甘さとスッぱさと ... birthday song 前編
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birthday song 前編
2018-01-30-Tue
俺の日常は機械的に動いていた。


高校卒業を待つ事なく、道明寺家の御曹司として歯車の一部となってからは全ての感情を無くしていた。


大学を卒業し、会社では結果を出すためにだけ頭を働かす。そのため余計な事は自ずと排除していった。


その最たるものが感情で、視覚や聴覚、味覚といった五感の三つが無に近くなり、嗅覚や触覚はさらに敏感になっていった。


だから、耳に届くはずの音楽も俺には届かない。聞こえないはずだった。






早朝、秘書の待つエントランスに向かうと、小さな女の子が隠れるように下を覗きこんでいた。


その視線の先には俺を見送るために出てきたタマと使用人達。



ひょっとして探している人物は俺か?と思った。



なぜならこの時はぼうっとしてしまい、いつも通る階段を降りずに通り過ぎてしまったからだ。それでもそのまま進めば別の階段から降りれたので、別の階段の上に立ち普段通りに降りていれば気づくはずのない少女を見つけたのだから。


だがそれだけだった。こんなところになぜ少女が?とは思ったが、それ以上深くは考えなかった。


そしてエントランスに降り、ちらっと振り向くと姿を隠したのか少女の姿は見えなかった。




そんな日から数週間が経ったある早朝、またぼうっとして階段を通りすぎた。


はぁと溜め息をつき、もう一方の階段に向かうと見えたのはあの少女。


俺は降りようとした階段を戻り、元の階段から降りていった。


そこからは死角になって少女の姿が見えない。



_ひょっとしてあの少女はずっと俺を見ていたのか?



見られることに慣れていたとはいえ、それは雑音と捉え無いものとしていたからであって、気づいてしまった自分への視線に俺は眉ねを寄せた。




「いってらっしゃいませ。」


頭を下げるタマの前で、顔を上げるのを待った。


「…? 坊っちゃん?」

「タマ、なぜここにガキがいる?」

「なんの事でしょう。ガキ、とは?」

「…5才くらいの女のガキだ。二階にいるのを何度か見かけた。客がいるとも聞いてねぇ。使用人のガキか?」

「…いいえ。そのような子はおりません。坊っちゃんの勘違いではないでしょうか?」



_しらばっくれるのか?



「そうか。」



俺はそれ以上追及せず、邸を後にした。


タマは俺の生まれる前から邸の使用人頭をしている。俺にとってタマは信頼できる数少ない人物だ。そのタマが俺の見た事を否定する。何か考えがあるのだろう。


それに見かけた、ただそれだけだ。ガキの頃のようにムシャクシャして暴れまわる年でもない。俺はそう考え放っておく事にした。





だが、それから気づけば俺はその少女を視界に捉えていた。



少女の方は俺に気づかれている事に気づいてないようだった。




そんなある寒い朝、少女はいつもの場所にいなかった。


いない事を気にかけながらエントランスに出ると、外が寒い事に気づく。



「今日は冷えるな。」

「はい、なのでもっと暖かくして下さい。それでは首もとが冷えてしまいますよ。」


そういって別のマフラーを持ってくるように指示するタマ。


俺はそれが届くのを待ち、呟いた。



「風邪引いている奴もいそうだな。」

「…そうですね。こう寒いと…」

「ガキはすぐ風邪を引くからな。酷くならねーうちに治さねーと。」

「………」


何も言い返さないタマ。


俺は自分が何を言いたいのかよく分からなかった。


そのうち使用人がマフラーを持って来て、俺はリムジンに乗り込んだ。



「坊っちゃん。」とタマに呼ばれ窓を開ける。



「子どもは強いですから。風邪を引いても大丈夫です。何度も引いて強くなりますから。」



俺は何も答えず車を出させた。





※※※


それから三日後になりやっと少女は姿を現した。


だがマスクをしている。それに何だか頬が赤かった。



「おい、お前まだ風邪引いてんじゃねーのか?」


俺は思ったまま声をかけてしまった。


するとこいつは驚いて声も出せないようだった。


固まって動けないらしく、俺を見たまま瞬きさえしようとしない。



「ちゃんと治さねーと、また辛くなるだけだぜ。」


俺はそういいながら、しゃがみこんだ。


そしてそいつの額に手のひらを当て、「熱はねーな。」と安心した。



「名前は?」

「…つつじ。」

「つつじ? …花の名前か。」


こくこくとこいつは頷いた。


姉ちゃんの名前が椿だ。"つ"から始まる花の名前。だから俺は嫌悪感を抱かなかったのかもしれねぇ。



「親はどーした?」

「…ママは、お仕事してる。」



やっぱ使用人のガキだったか。



「父親は?」



それにはこいつは答えなかった。


タマはあれで情があるからな。可愛がっている使用人の事情を構っているのだと理解した。


ここはNYだ。どうみても純日本人なこいつはきっと片親なんだろう。



「俺に知られたら怒られるだろ。」



長く話し込めばそうなると思った俺だったが、意外にもこいつはふるふると顔を横に振った。



「母ちゃんは仕事ばっかりか?」



_俺のように。



ならば構ってもらえないかとそう聞くと、こいつは頷いた。


俺はこいつの頭をぽんぽんと叩き、その場を後にした。





それから俺は毎朝そいつと一言二言話をした。


そして気づけば甘いもんを与えていた。



「いいの?」


そう言って、こいつはラッピングされた小さな箱をおそるおそる開け、ぱあっと弾ける笑顔を見せた。



「ありがと!!」



嬉しかった。

俺が与えておきながら、何かを与えられた気分だった。



「宝物にするっ。」



大事そうに胸に抱えたこいつに、食ったらなくなるじゃねぇかと、また買ってやると言うと、こいつは悲しそうな顔をした。



胸がざわついた。

たかがガキの表情になぜか感情が揺さぶられた。



「今日帰るの。…タマさんと。」




それで分かった。


こいつはタマが日本から連れて来たガキだって事を。


日本の邸を管理するのがタマの役目だが、半年に一度は親父達に報告で渡米しに来ていたのだった。






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坊っちゃんの誕生日に間に合うかは微妙。
なので暖かい目で読んで下さい。
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