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2018
01.31

birthday song 後編 part1

決意はしたが深夜だった事、それに一度冷静になった方が良いと思い俺はタマへの電話を後にし、その晩は眠りについた。


そして翌日夜になって電話しようと考えてたところ、ババアに呼び出される。



「思い出したのですね。」



開口一番問いただされ、間を開けてしまった俺は反論しなかった。



「だから何だ。」

「どうするおつもりですか? 彼女と彼女の娘を。」

「…あんたはどうするつもりだ?」



ババアが知ってても不思議じゃねぇ。

タマならば上手くやるとは思っていたし、それが隠し通す事だとも思ってなかったからだ。



「それはあなた次第です。」

「俺?」

「ええ。あなたがどう動くかで彼女達への対応を決めたいと思ってます。」

「…対応って何だよ。」



ぎりぎりと歯を食いしばり、威嚇してしまう。通じる相手ではない事くらい分かっているのに…



「彼女達がこのまま世田谷の邸で暮らすのか、それとも彼女達を邸から追い出すのか、です。」

「なっ… そんな事させてたまるか!」

「…追い出して欲しくないならば、こちらの要求を飲む事です。」

「要求だと…」



ババアは俺に淡々と要求を言い渡した。


だがなんて事はねぇ、ババアの要求は俺に実績を積めと言う事だった。



「つまり、今のまま続けろと言う事か。」

「…いえ、それだけではなく結果も出さなければなりません。ですからそう簡単には応えられませんよ。」

「けっ。やってやろーじゃねーか。」

「まぁ、5年は待ってあげましょう。」

「5年だと?」

「最低限そのくらいはかかりますよ。それでも足りないくらいです。私を満足させる結果を出すためにはね。」

「……3年だ。3年で結果を出す。」

「…そうですか。」



ババアは眼鏡をかけ、手元の書類に視線を戻した。


俺は礼もせずに部屋を出ていく。




確かに5年でも短いだろう。

3年と言ったのは強がりだと捉えられても仕方ない。


だが、やってやる。


俺にはあいつを手に入れる目的以外ないのだから。







夜邸に帰り、タマへ電話を入れる。


タマは俺の声色から記憶が戻った事をすぐに察した。


そして俺は長々と愚痴られる。



「るっせーな! 俺だって忘れたくて忘れたんじゃねーよ!」

「そんな事は百も承知ですよ。で、坊っちゃん当然つくし達を取り戻すため、ちゃんと奥様の要求を飲むんですよね?」



すでにババアとタマは通じてやがった。


分かってた事だが、ムカついてしょうがねぇ。


だが、タマは俺の味方だった。



「つくし達はあたしがしっかり捕まえておきますから、しっかりやって下さいよ。」

「タマ…」



そして俺はなぜタマが牧野を匿っていられるのかを知った。


俺がNYに行った後、タマは牧野に連絡を入れ続け時々会っていた。そして牧野が妊娠に気づいた時、ちょうど側にいて、牧野はタマに誤魔化しきれなかった。


それからタマは牧野が安心して出産出来るように、邸で住み込みで働かせ、牧野の両親からも匿った。匿ったというより、説得して丸め込んだってのが本当のところらしい。牧野の両親はあんなんだからな…


そして牧野は英徳を辞め、邸で使用人をしながら俺の子を出産した。牧野はあっちの使用人に人気だったからな。使用人は皆協力的だったらしい。


そしてタマは頃合いを見てババアに報告をしたらしい。いつまでも黙ってらんねー事はタマだって理解しているからな。それでタマはババアを味方に付ける事にしたそうだ。



「味方って、あのババアが味方になるのかよ?」

「それは坊っちゃん次第ですよ。奥様も仰ってませんでしたか? 奥様と坊っちゃんの関係がこのままで良いとは奥様とて思っておられません。だからといって自然にお二人が近く事も難しいでしょう。だからあたしは奥様に言ってやったんですよ。緩衝材が必要だってね。」

「…それが牧野だっていうのかよ?」

「はい。つくし以外には成し得ません。」



俺はタマの考えに納得せざるを得なかった。


実際、タマがいなかったら牧野はひとりで子どもを産んでいただろう。いや、ひょっとしたら産まれてなかったかもしれない。



俺はタマの敷いたレールに乗る事にした。


それが俺と牧野を想ってくれているタマへの恩返しだと思ったからだ。






はやる気持ちを抑え俺は一歩一歩前に進む事に決めた。


そして翌週PCに動画が送られてきた。



それを視聴し、俺は驚いた。



先週までは鍵盤を叩いていた奴が、今週は弾いていたからだ。



もちろんまだまだ下手くそには違いない。だがかなりの上達ぶりだ。


おそらくかなり練習しているのだろう。


たかが、5才くらいのガキが俺のためだけに上達しようとしている。



そこで俺は気がついた。


ーこいつは俺が父親だって知っているのか?



柱の影からこっそり俺を覗いていた。

そして俺に見つかり驚いていた。

『俺に知られたら怒られるか?』と聞いたら、首を振って否定した。



間違いない。


こいつは、つつじは俺を父親だと知っている。


知っていて、俺を見ていたんだ。



PCの中で、俺のためにピアノを弾く娘に涙が出てきた。


愛する女に良く似た表情で真剣に弾いている。




「くそ… へっ。泣いてばかりだな…」


ズズッと鼻をすする。


「負けてらんねーな。…負けてらんねーよ。娘に、娘に、負けてらんねー。」



一歩一歩進むなんてまどろっこしい。


走って走って、走り続けねーと、俺は娘に負けてしまう。



俺はこれ以上のエールはないと思った。



牧野と娘が俺がこいつらを取り戻すために必死になっている事なんて、知らないかもしれない。



だが構わねぇ。



俺だけが、こいつらを笑顔にさせてやれる唯一の人間だからだ。



「待ってろ。…待ってろ! 待ってろよ!!!」





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終わらなかった。今日中には仕上げます。
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dot 2018.01.31 19:38 | 編集
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dot 2018.01.31 20:23 | 編集
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