上げれば思い起こすのは昨夜の出来事。


昨夜、あたしは処女でなくなった。

しかし身体に痛みは左程残ってない。

そうなるよう準備をしてきたのだ。


この歳になれば初体験がどういうものかくらいは知っている。


痛みがなくてホッとしているけれど、感情がなかった。

甘い感情。

恋をした上で生まれる甘い感情がなかった


それが唯一の気がかりだった。


この先、処女でない事でそれなりの恋愛経験をしているとみなされるだろう。

だから後悔はない。

それに恋愛での初体験といえど甘いばかりではないはずだ。

でも、酸っぱくもない。


納得して、

覚悟して、

あたしは性を武器に任務を遂行した。


会社に性要員を打診されたからだ。

当然驚いた。

けれど、すぐに断るとかそんな反応が出来なかった。


それは会社からしたら当然なのかもしれない。

そうなる事を見越してあたしに白羽の矢が立ったからだ。


説明を聞くうちにあの適正試験の本当の目的を知った。


そして、あたしの身の振りも会社には見抜かれていた。


あたしは退職しようと考えていた。


今の自分の状況が好ましいとは思えない。

だが、辞めようにも理由もなく、転職もその覇気すら持ち合わせてなかった。

キッカケが欲しい。

そんな甘い考えを持っていた事を見抜かれ、会社は報酬を提示して来た。


それは円満退職に、特別手当が付く事。

しかし、そのために退職後もしばらくは会社からの拘束がある。


それは任務の内容を聞かされれば理解出来た。


性要員と言っても、普通の風俗嬢とは訳が違う。

相手は大企業のトップ、国の経済を担う最重要人物なのだ。

経済という戦いの場で疲れた身体を癒したい。

そして昂った性を解放したいと猛者の男達は要望している。

だが、企業のトップに厳しい目を向ける世論。

風紀の醜聞は男達にとって命取りになる。

だから、男達は性の解放には慎重にならざるを得ないのだ。

求めるのは美ではない。

確固たる信頼と身分だ。

企業に籍を置き、

企業の事情を知り、

企業に尽くして来た人物。

そんな条件を満たした人物だからこそ、この要員は務まるのだと会社は言ってきた。


そして、その要員を務めた後は会社を去らねばならない。

だが、会社との繋がりを断つ訳でもない。

信頼という値を付けられない価値のため、会社からの拘束はずっと続いていく。


そのため会社からは恩恵も与えられる。



今つくしは自宅待機中だった。


つくしに与えられた任務は、性人形になるのではなく性を武器にしたハニートラップ。


ある企業の会長から、道明寺司を落として来いと言われた。


道明寺司。


名前くらいは知っていた。


自分より一つ年上の御曹司。

彼の幼馴染と4人でF4と呼ばれ若い女性の注目を浴びていた。


だが、つくしにとってはそれだけの事。

わざわざ声をかけるとも、

その姿を見に行こうとも思いもしなかった。



だからこの任務があってはじめて目を向けたのである。

だが、彼を見てこの任務は無謀だと思えて仕方なかった。

それはパーティで見かけた道明寺司が女性を寄せ付けなかったからだ。



けれど物事は進んで行く。


私を使った会長はパーティの前に会ったけれど、パーティでは少し話をするだけで大して注文を付けてこない。

美味い物を沢山食べて楽しめと自由にしてくれた。

けれどパーティ終盤、

会長の秘書があたしに声をかけて来た。

任務を遂行しろと。


あたしは彼に無視される事を望んだ。

お願いだから、さっきの女性達の様にあたしに気づいてくれないでと。


でも、会長に接触していたあたしを彼は目に入れていて、、



あたしは股がられた。



彼に貫かれた事は、多くの女性達にとっては羨む事なのかもしれない。

でもあたしには嬉しいという感情はなかった。


けれど、彼の反応は気になった。

彼はあたしを処女だったとは思わないだろう。

むしろ、濡れたショーツを見て慣れた女だと思ったかもしれない。



それでいい。

それで不満なんてない。

だって元々交わるべき人間ではなかったのだから。

そう自分を納得させようとするのだけど、あの男の顔を思い出してしまう。


歪んだ笑い顔。

整っているのに冷めた目つき。

苛立ちの声。


ズキン

変なの、あたし今ごろになって彼を傷つけて胸を痛めてる。


つくしは頬をつたう泪を拭った。


熱かった男の身体を思い出す。

冷たい心だと思った男だったが、

つい自分と重ね合わせる事で、冷たさが虚勢のようにも思えてきた。

本当は心も熱く、誰かを求めているんじゃないかと。


誰でもいい。

誰か、あの男を救って欲しい。

身勝手だと思いながらもつくしはそう思ってしまった。



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