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イベリス 3
2017-06-19-Mon
「クソッ。」


ダンッ


帰宅するリムジンの中、上手く処理しきれない感情を蹴散らすように脚を動かした。

だがそんな事で気持ちが落ち着く訳もなく、ガリガリと髪を掻きむしる。


女を当てがわれるなど自分に全く無いと思わなかった訳じゃない。

おまけに仕掛けて来たのは妖怪ジジイだ。

昔ながらのやり方が通用するとでも思ったのだろう。その反発心から受けてたった。

それはジジイを馬鹿にしたいっつーのと、その油断を利用したかった事もある。

そしてそんな手に引っかかるかという自信だ。

自信があるのには理由がある。



道明寺の長男として生まれただけでなく、生まれ持った身体は多くの女を寄せ付けた。

中学の時は、親友達が連れて来た女供の求めに応じて誰彼問わずキスをしまくった。

だがそのうち図に乗ったのか、勘違いし始めた女が出て来た事で、とたんに冷めてしまう。何とも思わなかったキスにも嫌悪感を持つようになり、それから近付く女を徹底的に排除した。

それからは何に対しても嫌悪感を抱くようになり、気付けば殴っていた。

親が揉み消す事態にもなったが、それで思い知ったのは道明寺というバケモノの力。

そんな力に抗うように暴れまくっていた俺だったが、親父が倒れた。

倒れた原因が俺だった訳ではない。

親父に呼び出された俺は一方的に命令され、


臆病者呼ばわりされた。


暴れていたのは道明寺を継ぐ事への怖れからだろうと、散々暴れたんだからその覚悟を決めていてもいいはずだと親父は言う。

そして後始末してやったんだから、今度からは自分のケツくらい自分で拭けるようになれと。


自分のやって来た事がそう解釈された事に腹を立てたものの、言い返せる訳もなく俺は親父の言いなりになった。


だがその意識も数年後には変化していく。


嫌々ながら足を踏み入れたビジネスの世界は、弱肉強食な気勢が自分には合っていてそれからは力を身につけるべく寝る間も惜しんで学び働いた。


バケモノ並みのデカさを持つ道明寺を動かすため、経営学だけではなくあらゆる知識を頭に入れて行く。

その中で特に興味を引いたのが、危機管理だった。

攻める事より守る事は興味が薄かったが、カウンターの威力を知れば、守りからの反撃の強さが魅力的に思えた。

勝つからには息の根を止めるほどの圧倒的な力の差を見せつけたい。自分の中にある獰猛な牙の存在に気付いてからは、バケモノだと思っていた道明寺の中にいて、所詮自分も蛙だったとガキの俺を嘲笑っていた。


そんな俺に親友以外の味方は無く、聞こえてくるのは悪しき言葉。

だが、そんな奴らも役には立つ。

悪しき言葉を裏返し、危機管理に当てる事で俺は自分の弱点を補強していく。


そのひとつが女だ。


親友達も女遊びをしない俺を理解出来ないようだったが、ここでも力があるくせに女をはべらせないのは可笑しいと口にする輩は多い。

同性愛で口撃しているつもりだろうが、周りを見て言っているのかと忠告すれば青ざめて口を閉ざした。それだけマジもんが多いのもこの時代。敵を潰すつもりで別の敵を作ってりゃあダサ過ぎる。ざまあねぇぜ。


それでも俺自身、女に興味がないのかと疑問に持つ事はあった。

だが敵だらけのこの国で、ヤッた事がねぇと打ち明けるほど馬鹿でもねぇ。

女と麻薬は危機管理という意味では違いねぇ。

麻薬を知れば麻薬に取り憑かれる。

ならば女を知れば女に溺れるのも同じ理屈だ。

俺にだって生理的な反応は当然ある。

女の身体を知り俺がどう反応するのか知っておく事が必要だと思い始めた。



都合よく邸には多くの女がいた。


履歴書を見て心理学も学んでいた俺は、条件のいい女を探した。

処女は問題外だ。

だが、ヤッてばかりなのも何か移されちゃたまらねー。ヤッてばかりな女も外した。

そして反撃しそうな女。

気の強い女も外した。

探したのはとぼけたやつだ。ボケボケし過ぎなくて、周りを見て安心するやつだ。



履歴書から数人の女をチョイスし、俺はそいつらを巧妙に誘い込んだ。

そいつらが担当する部屋で背後から薬を使って眠らせた。

そして目的の箇所へ己の楔を突き刺そうとしたのだが、

初めて見る女の入口には汚さしか感じられず、己自身も腑抜けて行った。

2人目でも同じだったため、俺は自分が女と交れないと身体だと知る。


だがそれでも特段困る事はなかった。

都合が悪くなるとすれば、ガキを作る時だ。しかしそれは精子を渡せば病院がやってくれる。寝起きなら出す事も出来るだろうしな。

ただ、それを知られる事は面白くねぇ。

知られたところで気にもならねぇが、勘違いで下に見られるのは我慢ならねぇ。

そこに話を向けさせないよう気を使いながらも、そうなった時の為にダミーでも用意するかと考えていた。


そう、今回の時のようにな。



だが、ダミーは用意出来てなかった。

いや用意しようと思えば用意出来た。

俺の意のままになる男は沢山いる。

それこそ俺を護衛しているやつらがな。



だが、あの女は違っていた。


目を引いたのはジジイと話していたからだけじゃねぇ。


パーティの中で自由に動く姿は、この世界の住人ではない事は理解出来た。


料理やデザートばかりに目が向き、


金や権力を持ってる奴に近づかない。


俺が見ている事にも気付いてなかった。



だから俺はあの女が気になるのか?


