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2017
08.27

エンレン 今日の占い

『ごめんなさい。今日の最下位は山羊座のあなた。』


朝、準備をしながら付けていたTVが情報番組の星座占いを伝えていた。

いつもは流すだけで耳に入らない音もこういう時には入ってくるものだ。


「え~、、聞かなきゃ良かった。」


とは言うものの占いなんて普段気にしない。

というより気にしなければ、気にもならないものなのだ。


そう自分に言い聞かせて出勤する準備を進めていく。


食事を終え、

着替えも済ませた。

後はメイクとして、片付けたら家を出る段取りだ。


リップを塗ろうとして少しはみ出してしまう。

でもこれは良くある事。

このくらいで占いの結果に結びつけたりしない。


でも、テーブルの上に残してあったグラスを持とうとしてヒヤリ。


「は!あぁ、、」


危うく落としそうになる。


「危ない。危ない。気をつけなきゃ。」


気にしないつもりの占いも自分の奥底に書き込まれてしまった模様。

ドキドキと落ち着けない心臓に手を当て、鎮まれ鎮まれと深呼吸する。



「行ってきます。」


そう言ってドアを施錠した内側には先ほどまで置いてあった鞄の位置に落ちてあるパスケース。


つくしの一日はこうして始まった。






「あれ、無い。・・・無い。ああーーもう。定期券が無いよぉ、、」


改札手前で焦ってもどうにもならない。

今からアパートに戻る時間など無いとなれば、余計な出費をしなくてはならない訳で、、


「ま、たかだか300円足らず、、って、帰りも合わせたら600円じゃん。スーパーのアイス6本分は大きいよぉ~、、トホホ。」



電車のドア窓におでこをコツンとして小さく呟くと、逆のドアから入ってきた客で頬まで押しつぶされる。


「ぐえっ。」


反対方向の電車に乗ってる男の人と目が合い、恥ずかしいやら情けないやら。



そんなつくしの後ろには体格の良いスーツ姿の男性が4人。

そんな彼らを見上げたつくしはそのひとりと目が合い、目を逸らされた。

彼らに潰された事だと思ったつくしは、彼らの雇い主へ心の中で毒を吐く。



こんな時にいないから、あたしはこんな目に合うのよ。

てかここで手を突っ張ったりしてさ、守ってくれたるのが彼氏って存在じゃないの?

壁ドンってやつ?

そりゃされたいと思わないけど、


ううん、やっぱされたいかな。


あいつが居さえすれば。




電車が動き出し押し付けられた頬が離れまたおでこをコツンと当て、つくしは未だ帰国しない男を想う。






つくしの勤める会社は道明寺ホールディングス東京本社。

言わずもがな彼氏の一族が経営している日本有数の企業である。

大学を卒業したがまだNYから帰れない恋人に出した我儘が普通の会社員の経験だった。

大学時代は勉強に明け暮れた。

あいつが学費を出してくれたから、その分必死に勉強した。

あいつと一緒になるために必要な事。

またいつかは必要になるかもと、取れる分の講義は取って勉強した。


だけど、あいつから求められたのは自分の側にいて帰る場所を作る事。


それは邸の女主人なのかと聞くと、それもあるが単に仕事を終えて邸に帰った時に出迎えて欲しいと言う。


もちろん求められれば応えたい。


だけど、それじゃあ今まであたしがして来た事はなんだったのかと疑問に思った。


あんたの役に立ちたい。

あんたを助けたい。

そう思って頑張った事が否定されたみたいで、あんたの願いを素直に受け入れられなかった。



でも、友人みんなに悩みを聞いてもらい(実際には問い詰められたんだけど)、あいつを待つ事にしたの。


そしてその中で会社勤めを経験してみたらと言われ、待つ間だけ社会に出てみる事にした。

直接助ける事にはならないけど、社会人を経験するかしないかでは相手の苦悩を理解出来ないんじゃないとアドバイスしたのは親友の優紀だった。


あいつのお膝元で働く事になったのはあいつなりの妥協なんだと思う。


その証拠に一介のOLがSPを付けているんだからね。


ま、会社に居れば側から離れるけど。




そう思っているつくしの頭上では防犯?カメラがキュルリと反応していた。






お昼前、つくしは休憩時間を意識しながら業務を進めていく。

資料作成がつくしの主な仕事。

入社して4ヶ月も過ぎれば手際も良くなり新入社員とはいえ充分戦力としてカウントされていた。


お昼は社員食堂で取っていた。

格安で提供される事はもちろん、定食に付いてくるデザートがつくしには楽しみだった。

食堂のおばちゃん達が作る簡単なデザート。

一流のパティシエが作るものじゃないところが、つくしのハートを掴んでいた。


デスクの上の時計をチラリと見る。


お昼まではあと1分。

だけど時間ちょうどに席を立つ事など新人社員がやってはいけない。

だからと言って遅くなるとデザートも無くなってしまう。

おばちゃんのデザートは数量限定なのだ。
(デザートを取るのは女子社員と甘党の男性社員のみ。全員分は作られない。)


