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2017
11.12

エンレン ブルゾンつくし

更新の間が随分開いてしまいました。
この1話で終わらせようと話を飛ばしたら繋がらなくて、またはじめから書き始めると…
なんか調子出ませんでした。
そして続きそう…







空気が冷たくなったからとか季節のせいじゃない。


あたしは寂しいんだと思う。
あいつが恋しいんだ。


約束の4年間を経てもなお帰国できないあいつ。
その理由には納得している。

納得はしているけど…

寂しいって感情は納得しても消えてはくれないみたい。


今思えばあたしらしくない行動ばかりしている。
その日の占いに一喜一憂したり、アドバイスやラッキーアイテムを真剣に見入ったり。
そして自分からSPの車に乗ったり…

あいつは普段通りのあたしの生活をさせてくれるけど、SPを見るたびあいつを意識してしまう。

…見るたび、じゃないな。
あたしがSPを探してしまってたんだ。

だってSPがいるって事はあいつがあたしを気にしてくれてるって事じゃない?

そうだ、だからあたしはSPを見つけてしまったんだ。
無意識にあいつを探して…



無意識じゃない。あたし満員電車で押しつぶされてたじゃん。



「ふふっ。」

手にしていた単行本を顔に当て笑いをこらえる。

だが見ているページは笑える内容ではない。
というか、手にしている単行本はハーレクインのコミックでコメディの要素は全くない。
田舎の別荘を訪れた金持ちの男と祖母に育てられた素朴な若い女が、いがみ合いながらも恋に発展していくラブストーリーだ。

その単行本を4/5読み進めたところで展開が読めたつくしは胸に満足感が広がり、笑ってしまった。

誰かさん達と良く似た二人の恋の結末。
いや、これから二人は始まるのだから結末ではない。門出になるのだからはじまりのストーリーだ。


「言い合って、相手を知って… そんな…したなぁ。」

部屋にはひとりしかいないのに“好き”や“恋”を言わない自分に笑えてくる。たったひとりなのにだれに対して照れているのか。


「もうひとつのコミックも買っておけば良かったなぁ。これ(ハーレクイン)って確か全部ハッピーエンドだったよね。」

もうひとつとは裏表紙のあらすじを読んでどれを買うか悩んだもう一冊の本だ。普段コミックを読まないつくしは数冊購入する事を渋った。

それは金銭的な余裕がなかったからじゃない。
社会人になりそれ相当の給与が支給されているし、なによりそのコミックは新刊を扱う書店からではなくチェーン展開する古本屋から購入したものだ。

その古本屋にも足を向けられたのは帰宅の時もSPの車に乗ったからだ。

なぜそうしたのか。

その日つくしは心がざわざわしたまま仕事をしていた。

朝、仕事をさぼって恋人に電話をかけた。
久しぶりに聞く司の声につくしの心は満たされた。

だがすぐに現実に引き戻される。
業務中すぐ側では同僚が仕事をしている。
そんな中にさぼり続けるなどつくしにはできなかった。

そそくさと何もなかったようにデスクへと向かう。
そんな中手のひらの中のスマホは振動していた。
誰がかけているかを想像して顔がにやけてしまう。無理だろうと思いつつもつくしはにやけ顔を必死で隠していた。

そして案の定それを指摘され誤魔化すのだが、いつもとは違い今日は多くを聞かれる事なくやり過ごすのだった。

安堵するところだけれど、つくしはちぇっと舌打ちした。嘘を付かない範囲で話したい気分だったのだ。
いつものように焦ってしまえば同僚も食い付いたかもしれないが正直者のつくしにそんなテクニックは持ち合わせてなかった。

キーボードを叩きながら後で優紀に電話してみようかと考える。だがいつも自分に親身な親友は必要以上に心配するかもしれない。今のつくしは軽い相づちがほしかった。

心のざわざわはいつしかもやもやへと変わっていく。

司の声を聞いただけの事を話せない欲求は叫びたい欲求に変わ……りはしなかった。


「一瞬だけは変わったわよ。一瞬だけね… 叫ぶの?って考えたらできる訳がないじゃんね? ま、あいつは喜ぶだろうけど。」


それで多少冷静になれたがもやもやが完全に晴れる事はなく、ため息を聞き付けた同僚に声をかけられ、もやもやしている事をしどろもどろに告げると「私なら漫画読みまくって気を晴らすよ」と返ってきた。

