甘さとスッぱさと ... イベリス 20
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イベリス 20
2017-07-13-Thu
「久しぶりだな司君。そこに掛けなさい。」


花沢物産社長室、

類の親父はこう切り出して来た。


その言い方に、道明寺ホールディングス副社長としてではなく息子の悪友という印象を受けた俺はピクと眉を動かすが、それが狙いとも取れ合わせる事にした。


「お久しぶりです。資料を拝見しました。ご提供ありがとうございます。」

「大きくなったな。というより歳を取ったという方が正しいか。流石に悪ガキには見えない。」

「そんな時もありました。仰る通り子どもでしたから。お恥ずかしい限りです。」

「まだ遊び足りないのか?」

「遊び、何の事でしょう?お言葉ですが遊び回れるほどの時間など私にはございません。」

「ほぅ、、では仕事が忙しくてというのが理由なのかな?」

「理由とは?」


類の親父は笑わない目つきで口角を上げた。


「結婚しない理由だ。」


それは俺に対しての非難だが、同時に俺たちに対するものだという事も理解出来た。

遊ぶには相手がいる。

遊び回ると切り出したのはガキの頃から連んでいた俺たちに向けての事なんだろう。


「その理由は様々です。俺の場合は相手がいなかった。ただ、それだけです。」

「ほぅ、じゃ私のせがれはその理由ではないと?」

「類は類です。俺は類の事情は分かりません。」

「仲間内で話す事はないのか?」

「好んで話す内容ではないですね。」

「それじゃお前達は何を話しているんだ?そろそろ話す内容だと思うんだが。」



蔑むような視線を向け類の親父は笑った。

その表情に不愉快も感じるが、何かが引っかかる。

まさか、、


「彼女の事はあなたも噛んでいるんですか?立浪会長の独断ではないと?」

「ふっ、当然立浪会長の独断だよ。未だにあんな要求をしてくるとは思わなかった。私も父の代にそんな事があったとは聞いているが、その時もリスキーだと認識があった。無くなる方向だと思っていたんだが、、古い人間はなかなか考えを改めようとしない。困ったものだよ。」

「ではなぜ乗ったんです?」

「君はなぜだと思う?」


答えを疑問で返して来るのは交渉の常套句だ。心理学を学んでなくても相手を揺さぶる方法としてよく使われる。


ーそう苛立たなくても花沢社長は分かってらっしゃると思います。ー

西田の言葉が脳裏を過る。

何か知ってるのか?



