甘さとスッぱさと ... 素肌にシャツを着て72
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素肌にシャツを着て72
2016-10-03-Mon
「全体会議なんてなんだか会社みたいですね。」

「うちだって紳士服屋という会社だぜ。」

「そうなんですけど、言わんとしてること分かりません?」

「分かっているさ。でも、彼女はそのためにうちに来たんだ。やる気を削ぐ様な事は言うなよ。」

「そうっすね。」

広沢と荒井の会話を聞いてつくしはクスッと笑う。今日は店舗を午後から閉め従業員全員で会議をするのだ。

佳乃がホワイトボードを用意し、会議の資料を緒方に渡す。一部ずつ受け取り皆に回ったところで声をかけた。

「資料は回りましたか?じゃあ始めましょう。」

佳乃の店での役職はマネージャーだ。つまり支配人という事になるのだが、今まで通りオーナーは菜々子だ。経営の政略面で菜々子をフォローしていく立場を取っている。

会議の内容はこれまでの業務の実績を振り返り、これからの経営政略だ。佳乃は元の職場で培われたキャリアを活かし、TSUGeの問題点を突いてくる。

皆会議には真剣に聞き入っていた。女性でしかも新参者であるにもかかわらず、佳乃はこの職場に受け入れられていた。それだけ皆が待ち望んだ能力を持っているからである。

「今までのTSUGeのやり方はベースとして残したいと思います。お客様もそれで馴染んでいるし、そこは変えるメリットは無いと思うの。ただそれだと変化がないわ。つまり現状維持ということになる。変化させるためには新たな事を始めることよ。何かあるかしら?」

「何かって、、」

「お客様から言われて出来なかったこととかはない?」

皆は顔を見合わせたり、目線を伏せ思い当たる縁を探す。

「そう言えば、、牧野がやってるワイシャツのオーダーを聞かれたことがありました。しかしその時は納品と料金に難色を示してましたね。」

「あ、俺もあります。俺は女性が採寸していることが嫌だと言われました。」

「え~なんでー?」

「体型に自信がないからだと思う。すっげえガリガリ君だったから。」

「体型を気にするやつこそオーダーすべきなのに、それじゃあ本末転倒だな。」

つくしは目から鱗だった。とは言えつくしにそんな繊細な男性心理など知る由もないので無理は無い。

「つまりワイシャツのオーダーに関心を持ってるお客様は居るってことね。どの位いるかな?」

「結構いると思います。牧野がテーラーなのは馴染みの客には知られているし、ワイシャツを作る前スーツの営業をかなりしたんですよ。その時は断ったけど、気にしている客もいます。」

桜庭の言葉につくしは驚きを隠せない。女性のテーラーだと言われ悔しかった思いは昨日のように覚えている。その認識が変わってきているなんて。本当なのだろうかにわかには信じられない。

「つくしちゃん、大丈夫?」

「あ、はい佳乃さん。」

「つくしちゃんは何かある?」

「あたしですか?どうだろう?」

客に言われたこと、それを考えて気づいた。最近は固定の客ばかりで新規の客がいない。(司が注文ばかりしていることもある。)

「最近は固定のお客様ばかりです。」

「つまり新規は取ってないの?」

「そうですね。え?あたしいつから新規の客いないんだろ?」

この発言には皆が苦笑いだ。司が注文してばかりで何故そうしているのかも知っているからだ。

佳乃も皆の表情から何となく理解した。

「つまりそこにチャンスがあるってことね。」

「チャンス?」

「客が求めてる物があるってことだろ。」

「求めてるから購入する。」

「決まりね。オーダーワイシャツに着目しましょう。」

それからつくしのオーダーでの長所・短所が挙げられた。つくし自身では見えないことが挙げられ、品質向上への期待が膨らんでくる。しかし意見の中には無視出来ないものもあり、会議は熱を帯びて行った。

