甘さとスッぱさと ... 素肌にシャツを着て75
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素肌にシャツを着て75
2016-10-04-Tue
カタカタカタ・・

夜アパートの自室でつくしはパソコンに向かいメールを打ち込んでいた。

最初は司への不満を本人にぶちまけようとムカつく気持ちの思うまま言葉を並べていた。

しかし、内容を書き終わったところで手を止めてしまう。

「何やってんだろあたし。」

実際に文字を書いた訳じゃないが、打った文字を読み返してみて気づく。

あたし達は恋人同士ではない。

やり直す約束すらしていない。

1年以上会いに来てないからと言って文句を言う立場だろうか。

1年前はあたしに気持ちがあったと思ってた。でも1年経って気持ちに変化があることだってある。なぜ今まで司は変わらないと思っていたのだろう。

つくしはメールの文章を消し、机に突っ伏した。

「欲張りになってる、あたし。会いたいよぉ。」

司不足なのはうすうす気づいていたが、口に出したとたん込み上げてきた。

会いたい。

抱きしめて欲しい。

キスされたい。

キスしたい。

思い返せば再開してから抱きしめてもらったこともない。採寸時に少しの間触れるだけだ。

司には他に特別な人が出来たのだろうか?

だからあたしに会いに来ないのだろうか?

つくしはネガティヴ思考に陥っていた。

***


「牧野、今手空いてるか?」

「はい。スーツのオーダーは有りません。営業しようかと思ってたところです。」

広沢に声をかけられたつくし。動き回るつくしは暇を嫌い次から次へと仕事を見つけてはこなして行く。広沢はそんなつくしをやっと捕まえたようだ。

「んじゃ、ちょっとそれ我慢してもらえるか?オーダーワイシャツの納品が滞っててよ。ランク上の方やってもらいてーんだ。」

「分かりました。」

「お客様ノートはそっちだ。1人分でもやってもらえると助かる。マニュアル確認してやれよ。お前のオリジナルと違うぞ。次のオーダーで同じの作れるようにしなきゃな。」

はいと答え、早速オーダーワイシャツのマニュアルを取り出す。TSUGeの皆でワイシャツをやると決めて、やり方を統一したのだ。とは言えつくしのオリジナルとそう変わるところはあまり無い。おもてなしの心はちゃんと受け継がれている。

「え~っと、ふむふむ。お客様ノートを必ず確認するのね。あっここはやらないんだ。あまりメリットになってないか。確かに時間かかるしなぁ。」

自分のやり方の無駄な動きに少し落ち込む。しかし、だからと言って過ぎたことだ。落ち込むのは時間の無駄!スイッチを切り替えて受け入れよう。前に進むことが一番だとつくしは思った。

お客様ノートの棚に向かう。ランク上のノートは赤い色の冊子だ。つくしはその未の冊子3冊の中から一冊を手に取った。

シャツの布地の番号を確認する。流石ランク上の客が選んだ布地は特級品だ。布地は薄い青色がベースになっていて、細い黄色のラインストライプになっている。

お客様ノートを見た。どうやら初めての客らしい。ということは型紙を作らなくてはいけない。型紙用の紙を取りに行き、作業用の大きなテーブルに紙を広げる。物差しを使い、採寸データからワイシャツの各パーツの型紙を作っていく。作業を始めつくしは黙々と進めていた。

前身ごろを作っている時に気づいた。腰回りの長さが胸回りの長さより小さい。どうやらこの客はかなり筋肉質らしい。胸筋と肩から腰までの長さを見て、客の身体付きをイメージしてみる。

マネキンに親指と人差し指でファインダーを作るようにして頭の中でイメージを固める。そこでふと、マネキンの頭の方にファインダーを上げてみる。マネキンには頭が無い。しかしこの時つくしにはある顔が思い浮かび上がってきた。

まさか。

そんな気持ちでお客様ノートを見返す。

胸囲は少し小さいけど、肩幅、腕の長さ、そしてカラーの選択。

それは半年前まで何度も作っていたシャツと良く似ていた。

お客様の名前を確認する。

ドキンドキンドキン、、

そこには、

道明寺司

と書かれていた。

その場でヘタリ込むつくし。

「はっ、は、、へ?何で?何でよ。ウチに来たの?いつよ?」

ノートを確認していく。ノートには採寸した日時が記されてあった。

その日はつくしが早く帰った日だった。

藤岡に頼まれ料亭でF3に会っていたあの日、司は来日していてTSUGeに来店していたのだ。

いったいいつ予約入れたのだろう?

予約が入っていることが分かれば、例え藤岡の頼みでも断った。

会えたのに。つくしは涙が止まらなかった。

何で何でと考える。

会えなかったのはF3のせいじゃない。

ウチの従業員のせいでもない。

あたしのせいだ。

つくしはそう思った。

そうだあたしのせい。ずっと何で会いに来ないか不満に思ってたけど、あたしから会いに行くことはしなかった。

その時つくしは思った。

あいつはあたしを待っている。

あたしが会いに来ることを待っているんだ。

あたしから会いに行かなきゃ意味がない。

ワイシャツを作って届けに行こう。NYにだって行ってやる。航空券だって用意できるし子どもじゃないのよ。

つくしは踏ん張り拳に力を入れた。その時ノートが落ちページがめくれる。

そのノートを見て更に気づく。

ワイシャツに必要のない採寸データまで書き込まれてある。

股上、股下、太もも周り、膝周り、足首周りまで。このデータがあればスラックスも作れる。

そこでつくしは思い出した。

そうだあたしは司のスーツが作りたくてテーラーになったんだと。

司のことを想い、いつか着てくれるかもしれないと思いながら進んだ道。

もし、もしも、

この先司と一緒になるのだとしたら、

この道はどうなるのだろうか?

続けられる?

そうしてまであたしは続けたい?

答えは決まっている。

ケリをつけなきゃ。

つくしは涙をぐいっと袖で拭き、決心した。

***


そんなつくしを部屋の外から見ている人物がいた。

その人はハイヒールの踵を返し、お客様ノートの棚から赤い未のノート2冊を抜き取った。



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そうそうつくし受け身ばっかりじゃダメよー
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第四章シャツが結んだモノ cm(1) tb(0)
Comment
 

泣けました(T-T)つくしの健気さに泣けました。
毎回泣けてますが(笑)頑張れつくしちゃん!!
みんな応援してくれてるのが嬉しいな。
類にきつく当たるとこも新鮮で好きです。素直なつくし大好きです。
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