甘さとスッぱさと ... イベリス 9
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イベリス 9
2017-06-26-Mon
「ほ~お。成人式より気張ってるのぉ。」


そこではとある祖父と孫娘が会話していた。


「うふふふ。だってお爺様が約束を果たせたって言うんですもの。・・・ひょっとしたら、ひょっとするかもしれないでしょ。」


頬を染める孫娘。

嬉しそうなその表情には爺馬鹿な祖父も満更ではなさそうだった。


「ひょっとしたらのう、、それじゃ儂は賭けに勝っても意味がないではないか。そこまで読めぬ爺いだと思っていたとは、悲しい事だ。」

「そ、そんな言い方するなんて意地悪ですわ。誰もお爺様の経営手腕を疑ってなんかいません。

ただ、私だってあんな人と会えるんだもの夢を見たってバチは当たらないでしょう?」

「ま、そのくらいわの。」


だが祖父にはその喜びが面白くないようで、孫娘相手に拗ねて機嫌を取ろうとしている。

が、孫娘も孫娘で祖父の扱いには慣れているらしく機嫌を伺いながらも、甘える仕草を忘れない。

しかも、


「それにあの方が機嫌良く来て下さるって条件もパスしてるのよね、お爺様?」

「それは間違いない。そのくらい好条件を叩きつけたからのぅ。」


とたんに満面の笑みになる孫娘。

どんな願いも祖父ならば叶えてくれると言った期待を成就され、嬉しさを隠せないようだ。


「ふ、ふぅ~ん、、その好条件って一体何なんだろう?すごく気になるんですけど。」


だが嬉しさは時に自らの仮面のズレすら気付かずに失態を曝け出す。

祖父相手に繕ったおしとやかな言葉使いは気安い言葉になり、祖父は孫娘の未熟さに頬を緩める。


「それは瑠璃子がちゃんと母親の跡を継いでからじゃ。なにせ儂にとっての伝家の宝刀を振ったんじゃぞ。そう簡単には教えられん。」

「佳生(弟)がいるのに私に跡取りを言ってくるなんてお爺様は変わってるわね。普通は男子に跡取りさせるものじゃない?」

「ふぉっふぉっふぉ。立浪家では男子より女子の方が商才があるんじゃ。瑠璃子の母親もそうだったしな。それに男子が継いでいたように思われている歴史の中でも実は女子にうまく継がせていた事も多いんじゃよ。」