帰路に着くはずが気がつけばあの女を追ってエレベーターを止めていた。


振り返って見られた時は、一瞬心臓が止まった。


美人ではねぇ。

少なくとも俺よりは整ってねぇ顔だ。


だが、、、




止まったエレベーターのドアを押さえながら考えた事は、あの女の入口も汚く思うのかと言う事だ。



女が角を曲がりそうになり姿が見えなくなると思った瞬間、体はエレベーターを抜け出していた。


確かめようと言う気持ちよりも、

見てみたい気持ちが勝っていた。



女の後を追って角を曲がり、閉まりかけのドアが目に飛び込んで来る。


とっさに駆け出した体を俺は必死で押さえようとした。


だがドアも閉めさせない意識が勝り、ドアに手をかけた瞬間、


女の気配を感じ、


俺はこの女を手に入れたいと思っていた。




100%ヤバい罠に違ぇねぇ。


その証拠に女の入口が汚ねぇとは感じなかった。


むしろ早くヤっちまえと自分の雄が剥き出しになる。


だが、、



想像以上だった。

女のナカは想像以上の刺激ですぐに持たねぇ事は理解出来た。


まだ女を俺の手に入れてねぇ状況で、このままイク訳にはいかねぇ。


激高に近い苛立ちでバスルームに駆け出す。

自身を持っただけで俺の欲望は噴出した。



自分を分かってなかった事にも苛立ちを覚えた。


俺は女とヤレない訳じゃねぇ。

欲しいと思える女じゃなけりゃヤレないだけなんだと。


舌打ちして、出直そうとバスルームを出る。


ベッドにはあの女がうつ伏せで横になっていた。

華奢なくびれに、形の良い尻が俺の雄をまた刺激する。


歯を食いしばりながら、スラックスを履き、ジャケットを椅子からむしり取った。




クソッ、クソッ、クソッ、クソッ!


ジジイにしてやられた俺はSPに迎えの車を怒鳴りつけて呼び寄せ、



今に至る。



「糞ジジイめ、、この借りはきっちり返してもらうぜ。この俺がやられっぱなしで黙っている訳がねぇ。」



ジジイに対しての報復を口にするものの、頭に浮かぶのはあの女の事だった。



「あの女も、、、絶対ぇに手に入れてやる。ジジイからぶんどってやるぜ。」







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ポチの多さにビビってます。
イベリス cm(2) tb(0)
イベリス 2
2017-06-17-Sat
翌朝、目が覚めたつくしは真っ先に喉を潤おそうとした。

ワンルームマンションの一室。

ベッド横のテーブルにはドリンクホルダーの水と、7錠ずつ矢印繋ぎで包装された錠剤が置いてあった。

3段目の2錠目を口に運ぶ。

空になった錠剤の穴の数はつくしがこの任務に就いた日数を表していた。



東証一部上場企業に入社して8年。

つくしは総合職だったが30歳という節目に今後の身のあり方を考えていた。


高校から玉の輿を狙って英徳高校への進学を熱望した母を説得し、都立高校に入学した。

大学は都内の私立大学だった。理由は国立大でもそれなりのお金がかかるから。徒歩圏内の私立大に特待生で入学した。

メジャーな大学ではなくても、特待生としての主席卒業はそれなりの評価対象と見なされ大企業の総合職に新卒で採用された。

大学ではサークル活動などに一切目もくれず、取れるだけの講義を取っては空いた時間も図書館に入り浸っていた。

そのため資格持ちになってしまい、幸先良く就職は出来たものの、器用貧乏となり先輩後輩問わず使われてしまった。

合コンで直帰する先輩を見ては溜息もついたけれど、大学で経験してこなかった合コンを社会人になったからと言って参加しても上手くいくはずもなく、逆に他の参加メンバーが狙っている人に好意を持たれて妬まれるのも嫌気がさした。

残業の方が給料にも反映されるとあって、使われていると分かっていてもそれを選んでいた。

つくしの働きぶりは真面目だが偏った体制を産むとして、つくしは2年程で部署変えを命じられた。

行く先々で重宝され、爪痕を残していくつくし。

20代にして4回目の移動は流石に異彩を放っていた。

総合職といえど寿退社で辞めていく女子は多い。

様々な部署での経験は上を目指す上での武器になりそうだが、使われている事が案外性に合っていると感じていたつくしには逆に荷物に感じていた。

自分は上に立つ器ではない。

自分が上に立てばおそらく周りを動かすどころか、周りに動かされるだろう。

全員が優秀な人材で、居るだけでいい役職などこんな会社には存在するはずがない。

いや、うちどころか他所にだってあるわけがない。



次の移動がどこになるのか、また昇進を含めた進路などそう遠くないうちに声がかかるだろうと漠然と考えていた。



そんなある日、社内試験を受けてみないかと声がかかった。

適切試験だというそのテスト。

自分の性格を知り、業務に活かすという所につくしは惹かれた。

会議室が並ぶフロアから離れた普段人の出入りが少ない部屋でつくしは8人の社員とともに試験を受けた。


適切試験とあって質問は正解を求めるものではなかった。

むしろ質問に答える事で自己評価が出来、自分を相対的に知る事が出来た。

行動力をみている質問では特に問題はなさそうだった。

問題は性格を表す質問だ。

あたしは争いを好まない。

野心といった向上心に欠けていた。

仕事の上でその性格は好ましいものとは言えない。

やはりあたしは上に立つべき人間ではないんだと理解した。


それじゃあ、この先どうする?

