新しい年を迎えつくしは久しぶりに実家で家族と過ごしていた。
家族はあれから社宅を出て近隣の県で暮らしている。
父は地域の病院の送迎の仕事に就き、
母もその病院で給食のヘルパーとして働いていた。
弟は大学を出てとある企業に就いている。
「あ、年賀状きてるよ。」
「本当だ。少なっ。」
「そんなことないよ。それに年賀状は数じゃないよ心だよぉ。」
「そうよ。パパの言う通り。疎遠になった人を何時までも待つなんて性に合わないわ。」
そこでママの目がキラリと光る。
「で、つくしはどうなってるの?」
「は? あたし?」
「そうよ。あんた30歳にもなって彼氏もいないなんて情けないと思わないの。」
「思いません。結婚する気無いし。」
「玉の輿は? オーダーメイドの紳士服屋なんでしょ。誰かいないの独身金持ち!」
「ママ、あたしの仕事を侮辱してる?」
「なんで侮辱なのよ。仕事は真面目にやってるでしょ。それと出会いは別よ。チャンスはちゃんと捕まえなさい。」
だめだこりゃとつくしは母の相手を止めた。
「姉ちゃん結婚しないの? 俺彼女と考えているんだけど。」
「へぇ~そうなんだ。すればいいじゃん。」
「姉ちゃん本当にやる気ないんだな。うちの専務も心配してたよ。」
「ほっといてって言っといて。」
進は美作商事に勤めているのだ。類も誘ったが、つくしがどちらに行くのも反対し、それでも尚2人は進に声をかけたためあまり親しくなかったあきらを進は選んだのだ。この時つくしと司は別れていて、進なりに2人が声をかけたことが気になったようだ。
「随分前だけどパーティで会ったって聞いてるよ。」
「ああ、顧客を紹介するってお得意様に言われてね。確かに来てたわF4。でも話さなかったよあたし。」
「パーティなんて行ったの? あんた。」
「もうママ過剰反応しないでよ。仕事だってば。営業しに行ったの。」
「なんでチャンスを生かさないのあんたって子は!」
母親の態度に進もこの話は止めたほうがいいと感じたらしい。
「おっ、お雑煮食べようよ。」
***
「じゃあ、俺たち帰るね。また遊びに来るから。父さんたちも体に気をつけてよ。」
「つくし、今度来る時は彼氏も一緒にね。ママ早く楽になりたいのよ。」
「パパもだぞ。」
「・・・じゃあね。」
つくしは都内まで進の車で送ってもらっていた。進は帰郷するにあたりレンタカーを借りたのだ。交通費を考えると断然安い。(格安のところを予約して取っていた。)おまけに時間も無駄なく過ごせる。
「2人はああ言っているけど、本気にしないでよ。」
「へ? ああうん。」
「あの2人なりのハッパのかけ方だからさ。で、なんで声かけなかったの?」
「え?」
「道明寺さんいたんだろ?」
「奥さんと一緒にね。」
そっかと進は声を小さくする。
「あたし、嫌いになってないんだ。道明寺のこと。たぶんこれからもずっとそうだと思う。だから他の人と恋愛する気にならないんだ。」
「類さんとも?」
「類にそんな感情持ったことなんて無いよ。特に道明寺を好きになってからはね。」
「ずっと1人でいるつもり?」
「分かんない。」
恋愛のことを心配する年でもない。口出しして欲しくないのは進にも分かっていた。
「あきら専務も心配してたよ。総二郎さんも。そして会いたがっていた。」
「そっか。でも異性だからね。そう気安くは会えないよ。」
「なんでさ。」
「F4は目立つの。会ったらすぐ噂される。それを道明寺の耳に入れたくない。」
「なんかそんなの姉ちゃんらしくないよ。」
「そう?」
「しおらしいっていうか。・・いてっ。」
ポカッと殴られる進。
「あぶねーよ。俺運転中!」
「あっごめん。でも余計な一言よ。あたしがしおらしかったら悪いのか。」
「そうじゃなくて、なんかさみしいじゃん。本当は4人とも仲良いんだろ。」
「そうね。でもしょうがない。これがあたしの選んだ道だから。道明寺の側に居られないのに他の3人と一緒になんて居れないよ。」
進はあきらの会社に就職し特別待遇という訳ではなかったが、つくしを心配するあきらとは会話が増え、司と別れた原因も知ることとなった。
「そうかな?姉ちゃんの考えすぎってこともない?いい歳して意地っぱりな女してんのも良くないぜ。」
