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2017
10.21

エンレン 恋せよ乙女

長らくぐうたらしてましたが、ボチボチ書いていこうかなと思います。
前回投稿した「エンレン」のつづきです。
シリーズ化するかは分かりませんが、お付き合いいただければ嬉しいです。





現代人は携帯依存している。


つくしは自分にも当てはまるとは思わなかったが、スマホをオフィスに忘れたからか手持ち無沙汰な手のひらになんだか落ちつかなかった。


目の前にはノートPCが開いている。だが何かをググる訳ではなく、キーボードを叩こうと浮かせた指は結局PCの電源を消してしまった。


時刻は日付が変わろうとする頃、スマホさえあれば今頃緩んだ顔で布団に潜っていたかもしれないが、だからといってこんな時間にオフィスに取りに行けるはずもなく、どうにかして眠気を呼び寄せようと、つくしはテレビのリモコンを手に取った。


とあるチャンネルで指が止まる。その番組は海外ドラマだった。テレビに表示されてるドラマ名を見てもつくしにはどんな内容か分からない。だが電話をかけようと思っていた相手がいるのも外国だし、大体海外ドラマといえば大半がアメリカのドラマだ。つくしはこの恋人のいる国のかもしれないドラマを見てみることにした。


ドラマの登場人物はどうやら社会人のようだ。そして駅が出てきた事でその舞台がNYである事を知った。


主人公の葛藤の場面から突然ベッドシーンに切り替わり、つくしは驚く。


「へっ?」


つくしが戸惑うのも無理はなく、画面では肌の露出は無いものの明らかに男女が励んでいる様子が流れている。


『はぁ、はぁ、ロビン、あなた最高よ。』
『サラ、君もね。こんなに燃えるのは久しぶりだよ。』
『あたしもよ。あたし達相性がバッチリみたい。』
『ああ、サラ愛してるよ。』


そしてキスシーンがアップになり、当然それは軽めのキスではなかった。

そしてまた場面が変わる。主人公へと目線が変わり、何気ないシーンとなった。とはいえ、話の展開を良く知らないつくしだから何気ないシーンに思えたのかもしれない。

だがつくしの心はざわついていた。ベッドシーンというのは、もっと前もって雰囲気を出してから流れるものとの印象があったからだ。なのにあの軽さ。まるでちょっとだけはしゃぐようないちゃいちゃを演出したようなベッドシーンにつくしはあっけに取られていた。


そんなつくしの事情を構わずドラマは進んでいく。つくしが気づいた時は主人公を含めた四人の女性がカフェで話をしていた。どうやらこの四人は親友のようだ。

四人の女性の形につくしは自分達の親友を思い浮かべた。四人ともに自分の幼すぎる恋愛を心配しては、色々とアドバイスしてくれる。ま、多少好色の目で見られているが、それは恋人があんなやつなのだから仕方ないと納得していた(させられていた)。


『で、サラどうだったの?』
『今回は見た目も好みだったんでしょ。』
『相性はどうだったか、教えなさい。』
『うふふ、相性はまずまずよ。力業で誤魔化したかなと思うところもあったけど、悪くないわ。ふふふふふ。』
『つまり気に入ったってこと?』
『やったじゃない。しっかり舵はとりなさいよ。逃がしたくないんでしょ。』
『もちろんよ。』


つくしには理解しがたかった。男との身体の相性とかいくら親友とはいえこんなに軽く話すことじゃないだろう。

お国柄かと思ったけど、彼女達がアメリカ国民全ての反応ではないし、そうじゃないアメリカ女子もいるはずだ。そして、それは日本にも当てはまり、つくしが違うと思ってもそうである日本人だって存在するだろう。現につくしの親友である桜子や滋はそんな話をしそうだとつくしは頭痛の種を思い出した。


『はぁ…いいなぁ。私も男が欲しい。まだ仕事落ち着かないけど、ジムにでも行こうかしら?』
『そうしたら?男がいてこそ女は輝くのよ。仕事だってパワーが出ないでしょ。』
『アニー、セックスはどのくらいしてないの?』
『んー、3ヶ月かな。』
『3ヶ月?!私だったら干からびているわよ。それは間開けすぎよ。』