淡々と仕事をこなすのは簡単だ。上に立つ人間ではないが、補助要員、スーパーサブにはなれる。それこそ得意中の得意分野だ。


けれど、女で30になった。

ひとりで居続けるのか、それとも誰かパートナーを見つけるのか、、

だが、どうやってパートナーを見つける?

職場で?

それとも結婚相談所?

どちらにしても躊躇してしまう自分がいた。


高校までは友人とも男女問わずワイワイやっていた。

だが大学に入って未来投資で自分を追い込むあまり、人との付き合いを疎かにしてしまっていた。


いつからこんな風になっていたんだろう。

嘆いたところでどうにもならないのだけれど、ぼやきたくもなる。

自分がこんなに臆病になるなんて思いもしなかった。




そんな適正試験を受けた数日後、私は声をかけられた。

そこであたしの人生は大きな転換を迎え、



今に至る。





コトン


空になったドリンクホルダーをテーブルに置いた。

ふうっと息をついて、顔を上げれば思い起こすのは昨夜の出来事。


昨夜、あたしは処女でなくなった。

しかし身体に痛みは左程残ってない。

そうなるよう準備をしてきたのだ。


この歳になれば初体験がどういうものかくらいは知っている。


痛みがなくてホッとしているけれど、感情がなかった。

甘い感情。

恋をした上で生まれる甘い感情がなかった


それが唯一の気がかりだった。


この先、処女でない事でそれなりの恋愛経験をしているとみなされるだろう。

だから後悔はない。

それに恋愛での初体験といえど甘いばかりではないはずだ。

でも、酸っぱくもない。


納得して、

覚悟して、

あたしは性を武器に任務を遂行した。


会社に性要員を打診されたからだ。

当然驚いた。

けれど、すぐに断るとかそんな反応が出来なかった。


それは会社からしたら当然なのかもしれない。

そうなる事を見越してあたしに白羽の矢が立ったからだ。


説明を聞くうちにあの適正試験の本当の目的を知った。


そして、あたしの身の振りも会社には見抜かれていた。


あたしは退職しようと考えていた。


今の自分の状況が好ましいとは思えない。

だが、辞めようにも理由もなく、転職もその覇気すら持ち合わせてなかった。

キッカケが欲しい。

そんな甘い考えを持っていた事を見抜かれ、会社は報酬を提示して来た。


それは円満退職に、特別手当が付く事。

しかし、そのために退職後もしばらくは会社からの拘束がある。


それは任務の内容を聞かされれば理解出来た。


性要員と言っても、普通の風俗嬢とは訳が違う。

相手は大企業のトップ、国の経済を担う最重要人物なのだ。

経済という戦いの場で疲れた身体を癒したい。

そして昂った性を解放したいと猛者の男達は要望している。

だが、企業のトップに厳しい目を向ける世論。

風紀の醜聞は男達にとって命取りになる。

だから、男達は性の解放には慎重にならざるを得ないのだ。

求めるのは美ではない。

確固たる信頼と身分だ。

企業に籍を置き、

企業の事情を知り、

企業に尽くして来た人物。

そんな条件を満たした人物だからこそ、この要員は務まるのだと会社は言ってきた。


そして、その要員を務めた後は会社を去らねばならない。

だが、会社との繋がりを断つ訳でもない。

信頼という値を付けられない価値のため、会社からの拘束はずっと続いていく。


そのため会社からは恩恵も与えられる。



今つくしは自宅待機中だった。


つくしに与えられた任務は、性人形になるのではなく性を武器にしたハニートラップ。


ある企業の会長から、道明寺司を落として来いと言われた。


道明寺司。


名前くらいは知っていた。


自分より一つ年上の御曹司。

彼の幼馴染と4人でF4と呼ばれ若い女性の注目を浴びていた。


だが、つくしにとってはそれだけの事。

わざわざ声をかけるとも、

その姿を見に行こうとも思いもしなかった。



だからこの任務があってはじめて目を向けたのである。

だが、彼を見てこの任務は無謀だと思えて仕方なかった。

それはパーティで見かけた道明寺司が女性を寄せ付けなかったからだ。



けれど物事は進んで行く。


私を使った会長はパーティの前に会ったけれど、パーティでは少し話をするだけで大して注文を付けてこない。

美味い物を沢山食べて楽しめと自由にしてくれた。

けれどパーティ終盤、

会長の秘書があたしに声をかけて来た。

任務を遂行しろと。


あたしは彼に無視される事を望んだ。

お願いだから、さっきの女性達の様にあたしに気づいてくれないでと。


でも、会長に接触していたあたしを彼は目に入れていて、、



あたしは股がられた。



彼に貫かれた事は、多くの女性達にとっては羨む事なのかもしれない。

でもあたしには嬉しいという感情はなかった。


けれど、彼の反応は気になった。

彼はあたしを処女だったとは思わないだろう。

むしろ、濡れたショーツを見て慣れた女だと思ったかもしれない。



それでいい。

それで不満なんてない。

だって元々交わるべき人間ではなかったのだから。

そう自分を納得させようとするのだけど、あの男の顔を思い出してしまう。


歪んだ笑い顔。

整っているのに冷めた目つき。

苛立ちの声。


ズキン

変なの、あたし今ごろになって彼を傷つけて胸を痛めてる。


つくしは頬をつたう泪を拭った。


熱かった男の身体を思い出す。

冷たい心だと思った男だったが、

つい自分と重ね合わせる事で、冷たさが虚勢のようにも思えてきた。

本当は心も熱く、誰かを求めているんじゃないかと。


誰でもいい。

誰か、あの男を救って欲しい。

身勝手だと思いながらもつくしはそう思ってしまった。



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イベリス 1
2017-06-16-Fri
新連載?
思いつきで考えたお話です。
短編で終わらせたいと思ってますが、見切り発車です。
よければお付き合い下さい。






