FC2ブログ
2018
02.10

birthday song sideつくし part5

小ネタ続きます。




(チューリップの音階)

ドー、レー、ミー、ドー、レー、ミー



ぎこちないながらもちゃんとメロディになっている音が響く大広間。



椿達が帰国し年が明けても、つつじは真面目にレッスンを続けていた。


この場面だけを見ればファーストタッチの破天荒ぶりが嘘のような光景である。


血は水より濃いという事なのか、ピアノを弾くつつじはお嬢様のように見えた。



姿勢を正し、前と鍵盤を交互に見ながら指を動かすつつじ。


本来楽譜を立てている場所にはタブレットが立てられてあった。


そのタブレットには鍵盤を動かす手の映像だけが流れている。


そしてつつじの側にはつくしが座っていて、講師の姿はなかった。



帰国する際、椿はつつじにピアノ講師をあてがわなかった。椿が手配したのは週に一度の調律のみ。あとは動画でのレッスンを残していったのだった。



『音符の意味から教えて楽譜を読めるようになって弾いたんじゃ、やる気なくなるでしょ? ちゃんとしたやり方が何でも良い訳ではないわ。子どものやる気を増やす方法が私は最良だと思うの。』



目から鱗とその理論につい感心してしまったつくしだったが、椿の企みを思い出し落ちかけた鱗も引っ込んでしまった。





それは誕生日の翌朝だった。



つくしは泣き腫らした顔を見られまいとケアして寝たが、やはりまだ少し腫れていたらしく泣いた事を椿やタマに知られてしまった。



「あー、へへなんか泣いちゃいました。なんでですかね。泣くつもりなんてないのに勝手に涙が出ちゃいまして…」

「つくしちゃん…」

「でも! あたし大丈夫です。なんか泣いてスッキリしましたし、そのお姉さんが心配…」

「スッキリなんて嘘つかなくて良いのよ。」

「お姉さん…」

「あの馬鹿のせいでつくしちゃんがどんな想いをしているかなんて、私達は分かろうとしているつもり。だから私達の前では素直な気持ちであって欲しいの。私は未熟だから… 強引に引っ張るしかやり方は知らないけど、ずっとあなたの味方だわ。つくしちゃんがあの馬鹿を許せないのは当然よ。でも許せないままでいたくはないでしょう?」



_許せないままでいたくはない



「あ、いえ、許せないままって言うのは許すでしょって訳じゃなくて、えっと…」

「………」

「つくしちゃん、あの…」

「そうですね。許すと思います。」

「えっ…」



ふぅとつくしは息を吐いた。



「お姉さんの言う通りです。あたしはあいつを許すと思います。そりゃ腹も立ってますけど… こうなったのはあいつのせいじゃないし。…許しちゃ駄目って気持ちがあって、もやもやしていたけど… このまま許さないままではいられないと思う。許さないままでいたら、きっと後悔すると思います。…また傷つけちゃったなって。」

「つくしちゃん…」



それでもまだ椿は心配顔だったが、つくしは本当に気持ちの整理をつけられていたため何度も椿に良いのと聞かれ、そのうちつくしは笑ってしまっていた。


そんなつくしの笑顔に椿もようやくほっと胸を撫で下ろし、今の司の状況を語りだした。



そしてつくしは司が楓から難題を課せられた事を知る。


まだ待つ事になるのが確実になり、つくしは肩を落とす。


でもここは我慢して応援すべきなのだろう。自分達がまだ会えない状況に椿も心を痛めているだろうとつくしが顔を上げてみると、


椿の顔は予想外に笑っていた。



「え?」

「ねぇ、つくしちゃん。やっぱり少しはやり返さない?」

「やり返す? な、何をですか?」



椿はつつじの天才ピアノ少女計画を語りだした。


つくしはそれがどうやり返す事になるのか理解できなかった。



「尻を叩くやり方ってとこよ。ほら、レースで騎手が鞭を振るうじゃない?」

「はぁ…」

「それに手綱を引かれてるっていうでしょ。妻の方が立場が上な時。」

「…言いますね。」

「だから、つくしちゃんが司の手綱を引くのよ。」

「あいつは馬ですか?」

「馬力は人並みじゃないわ。」



ぷっ。


椿の例えにはまり、つくしは下ネタを頭に浮かべてしまった。


_そういえばあっちも大きくて痛かったなぁ。陣痛より痛かったかも?