「アンケートが必要ね。お客様の生の声を集めたいわ。それが一番説得力がある。」

「項目を考えないといけないっすよね。俺こないだアンケートに協力したけど、自由欄何を書けばいいのか分からなかったから空けましたよ。」

「その通り!アンケートをお客様に任せっきりにしたら集まるものも集まらないわ。価格、納期、問題点の詳細をチェックする方式にして集計しましょう。」

***


それから各自アンケート項目について考えるための時間を取った。

つくしは飲み物を取ろうとコーヒーをコップに注ぐ。つくしは何だか面白くなかった。

「あいつのばっかり作ってたの何で気づかないわけ。」

それは自分への愚痴なのか司への愚痴なのか、どっちへもあることに不満を漏らす。

「つくしちゃんどうしたの?」

「菜々子さん。あたしダメですね。顧客が増えて安心したのか新規の方に目がいかなかった。」

それについては菜々子は苦笑いだ。菜々子自身当然気づいていたのだが、指摘していなかったのだ。それは他の従業員も知っていた。

「顧客に安定した商品をお届けするのも大切なことよ。確かに新規の方を増やせなかった反省はあるけど、増やしてしまって今までのお客様にご迷惑をかけてはならないわ。つくしちゃんひとりでやるにはキャパシティを超えてしまったということね。」

つくしの手に負えなくなった。言葉は違うがそういうことなんだろう。つくしは寂しい気持ちになってしまった。

「だからありがとう。つくしちゃんのおかげね。」

「え?何がですか?」

「この会議よ。オーダーワイシャツをしていこうって皆で盛り上がっているでしょう。それはつくしちゃんががむしゃらにやってきた成果だと思うわ。」

「本当ですか?」

「牧野がやってなきゃ。誰もやってないよ。規制品のワイシャツで不満の声は無かったに等しい。オーダーワイシャツの利点に気づき興味を持たせたのはお前の手柄だよ。」

「桜庭さん。」

「泣きそうだなお前。これじゃあ言いにくくなる。」

「へ?何をですか?」

話に割り込んできた桜庭はつくしの様子を見て苦笑いだ。目に涙を溜め、これから言おうとしている提案をすれば泣いてしまうだろうなと予想できたからだ。

「お前、ワイシャツ作りが当初の目標じゃなかっただろう。オーダースーツしたかったんじゃないのか?」

「そ、そうですけど。」

「今なら客も付くと思うぞ。オーダーワイシャツは皆で負担する。お前のスーツまた営業してみるか?」

「ほ、本当にお客様付くでしょうか?」

ポロポロと涙を流すつくし。やっぱりと桜庭は苦笑いだ。その様子に皆が気づいた。

「ただ営業するんじゃなく、新人テーラーを育てて下さいみたいなキャッチーはどうっすかね?」

「どういうことだよ。」

「牧野がスーツ作る経験が浅いのを利用するってことっすよ。新人が作るから価格を抑えるか、何か特典を付けるとか。クーポンとかどうっすか?」

「クーポンねぇ・・」

「次回購入時の割引とか?」

「あーなるほど。ん、それってオーダーワイシャツでも使えね?」

「いいっすね。」

「いやぁ、どっちかにした方がいいよ。安請け合いみたいな感じになりそう。」

広沢や緒方、新井。つくし達の立ち話している外から話に入ったと思えば、会議の内容に戻りまた盛り上がっている。そんな様子につくしは笑みをこぼした。

「やってみろよ。」

「でも、いいんですかね。皆の足を引っ張らないでしょうか?」

「テーラーが育ては店だって潤う。悪いことはないさ。」

「ありがとうございます。やってみます。」

泣き顔でくしゃくしゃになりながらもつくしの笑顔は良い顔だった。


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司の影がチラホラ〜

あと、お店の役職ですが私全くの畑違いな職場にいるもんで想像です。
アパレル関係の人からしてはぁ?みたいなとこがあればご勘弁下さい。
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第四章シャツが結んだモノ cm(0) tb(0)
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