それはエレベーターが閉まる直前だった。

前を向いていたが、閉じられようとしたドアが止められた衝撃でつくしは振り返る。

目の前にいたのは大柄の男だった。

先ほどのパーティでの存在感を思い出す。


しばらく固まってしまったつくしだったが、ハッとしてエレベーターの奥へと身を寄せる。


そして男がエレベーターに乗り込み、ドアを閉めた。


だが、エレベーターは動かない。

エレベーターのパネルが男の体見えなかったのだが、つくしはこの男が故意に止めているのだろうと思った。

男に焦りを感じる様子がなかったからだ。



「お前は立浪会長の何だ?」


振り向く事なく男が発する。

つくしは少し身を強張らせた。


「知り合いなのは確かだ。だが警護されてる様子もなく自由に動きすぎる。秘書には到底思えねぇ。」


男は振り返りつくしを見た。

1メートルもない距離のせいか、つくしには上から見下ろされる威圧感がより強く感じた。

いや距離だけではないのかもしれない。

その男の整いすぎる顔の表情はすべての物事を見透かすような冷たさがある。

手が冷たい人は心が暖かいと聞いた事を思い出したつくしは、ならばこの人の手は燃えるように熱いのかもしれないと思った。


「愛人か?」


男の発せられた声につくしがハッとなる。

決して大げさではないつくしの変化に男は投げた視線をさらに狭くした。

つくしはただ男を見返した。冷静になるようにゆっくり深呼吸を繰り返す。


「当たらずとも遠からずってとこか?色々複雑なようだな。」


男の反応につくしは、意を決する。


「お爺さんだと本当に話し相手だけなの。・・・貴方だったらそんな事はないんでしょうね。」


つくしは男を見上げる目に力を入れた。睨まないようにと自分に言い聞かせながら。


男はつくしのそんな様子を見て、一瞬呆気に取られたのもつかの間、


「くくく、、ハッハッハ!・・・そうか、お前は俺に差し向けた手土産だって事か。」


顔を歪ませながら笑っていても男は美しかった。

そして笑われているつくしにはその理由が理解できた。

それは先ほどのパーティでの男の様子を見れば一目瞭然だったからだ。



男はすぐに震わした肩を静止した。

つくしはそれが怖かった。


「何階だ?」

「・・12階。」

「クッ、スイートじゃねぇってか。中途半端だな。」


男のジャケットの裾が動く。

そしてエレベーターは上昇した。


動くエレベーターの中では二人に会話はなく、機械音だけが耳障りに聞こえた。


12階に到着しエレベーターは小さな音をたてる。


つくしは一歩足を踏み出した。

震えを男に気づかれてはいけない。
そう自分に叱咤させて、エレベーターを降りた。


早すぎず、遅すぎず、何気ない速さで歩くよう気をつけた。


振り返りはしなかったが、男がエレベーターを降りてこないと気づいていた。

つくしは一抹の不安を感じたが、歩速を変えずに進んだ。

死角となる角を曲がりかけた時、エレベーターの機械音が耳に届く。

振り返ろうと思ったけれど何とか顔だけで踏みとどまった。

男が降りたのか降りてないのか、つくしには分からない。でも、このまま部屋に入ろうと決めた。


ピッ

解除の電子音を聞き、この音はどこまで聞こえるのか漠然と考える。


ドアを通り抜け、閉じようとするドアのノブを直前で掴んだ。


1分。


1分だけ待ってみようと思った。

だが、一瞬聞こえた足音につくしはその手を離してしまう。


そして、

ゆっくり外からドアが開けられた。


部屋に入ってくる男の存在につくしは後退りさせられた。


バタンとドアが音を立てる。
男の手はドアに当てられていた。



「服を脱げ。女の力でも武器を使われたら傷を負うからな。」


つくしは小さく頷き、一枚ずつゆっくり服を脱ぎ、その脱いだ服を広げて見せた。


パサリ、パサリと床に着ていた服が重なっていく。

男もつくしの意図を理解していた。


やがてつくしは男の前でショーツ一枚になった。

それもゆっくり片脚ずつ抜いていき、男に見せてポトリと落とす。

そのショーツは濡れていた。


そして、ベッドに深く座り口を開いた。


「会長からはただ貴方に身を任せろと言われたわ。会長が何を考えてあたしを差し向けたかはあたしには知らない。必要のない事だから。」


そして、つくしは後ろに手をつき上体を倒した。

脚を曲げたままベッドに上げて目を閉じる。


「相手にされなかったらそのまま帰って良い。だけど、股がられたら、、」


つくしはついていた手を離し、上体をベッドに沈めた。


「揺らされてこいって、、言われたの。」


つくしは男の顔を見ないようにした。

どんな顔をされようがつくしのすべき事は変わらないから。

だから自分なんだと言い聞かせて。


きぬ擦れの音が聞こえ、身体全体に重みを感じる。

ハッとしたつくしは咄嗟に何かを掴んでいた。

掴んでから、それが男の腕である事にすぐ気づいたのだけれど、


「上げ膳か、それともやべぇ罠か。食ってみなけりゃ分からねぇなら、食ってやるよ。」


そう聞こえた後、男が進入してきた。

ズブッとした衝撃で上に突き上げられる。

つくしはしがみつくため掴んだ手に力を入れた。