そこで「漫喫に行けば?」と提案されたが、SPが張り付かれている身、つくしが行けば漫喫側も迷惑だろう。なので購入して帰ろうかと漏らすと、「古本屋なら大人買いもしやすいよ」と近隣にある大きな古本屋を教えてくれたのだ。で、朝同様にSPをタクシー代わりに使ったのだ。

ちなみにその同僚は漫画を読みふける場合はプチ贅沢をするらしく、普段は行かないお高めスーパー成城○井のお惣菜をツマミにするらしい。SPタクシーに乗ったついでとつくしも成城○井デビューする事にした。


「チーズケーキ美味っ💕 これはコンビニでは買えないわぁ~」


気分が回復したのは漫画よりもチーズケーキの功績ではないかとつくしも思うが、チーズケーキはラブストーリーの結末を読む満足感は与えない。つくしは漫画とスイーツは最強コンビだと思った。


「まだ8時かぁ… (SPの)タクシーで帰ってきたからなぁ。うーん、寝るにはまだ早いよね。でもあの古本屋歩きでは遠いし、(本物の)タクシーで行くほどじゃないよねぇ…」


どうしたものか、と考えるつくし。もやもやは晴れたけれど逆に恋愛の気分は高まってきた。司と会えない寂しさはあるけれど待っていられるちゃんと信じられると自信を取り戻せた。


下着をしまってあるキャビネットから小箱を取り出した。蓋を開けて中にある写真を手にする。

二人で撮った唯一の写真。

胸から上は写っていないが、笑顔であるだろうと思える写真。というのも実際に写っていれば笑顔のピントではなかったかもしれない。(まぶたが閉じていたとか、薄目だったとかね…)



その写真を持ってベッドに向かう。
枕元に置きライトを落として口元まで掛け布団を引き寄せ目を閉じた。







『そんなに俺の夢が見たいのか? しょうがない奴だな。』





パチッ




「何であのドヤ顔なのよ… ムカつくけどそれがあいつ…だわ。」




つくしはベッドから起き上がった。そして数分後笑顔であろう写真は元のキャビネットに戻されてしまった。






※※※



「おはよう。今日は機嫌が良いのね。」
「おはようございます。漫画のおかげです。」

出勤してきたつくしに同僚が声をかけてきた。

つくしは歩きながら機嫌が良い理由を思い出していた。

それは今朝もSPタクシーで出勤したのだが、その車内が豪華になっていたからだった。それもリムジンのような高級車の豪華さではなく、例えれば彼氏が初めて彼女を愛車に乗せるようなグレードアップの程度なのだ。つまり普通に少し背伸びをした印象でつくしには好意的に映った。

実際にはシートカバーやカーオーディオなど全て経費で変えられている上にシートカバーやオーディオには極小カメラが隠されていた。しかも使われている車自体が昨日のものとは違っていたため、グレードアップはつくしの予想の斜め上をいっていた。






時刻が昨日つくしがこっそり電話をかけた時を通りすぎ、道明寺ホールディングス日本支社の業務が通常通りに動き始める。


そんな中支社前に数台の警護車を伴った1台のリムジンが止まった。




SPの壁に囲まれ背の高い男が支社の中へと入って行く。

その男の姿を捕らえた人々は驚愕の表情を浮かべ、受付担当者も報告にない事態だったため、呆然とその立場を忘れてしまっていた。


重役専用のエレベーター前でその集団が立ち止まる。どうやらひと悶着が起きているようだ。
だがすぐに到着した一般用に乗り込み、その場で動けず見守っていた人々はエレベーターの移動階の数値をしばらく目で追っていた。





~♪♪♪~♪~♪♪~

つくしの耳に聞き覚えのあるメロディが流れた。


周りの同僚達もそのメロディに気付き、メロディの持ち主は慌てて消音する。誰かが着信音変えたのと聞くと、持ち主はその映画を久々に見て換えたくなったと答えていた。


つくしも数年前はその着信音を使っていたなと懐かしい気分になる。でも今なら登場曲はオースティン・マ○ーンだよなぁとか、ならあたしはちえみか!なんてククッとひとり笑っていた。