「意地っぱりなあたしは確かにいるよ。でもこれでも自分を変えてきたほうよ。あんたが言うのも分かるけど、あたしは変えたい自分と変えちゃいけない自分をちゃんと見分けてるつもり。」
「何それどーゆうこと?」
「分からなくていいことよ。」
その言葉に進はムッとしたが、つくしが遠くを見ているような気がして黙ってしまった。
***
アパートまで進に送ってもらい(レンタカー、燃費代は割り勘した)、つくしは部屋へと戻る。
2日ぶりの部屋は何も変わらないように見えた。
ベッドサイドに行き、引き出しの中からジュエリーケースを取り出す。
それは真新しく高級感があったが、ブランド名は無く特注品のようだった。
ケースには土星のネックレスがあって、つくしはそれを手に取る。
このケースは司があの時くれたものだ。
『誕生日だろ。やるよ。』
『へ? え、いいよ。』
司はジッと見ている。受け取るまで動かないつもりなのだろうか。
『お客様から頂きものは受け取らないようにしているの。』
『客のつもりはねぇ。』
その言葉につくしはハッとなる。
司は顎をしゃくり受け取れと促す。
つくしはそれを手に取った。
『開けてみろ。』
形からジュエリーだろうなと思った。確かに包装を解くとケースが出てきた。
が、中身は何もない。
『?何もないじゃん。ケースがプレゼントってこと?』
司は真っ直ぐつくしを見ていた。
その眼差しは熱を帯びていて、つくしはドキドキしてしまった。
『中身は持ってるだろ。ケースは流石に古くなったか、おめーのことだ。引っ越しとかで無くしたかで、適当な袋に仕舞ってると思ってよ。』
確かに中身はある。ケースもいつの間にか無くしてしまっていた。
中身を持っていると断言しことに、司の気持ちがはっきり分かってしまったつくし。
『ありがとう。』
そう答えてしまった。
その答えを聞いて司は満足そうに微笑む。
土星のネックレスは司の結婚以来つけていない。
ケースに仕舞っとけというのは、大事にってことなんだろう。
そう思えた。
今はまだネックレスをつける時期じゃない。
深読みだろうか?
自分の都合の良い考えだろうか?
司への想いが強くなるのを止められない。
業務の年始はあさってから。
早く司のシャツを作りたい。
そう思ってつくしは眠りについた。
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父は地域の病院の送迎の仕事に就き、
母もその病院で給食のヘルパーとして働いていた。
弟は大学を出てとある企業に就いている。
「あ、年賀状きてるよ。」
「本当だ。少なっ。」
「そんなことないよ。それに年賀状は数じゃないよ心だよぉ。」
「そうよ。パパの言う通り。疎遠になった人を何時までも待つなんて性に合わないわ。」
そこでママの目がキラリと光る。
「で、つくしはどうなってるの?」
「は? あたし?」
「そうよ。あんた30歳にもなって彼氏もいないなんて情けないと思わないの。」
「思いません。結婚する気無いし。」
「玉の輿は? オーダーメイドの紳士服屋なんでしょ。誰かいないの独身金持ち!」
「ママ、あたしの仕事を侮辱してる?」
「なんで侮辱なのよ。仕事は真面目にやってるでしょ。それと出会いは別よ。チャンスはちゃんと捕まえなさい。」
だめだこりゃとつくしは母の相手を止めた。
「姉ちゃん結婚しないの? 俺彼女と考えているんだけど。」
「へぇ~そうなんだ。すればいいじゃん。」
「姉ちゃん本当にやる気ないんだな。うちの専務も心配してたよ。」
「ほっといてって言っといて。」
進は美作商事に勤めているのだ。類も誘ったが、つくしがどちらに行くのも反対し、それでも尚2人は進に声をかけたためあまり親しくなかったあきらを進は選んだのだ。この時つくしと司は別れていて、進なりに2人が声をかけたことが気になったようだ。
「随分前だけどパーティで会ったって聞いてるよ。」
「ああ、顧客を紹介するってお得意様に言われてね。確かに来てたわF4。でも話さなかったよあたし。」
「パーティなんて行ったの? あんた。」
「もうママ過剰反応しないでよ。仕事だってば。営業しに行ったの。」
「なんでチャンスを生かさないのあんたって子は!」
母親の態度に進もこの話は止めたほうがいいと感じたらしい。
「おっ、お雑煮食べようよ。」
***
「じゃあ、俺たち帰るね。また遊びに来るから。父さんたちも体に気をつけてよ。」