揺らされるどころではない動きに、つくしはシーツに身体を擦り付けられる。

柔らかいシーツの上では身体を固定する事も困難で、男にしがみつくのがやっとだった。


ギッ、ギッ、っとスプリングの音だけに集中してやり過ごそうとつくしはまた目をつむろうとした、


その時、

フッと身体から重みが消え、勢いよく楔が抜かれた。


バタン

ガタガタッ


つくしの目にバスルームに飛び込むシャツだけの男が見えた。


「くそっ。」


中から悪態をつく声が聞こえ、つくしは起こしかけた身体を倒して寝返りをうった。

下腹部の不快さを感じながら、じっと男が出ていくのを待つつくし。


もしかしたらまた股がられるかもしれないと覚悟を持ちながら、長く長く感じる時間を待った。


男はつくしに近づいてきたけれど、着衣するためで苛立ちは隠さず、派手な音を立てて部屋を出て行った。

あの音は椅子にかけていたジャケットを取るために発せられたのだろう。

動いた椅子を見てつくしは思った。



「シャワー浴びよ。」


ベッドから降り、バスルームへと向かうつくし。

男が出て行ったドアを見ては、ドア留めを掛ける。


そしてバスルームに入り、目を真開いてしまった。


それは壁に放たれた男の欲望。

自分の中に放たなかった白濁の物が壁をしたり落ちていた。


自分が男達の駆け引きに使われた事は充分に分かっていた。

もう会う事はないだろうと思いながらも、つくしは男の事を想った。


ー負けないでほしいと。


あの男の事なんて名前しか知らない。

騒ぐ友人もいたけれど、つくしには関心がなかった。


けれど、この白濁が男のプライドのような気がして、そのままプライドを高く保って欲しいと思ってしまった。


シャワーベッドを持ち、白濁を水に流す。

関わってしまったせめてもの弔いだった。

男のプライドをこれ以上傷つけたくない。

何の感情も持たなかった男へのはじめての感情だった。




シャワーのお湯を熱くして、男の汗を洗い流すつくし。

熱いお湯にかかりながら考えた事は、やはりあの男の体温が高かったという事だった。







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Let's be happy together 12話
2017-06-15-Thu
ヤバかった。
ヤバかった。
ヤバかった。

ドックン、
ドックン、
ドックン。

鎮まれ、
鎮まれ、
鎮まれ、、、


・・・・ふうーーーぅ、、


な、なんとか落ち着けたかな?


一体どうしちゃったのよー
もおっ。




「背中掻くの上手いねぇ」と誤魔化してみたけれど、かなり苦しい、、苦し過ぎる。

あいつに抱きついてあいつの暖かさに安心して、ついウトウトしてしまって、、

そこまでは良いけど、何であんな事を考えるとのよあたしは!

あ、あ、あんな、、

翌日動けなくなってお邸中の、、いやメイドさん達だけか、、でも晒し者になったじゃない。

なのに、なのに、


あいつの手が動いた時、触って欲しいと思ってしまった。

直前で我にかえって手を払ったけど、

あいつの、

あいつの手つき、、


あ"ーーーーーーーーーー


あたし本当にどうしちゃったの?


「もっと下の方だよ。」って、何言ってんのよ!!


そりゃ下の方だよ。

下の方をまさぐられたら気持ちいいよ。

こないだはそれで別世界へトリップしましたから!


だからって、

だからって、

あいつは図に乗るんだから、プレナップで営みは一回って書いたんじゃない。

恥を忍んで!!!

なんのために弁護士に会ったんだーーー

あの怒りはどこにやった牧野つくし!!!




**

なんでそんな事になっちゃったの?

思い返せば、『Be happy!』に乗船してから、あたしは何だか変だった。

豪華客船だから、乗客もそれなりのセレブなのは分かっていたんだけど、、

ポーターがキャビン(客室)までエスコートしてくれたけど、肩章を付けてるポーターって、絶対ヒラじゃないよね。

ま、まぁ、あいつが乗るんだからVIP扱いなのは分かるけど、メープルのバトラーだって、肩章なんて無いわよ。

ホテルのスィートとはまた違う雰囲気に呑まれたのは確か。

ウェルカムパーティでは着飾って正解ってくらいに異空間だし。

嫌な思い出しかないけど、あいつのお母さんに招待されたパーティとは何だか違う。

だって、だって、、


ココ、ジジ・ババしかいない!

パーティで敵視される奴らがいないのよ。

いなくなれと思った事はあったけど、

いなくなれば、いなくなるで凄い重圧、、

にわか仕込みの作法って絶対にバレてるよね。なにせココにいるのは金持ちのジジ・ババ、身につけた作法はン十年のはず、、

誤魔化したところで、誤魔化せる訳がない。

そりゃ冷や汗もかくだろうし、

頼りになるのはあいつだけなんだから、あいつにしがみつくわよ。

あいつはそんなあたしを完璧にエスコートした、、、んだと思う。

でも、エスコートする時の、あたしの腰に置かれたあいつの手。

あの時もちょっとトリップがフラッシュバックした。

なんとか理性で抑えたつもりだったけど、、、




抑えられてなかったか。


・・・・・・・・・・


この次の時はどうやってやり過ごせばいいの?



