甘さとスッぱさと ... イベリス 10
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イベリス 10
2017-06-27-Tue
トンネルの中は明るかった。


なかなか明けない闇は、明るいからこそ本当の朝を迎えにくいのかもしれないとつくしは思った。


初めに挑んだ戦場も大きなホテルだった。

けれどここはホテルではない。

個人の所有する邸宅だ。

それなのにこの規模、、


つくしは改めて自分の処遇を考えた。

無心になろうとしても完全に出来るはずもなく、恐怖心と戦っていた。



カチャ


男の手はまだ自分の腰にあった。

なので部屋に入れられた時つくしは意を決していた。


背中のファスナーを下ろそうと右手を背中に持っていく。


だがうまく下ろせない。

落ち着こうとするも空回りし焦る一方だった。


ふと、男の方を見ると笑っていた。

穏やかに。


だがつくしと目が合った事で真顔になる。


「俺がいるのに自分で(ファスナーを)下げようとするなんざ、お前男慣れしてねぇな。」


男の言葉につくしはドキッとした。

そして、男は腰に当てた手を離してつくしの背中へと周りファスナーを下げる。


「ほらよ。・・・シャワーは向こうだ。」


つくしは男の指差した方向を追ってまた男の方を向いた。


「さっぱりしてこい。そのままだと寝苦しいだろ。」


つくしは寝苦しいという言葉に首を傾げる。

大きな目でじっと見られた事で男は勘付いたようだった。


「今夜はヤルつもりはねぇ。お前も疲れているだろ?」

「あたしは別に、、それが役目だし。」


男は驚いた表情を見せた。

つくしは男が何に驚いたのかが分からなかった。


「役目、、お前、あのジジイに何て言われてたんだ?」

「何てって、、」

「そもそもお前はどういう経緯であのジジイに使われる事になったんだ?」

「どういうって、、それは、、」

「言えないのか?」

「・・・・・」


つくしは言葉に詰まった。

それはこの任務をするに当たり会社から注意事項を聞かされていて、むやみに何でも話す事はトラブルの元だと聞かされていたからだ。

かなり特殊な特別任務である。

その任務に当たっては配属先にも話が行ってるはずなのだが、それは立浪の会長であってこの男ではなかった。

どこまで話せば良いのか立浪会長と話し合いが出来ていないだけに、つくしは答えられずにいた。


「お前はまだあのジジイの手の内にいるって事か、、」


つくしが黙っていた事で男が結論付ける。

それは間違いではないだけにつくしも困った表情を向けるしかなかった。


「チッ。」


男の舌打ちにつくしは罪悪感を感じた。

どんな理由にしろ他人を欺く事は好きではなかったからだ。


「そういえば名前も聞いてないな。」


確かにそうだった。

ホームから直接百貨店に繋がる改札を出て対面してから男は自分の行く先を知っていたかのようで、手を取られ連れて来られた先はあのブティックだった。


Iberis


立浪会長からも自分の身元を調べるためにあの日着ていたブランドを探し当てたと聞いていた。

あのたった短い時間にも関わらずよくブランド名を調べたものだと会長から聞かされた時は疑問に思ったが、

よくよく思い返せば、武器など怪しい物は身につけてないと一枚ずつ服を脱いだ時に広げて見せたのは自分だと納得するしかなかった。


そんなブティックに連れて来られたが、そこで用意された服が会長の選んだ物だと分かると、男は服を選び始め、男が選んだ服をつくしに着させた。


そんな事があったが、そこのブティックでつくしが出したのは立浪会長の名前だけで自分の名前は出さなかった。


そして偶然にもその後の会食でも自分の名前は使わずに過ぎて行ったのである。




「名前は?」

「・・・・・」

「何ていう? 名前が分からねぇと呼びようがないぜ。」

「・・好きに呼んで下さい。」

「あ?」


男の声色が変わりつくしはビクッとしたが、意を決して反論した。

殴られるかもしれない。だけど自分を、自分の大切な物は守りたいと、そう思って。


「好きに呼んで下さい。本名は知られたくありません。」

「知られたくねぇって、お前は俺の名前を知っているくせにか?」

「それは、知ってます。・・でも、今のあたしは自分の尊厳を無視してあなたに対面しています。風俗でも、、自分の本当の名前で働く人なんていないでしょ。」


最後は震える声で必死に訴えたつくしの想いは男に伝わったようだった。

男は痛みを受けた顔をして、顔を背けた。


自分から顔を背けた男につくしは続ける。


「あなたはあたしとそういう関係を持つために、あたしを連れて来たんではないですか?」


男はゆっくりと振り返った。


「だったら、知ろうとしないで下さい。あたしの名前を調べないで。名前なんて知らなくても男と女の関係を持つ事が出来るはずよ。・・・お願いだから、、」


つくしは目に力を入れて必死で涙を堪えた。

自分の立場からすれば無茶な事を言っている事だと思ったからだ。

それに男が調べようと思えばすぐにでも調べられるだろう。

そして男の立場からすれば、そんな言い分聞いてやる必要もない事だからだ。



つくしを見る男の顔は歪んでいた。

だが、その想いはつくしには届かなかった。



「・・分かった。」

「え、、」

「名前無理に聞きやしねぇよ。調べもしねぇ。」

「・・・本当?」

「ああ。」



とたんにつくしは涙をポロポロと流し始めた。



「あ、ありがとう。」


ひっくひっくとうつむき声を押し殺せずに泣くつくしに、男は立ち尽くしていた。

すぐ近くにいるのに慰める事も出来ず、上げる事が出来ない手は歯がゆく拳を作るだけだった。



「シャワー浴びて来い。」


泣き面のまま、つくしは顔を上げた。


「ほら。今日はもう遅いし、明日も俺は早いんだ。シャワー浴びたら寝ようぜ。」

「う、うん。」

「寝室は向こうだ。ベッドはひとつだが、2人寝ても十分に広いからよ。」

「あ、、はい。」

「今日はやらねぇよ。それに俺は無理にするような男じゃねぇ。」

「・・・はい。」

「信用はねぇか。」


つくしが揺らぐように答えた事で男は自虐的に答える。


「あ、いえ、そんなつもりでは、、」

「いい、それが普通だ。ふぅー、、俺にも考えがあってお前をここに連れて来た。それはいずれ話す。だが今日はもう遅い。明日にしようぜ。」

「あっ、話なら、、」

「俺も向こうでシャワーを浴びる。じゃあな。」



男は語尾を強くして部屋を出て行った。


残されたつくしは男の出て行ったドアを見つめ、男の言葉を反芻しようとする。


だが自分を守ろうと必死になっていた心と身体が男が記したページを上手くめくろうとさせない。



ふらふらとシャワーの方へと足を動かす。


大きなソファに捕まって進もうとして、そのソファの背もたれの後ろが目につく。


つくしは行き先を変える事にした。


長い毛のラグに丸まって横になる。



疲れが一気に襲って来て、


つくしはそのまま目を閉じてしまった。




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