「そう頭でっかちに考えるな。話は至極単純だ。」

「単純?」

「私は君に何と言った?」

「何って、、」



類の親父の言葉を思い返し俺は驚愕した。


「結婚?」


呟くように出た答えは正解らしい。

だが類の親父は反応しなかった。


「俺に結婚しろという事ですか?俺が結婚したら類も結婚するとでも?」

「そうなるかもしれん。」

「ありえねぇ、、」

「そうか?私にはその兆候が無くもないと思うのだが。」

「兆候?」

「君も結婚しようなど考えてなかったはずだ。・・彼女と会うまでは。」



俺は言葉に詰まった。


「君だけではない、せがれだってそうだ。君が結婚するなどありえないと思っていないかね? そんな君が結婚すれば何かが変わる。何かがな、、」



俺はこの時相反する二つの事を考えていた。

ダチを思えば結婚すべきではない。

だがあいつを知った俺はあいつを手に入れたい。


言葉を続けるのにほんの少し躊躇があった事に苦笑する。


「では変えてみるとします。どう変化するのか俺も知りたい。」


俺も無表情を取り繕い返した。

類の親父が目を細める。


「変化が知りたいだけか?」

「未知の世界ですから。」

「たかだか結婚だぞ?」

「ええ、たかたが籍という空欄を埋めるだけの行為ですね。それだけなのに、同じ欄に埋まった事で相手を支配したがる。自分の所有物だと。」

「なるほど、、言いたい事は分かる。」

「遊びたかったからじゃない。」

「ああ、、」

「俺を支配できる女がいるとは思わなかった。」

「ふ、支配されたかったのか?」

「かもしれない。それも未知だ。」

「素直に言えないか。可愛げがない。」



可愛げか、、この俺にそんなのあっちゃ気持ち悪ぃだろーがよ、、

俺はニヤリと笑った。



「それじゃあおじさん、もらった資料の中身を変えてくれよ。」


敢えておじさんと呼んでみた。

類の親父は一瞬意表を突かれたが、すぐに理解する。


「資料とは?」

「俺をここに呼んだ資料だ。立浪の爺さんのサインが入ったヤツ。爺さんのサインが気に入らねぇ。」

「ふ、君が気に入らなくてもそれなりに利用価値はあるぞ。」


答えようと口を開きかけて気づく。

類の親父が俺を見ている事を。


「それで俺を動かすおつもりですか?」

「動いてくれそうだからな。」

「何をやれと?先ほどは結婚だったと思うのですが?」

「そうだよ。だから早く結婚してくれ。いい歳した未婚のせがれがいるのは君たちが思っている以上にうるさいんだよ。だからせがれをパリに行かせた。結婚するかパリに行くかどっちかにしろと言ったら、迷わずパリに行ったよ。」

「なら、解決したのでは?」

「いつまでも使える手ではない。」


俺は呆れたように頷いた。

ガキの頃は恐れていたはずの類の親父、だが今の親父は単に子どもに手を焼く駄目親父じゃねぇかと。

まぁ、その手を焼く子どもがあの類なら誰でもそうなるかもしれねぇ。


そんな時ひとつの仮定が頭を過る。


もしかしたらあいつなら類を変えられるかもしれないと。


この考えをこの親父が知ったらどう思うだろう。俺は内心笑っていた。




「ならそれこそ結婚するのにあのサインが邪魔な事は理解してもらえませんか?あれがあるから彼女は表に出ようとしない。」

「表に?」

「分かってねぇ爺さんは出会いのひとつだと言っていたが、爺さんの孫はそう思わねぇだろう。俺に刃向かうならまだしも、馬鹿な女は事を余計ややこしくする。おじさんに楯突こうとするかもしれねぇ。」

「良いだろう。確かにこのままリスクの状態で置くのは私としても不本意だ。彼女の立場を復活させる。」

「復活?」

「今彼女は休職中だ。そして花沢で監視している状態にある。それを君に引き継いでもらう。」

「俺に?」

「道明寺に引き抜くんだよ。ヘッドハンティングして華々しく表に出すと良い。彼女はスマート(賢い)だ。」

「ありがとうございます。ではそれを持って帰りたいと思います。」

「くくく、随分急かすな、、、そこまで彼女を気に入ったか。」

「そりゃあ、追いかけたくらいですから。」

「ふ、困った爺さんも見る目はあったみたいだな。どうせならせがれの相手も見つけて欲しいくらいだ。」

「それは俺が伝えますよ。彼女の事でまた会わなければならない。」

「そうしてくれ。」


頭を下げた俺はまた内心ほくそ笑んだ。

親父さん、その見る目がないからてめぇのガキに振り回されるんだと。



類は余計に結婚しようとしないだろう。

おそらく類もあいつを気に入る。

気に入ってどう行動を起こすかまでは予想もつかねぇが、

手は出させねぇ。あいつは俺のもんだ。



化石ジジイが横入りして出会った俺達。

ひょっとしたらあいつの相手は類だったかもしれねぇ。

だが国内にいなかったのが分かれ道だ。

帰国して後悔するんだな。

そして勝手に親子喧嘩を始めてくれ。

何で余計な事をしてくれたんだとよ。







***



花沢物産を出た俺は会社に戻らず邸へと向かった。


仕事は残っているが、問題を解決した事をあいつに一刻も早く伝えたかったからだ。




バンッ


だが勢いよく部屋に入った俺は目撃したのは眉間に皺寄せながら、カードを持ったまま驚くつくしの姿だった。


どうしたつくし、驚かせ過ぎちまったか?

ん、何かしてたのか?