ワカンナイヨー(叫)




**

寝たふり、は、もういいかな?

いや、もう少し続けよう。

もしあいつが起きてたら、どうすりゃいいのか全然分からないし、次は掻くの上手いなんて言い訳は通じない。通じる訳がない。



・・背中に当たってんのよね。

寝たふりして何分経ったかな?

アレって、何分くらいもつんだろう?


あっ、何かへにゃってなった気がする。

気のせい、かな?

でもどっちにしても我慢しているよね。
あたしが我慢させている。

あいつってば性欲も野獣並みっぽいし、

アレも、、デカいよね。デカさから考えると性欲は馬並みってとこ?

でも馬イコールサラブレッドと考えるとなんかムカつく。

野獣、野獣、、

ゴリラとか?
熊?

さっきはタキシード着てたな。

タキシード、白と黒、、

パンダ?

いや、パンダは野獣じゃないでしょ。
確か珍獣だよ。

だったら眼つき悪いパンダ?

それも違うな。眼に傷とか無いし。

じゃ、男前なパンダ?


ヤバい!

どうしよ、どうしよ、、

起きてるのバレちまう。


どうする?どうする?



息止めよう!!


12345678910
12345678910、20
12345678910、30
12345678910、40
12345678910、50
12345678910、60
12345678910、70
12345678910、80
12345678910、90
12345678910、100!


はぁー、はぁー、はぁー、


ふぅ、深呼吸、深呼きゅーー


や、ヤバかった。

今のはさっきよりヤバかった。



ね、寝よう。

寝るんだ。

切り替えも必要よ。

寝て、明日考えよう。

そうだ。





*****


起きた。

意外に、スッキリ。
うん。スッキリした目覚め。


・・・・・・・・・


何も対策考えてない。
当たり前よね、笑いを堪えて寝たんだから。

あいつは、、

まだ寝ているわね。

でも、アレはまた復活してる。
朝ナニって奴、、かな?


どうしよう。

きっとあいつは我慢はしてくれる。

でも、このまま素っ気ないのは良くないよね。
さりげないスキンシップくらいは付き合うべき?



・・さりげないスキンシップってどこまでなんだろう。



「うう、ん。」

「道明寺?起きたの?」

「おう、今な。お前は起きてたのか?」

「ううん。あたしも今起きたの。」

「そっか。今何時だ?」

「あ、4時45分。」

「まだ?・・・そうか、時差か。出航して一日経つからな。だからこんなにまだ明るいのか。」

「何か、あまりいい目覚めじゃないみたいだね。もうちょっと寝てたら?」

「いや、いい。お前は起きるんだろ?だったら俺も起きるさ。」



・・起きるって言ってるんだから、あたしが寝るって言っても起きるだろうな。

だったら、ちょっとでも気持ちよくなれないかな、、



「ならさ、プールに行かない?この時間だったら誰もいないじゃない。外の空気吸いに行こうよ。」

「プール?朝からまた入るのか?」

「さすがに朝からは入らないよ。プールサイドでゆっくりするだけでもいいじゃん。」

「ゆっくりねぇ。」

「ダメ?気が向かない?」

「いや、そんな事ないぜ。」

「じゃ、行こう。せっかく船の上で結婚しにハワイに行くんだからさ、もっとイチャイチャしようよ。」

「イチャイチャって、お前、、」

「あ、朝ちゅーくらいはしても良いんじやかない?」

「マジで言ってるのか?」

「な、何よ。そんなに変?」

「いや、」


ガバッとシーツを捲り上げ、司がニヤリと口角を上げる。



うっ、ヤバい眼つきになってる?

でも、さりげないのは必要よね。

さりげない、、で、済む、、、よね?






続く。




*・゜゚・*:.。..。.:*・''・*:.。. .。.:*・゜゚・*

如何でしたでしょうか?


lemmmon節、今回はちょっと控え目だったかな?



さて、次のお方はーーー





Everything*Love
蘭丸さんです。


え?また?

って思いますよね。



ふっふっふっふ、、


リレーを始めから見てる方ならば、注意書き覚えているでしょう。


秘技!
キックバック!!!



私lemmmonこのタイミングで使わせてもらいます。

あまりにもリレーがトントンと進んでしまい、ちょっと残されたメンバーが企もうぜとコソコソ話しておりました。

なので、蘭丸さん昨日バトンを受け取りましたが、返しまーーす。

もう1話書いちゃってー
(^○^)

よろしくね~







(・∀・)
て、言ってみましたが、何のことはない。打ち合わせ通りです。

決して意地悪してる訳ではありません。

みなさん、心配しました?