「本当にそれだけ?佳生はお爺様が私を嫁に出したくないから跡を継がせるんだって言ってるけど。」

「ほーお。佳生はそんな事を言っておるのか。中々冷静じゃのお。」

「え、本当にそうなの?」

「それもひとつの理由じゃな。何も理由はひとつとは限らんぞ。幾つかの条件を照らし合わせて考えるものじゃ。」

「ふぅ~ん。何だか上手く言い包められた気がするんだけど。」

「気のせいじゃ。」

「そうしとく。機嫌の良い道明寺様と会えるんですもの。今日一日だけはお爺様のお話に合わせるわ。」

「今日一日だけ?! それじゃあ約束が違うのう。」

「あ、、えへ。明日からもちゃんとお話を聞くよ。ごめんねお爺様。」

「調子の良い娘じゃ。叶わんのう。」

「うふふふふふ。」





そして身なりの準備を整えた孫娘は祖父と共に目的の場所へと向かっていた。


プルルル、プルルル、、


「儂じゃ。・・・何?」


らくらくホンを笑っていた孫娘が祖父の変化に敏感に反応する。


「そうか、見つけてしまったか。その店を続けて使った儂のミスじゃな。・・・まぁ、良いじゃろ。そのまま見送ってくれ。」


祖父は大きめのスマホを胸ポケットにしまった。


「お爺様どうかしたんですか?」

「うん?ちょっとトラブルが発生したようじゃ。」

「トラブル?まさか道明寺様が来ないとか?」

「いや、来ると思うぞ。」

「じゃあ、ご機嫌が良ろしくない、、とかですか?」

「機嫌なら良いじゃろうな。それこそ、満面の笑みで来るかもしれん。」

「満面の笑みの道明寺様、、一体何があったの?」

「それは言えん。儂の可愛いお前でもの。」




祖父と孫娘が到着したのは表札を出してない料亭。その佇まいからふらりと立ち寄れる場所ではない事が伺える。


期待に胸を膨らませる孫娘だったが、約束の相手が1時間も遅れている事に、その不満は祖父へと向かっていた。


「お爺様の嘘つき。」

「そんなに拗ねる事はないじゃろ。さっきトラブルがあったと言ったではないか。待つ事も交渉には必要なんじゃぞ。」

「交渉、、そうね。待ったんだから、こちらが強く言っても言い返せないわよね。」

「そうじゃ、そうじゃ。」


孫娘の機嫌を良くし、ニコニコと眉尻を下げる祖父。

だが孫娘の見てないところではキラリとその目は光っていた。



やがて中居が相手の到着を告げに来る。

孫娘は鼻息荒く背筋を伸ばして意気揚々としていた。

祖父はそんな孫娘が可愛くてたまらないといった様子で微笑んでいた。

不釣り合いな薄く開いた目で見ながら。



「えっ?」


驚く孫娘をよそに祖父は遅れた男を暖かく迎えた。


そしてそんな男はひとりではなかった。


男の連れは女だった。


孫娘は男の秘書かもしれないと、動揺しながらも祖父の様子から考えていたが、


あろうことか祖父は、男に恋人を連れて来て感謝すると言い放った。


そして男もそれを肯定した。


はっきりと。


確かに祖父の宣言した通り、機嫌の良い男を連れて来た。


だが女を連れて来る事など孫娘には予想すらなかったため、先ほどの威勢は息を潜めていた。


何度もその女の方を見る男。


男のその女を見る目は孫娘の感情を逆撫でする以外他ならなかった。


淡い期待をしていた孫娘。


その女を睨む事しか出来ないが、それすら祖父に咎められる。


そこではじめて孫娘は祖父にしてやられたのではないかと疑念を持った。


だが確信とまでは行かない。


その証拠に孫娘と目が合った祖父は悲しい顔をして、自分の気持ちを分かっているように振る舞う。


孫娘がモヤモヤする中、会食は機嫌の良い男2人の笑い声で盛り上がっていた。


男が連れて来た女は目の前の孫娘を見て、自分が誰の身代わりなのかを知り、お人好しと言われ続けた人生ではじめて他人を憎く思った。




やがて会食は開きになる。



遅れた側である事から男は祖父と孫娘を店先で見送った。


捻くれた表情の孫娘が先に車に乗り込み、孫娘の祖父が男に声をかける。


「こちらから謝礼を持っていくつもりじゃったんじゃが、、、まぁ、結果は同じじゃろうからお主も構わんじゃろう。」

「はい。」

「話を合わせてもらえて感謝する。・・可愛い孫じゃからな。」

「こちらこそ。私の考え及ばぬ好みを見抜いていただき感謝しております。」

「仲良くな。これもひとつの出会いじゃ。」

「はい。」

「それじゃ、先にさせてもらう。」

「はい、ありがとうございました。」


祖父に一礼して見送る男と女。


女の腰には男の大きな手が添えられていた。


離しはしないと意志を持った手が。





***


リムジンが夜の闇を走り抜けて行く。


女にとってはいつまでも晴れない闇のようだった。



「あの、、」

「何だ?」

「これからどちらへ?」

「帰る。」

「それじゃ私も、」

「お前は俺と一緒に来い。ジジイも仲良くしろと言ってただろ。」

「・・はい。」


女が弱々しく答えた事に、男は眉根を寄せる。


「そんなにビクつくな。何も乱暴にする訳じゃない。」

「あ、はい。」


女の態度は男を苛つかせた。

男には女がここまで自分を拒む理由が分からなかった。


それだけ男が女に接してこなかったからなのだが、愛に飢えている男は女の拒絶に傷ついていた。


「あの、、」

「何だ?」

「あ、私は何をすれば良いのですか?」


懇願するように自分を見上げ目に、男は目を背けてしまった。


「俺の相手だ。前みてぇなんでいい。」

「分かりました。・・あの。」

「何だ?」


背けた顔を振り向けずに男は言った。


「マンションに荷物を取りに行っても良いでしょうか? その、今夜、今夜からなんですよね。」

「荷物?」

「あの、ピルを飲んでますので、、」

「ああ、そうだな。」


男は運転手に行き先を変えさせた。


やがて、とあるマンションに到着する。


女がドアに手をかけた時、男はとっさに反対の手を取った。


驚く女を見て、男はゆっくり手を離す。


「すぐに戻って来い。待つのはあまり好きじゃねぇ。」

「・・分かりました。」



女は車を出て小走りでマンションに消えて行った。


男が後ろ姿をじっと見ては言いようのない不安にかられていることなど知るよしもなく。





バタン


はあはあはあ、、



女は玄関にぺたんと座り込んでしまった。


息を整え、

無心になる事を自分に言い聞かせていた。


目を開くと暗い部屋の向こうに明かりが灯っているのが見えた。




ー明けない夜はない。




このトンネルもいつかは抜けだせる。そう考え女は立ち上がった。






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おはようございます。

コメントありがとうございます。

イベリス9話、
コメントを読んでいるとみなさんハテナが飛び交っているようですね。

にごして書いているからでしょうが、それでもネタを散りばめてたので繋がるかなと思ったのですが、にごし過ぎたようでした。

なのでここでちらっとネタばれ。
この後の展開ではそんなに重要ではないのでね。

立浪の爺さんの意図ですが、
孫娘の瑠璃子に司と食事したいとねだられた事がキッカケです。
オマケにその場で司には機嫌良くニコニコして欲しいと条件を強欲を出したんですね。
なにせ司は女嫌いでパーティでは寄せつけてませんでしたから。
単なる会食の設定では無表情の司が来るとしか思えなかったんです。瑠璃子がね。ま、そういう噂も耳にしていたんでしょう。
なので、瑠璃子はお爺様に難題を叩きつける訳です。

でも、ここで爺さんも黙っていなかった。
司が道明寺のバックグラウンドでモテるのは女性側の見方ですが、男性の目線からはどうでしょう?特に会社を経営している男からすれば、面白くない存在ですね。仲良くしたいと思っていてもそこは良くて持ちつ持たれつ。本音では利用したいと思うのが当然ではないでしょうか?
そこで可愛い孫娘の要望を聞きつつ、司を利用しようと思った訳です。
そこには、司を嵌めるというよりも、孫娘に司は全くその気がない事を見せつけたかった。だって、仮に司と結婚しようものなら孫娘は手の届かないというか人質的な存在にもなりかねませんからね。
それで考えたのが司に恋人を作らせるです。
とはいえ、この人どうだ?と司好みの女性を連れていったところで、ありがとうございますと司じゃなくてもなりませんよね。
だからハニートラップを利用したんです。

みなさんが感じたハテナ。
これで全てではないと思いますが、それはこの先の展開次第なのでまだ伏せさせて下さい。

なかなか鋭いコメントもありまして、おお〜とひとりジタバタしましたよ。

多くの人が楽しみにして下さって、何でこんなの書いているんだと思う事もありますが、ハッピーエンドに向けて進めて行きたいと思います。

次が10話ですが、
長編にはならないようにもがんばります。
って、すでに手遅れな気もしますが、、、


では15:00更新目指してがんばります。




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