パタパタパタッ


その時テーブルの上に立てられていたカードが崩れ落ちた。



「ああっ! もう崩れちゃったじゃない。」

「いや、今のは俺のせいじゃないだろ?」


入ってからカードが倒れるまで間があったぞ。


「あんたのせいよ!って、、あ、あれ? 仕事もう終わりなの?」



ラグにぺたんと座り俺を見上げるつくしが可愛くて、ドヤ顔が作れねぇ。


「ほら、コレ取ってきたぞ。」

「コレ?」


書類を開けてみたつくしは目を真開く。

くく、予想通りの反応だな。


「ど、どうしたのコレ?!」

「花沢社長が寄越してきた。それでちっと話してきたわ。」

「は、話って?」

「コレを無効にする。」

「へ?」

「コレは花沢側が持ってたヤツだ。そしてもう一部が立浪側にある。だからこのままだとお前だけでなく花沢側もリスクを背負う事になる。話し合いで俺達の思惑は一致したぜ。」

「俺達って?」

「あ?惚けんなよ。俺とお前、そして花沢物産に決まってんだろ?」

「え、、良く分からないよ。てゆーか、つかさあたしが花沢物産の社員って知ってたの?」

「それは今朝知った。社長からお前の書類をもらったからな。」

「社長から?な、なんで?」

「この件を解決したいんだろ。」

「解決?解決って何? あた、あたしは会社からの命令で動いていたんじゃないの?」

「あー、それはそうだぜ。花沢社長が立浪会長から打診されお前を当てがった。だが一方で花沢社長はこの打診を容認した訳じゃない。立浪会長の腹の内を探りそれなりに計算があったんだ。」

「計算、、」

「それでお前もいつかは解放する気でいた。お前でなくてもこんな命令、スキャンダルでしかない。バレたら花沢は社会から抹殺されるぞ。」

「抹殺、、」

「じゃあ何でって言いたそうだな。それは相手が化石ジジイだからだ。あのジジイはこんな方法もまだ使えると思ってやがる。そのジジイを無視するのは簡単だが、ビジネスではそう無視も出来ねぇんだよ。賢い奴は適度に付き合って流すのさ。花沢社長はその対応をした。」

「じゃあ、あたし、、これからどうなるの?」


気が抜けたのかつくしはへなへなとラグに手をついた。

俺はそんなつくしの側にドカッっと腰を下ろす。


「だからこの内容を変えるんだ。お前は花沢物産を退社して他の企業の所属になる。立浪にとって花沢より厄介なとこにな。」

「厄介? え?どこ? あたしの受難はまだ続くって事?」

「受難って言うなよ。傷つくじゃねぇか。」

「へ?」

「分かんねぇの?」


やっとドヤ顔になった俺を見てつくしも気付いたらしい。


「まさか、、」

「おう。明日から一緒に出勤するぞ。何、初日からこき使わねーって。」

「それは良いんだけど、、」

「何だよ。それともランドリーの方が良いのか?」


つくしはピクっと反応する。

表情がコロコロ変わるこいつだがよ、この顔は面白すぎんぞ?





**


理由を聞いたら呆れるしかねぇ。

それってお前、自滅してんじゃねーか。

それによ。


「んじゃ何か?俺はひとりでベッドで寝てシミを作った事になってるのか?」

「へ?」

「そうだろ。流石に使用人でもあれのシミってくれー分かるだろ。お前の言い訳だと俺が夢で爆発したって事にならねぇか?」


口をパクパクさせて、目を泳がせるつくし。

そこまで考え付かなかったんだろーけど、その顔は面白過ぎる。


「くくくっ、、くっ、ははははは。」

「うー、、ごめんなしゃい。」

「はははは、、もう、お前、邸で働くな。お前が邸で働いたらややこしくなる。」

「働きたいだけなのにぃ、、」

「だったら、俺と一緒に働けばいいだろ。それで万事解決だぜ。」


俺は立ち上がってつくしに手を差し出した。


つくしは俺を見上げている。

あーその目はヤベェ。早く立ち上がらないと襲うぞ!


そんな雰囲気を感じたのか、つくしは俺の手を取り立ち上がった。



「ん。よろしくお願いします。つかさ社長。」


違ぇし。

だが、ニッコリ笑うつくしが愛しくて俺はその時訂正出来なかった。






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つくしが花沢社員でありながら、司へのハニートラップをした理由を書きましたが、こんな事本当にある訳ないよね。
つくしのハニートラップから膨らませた設定なんでかなりのかなりの無茶設定です。
でもブラック企業とかの馬鹿上司ならあったりするのかな?
週刊誌とかのハニートラップを聞く限りでは写真に写るまでみたいだし。
そんなリアルなドロドロは私には書けません。
さて、ハニートラップから抜け出したのでお話はあとちょっとになります。

多分ね。
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