突っ込みどころが大きすぎて、つくしは黙っていた。が、なぜかテレビを消そうとはしなかった。それは男がいることで彼女達がどう輝けるのか知りたかったからかもしれない。

実際この後はアニーのジムのシーンになり、ジムでナンパされたアニーはその男を値踏みしながら汗を流し、その表情は輝いていた。


1時間ドラマはあっという間に終わってしまった。だが見終わったつくしの心情には変化があり、手元に無いスマホを手に持って親指を動かしてみた。

目を閉じて耳を澄ましてみる。

「牧野か?」の低い声が聞こえてつくしは夢で会える期待を持ち、布団の中へと潜っていった。




※※※



「はぁ…少し寝過ごした。」


翌朝つくしが目覚めてTVで時間を見てみればいつもより30分起きるのが遅かった。だが会社に遅刻する時間じゃない。


リモコンをテーブルに置こうとすると、今日の占いを伝え始めた。

カウントダウン方式で運勢の良い順から星座が伝えられている。今日最も良い運勢はいて座だった。

つくしはそれが自分のひとつ前の星座であることに残念がり、同時に昨日の事を思い出していた。


寝過ごしているのにパジャマのままアナウンサーの声に耳を傾ける。

情報番組の占いコーナーは1分弱だ。そんな中ではアナウンサーは全ての順位を声にはしない。つくしの星座が画面に表示された時、アナウンサーはそれを読み上げなかった。


アナウンサーの声が遠くなる。つくしの星座は7位だった。良くもなく悪くもなく普通といったところか。だが、画面にはさらに運勢を良くする一言が記されている。

つくしはその言葉を自分に当てはめていた。


『昨日できなかったことにチャレンジしよう。こだわりを取り除けば新たな発見があるはず。』






道明寺家のSPは時間になっても出てこないつくしを気にかけていた。自分達の存在は知られているもののつくしには普段通りの生活をとの無理難題を雇い主から言い渡されている。そのため満員電車の中といった人員的にも護衛的にも非効率的な任務にあたっていた。


いつもだったら駅に到着する時間。朝の通勤ラッシュ時に遅れるということはそれだけ混雑も激しくなりただでさえ厳しい警護が更に厳しくなる。つくしを待つSPの誰もが顔を歪めていた。


しかしそれから程なくしてつくしがアパートから出てきた事にSP達は安堵する。つくしは足早に階段を駆け降りてきた。


しかしアパートを出たところでつくしの足が止まる。そしてキョロキョロと周りを伺い始めた。


SP達に戸惑いが生じた。つくしは誰かを待っているようだ。SP達の緊張感が高まる。誰か次第ではつくしの警護を遂行できないかもそれないのだ。


しかし5分経っても誰も来る気配がない。おまけに探しているだろうつくしは電話を手にする様子もない。SPのリーダーは意を決しつくしに声をかける事にした。


「あっ、いた。おはようございます。」


SPを見てペコリと挨拶したつくし。探していた相手が自分達だと知りSPのリーダーは目を丸くした。


「お、はようございます。牧野様、私達をお探しでいたのですか?」
「はい。あの、寝坊してしまいまして、その、電車では間に合いそうになくて、、タクシーを使おうと思ったのですが、みなさんがいるでしょうし、、車を使ったら見失うかな、と思って。」
「そうでございましたか。それは私達にもご丁寧にありがとうございます。」
「いえ、いつも道明寺の我が儘に付き合わされて大変なのは理解できますし、それはお互い様です。」


我が儘というか依頼人の要請で報酬を受け取っているのだからお互い様ではないのだが、つくしの言いたい事が理解できるSPは反論しなかった。

すると、つくしが何やら上目遣いで自分を伺っている。何か言いたい事があるようだ。


「何でしょう? 困った事があれば申し付け下さい。」
「は、はい。あの、、大変不躾なのですが、、、か、会社まで送っていっては貰えませんか?」


それはSPからすれば願ってもない話。SPの車で移動する事が最も楽に警護できるのだ。


「はい!喜んで、お送り致します。」
「ありがとうございます。お世話になります。」
「ただ牧野様、今近くに待機しているのがSPの配車用なので車内は殺風景になっております。リムジンをご用意するにはお時間を取ってしまいますが、、」
「リムジンじゃなくていいです。むしろリムジン以外の車がいいです。」


分かっていた答えに頬を緩め、リーダーは配車を手配した。



配車は国産のミニバンだった。車に詳しくないつくしでも国産車のエンブレムくらいは知っていて、SPか殺風景と言った車内も至って普通煙草臭さすらなかった。こんな車ならば送迎されても目立たないとつくしは考えていた。


「あの、この車っていつも使っているんですか?」
「牧野様、それは、、どういう意味でしょう?」
「あ、えっと、いつも私を警護してくれてますよね。その時に、車を出してるのかなって思いまして、、違いましたか?」
「いえ、間違っておりません。牧野様の警護の際は車を配置しております。徒歩の牧野様に合わせて徒歩で警護してますが不測の事態など確信はありませんから、車を待機させております。それがどうかしましたでしょうか?」
「いえ、その、今さらなんですけど、、私、警護されてて車で追っかけられてるなら、その車に乗った方がいいのかな、と、、思いまして、、」


運転手はバックミラー越しに、リーダーは助手席で視線だけを動かしつくしの様子を伺っている。つまりつくしには話しかけているものの反応が無いように思えた。


「すいません。やっぱり何でもないです。聞かなかった事に、、」
「牧野様、それは我々の車での送迎でも構わないと言いたいのでしょうか?」
「あ、いえ、その余計に煩わしそうなので、、」
「煩わしくありません。むしろ逆でございます。その方が警護しやすくなります。」
「そ、そうなんですか?、、じゃあ、明日からもお願いできます、か?」
「お任せ下さい。」


