甘さとスッぱさと ... イベリス 8
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イベリス 8
2017-06-24-Sat
ホームの端にある小さな改札。


ある男と女が目を合わせた。


男はやっと見つけた女を見て興奮に目を真開き、

女は不意打ちを食らった動揺を隠せずにいた。







数時間前、


道明寺ホールディングス日本支社最上階執務室。


男の秘書は、なぜそこまで男が決断を渋るのかが分からなかった。


とある企業とのひとつの商談。

道明寺サイドに不利な条件は一つもない。

だが、男の表情は最後まで険しかった。



「持っていけ。」


サインをした後も納得のいかない表情。

流石に秘書も声をかける。


「何に引っかかっているのですか?」

「何でもない。」

「ないようには思えませんが、、」

「そう思うだろうが、そうとしか言えん。とにかく持って行け。この商談は成立だ。」

「・・・かしこまりました。」


いつもの能面を崩す事なく、秘書は部屋を出て行った。



バタン


バサーーッ


男はデスクの書類に八つ当たりした。


「くそっ。」


苛立ちが収まらない。


二度は嵌められまいと、先回りを画策してきた。

しかしこれといった手立てもなく、相手の隙も見つからない。

向こうが強引に進めようならば、こちらが更に強気に出れるものの、そんな態度を見せる事もない。


おまけにこちらが隠れて動いていたのが相手に筒抜けになっていたようで、更に苛立ちは積もる一方だ。


「悪い司。あのチーフの女、俺が接触して来たのを言ってるわ。完全に俺のミスだ。」


あきらのミスは今更だ。上手く行かなかった時点でその可能性は大いにあった。


こうなった以上あのジジイの手のひらに乗らなけりゃ欲しいモンは手に入らねぇ。


すんなり認められねぇのが俺という人間かもしれないが、俺の立場くれーになりゃそう簡単に覆せるほどのちっぽけなプライドではやってらんねーんだよ。



だが、


俺はプライドを捨てる泥臭さと言う手段を知らないほどガキでもねぇ。


時と場合にもよるが、

こん時はその手段を使わねばならねぇ場合なんだろう。


そんくれーあの女は俺にとって価値がある。




コンコン


「なんだ。」


失礼しますと一言告げ秘書が入って来た。

部屋の状態を一瞥しても表情を変えず、要件を淡々と述べる。


「立浪会長から会食のお話がありました。」


男は秘書を睨み付けるだけで黙っている。


「この後の遅い時間を指定してきました。・・日を改めましょうか?」

「・・いや、良いだろう。それで進めろ。」

「かしこまりました。それともう一つ。」


なんだと男は顔だけで秘書に言葉を促す。


「立浪会長から契約の謝礼があるとの事です。そのため話を合わせて欲しいとも。どうやら同席者がいらっしゃるようです。」

「同席者、、」

「会長の孫にあたるご令嬢ではないかと思われます。英徳大学に通う社長の娘がいらっしゃるはずです。」

「その類いか。」

「会食を受けてよろしいでしょうか?」


男は黙っていた。

だが秘書には何か思案していると分かっていた。


「・・いいだろう。進めろ。」


男はニヤリと笑い、先程までとはうって変わって機嫌良くなった。

その様子に秘書は眉根を寄せ、


「そろそろ理由を教えてもらえませんか?」

「理由か? ククッ。それを言うにはまだ早ぇな。まだチェックメイトにもなってないんだからよ。」

「チェックメイトのサポートも秘書の役目ですが。」

「仕事の点ならな。それに秘書を使うほど俺も落ちぶれちゃいねぇよ。」


秘書の能面が大きく動く。


「立浪のご令嬢とそのようなご関係だったとは存じ上げませんでした。」

「あ?立浪の?違ぇよ。ジジイの孫がどんな女かも憶えてねぇよ。」

「ご令嬢ではない?」

「くくく、まぁ、そのうちお前も知る事になるさ。そのうちな。」


秘書の能面は元に戻りつつあったが、視線を散らばった書類に向けそれらを拾いに動き、


集めた書類の束をデスクの上に置いた。


「この決済は急ぎではありません。一度邸に戻りますか?」

「そうだな、そうするか。ドウセキシャがいるんだったらビジネススーツは野暮だよな。」

「それで構わないのですが、、程々になさって下さい。」

「くくくくっ。」





***


バタン


リムジンに乗り込んだ男が口を開こうとして固まった。

発車の命令を待っている運転手は空いた間にサイドブレーキを握っていた手を離しそうになる。


「司様?」

「・・新宿の小田○百貨店に向かえ。」

「は、新宿、、ですか?」

「行け。」

「かしこまりました。」


運転手が戸惑うのも無理はないだろう。


だが、リムジンに乗り込む時に見えたビル群を見て男は何かに閃いた。


ー謝礼があるようです。


嵌められていると思っていた。

だが、単に計られているだけならば同じ駒でも意味が違う。

そう考えた時、今までしっくりこなかったパズルがカチッとはまった。


この事がなければ俺はこの商談をここまで評価していただろうか、、と。


なんて事ない商談のひとつだ。


道明寺サイドとしては立浪でなくても何らメリットもデメリットもない。

だが立浪サイドを考えると、、



謝礼とは間違いなくあの女だ。


あのジジイ、俺好みの女を商談に利用しやがった。


同席者は秘書の言うようにジジイの孫かもしれねぇ。

だがあの女はジジイの孫なはずがなければ、あの女を利用したジジイが俺に孫をあてるだろうか?



ならば、、




キッ。


「司様、新宿小田○百貨店に到着致しました。」


男は車窓から外を眺めていた。


「入口はここだけか?」

「入口ですか?店内への入口は複数あるはずですが。」

「目立たないところはどこだ?」

「目立たない、、それならば鉄道口から離れたところでしょうか。」

「でしょうか?って俺は知らねぇから聞いてるんじゃねーか。」

「そ、そうでございましたね。しょ、少々お待ち下さい。聞いてみます。」


そう言って運転手はどこかに電話をかけた。


「つ、司様。店内に地下の改札に繋がる入口があるそうです。そちらでしたら、ホームから直接店内に入る客のみの利用なので目立たないそうです。」

「そこはどこだ?」

「ええ、あ、どこかまでは、お待ち下さい、、」

「くそッ。役に立たねぇな。」


「あっ、司様っ!」


運転手の声が響くも男には届いてなかった。

長いリーチで人混みの中駆け抜けて行く。



男はその百貨店を熟知してなかった。

むしろ全く知らないと言っていいだろう。


だが、地下のホームと繋がる店内という情報のみだけで目的地を目指していた。


何が男を引きつけるのか。


だが閃いた男の勘は鋭かった。


探していた存在が確かにそこにいると、ただそれだけで走り続けていた。





やがて見つけた小さな空間。


食料品売場から少しだけ離れた角には、改札が一つだけ設置されていた。


コーーという地下から聞こえる風が耳に届く。


息を整えしばらく待っていると、女が現れた。

手にパスを持ち、うつむいている。



ピッ


女が改札を出て顔を上げた。




目が合う2人。


この時止まっていた2人の歯車はまた加速し動き出した。





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小田○新宿にそんな改札があるかは分かりません。

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