したよね。

だいじょうぶだよ。

ガチリレー、ああじゃない?やっぱこうだよねと和気あいあいと作ってます。

安心してねー♪




安心したらー、ポチ☆
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花街に護られてー噂をすれば影ー
2017-06-11-Sun
江戸時代を背景にお話を書いてます。
時代的な言葉や名称などは詳しくないので現代風に置き換えてます。
それでも明らかに違うようにはしてません。
細かい矛盾点などあるかと思いますが、目を瞑ってお付き合い下さい。
ダメなら進まないでね。









夜見世で賑わう伊吹屋。

時刻はまだ戌の刻(午後8時)、各部屋では客が遊女と酒やつまみで変愛話を咲かせていた。

そこへスッと障子が開き中から、つくしが出てくる。

何気ない表情を浮かべているが、からくり人形のような歩き方をしている。


「つくし下にか?だったら回し部屋へのお膳が幾つか重なってる。戻りながら持って行ってくれないか?」

「分かりました。洗ったら行きます。」


ニコリと笑ってつくしは快諾した。

両手にお膳を持った男衆はつくしと離れたところでボソリと呟く。


「まだこんな時間なのに跨られてつくしも大変だ。」

男衆は振り返り、階段を降りるつくしを見た。

「くくく。姉さん達はもうちょっと優雅に歩くぜ。ま、つくしや痩せてるからしゃあねぇ、うおっと!」

ちょこちょこ歩くつくしが可笑しくて男衆は柱にぶつかりそうになってしまった。




***

「遅かったな。また手伝えって言われ、、俺のか?」


スッと障子を閉めたつくしの手にはお膳があった。


「あたしも食べるよ。」


置いたお膳には麦飯とお麩の卵とじのおかずに漬物、そしてひと組の箸が乗っていた。


「箸、一つじゃねぇか。」

「うん。交互に使えばいいじゃない。その方が洗い物も減るし。」


お茶碗を持ったつくしは、卵とじを一口、口に運んだ。


「うん、美味しい。へへ、お手伝いするとさ、こういうのにもありつけるんだよ。」


そしてまた卵とじを一口分箸に取ると、司の方へと箸を向ける。

司は抵抗なくそのおかずを食べて咀嚼する。


「洗い物ねぇ。素直に食わせてやるって言やあいいじゃねぇか。」

「何よ、素直って。食べさすくらいの奉仕なんてここじゃ普通よ。うちに来てまで自分で食べろとは言わないわよ。そこまで野暮じゃありません。」


いーと頬に力を入れ口を横開きにしたつくしだったが、おかずに続けて麦飯も司へと差し出す。


「普通ねぇ。客全部にゃしねぇだろうに。」


咀嚼しながら漬物をヒョイと口に入れる。


「でもあたしの相手はあんたしかいないんだもん。やる事ないと落ち着かないのよ。」

「やる事、、遊女じゃねぇだろおめぇは。」

「そうだけど、、ここにいてあんたの相手するなら遊女とする事同じじゃない。そりゃ毎晩は来ないけど、ずっと跨られてりゃ身体が持たないわよ。」

「俺はんな事ねぇぜ?」


司はニヤリと口角を上げるが、つくしはじとっと重い瞼を返した。


「あたしも手紙書こうかな、、」

「あ、何だって?」

「何でもなーい。」

「ムッ。手紙書くとか言ってたじゃねーか。」

「聞こえてるんじゃん。」

「誰に書くんだよ。」


ギリギリと額に青筋を立てながら、つくしを睨む司。

ふと、つくしが視線を落とせばおかしなところが盛り上がっている。


「誰って、、」


そう言ってつくしは司の顔をじっと見る。


「あご髭付けてる人かな。」

「は?」

「あ・ご・ひ・げ、付けてる人よ。それしか教えらんなーい。」

「はあ?!てめぇ、俺がいながら他所に男作ったのか?」

「作ってなんかないわよ。忙しくてそんな暇ないもん。伊吹屋は閑古鳥も鳴く暇なんて無いんですぅー」

「ああ?だが、遊女が書くっつったら客への恋文じゃねーか。俺にはあご髭はねぇ。どこのどいつに恋文を書くんだよ。」

「あたしは遊女じゃないんでしょ。」

「同じ事すると言った口はこれじゃねーのか?」

「ぷひゃっ。」


司はつくしの頬を摘んで口を尖らせた。


「あにしゅんのよ。はにゃせ。」

「誰だか話したら離してやる。」

「ちゅかまれれ、ろーやっれはなしゅのろ。」

「・・・・・・確かにそうだな。」


司はつくしの頬の手を離した。

その間を置かずつくしはかかかーっと麦飯をかっ食らい、おかずもばくばく食い出す。


「おいっ、ひとりで食ってんじゃねーよ。」

「もぐもぐ、うるしゃいころ言う奴に食わせてたまるか。」

「なんだ!!」


反論しようと口を開けた司につくしはおかずを放り込む。


「黙って食え!せっかく作ったのに冷めちゃうでしょ。」


むうっとするつくしに口を閉ざされ、睨んだまま固まってた司だったが、ゆっくり咀嚼し出した。


ゴクッ

「浮気じゃないんだな。」

「当たり前でしょ。裏方だって手紙は書くのよ。男衆はしないけど、女将さんのお手伝いでやる事あるの。」

「こき使われてるってか。あのババアてめぇは楽してるってか?」

「楽してたら、みんなこき使われてないわよ。あんたも商いしてるから分かるでしょ。」

「・・まぁな。」


つくしの言葉に何やら思案めいた司だったが、その言葉を返す事はしなかった。


それから食事を済ませ、

二人で煎茶をすすり、

障子の近くにお膳が寄せられる中、

布団の中、

つくしが鼻の下に生えかけた司の髭をからかっては、仕返しだとつくしの着物の中に手を入れる司。


そして亥の刻過ぎた時に再び階段を降りたつくしが見張りの男衆と目配せをした後、