12:07


席を立とうとしたつくしの耳にエラー音が聞こえる。

その音の方を向けば正体は複合機のエラーだと分かった。



「げっ。」


そしてその複合機の前に立つ人物を見て顔を歪める。



その人物は何を隠そう因縁の浅井百合子。


高校時代F4と近いつくしに何かとやっかみを入れた浅井は何故かこの道明寺に入社していた。

とはいえもちろんコネ入社だ。


道明寺には浅井の他にも英徳や永林に通うような子女が多く入社していた。

男子は大体が稼業の修行、そして女子はそんな御曹司と優秀な社員を捕まえるための花婿(金ヅル)探しだ。


そんなお嬢様はもちろん仕事が出来ない。

そして幼い頃からの習性か他人を使う事に何の躊躇も無かったのだ。


当然つくしも浅井百合子の入社を知っていたが、別フロアの部署に配属されていたため存在を気にもしなかった。

いや厳密に言えば気にしてはいた。

とにかく浅井も人使いが荒い事。社会人として非常識な事はつくしの耳にも入って来ていた。


浅井がこのフロアにつくしがいると知っていたかは分からない。

だが不運にも今同じフロア、それも距離にして十数メートル範囲に入ってしまい、、


最悪にも声を聞かれてしまった。



「あら~牧野さん~、あなたここのフロアだったのねぇ。」


浅井の顔も笑ってはいない。

だが次の瞬間口角を上げニヤリとした。


嫌な予感バリバリ。


どうにか退散したいつくしだったが、浅井を知る先輩に目で合図され相手をする事に。

そのため複合機のエラー解除から、何故か浅井の仕事までやる羽目になったのだ。


浅井が居なくなった事など気付いていたが居ても邪魔なだけ。早く終わらせようと必死に複合機と格闘して戦い終えると時間はすでに14:20


おばちゃんのデザートは残っているはずが無かった。




コントの様に肩を落とし、フラフラとフロアを後にするつくし。


エレベーターに乗り食堂の階を押そうとしたところで止め、代わりに❶のボタンを押した。


とにかく糖分が欲しかったつくし。

なにはともあれ糖分だとコンビニを目指す。


おにぎりかパン、それとデザート。

コンビニのマンゴーなめらかぷりんを食せればきっと回復すると信じて、会社近くのコンビニに立ち寄る。



だが、



「売り切れ。マジでぇ~(泣)」


スィーツコーナーの前で座り込むつくし。

ジロジロ見られても気にする余裕すら無かった。



「牧野様、こちらをどうぞ召し上がり下さい。」


そこで背後からつくしら声をかけられる。


「へ?」


つくしが顔を上げると息を弾ませたSPがコンビニ袋を差し出していた。


「なん、で、、」

「司様にそうするよう命じられました。」

「道明寺に?」

「はい。これを食べて元気になられて下さい。」


つくしはキュンとした。

もちろんこのSPにではない。

だが周囲の人間はこの二人の雰囲気にキュンキュンさせられていた。


そのため、


「お姉さん、恋が始まりますね。」


と、通りすがりの女子高生に声をかけられる。

違う!とつくしが振り向くも周りにいる数人はにやにやとつくし達を見ていて、つくしがSPを見ると彼は青ざめていた。



「あの、あたしちゃんとあいつには言いますから。心配しないで下さい。」

「は、ありがとうございます。」



ゴメンよゴメンよと呟きつくしはコンビニを後にする。


もうここまで来れば今日の占いの順位は疑う余地もない事で。

つくしの頭にはラッキーアイテムはなんだったのかとそればかり考えていた。




それでも悪い事はそう続かないのだった。



部署に戻って来たつくしはデスクの上に置いてあるものに停止させられる。


「これは、、」

「あ、帰って来た。それ、あなたの楽しみよね。中岡君食べないから取って来てくれたのよ。」

「なのに居ないからさ。どーしようかと思ったよ。」

「良いんですか?」

「ん、大変だったね。モンスターお嬢様の相手さ。あのお嬢様向こうでもかなり酷くて向こうは放り投げたつもりだったんだろうけど、ここに被害が出てるんじゃ本末転倒よね。ちゃんと抗議しといたわ。」