「そうなの?」


がばっと椿を見た。


椿はにこっと笑い、つくしは背中に汗をかいてしまった。



「とにかく、やってみましょ。」

「…はい。」






それで今つくしはつつじの天才ピアノ少女を演出すべく、使用人の仕事を外され一日中つつじと大広間でピアノに向き合っていた。


とはいえつつじは大人の事情を知らない。

だからつつじにしてみれば、大好きなママがピアノに付き合ってくれるのもあって、めきめきと上達していったのである。



「うん。一曲通して弾けるようになったね。明日は動画を送る日だから、撮ってみようか。」

「うん!」



つくしは三脚にセットされたホームビデオの録画ボタンを押そうと、つつじに声をかけようとし、気づいた。



「あ、つつじそれ見ながらやるよね。どうしよう、それってまずいなぁ。」



この角度からはつつじが弾くところはもちろん、タブレットまでも丸見えだった。


困ったつくしはビデオを回しながら、タブレットが隠れる位置を探し、ピアノの周りを回り始めた。



だが、探していてタブレットを隠すという事は鍵盤をも隠すという事に気づく。



「鍵盤隠してたらつつじが本当に弾いているのか疑われないかな? あたしだったら疑うわ。あの破天荒の後だもの。」



よもやマイナスのスタートは予想以上のマイナスだった。



「どーしよう、どーしよう… ええいっ。いっその事ばらしちゃうか?」



しかしばれるのも怖い。


よもや椿がチクるとは思えないが、あの独り言を他人に知られれば、パニックを起こすのは確実だ。



タブレットを見ながら弾く事が、下ネタを口にした事に早々繋がるはずもないのだが、すでにテンパってるつくしにはイコールとなってしまっていた。



「うう… タブレットが隠れるアングルがない。ね、ねぇつつじ。」

「なーに?」

「これ、見ないで弾いてみない?」

「見ないでやるの?」

「そう。手の動かし方を覚えて、弾くの。その方がもっと上手に弾けるはずよ。こんな風に…」



つつじを見守ってすっかり覚えてしまった手順をつくしは再現していく。


つつじには高度な技でも、23歳のつくしにはチューリップの演奏くらい容易い。鍵盤ハーモニカを奏でるように演奏して見せた。



「ママすごい!」



目をキラキラさせ興奮するつつじ。


つくしは罪悪感に苛まれたものの、やってみようと促した。



俄然やる気になった我が子を見て、つくしはひとり頭を抱える。


だが、1小節を一気に弾けたつつじが「ママここまでできた。」と弾ける笑顔で振り返った事に、こんなんでも結果オーライだからいいのかもと思えるようになってきた。




ドー、レー、ミー、ドー、レー、ミー、

ソー、ミー、レー、ドー、レー、ミー、レー、


ドー、レー、レー、ミー、

ドー、レー、レー、ミー、

ソー、ミー、レー、ドー、レー、ミー、レー、



くす。


2小節目の最後のトチりに気づかず出来たと興奮するつつじに、つくしは笑いを笑顔に誤魔化し、良くできたねとばかりに褒めた。



そして3小節目を何度か繰り返して覚え(ソソミソに苦戦)、一曲通して弾けるようになったので、動画を撮影した。



映した動画をつくしとつつじ二人頬を寄せ合い確認する。



「すっごい上手に映ってる。つつじ天才ピアニストみたい!」

「ほんとう? やったー」



そう仕向けた事も忘れ親ばか全開になるつくし。


あまりの嬉しさに、先ほどまでの罪悪感も、


天才ピアノ少女に仕向ける事がなぜ司にやり返す事になるのかも、頭からすっかり抜け落ち、


楽譜が置かれてない状況になってる事にも気づかなかった。(丸暗記で弾いたと勘ぐれる)



そして『強引に引っ張るしかやり方は知らない』という椿の言葉を逆の評価に捉え始めた。




「やっぱりお姉さんはすごい。うん、なんかうだうだ悩むのはもう止めよう。お姉さんの言うまま楽しんだほうが全然良いわ。」

「いいわ~」

「あは。つつじ真似っこしたな~」

「えへへへへぇ~」






にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村

タブレットの動画は椿が弾いたチューリップです。つつじが真似できるようにゆっくり弾いてます。

そしてつくしの下ネタ想像ですが、思い出す事くらいあるよね。つくしなら早々しないだろうけど、その数少ないのが口から出ちゃったとこはらしいと思います。


小ネタで先に進まないなぁ…
関連記事
スポンサーサイト

トラックバックURL
http://lemmmon.blog.fc2.com/tb.php/384-b2246db7
トラックバック
コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2018.02.11 08:15 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top