二人は火の番の拍子木が鳴らされる前には寝てしまった。

周りの部屋から遊女達の仕事の声もなんのその、二人抱き合い夢の中だった。





その夜から数日後。


振袖新造になりたての甘柿から褒められ、つくしが鼻を高くしていると、

背後から低くおどろおどろしい声が聞こえて来た。


「逃げよう。」


ダダダと駆け出すがあっけなく司に捕まり肩に担がれ、二階の階段近くの部屋へと押し込まれる。

まだ夜見世前で部屋の主人が不在だったとはいえ、姐さんの部屋である事は間違いない。

部屋を振り返り、起きようとしたつくしに司が跨がられた。


「まさかおめぇがそんな事してるたぁなあ、、何人と口吸いしたんだ?え?つくし全部吐きやがれ。」


顔を歪めながら笑われている事に、つくしは狂う寸前の怒りなのだと理解するが、


「言わない。言う気なんてないわ。あんたに身請けされる前の事なのよ。今さら言われてもどうしようもないわよ。」

「何だと、、」


司の目が血走り、つくしはマズイと思っていると、


ダンッ


つくしの顔の横に激しく音を立て手をつく司。

二人は顔を近づけ睨み合う。


が、


ゴンッ


顔を近づけた司につくしは頭突きをかました。

勢いをつけたため痛みで泪を浮かべるが、睨んだままつくしは司の襟元を握りしめた。


「あんたはここが本当にどこだか分かっちゃいないわ。」


感情はむき出しのままながらも声を抑えて司に話しかけるつくし。

司は驚きながらもつくしが声を抑えた事に気を取られる。


「どこって、遊郭だろうが。」

「そうよ、遊郭よ。女の戦場なの。ここでは上位に君臨するために熾烈な女の争いが繰り広げられてるの。」


司はハッとさせられる。


「言わないのは、あたしにだって意地があるのよ。身請けされて確かに遊女ではないわ。だけどね、ここにいる以上女としての基準は遊女なのよ。」


司は真顔になり黙って聞いていた。


「あんたにイカされるのは、しょうがないと思う。あたしの知られたくないところまで探り当てられちゃったんだもの。

でもね、遊女にとってイカされるのは恥なの。男を喜ばせて手玉に取る商売なんだから。だから、あたしはこの見世で裏方だろうが遊女としては出来そこないなの。

だから言いたくないのよ。今だってあんたが騒いだからみんなが聞き耳立ててる!あたしがあんたにまた手玉に取られるだろうと、笑い者にするためにね。」


司は身体を起こして、つくしの身体も起こそうと手を取った。

そして胡座をかき、つくしに向かい合う。


「それじゃあ作り話か?」


司も抑えた声で話しかける。


「それを思いついたのは本当。やってみたのもね。でも二度目があっての方法よ。一度目から飴を持ってくる客なんていないでしょ。」

「まぁな。」

「それに姐さんは用心深いって言うか、馴染みの客が重ならないように、手紙をまめに送っていた。だから、二度もあたしに当たった客なんてほとんどいないの。姐さんが格子に座ればあたしが入る必要なんてないでしょ。」

「ふぅん。なら、さっきの話はお前の強がりかよ。」

「そんな言い方するな。」

「どっちだ?」


頬を膨らませ不満顔になるつくし。

司はその顔を見てはホッとしていた。


「俺以外とやるなよ。」

「するか。しようとも思わないわよ。・・・こんな事されてもね。」


司はつくしをギュッと抱きしめた。


「もうビビらせるなよ。マジで、そいつを殺めようかと思ったぜ。」

「これくらいで殺めるな。あんたが島流しになったらあたしはまた売られるのよ?」

「・・分かってるよ。」






***

「随分とまた派手に喧嘩したもんだね。あんた達は。」


紫陽に呆れられ、つくしは返す言葉がない。

あの後姐さんの部屋を乗っ取ったまま、いつも通りに後朝まで居座った司。

つくしは司を送り届けてからの朝食でその姐さんにぐちぐちといびられてしまった。


「でもさ、つくし二度目の客が全くいなかった訳じゃなかったわよね。」


ドキン

つくしは心臓が早鐘のようり鳴り響くのを必死で隠した。


「いや、そうでしたっけ?」

「そうよ。あの、、何とか藩の御庭番だかの兄さんがあんたに通いに来てたじゃない。」

「何とか藩、、あっ!あの人。」

「確か、三度目にあたしの部屋に上げたのよ。そしたらあんたの水揚げがいつになるか聞いてきて、それじゃあまた江戸に来る時には客を取っているんだなと言ってたわよ。確か。」

「へ?客を取ったら?」

「なかなかの上客ぽかったし、あんたの常連になればなと思ってたのよね。ま、今となっちゃ無理な話だけど。」

「そ、そうですね。」

「坊ちゃんには黙ってたげようか?」

「へ、黙って?ははは、はい。言わないで下さい姐さん。あいつは殺めるから誰だと息巻いてたんで、知られれば生き別れになっちゃいます。」

「へぇ、、そいつは物騒な殺し文句だ。まさに殺し文句だね。」


ケラケラ笑って紫陽は他人事のように高笑いする。

その後ろでつくしはキョロキョロと司が今の話を聞いていなかったか、不審な動きをしていた。






その頃、江戸近くの宿場町では、

嵐を巻き起こす男が江戸へと足を踏み入れようとしていた。





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嵐なんて起こしていいんだろうか?
しょぼい嵐になりそうな予感です。
花街に護られて cm(3) tb(0)
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