「そう、なんですか。」

「ま、今度はうちかもしれないけどね。」

「へ?何がですか?」

「ん?モンスターの子守よ。持ち回りなの。」



しょうがないけどねぇと諦めの先輩方を尻目につくしは手に持っているコンビニ袋に気付く。

一瞬悩んだけどこれがきっと彼を助ける事になるだろうそう思って。


「あの先輩、これ食べて下さい。」





その様子も頭上のカメラはしっかりと捉えていた。






一方NYの道明寺邸。


東京から遅れる事13時間。

こちらも一日を始めようとしている司の姿があった。


いつものようにベッドから全裸で起きてくる司。

ガウンを羽織りながら寝室を出て、リビングを通り過ぎると向かった先はバスルームではなく書斎だった。


慣れた手つきでPCを起動していく。


そしてハートマークのアイコンをクリックするとビデオのソフトウェアが立ち上がり、今日の日付のデータがNEWと表示されていた。

それをクリックしてしばし待つ。


画面を見る司はホクホク顔だった。


なぜなら愛しい女が画面の中で表情豊かに動いているからだった。


だが彼女が席を立ち場面が変わる。

そして複合機の前で誰かと対峙し、それからひとり必死に複合機と格闘していた。

彼女と対峙していた女の態度に司は眉根を寄せる。

そしてビデオを進めると出て来たのは愛しい彼女の上目遣いのアップだった。


思わずボウっとなる司だったが、ハタと気付く。


彼女が見ているのは自身が彼女に付けたSPなのだと。
(SPは尾行警備する際に微小カメラを眼鏡に仕込んで彼女を追っていたのだった。)



「これを撮影したのは誰だ?何であいつが俺以外の男にあんな顔をしたんだ。」



ギリギリと歯ぎしりしてマウスを握り潰そうと力を入れた直後、愛しい彼女の表情が曇る。


そして申し訳なさそうな情けない顔で、振り返っては手で謝るのだ。


「何だ?音声が無いと何が何だか分からねぇな。ま、レポートもあるけどよ。」


ビデオを通して見てから警護レポートを読むのが司の習慣だった。


そして部署に着き彼女は同僚の女にビニール袋を渡した。



そこで今日のビデオは終了であり、司はレポートを読んで納得する。



「くく、なるほどな。笹倉は命乞いしたって事か。」


笹倉とはあのコンビニでスィーツをつくしに渡したSPで、周囲に勘違いされ青ざめた人物だ。

しかしつくしがそのスィーツを同僚に渡した事で司も一応の納得を見せる。



だが、


「その甘ぇのも他の男からなんじゃねぇか?全くあいつはきょときょとしてばかりで信用ならねぇ。帰ったら覚えとけよ。」








***


「・・・はくしゅん。」


こちらは東京。つくしはアパートに帰宅してゆったりまったり過ごしていた。

そしてつくしもノートPCを起動させ検索画面を開いて行く。



“今日の占いかうんとだうん” 検索

カチッ



「あー、ラッキーカラーは緑だったんだ。
朝緑にするか青にするかで迷ったんだよね。緑だったかー、、」


カチッ、カチカチッ。


「“甘える事も大切。恋人に甘えてやる気を取り戻そう”、、か。」


つくしは崩して座っていた膝を抱えて背中を丸くする。


「電話してみよーかなぁ、、」


ボソッと呟く。


「今なら向こうは朝だよね。起きてるよね、多分。」


膝に耳を付けて視線を泳がしてみる。


「でも声を聞いたら会いたくなるよなぁ、、、」


つくしは目を閉じた。

しばらく物思いにふける。


そして目を開き、決意した。


「占いだけじゃないよ。あたしにはあいつが足りないからこんな風になるんだ。遠距離恋愛なんだから電話する時にはしなきゃ。うん、そうだ。」


そして手を伸ばし鞄をまさぐる。

ぎこちなく鞄の中を探るのはらしくなく緊張してるからだ。

そう緊張、、、


してるから、、、



「あれ?」


ガサガサ、、


「あれれ?」


鞄をひっくり返してみる。

ラグの上に鞄の中身をぶちまけ、目的の道具を探す。


が、無い。



「ああっ!デスクの中だあーーーー」


ガッデムと頭を抱えたつくし。


珍しく乙女になろうとした結果がコレである。



ラグに倒れこみ情けない涙を浮かべる。


「ううううう~~」



明日のつくしに幸運を。



皆さま祈ってやって下さい(笑)



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dot 2017.08.27 17:54 | 編集
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dot 2017.08.27 19:08 | 編集
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dot 2017.08.27 22:22 | 編集
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dot 2017.08.29 21:44 | 編集
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dot 2017.09.04 00:46 | 編集
今日は。‘不思議な夏19’読んできました。不思議だ不思議だと首を傾けながら浸ってます。続きが気になる不思議な作品です!不思議だー。
HNdot 2017.09.12 13:23 | 編集
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