「つくし、今度来る時は彼氏も一緒にね。ママ早く楽になりたいのよ。」
「パパもだぞ。」
「・・・じゃあね。」
つくしは都内まで進の車で送ってもらっていた。進は帰郷するにあたりレンタカーを借りたのだ。交通費を考えると断然安い。(格安のところを予約して取っていた。)おまけに時間も無駄なく過ごせる。
「2人はああ言っているけど、本気にしないでよ。」
「へ? ああうん。」
「あの2人なりのハッパのかけ方だからさ。で、なんで声かけなかったの?」
「え?」
「道明寺さんいたんだろ?」
「奥さんと一緒にね。」
そっかと進は声を小さくする。
「あたし、嫌いになってないんだ。道明寺のこと。たぶんこれからもずっとそうだと思う。だから他の人と恋愛する気にならないんだ。」
「類さんとも?」
「類にそんな感情持ったことなんて無いよ。特に道明寺を好きになってからはね。」
「ずっと1人でいるつもり?」
「分かんない。」
恋愛のことを心配する年でもない。口出しして欲しくないのは進にも分かっていた。
「あきら専務も心配してたよ。総二郎さんも。そして会いたがっていた。」
「そっか。でも異性だからね。そう気安くは会えないよ。」
「なんでさ。」
「F4は目立つの。会ったらすぐ噂される。それを道明寺の耳に入れたくない。」
「なんかそんなの姉ちゃんらしくないよ。」
「そう?」
「しおらしいっていうか。・・いてっ。」
ポカッと殴られる進。
「あぶねーよ。俺運転中!」
「あっごめん。でも余計な一言よ。あたしがしおらしかったら悪いのか。」
「そうじゃなくて、なんかさみしいじゃん。本当は4人とも仲良いんだろ。」
「そうね。でもしょうがない。これがあたしの選んだ道だから。道明寺の側に居られないのに他の3人と一緒になんて居れないよ。」
進はあきらの会社に就職し特別待遇という訳ではなかったが、つくしを心配するあきらとは会話が増え、司と別れた原因も知ることとなった。
「そうかな?姉ちゃんの考えすぎってこともない?いい歳して意地っぱりな女してんのも良くないぜ。」
「意地っぱりなあたしは確かにいるよ。でもこれでも自分を変えてきたほうよ。あんたが言うのも分かるけど、あたしは変えたい自分と変えちゃいけない自分をちゃんと見分けてるつもり。」
「何それどーゆうこと?」
「分からなくていいことよ。」
その言葉に進はムッとしたが、つくしが遠くを見ているような気がして黙ってしまった。
***
アパートまで進に送ってもらい(レンタカー、燃費代は割り勘した)、つくしは部屋へと戻る。
2日ぶりの部屋は何も変わらないように見えた。
ベッドサイドに行き、引き出しの中からジュエリーケースを取り出す。
それは真新しく高級感があったが、ブランド名は無く特注品のようだった。
ケースには土星のネックレスがあって、つくしはそれを手に取る。
このケースは司があの時くれたものだ。
『誕生日だろ。やるよ。』
『へ? え、いいよ。』
司はジッと見ている。受け取るまで動かないつもりなのだろうか。
『お客様から頂きものは受け取らないようにしているの。』
『客のつもりはねぇ。』
その言葉につくしはハッとなる。
司は顎をしゃくり受け取れと促す。
つくしはそれを手に取った。
『開けてみろ。』
形からジュエリーだろうなと思った。確かに包装を解くとケースが出てきた。
が、中身は何もない。
『?何もないじゃん。ケースがプレゼントってこと?』
司は真っ直ぐつくしを見ていた。
その眼差しは熱を帯びていて、つくしはドキドキしてしまった。
『中身は持ってるだろ。ケースは流石に古くなったか、おめーのことだ。引っ越しとかで無くしたかで、適当な袋に仕舞ってると思ってよ。』
確かに中身はある。ケースもいつの間にか無くしてしまっていた。
中身を持っていると断言しことに、司の気持ちがはっきり分かってしまったつくし。
『ありがとう。』
そう答えてしまった。
その答えを聞いて司は満足そうに微笑む。
土星のネックレスは司の結婚以来つけていない。
ケースに仕舞っとけというのは、大事にってことなんだろう。
そう思えた。
今はまだネックレスをつける時期じゃない。
深読みだろうか?
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