リーダーが興奮ぎみに反応する。だがつくしにも思うところがあり、身を乗り出して話しかけてきた。


「ありがとうございます。それと、あの、できればこの車でお願いしたいのですが、、リムジンでは出社したくありません。」


リーダーは苦笑していた。だがそれでこそ牧野つくしだとも思っていた。道明寺家の御曹司を虜にし我々を振り回している女性だとも。


だからこのことはSPにしてみれば渡りに船であった。


「大丈夫です。ご心配なさらないで下さい。この車を使用しますし、目立たないように配慮もいたします。」


振り向いて応えたリーダーにつくしもようやくホッとした表情を作る。

そうこうしてるうちに配車は道明寺ホールディングス近くまで到着しており、目立たぬようにと地下駐車場に入っていった。



車内でのつくしの警護を残し他のSP達は、今の送迎の報告とともに明日からの配車について打ち合わせすべく、配車の中を見回す。



「車内用のドライブレコーダーを付けましょう。正面用と、後方にも付けますか?カメラは多ければ多いほど司様は満足されると思います。」
「だが、牧野様にばれてしまわれては意味がないぞ。また徒歩、電車通勤に戻られてしまう。」
「ドライブレコーダーではなくて、隠しカメラはどうっすか? 小型のやつならばれないと思うんですが。」
「それだ。」
「音も入れたいっすね。(音が)欲しいって言ってませんでしたっけ?」
「言ってたな。よし、録音もできるやつだ。調達してくるぞ。」
「中、シートとかはこのままでいいですかね? さすがに殺風景過ぎませんか?」
「そうだな。シートカバーくらいは付けるか?」
「それ(カメラの)目隠しにもなりそうっすね。」
「決まりだ。夕方までには揃えるぞ。」
「え、帰りからっすか?」
「言ってましたっけ?」
「言ってない。だがこの際だ、行きも帰りも配車に乗ってもらおう。寄り道をされるならそれにすら配車を使ってもらうぞ。」
「寄り道しなくなりませんか? やり過ぎると元に戻りかねませんよ。」
「うっ、、それもそう、か、、」
「でもとりあえず夕方もできますと言ってみるのはいいんじゃないですか? 牧野様はそんなに寄り道をする方じゃないし、寄るのはスーパーくらいですからね。あっ、重いやつの時は使ってと言ったらどうです?」
「お前冴えてるな。よし、牧野様との交渉はお前に任せる。こっちに有利になるように持っていけよ。」
「へ、あー、はぁ。やってみます。」







「へっくちん。」


急なくしゃみを止められず中途半端な止めになったためくしゃみもへんな言葉になったつくし。周りの視線を集めてしまった。

「すみません。」とコソコソしながらオフィスに入る。だがそれも見られていたようで同僚から笑って挨拶された。


「おはよう。どこかで噂されてるのかな?」
「へ? あー、いやー、どうなんですかね~」


はははと笑って返しながら席についたつくしはデスクの引き出しを開けて目当ての物を見つけた。

見上げて時計を見ればまもなく就業開始時刻。電話する時間はなさそうだ。



___だが、




「すいません。ちょっと、メイクを直してきます。今日少し寝過ごしたもので。」
「あら。珍しいわね。ならゆっくりしてきなさい。あなたいつも頑張りすぎるから、ちょうど息抜きも兼ねるといいわ。でないと余計な仕事も回ってきちゃうわよ。」


朝礼の後トイレに出ようと先輩に声をかけたら、嫌がられるどころか行ってこいと言われてしまった。つくしは占いのアドバイスを思い出す。



_昨日できなかったことにチャレンジしよう。こだわりを取り除けば新たな発見があるはず。



トイレで個室のドアに手を伸ばそうとして電話の声が響きそうだと気づく。これまで隠れて電話する事などなかったつくし。トイレに着いてここはダメだとはじめて知る。


ならばどこで、、、


オフィス内で目にしたのはガラス張りになっている個室。重要案件などを電話する際になど使われる部屋だった。



つくしの心に黒い天使が囁きかける。だがその天使はつくしには白い天使に思えた。白い天使がいたずら顔して笑っていたからだ。



「一度だけ。今日一度だけだから、、少しずつだけでも話せれば、、がんばれる。」



ボソッと呟き個室に入ったつくし。

ドキドキしてるのは電話をするから?

それとも仕事中にプライベートな電話でこの部屋を使うとから?


目当ての番号をスクロールし、スマホを耳に当てる。



トゥルルルル、、トゥルルル、、



「もしもし、牧野か?」





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dot 2017.10.22 21:00 | 編集
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