甘さとスッぱさと ... 素肌にシャツを着て66
プロフィール

lemmmon

Author:lemmmon
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR

<< 素肌にシャツを着て67 main 素肌にシャツを着て65 >>
素肌にシャツを着て66
2016-09-30-Fri
火曜日の午後3時過ぎ、店に女子中学生が入ってきた。

店内にいた数人の客の視線を集める。

TSUGeはオーダーメイドの店だが、小物などの取り扱いも行っていたためこの時間帯は数人の客が商品を選んでいた。

「久しぶりだね。」

主任の桜庭が声をかける。

「桜庭さんこんにちわ。お母さんいますか?」

「オーナーは今接客中だよ。だから事務室で待ってるといい。」

「ありがとうございます。」

その会話に客は一様の納得を見せ、店内は落ち着きを取り戻す。

事務室へと続く廊下を歩いていると、

ガチャ

トイレからつくしが出てきた。

つくしは出会い頭の女子中学生に驚く。

「あっ、えっとここはスタッフ以外・・」

「私、瓜生絵深です。」

「え?瓜生?ってことは・・オーナーの娘さんですか?」

はいと頷く絵深。丁寧なお辞儀をされ、真っ直ぐな目で見られたつくしは、自分が悪いような気にさえなってきた。

「そうですか。あ、あたしはテーラーの牧野つくしです。」

「え?テーラー?女の人なのに?」

珍しいよねと笑うつくし。

つくしの笑顔に絵深の堅苦しさも解ける。

「オーナーは事務室ですよ。」

「あ、ううん。お母さんは今接客中だって。」

「そっか。あたしは作業していたから気づかなかった。ごめんね。」

ううんと答える絵深。

「作業って、スーツを作っているの?」

「ううん。あたしはワイシャツを作っているの。」

「見ていい?」

***


「なんでワイシャツなの?」

「まだスーツは作らせて貰えてないんだ。」

「ここの人達が?」

「ううん。お客様。女性のテーラーってまだまだ認知が低くてね。男の服を女が作れるのかって。あたしに頼む人はいないのよ。」

「男女不平等だわ。」

「そうだね。でもワイシャツを作らせて貰えてからはこっちが評判良くて、顧客はそこそこいるのよ。」

「スーツにこだわってないの?」

「いつかは作りたいと思ってるわ。だからその時を待ってるって感じかな。」

ふぅんと頷く絵深。キョロキョロと周りを見る。作業場所だからミシンやマネキンがあるが、女性の部屋って感じで居心地がいいなと感じていた。

「いつから働いてるの?前にお店に来た時はいなかったよね。」

「3年前からよ。あたし一度OLを経験してから服飾の学校に通ったから。」

「え?つくしさんっていくつ?」

「いくつに見えるぅ?」

ふふふとつくしは悪い顔をする。

つられて絵深も意地悪したくなってきた。

「30!」

「正解!」

え!と両方驚いている。

「うっそだぁーどう見たって30に見えないよ。25くらいじゃないの?」

「本当だよー大学出て1年OLして2年学校行ってここで3年。30でしょ。」

「足し算合わないよ。」

「それぞれで間は数ヶ月あるもの。OL出て1年は学校に行く準備してたしね。ここに就職するのだって、学校出て半年後だもん。」

そうなのか?絵深は計算が上手く出来てない。

「なんで正解して納得してないの?」

ぷぅと頬を膨らます絵深。意地悪のつもりがやり返されたことに面白くない。

そんな絵深を見ながら、つくしは作業を再開した。

ミシンの音が部屋に響く。

生地に皺を作らないように、時折立ち上がりつくしは丁寧に縫製を続けていく。

「好きなんだね。」

ボソっと絵深がこぼした。

「ん?何?」

「つくしさんこのお仕事好きなんだなと思って。」

そうねと頷くつくしの笑顔は柔らかかった。

再びミシンの音だけが響く部屋。

絵深はつくしの様子をじっと見ていた。

ふと、つくしが時間を気にする。

「あ、オーナーまだ接客中かな?もしかしてもう終わってないかな。絵深ちゃん時間大丈夫?もしかしてオーナーと約束してるとか。」

「ううん。約束してないよ。今日は早く学校が終わったからお店に行きたいなと思っただけ。お母さん私が来てること知らないかも。」

でもさっき桜庭と会ったなと絵深は思ったが黙っていた。

「買い物とか行かないの?もうすぐバレンタインでしょ。」

「あげる相手いないもん。」

「友だちは?」

最近は友チョコとか流行ってるらしい。

「友だち転校しちゃったからいないんだ。なんか、今の学校馴染めないし。」

その理由に思い当たったつくしは、明るく振る舞う。

「じゃあ自分には?あたし、チョコ好きだから自分用に買っちゃうよ。」

「それって悲しくない?」

「いいじゃん。バレンタインに相手がいないのはあたしもそうだし。相手がいなけりゃ買っちゃあダメなんて、売る方も困るわよ。」

つくしの言葉にも作業の時ほど関心を示さない絵深。バレンタインの話題がまずかったのはつくしにも何となく分かっていたが、話を切り替えられなかった。

「だっ、大体ね。バレンタインって外国ではチョコじゃないし、普通は花束かな。それに男の人から贈るのよ。日本でチョコを贈るのは菓子メーカーの戦略なんだから。」

絵深の反応はしらーっとなってきた。焦ったつくしは余計な事を話し出す。

「それにあいつは甘いの嫌いだから、チョコは食べてくれなくて・・」

「あいつ?」

はっとつくしは手で口を押さえる。分かりやすい反応に絵深も笑ってしまう。

つくしは真っ赤になってしまった。30になる女の反応ではない。

「つくしさん相手いないんじゃないの?」

「・・元彼よ。」

つくしは椅子に腰掛けた。こりゃ作業どころじゃなくなったなと諦めムードが漂う。

「聞いていい?」

「答えたくない。」

今度はつくしが膨れ面する番になったので絵深は機嫌が良くなった。

絵深の笑顔につくしはまぁいっかと渋々納得する。大の大人が中学生と言い合うのもね。

それにしてもバレンタインか。

あいつにあげたのはいつ以来かな。

確かにチョコは受け取ってくれたけど、甘いからって食べずにとって置いてたのよねあいつ。

そんなことを考えていたつくし。

つくしが想い更けてる様子に絵深も首を傾げる。

ガタッ

いきなりつくしは立ち上がった。

「え?何。どーしたのつくしさん。」

「絵深ちゃん。ありがとう!あたしいいこと思いついた。」

「え??」

絵深の頭はハテナしかなかった。



↓ランキングに参加してます。

にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村

ランキングが上がってて恐縮してます。とりあえず投稿が途切れないようにがんばろー
関連記事
スポンサーサイト

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

第四章シャツが結んだモノ cm(0) tb(0)
Comment
 

Trackback
この記事のトラックバックURL
http://lemmmon.blog.fc2.com/tb.php/76-32ef6513
| |