甘さとスッぱさと ... 素肌にシャツを着て57
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素肌にシャツを着て57
2016-09-25-Sun
サービス業にとって師走は掻き入れ時。

しかしつくしの様なテーラーはその日にすぐ商品を届けることが出来ないため、秋に入ると顧客に御礼状を含め挨拶の便りを出す。(御礼状は新規購入時や、季節の変わり目などにも出すのが通例ではある。)

しかし当事者でもないのに菜々子母娘の心配をしていたつくしは御礼状の作成を手間取っていた。

つくしの御礼状は手書きで作っている。一枚一枚心を込めて書いているのだが、なにせ心の乱れがあった秋口。つくしは十数書いたところで手書きを諦めた。

「はぁ。ずっと続けてたのにな。んー悔しい・・・ふぅ。でも作らなきゃ。久々にパソコン開くか。」

つくしはテーラーになってからパソコンをあまり開かない。家ではインターネットに繋いでないから良いものの、職場のパソコンではそうはいかない。ならば家で行いたいのだが慣れない作業、教えてくれる同僚がいるかいないかでは作業効率に大きな差が生じる。

「なんでこうOSってコロコロ変わるのよ。少し使わないだけですぐ変わるんだから。」

しかめっ面しながら格闘すること数十分裏面の書式を作成した後で、表書きを行うためアドレス帳を開いていた。

そこで司のことを思い出す。

「岩元様で出すべきかな?でもこの住所って思いっきり私書箱よね。・・メールで送ったほうが良い?・・味気ないけど。」

なんでこんなことをするのかつくしはムカついてきた。自分の細やかな接客を無視するもので、客なのだからこちらの事情など気にすることではないが、相手が司だと思うとムカついてしょうがない。対面して言い合えないのもある。ケンカでもやれば勝てなくても納得できるのに。

不完全燃焼な思いに駆られ、つくしの表情は拗ねているように見えたらしい。

「牧野?変な顔になってるぞ。また分からないところがあるのか?」

同僚の広沢に声をかけられ、つくしは顔をしかめる。

「それとも顔ヨガか?」

「顔ヨガ?」

「最近テレビで見た。すげえ顔動かしてたぞ。女って大変だな。」

そういや桜子に一度教えてもらったことがあるな。あのときは滋の顔がひどかった。

プッ。ククククク・・・

思いっきりツボにはまりつくしは笑いが止まらなくなってしまった。

ポンポンと声をかけられた広沢に頭を叩かれる。その手つきは子どもをあやす時のようだ。

じゃ分からなかったら呼べよと広沢は出ていった。

ここの人たちは本当になんて優しいんだろう。つくしはここに居られる幸せを噛み締めていた。

パソコンに向かいなおした時司へのムカつきは大分収まっていた。すんなりとメールフォームを開き御礼状の書式をコピーしていく。このアドレスだって本当に岩元という人物のものかもしれない。目の前にいない司にムカついてもしょうがないと思うようにしていた。

***


ピロン♪

リムジンの中司のタブレットにメールが届く。

仕事用のメールアドレスに来るメールにいちいち反応などしない。だが今のメールは司の秘書の男からだった。この男は内勤で鉄仮面の第一秘書のように司に付いて回ることはない。

ーーーーーーーー

紳士服TSUGeよりメールが届きました。

転送致します。

Fwd:お元気ですかTSUGe牧野です。

肌寒くなったり過ごしやすかったり気温の変化で着る物に困る季節になりましたね。

とはいえ、店の前の銀杏の木は秋らしさを感じさせてくれるので、食いしん坊の私には嬉しい季節でもあります。

さて、これから年末へと向かいクリスマスとパーティなど忙しくなるでしょうか。当店でも商品の発注が増える時期になります。普段から納品にはお時間をいただいておりますが、この時期はさらにゆとりを持たせさせて頂いてます。

大変心苦しいのですが、ご理解のほど宜しくお願い致します。

またのご来店をお待ちしております。

紳士服TSUGe   テーラー牧野つくし

ーーーーーーーー


司はタブレットの画面を長い中指ですぅっとなぞった。

無機質な端末にさえ感情的になっていた。

「おめーはいつも食い意地はってんじゃねーか。」

ボソっと呟くようにはく。

司の頭には美味しそうにご飯を頬張るつくしの姿があった。

あれから食事をしても美味いと感じたことはない。食事はただ己を動かすエネルギー源であって、そこに感情は伴わない。その理由を司は知っていた。だから考えないようにしているのだが、こんなメールを読んでしまっては頭の中のつくしを追い払うことなど出来ない。

前のめりに座っていた姿勢を後ろへ投げ出す。タブレットは左手から座席へと滑り落ちた。

目を閉じたら声まで聞こえそうだ。リムジンの天井のライトの形を目で追う。今の自分は母親を探す子どもよりも弱く感じた。つくしを手に取り戻すのが見えてきたからだろうか、俺様な自分を時々見失ってしまう。

コホン

向かいに座っている秘書が咳払いをした。

その男をチラッと見る。

男からは気遣う色合いが伺えた。その目に映る自分を思うと、俺様の自分が勢いよく出てきた。

ーナニガナンデモトリカエスンダロ?ー

司は再び前のめりに座り出す。

下から睨む目つきは凶暴さを取り戻していた。

タブレットを手に取り、先ほどのメールを削除する。

欲しいのはメールじゃない。

「年末帰国する。準備しろ。」

闘いはまだ終わっていない。チェックメイトもしてないのに、終わった気になってんじゃねーと自分を叱咤する。

「かしこまりました。」

そう答えた秘書の口元は少し緩んでいた。


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紳士服TSUGeが正解。見直すつもりが忘れててそのまま投稿。逆になってたー
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第三章動かないミシン cm(0) tb(0)
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