そして周りがざわつき始め、つくしも真顔になる。


「えっ?」とか「嘘…」の声につくしもそのざわつきに顔を向け…





「35億…」

ボソッと呟いた声はしっかりと届いたようだった。

「は? 何だって?」
「いや、35億くらいありそうだなーって… あんたの場合は資産になるか…」
「俺の資産? 珍しいなお前が俺の金を気にするなんて。」
「いや、あんたの資産なんて全く興味ない。」
「は? じゃあなんだその35億って?」
「大した事じゃないわ。てか、なんでいるの?」


待ってましたの声に司がニヤリと笑う。


「そりゃお前を抱きしめるためだ。仕事サボってまで俺に電話するくれーだからよ。寂しかったんだろ?」


そういって手を広げてつくしを待つ司。


ぽかんとするつくしだったが、ハッと周りの視線に気づく。



_こ、この中でこいつはあたしに抱きつけと言うの?




「どうした? 来ねぇのか? …そうか感激のあまり動けねぇんだな。」
「へっ、ち、ちがっ…」



黄色い声につくしは固まり、司は久しぶりのつくしの抱き心地に満足していた。
これでもかと鼻腔を最大限に広げるような深呼吸でつくしを確認する司。思う存分つくしの匂いを嗅いだ後は身を引き、反応の遅れたつくしを尻目に、道明寺ホールディングス日本支社社員の目の前でぷっつりとしたその唇に喰らいついた。



悲鳴や怒号がフロアに響き渡る。



つくしの思考回路は真っ白に燃えつきていた。



長いキスシーンが途切れた時、司は甘く優しく微笑んだ。

それは写真週刊誌でも社内誌でも見たことがないレアな司の表情だった。



再び悲鳴がフロアに響き渡る。


司はその耳障りな声に眉根を寄せる。
チラッとつくしを見ると放心状態だ。
ニヤリと口角を上げる。





※※※




「はっ。こ、ここどこ? て、リムジンの中なの?」

ようやく意識が戻ったようにつくしが話し始めた。

「おう。惚けるの長すぎだぞ。」
「惚けるの…… って、あんたが突然現れるから!」

ふぁあと大あくびして司がタブレットを放り投げるようにシートに置いた。

「嬉しくないのかよ?」

ムッとして拗ねたような司に、つくしもそれ以上突っ込めない。

「う、嬉しいわよ。嬉しいに決まってるじゃない。」
「だよな。俺も嬉しいぜ。スゲー会いたかった。」

司の満面の笑みに胸キュンになるつくし。昨夜のハーレクインがつくしを意図も容易くラブモードに引き寄せた。

「い、いつまでいるの?」
「ん、おう。2・3日だな。折角来たんだからよ。こっちで出来る事して来いだとよ。」
「そうなんだ。…眠そうだね。」
「そりゃ時差ぼけだ。向こうを朝発って着いたら朝なんだからよ。そうなるに決まってんじゃねーか。」

また司はふぁあと大あくびする。

「一眠りするつもりでメープルに向かっている。一緒に寝ようぜ。」
「あたしも?」
「…たりめーだろ。お前がいるのにひとりじゃ眠れねーよ。」
「眠れないってそんだけ眠気がありゃ寝れるよ。それにあたしは逆に起きたばかりだもん。」
「なら俺の抱き枕に徹しろよ。俺が寝入ったら起きていーからよ。」

甘える司の様子にまたまた胸キュンするつくし。抱き枕になる事さえ抵抗を感じなかった。それに今の司は本当に眠気が強くベッドに横になっただけですぐに寝入りそうだ。頭を撫でて子守唄とかどさくさに紛れて恋歌なんて歌ってあげようかとさえ思えてきた。

「良いよ。添い寝してあげる。」
「サンキュ。」

チュッと唇を合わせ、司はつくしの肩を抱いた。

ラブモード全開のつくしに司は満足げだった。




ピンクのハートが充満する車内は一路メープル東京へと向かい、

ざわつきが収まった日本支社では、社員の情報収集が公然と飛び交っていた。




どうなるつくし?







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時事ネタに救われた~
て、今年だけでしょうね。流行語大賞取るかな?
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dot 2017.11.12 13:08 | 編集
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